エピローグ「高校2年生と2年目冒険者へ」
宿がないというこいつを紹介するために、俺は家へと帰りまずは母さんに紹介した。
「瞬介、あんた……」
「あの連中から守るためにその姿は知ってるけど、会うのは初めてね! フィーナよ、Halfassのフィーナ!」
そう言って母さんにこいつらしい挨拶を言い放った。
「そ、そう……ねぇ、瞬介?」
「えっと……まぁ仲間だよ。あっちの世界での」
「ラビィさんたちみたいな美少女や美人の人とか、瞬介の将来が心配な人たちを紹介される母さんの身になってほしいものだわ」
「そ、それは……」
「刺されたりしないでよ? フィーナちゃんね、よろしく~」
そういうと母さんは、ささっ座って~とフィーナをリビングに案内していた。
ため息を吐いて、さてどうするかと俺は自室にかばんを置いて着替える。
そして、リビングに戻ってくるとフィーナの奴はまるで自分ちのように
ソファに座ってのんびりしていた。
人んちでこの態度、まさにフィーナだと思った。
「なあ、フィーナ。あっちのお前って……」
「もちろんこっちとリンクしてるわ! ふふん、あたしだからね!」
「いや、あたしだからねの意味が分からんのだが……それで、あの後星母はどうなったんだ?」
その言葉に、お茶を飲んでいた手を止めてそのカップを見つめて笑顔で告げた。
「……これからはいい夢を見せてねって言われて、お役ごめんって感じだったわ」
「結局目覚めなかったのか?」
「目覚めたら、あたしたち死んじゃうわよ! いや、あたしやら妹やら竜女王の子は無事でしょうけどあんたたちが死んじゃうわ」
「……そ、それはそれは」
そんな感じで俺がある話を遠ざけてるのに気づいたんだろう、フィーナは問いかけてきた。
「で? 考えはまとまったの?」
その言葉に俺は、うっと言ったまま次の言葉がでてこなかった。
「あたしを好きだって気持ちは嬉しいけど、ちゃんと彼女たちにも答えを出してあげないと……それに何よ! 勝手に子作りされたくらいでパーティ解散って! 今流行りの異世界追放系モノのつもり? あははは!」
何も言えないし、言いたくはない感じのフィーナの解釈だ。
てか、ラノベとかこいつ読んでるのか。
「そういうラノベ系じゃあ、一夫多妻は当たり前っていうけど……リアルじゃあそういうわけにはいかないんだよ。俺の倫理観的にも気持ち的にも……」
「ふーん、まぁあんたが考えてることを否定はしないわ! 十分悩んで答えをだしなさい! あたしの答えはそれからってことで」
「そ、そりゃないだろ……」
「あたしはね、シュンスケ」
そういうとフィーナは俺の顔をじっと見て言い放つ。
「この世界のことをこの世界に来てから色々学んだわ。結構時間かかっちゃって色々大変だったけどね! だからおおよそこの世界の今の状態ってのが分かるわ! だから、あなたが考えてる常識みたいなのも分かるわよ! でも、あっちにもあっちなりのルールってのがあるし、冒険者パーティ内での恋愛を否定するなんて、あたしはそんな器の小さいことは言わないわ! いいじゃない、誰が誰を好きになったって! 大事なのはあっちの世界のラビィとリンス、メジェネア、ミーティアをあんたがどう思ってるかってだけよ」
「……」
そりゃそうだけどな。
今はまだやっぱり……。
「とにかくあたしが復活したんだから、冒険者パーティHalfassは復活してもらうわ! じゃないと、あたしはあんたの前から消えるから」
「おい、そりゃ――」
「ずるいでしょ? ふふん! 妖精――まぁ"生まれ変わったあたし"は悪戯好きだから! シュンスケもそれを理解してあたしのこと好きになってくれたんじゃないの?」
「それは……」
最初はこいつの見た目からだった。
だが、こいつと接するうちに純粋にこいつのことがどんどん好きになっていった。
だからだろうか、こいつだけには乱暴な態度を取ってたし……。
「そういえば――」
「あっちのお前はどうなるんだ? こっちのお前があっちのお前にシフトするのか?」
「そんな面倒なことするわけないじゃない。あたしはあっちでもこっちでも同じだからね!」
おい、そんな面倒なことをさせる力を一方的に与えた相手に今のは言っていい言葉じゃないぞ。
と、色々とこいつへの文句は言えるのだが……。
「はぁ~……わかった。あっちへは今夜行くさ。毎夜、コーディと冒険するために行ってるし」
「そっ! ちゃんと今夜行きなさいよ!」
そんな約束通りに俺は、帰ってきた親父にもフィーナを紹介しつつ同様の突っ込みを受けたが、流して夜になったタイミングで異世界へと向かうことにした。
意識が異世界側へと向かったことを示すのは、俺の顔を覗いていた小っちゃいいつもの妖精姿のフィーナが見えたからだ。
そして、驚いたことに妖精女王が珠越しではなく直接きていた。
「ふふん! きたわね!」
『姉上……それで、説明を――』
「いいから、リーネ! ラビィリンスとメジェネア、それからミーティアをここへ転移させなさい!」
妖精女王様はリーネというのか。
「ガルァ」
「ふん! 大丈夫よ!」
何やらそばにいたコーディと言い合ったフィーナがそんなことを言うと、妖精女王様がぶつぶつと呟いて3人を転移させてきた。
こうしてみるのも久々な3人は、三者三葉の態度だった。
戸惑いというか、俺の顔を見ての表情が面白いくらいにコロコロ変わっていた。
「シュ、シュンスケ様……」
「婿殿……」
「シュンスケさん……」
俺もなんとも言えず、だらだらしているとフィーナがパチンと俺の頬を叩く。
「何やってるの! あたしのことが好きなんだったらちゃんとけじめをつけなさい!」
おい、こら。
「え? ……どういうことですの?」
「む、婿殿……それは本当なのかの?」
「シュンスケさん……」
「ややこしいことをいうな! そしてお前らも迫ってくるな! もう~だからあれなんだよ……」
だが、こうして集まってもらったからには俺の素直な気持ちを伝えた。
「ああ、俺の初恋はフィーナだ。今も好きだ。だからお前たちがもし俺のことを好きなんだとしても……俺の倫理感では今のところは受け入れられないし……なんていうか、家族みたいに思ってもいるから……あっとミーティアさん以外な」
「……で、ですよね」
そりゃ一緒に冒険した日にちを考えたらラビィたちとは違うのは仕方ないことだ。
「でも、チャンスはまだあるんですよね!」
と、なぜかやる気になったようにムンと拳を握った。
「チャ、チャンス?」
「はい! シュンスケさんが私のことを好きになってくれれば、フィーナ様を第一夫人として第二夫人に――」
「お待ちくださいませ」
「そうじゃ、それは聞き捨てならぬのじゃ」
と言ってわいわいと言い合いを始めた3人。
いや、第二とかありえないんだが……俺の倫理観は日本が元なんだぞ。
色々と言い合っている中だったが俺は自分の言いたいことを言うために3人を止めた。
「俺の正直な気持ちは、そのこと以外にもあるんだ。それは――」
その言葉にみんながゴクリとする。
「2年目になる冒険者生活になる前に勝手に解散してしまったHalfassだけど、また再び結成したい。この手に――」
この手に重ねてというまでもなく俺は、4人に手を強引に取られた。
「もちろんですわ! ねえ、リンス」
「はい、どうか末永く」
「わらわは最初からそのつもりじゃ!」
「私も加えてくれるんですね!」
「ガルゥ」
そして、それを見届けたフィーナはその上に乗り――
「あんたは、学生として冒険者としてその生を楽しみなさい! あたしがあんたの命が尽きるのその時まで傍にいてあげるわ!」
「それって!」
「告白を受け入れたわけじゃないわよ! まだこの子たちに対しての答え出してあげてないんだし!
」
「そんな……」
でもそうか、種族差で寿命が違うんだもんな。
だが、俺は俺の寿命が尽きるその時まで学生――ひいては就職してからは社会人と冒険者を謳歌したいと思う。
……この仲間たちとともに!
……そして、現実世界の家族と悠人、明花、誠太、大天使優奈ちゃんとともに!
こうして俺は再び、2足の草鞋生活を始めるのだった。
~END~