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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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13話「星母の悪夢(テラーズ・オブ・ナイトメア)」

「がはっ!」


突然、腹に穴が開き血を吐く瞬介を見たのは両親だった。

何があってもいいようにと病院の一室で成り行きを見ていた2人は、ナースコールを押す。


「瞬介!」


「瞬介!?」


体に異変があっても決して触れないでくださいという指示に従って触れなかった2人だったが、その衝撃は声手で抑えなければいけないほどにショックだった。


「……」


そんな2人を置いてすぐに集中治療室へと運んだ看護師たち。

そして、決して死なせはしませんと言って2人に声をかけた医師に精一杯のお願いしますという言葉を残した。







冒険者パーティ・Halfass(ハーファス)の全滅。

それはミーティアですら想像してなかった光景だった。

そんなエルフに彼は容赦ないことをかける。


「どうだ? 期待したその戦力がもはやなんの役にも立たなくなった感想は?」


「……」


皇帝は何も語らずだが、大公の発した言葉にもミーティアは言葉がなかった。


(そんな……精霊の力が……まさか……星母様!)


その問いかけに答えることはなく、大公は皇帝の作った時間を無駄にはせずに己に集まりつつある星母の力をさらに強大化させていく。


「はっはっは! 最高だな! さすがはありとあらゆるモノの母なる存在の力よ!」


その力に酔いしれ、もはや誰とも会話をせずに高まり続けるその力を見せつけるようにしていた。やがて地響きが訪れて大陸が起き上がろうとしているのがミーティアにも感じ取れた。


だが――


「それ以上はいけない!」


彼は――大公は知らなかった。


その力が、彼の都合のいい力である証拠などどこにもないことを。


大公は知らない。


歪んでいく自らの力が、自らを違う方向へと誘っていることを。


「……どういうことだ? なぜ――」


その言葉を残して、彼は綺麗に破裂をした。

それに気づいたのだろう皇帝もそちらを見るが、その皇帝にも何かが煌いたかと思えば破裂してしまったのだった。


見れば大公のいた場所が歪み真っ黒な闇が広がり、それは人の形をなそうとしていた。


「ああ……これは……」


歪んだ人の形から溢れる闇の矛先が、ミーティアへと向かおうとする時のことだった。


「ミ、ミーティア……さん……」


その言葉が聞こえた方向は、瞬介が倒れている方向だった。


「シュンスケさん!!」


慌てて近寄り、そしてそっと仰向けに抱き上げて抱きしめた。


「がは、苦しい……!」


「あ、ごめんなさい!」


その言葉にいいってと伝えると、近況を聞く。

ミーティアは今現在起こっている最悪の事態を話した。


星母の悪夢テラーズ・オブ・ナイトメアです! あの男の邪念が混じって星母の見る夢が悪夢に完全に変わってしまったために、その原因である大公も皇帝も破裂していなくなりました!」


その言葉に瞬介は、ゆっくりと考える。


「……悪夢、か」


城に穴が開いていて、空を見るとドス黒い真っ暗な闇が広がっているのが仰向けの瞬介にも見えた。星の一つもない真っ黒な闇。


「お、終わりです……この世界の……」


ミーティアのその言葉に瞬介は何事かを考えた。そしてそれを呟く。


「はじまりの力にしておわらせる力……」


何も見えない闇を、重傷の瞬介はじっと見ながら考える。

あらゆる城の構造物が壊れては浮かんでいくのを気にせずにただひたすらに、闇だけを見続ける。

そして――


――誰かの笑った顔が見えた。


「! そういうこと……か……」


瞬介はミーティアに肩を貸してほしいと言って立ち上がると、真っ暗な闇である空を見つめて詠唱を始めた。


「宇宙……空の果てにある宇宙! そしてそこにある星々!」


その言葉に、ミーティアは以前に語った時に時々瞬介が言っていた言葉である宇宙というのが冥海のことだと理解した。


「この星の母にして、悪夢を見る母に裁きの鉄槌を!」


瞬介がとんでもないことを言い出したのを聞いた時、ミーティアは驚愕した。


目覚めさせてどうすると。


「シュンスケさん!」


「……これでいいんだよ、これくらいじゃ目覚めない……惑星ってのは、はじまりも終わりもそういう風にできてるんだからな」


そしてまた再び闇の――そのまた向こうに広がる宇宙を見通して同じ文句を口にする。


自らに存在する精霊力のフルを使って、4分の1――クォーターリンカーの力を使いただただ効率を求めてと、それじゃ足りないなら魔力でもなんでも持っていけと瞬介は叫んだ。


「シュン……スケ様」


「婿……殿……」


「ガ……ルァ……」


「……」


やがて瞬介の仲間たちは気絶から目覚めると、瞬介のほうへと這いずりながらもやってくる。


「お前ら……無事……だったんだな……」


嬉しさに、瞬介はその感情も乗せて精一杯叫んだ。


「聞け! 俺の中の精霊女王の力をくれてやるから、さっさと悪夢をどうにかしろ!」


もはや詠唱ともなんとも言えないその言葉はやがて、ある一つの物体が闇を晴らすが如く降りてきたのだった。


いや、正しくは降ってきた。

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