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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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12話「大公の野望」

皇帝をラビィたちにまかせ、奥にくると謁見の広間っぽい広いところへと入った。


その椅子に座り、こちらに余裕の表情を見せつけているのは先ほどの皇帝と瓜二つと言っていいほど似ている男だった。


「ほう? ここまでこれるとはおもっておらんかった」


「……お前が大公か?」


「いかにも、ようこそ我が城へ……いや、もはやここは私の居場所ではないな」


そう言って立ち上がると、手元にある何かのボタンを押した。


するとその椅子が浮き上がり、変形して背後にある20mはある部分にガシャンという音とともに結合した。


「マジでロボットかよ……異世界感ぶち壊しすぎる」


「ろぼっと? あれが……」


「ふん! あれくらいなによ!」


そんなことを言ってフィーナが突っ込み攻撃を加えるのだが……。


「ぎゃっ!」


バリアのような電磁的な何かに守られているのか、怪力フィーナの攻撃も無力化された。


「フィーナ!」


「くっそ~! なんなのよ! あれ」


そんな悔しそうな声を出しながら、戻ってきた。


「妖精や精霊、それに竜……ふん、もはや奴らは恐れる必要のない存在だ」


「星母の力が手に入ったからか?」


その言葉にほうっと感心したようにして、頷く。


「星母のことを知っているのか? なるほど、そう言えばあの妖精女王と親しくしていたらしいな」


「違う、あるエルフ族の人に聞いたんだ」


「はっはっは。過去は長大な年数と精霊族に迫らんとする大いなる魔力を持っていた……今やただの若作りの年寄りというだけのこと」


「ああ、そうだな。お前らが古代国家の復興とかアホみたいなことで魔力を抜いていったんだろ」


「……」


「結局、てめぇは見下してるが周りの力を借りて――いや、利用するだけしてそれで見下す立場になればそうやって偉ぶるんだろ? その程度だってことだよ」


「……」


「楽しいか? 自分で努力も何もしないそんな周りを利用して生きてくのって……そんな長大な妄想に時間を費やして今てめぇが誇るそれがそんなに楽しいのか? 大公の野望だとか、そういうの抜きにしてもてめぇはその程度――」


その言葉を紡ぐ前に俺は、大公から何やら攻撃を受けていた。


「シュンスケさん!」


「……大丈夫、肩に当たっただけだ」


「……言いたいことはそれだけかね? だったら死ね」


そうして大公はまた一つボタンを押すと、周囲から嫌な感じの力が集まった。

その力は精霊や妖精、竜の力なんかでは考えられないほどの強大な力の気配だった。


俺の中の精霊力がその力を否定するかのように、高まるのを感じる。


「利用し、それを自分の力として扱う。それが生きとし生けるものの力だ。君もそうなのだろう? 精霊女王の力を宿し、それを散々利用している。ふん、変わらんのだよ。私も君もね」


「……正直言えば欲しくはなかったさ。ただ俺の前世・モーメンツ=フラッシュが精霊女王を助けたというだけで一方的にもらい、俺を学生冒険者にしたこと自体迷惑なくらいだ。おかげでてめぇらには命狙われるわ、こんなよく分からないおっさんの企みを阻止するっていう一学生には重いことを背負わされてな」


俺はそっと息を吸って続いて話す。


「だが、まぁ出会いはあった。ミーティアさんみたいな人やラビィ、メジェネア、フィーナ、そして相棒のコーディ。ガルマさんにもお世話になったし、リエナさんもアルダーさんも、ルインガさんも色々と世話になったし、サナダさんとは年齢は違うがいい友達になってくれたって思ってる。この違いが分かるか?」


「違いだと?」


「……てめぇは利用する、俺は信頼する。兄か弟かの皇帝さえあんなふうにしちまうてめぇには分からないだろうな」


その言葉に眉をひそめるが、やれやれとするように両手を上げてそして答える。


「いやあ、まいったね。何も言えない……まぁ君に何を言われてもどうということもないがな。もはや止まらないのだよ。私はここを出て、君の世界へと向かう。そして――"君の世界"を滅ぼして新しい世界を作るのだ」


「あぁ? てめぇ」


それは俺にとっての逆鱗だった。


抑えるのがやっとというほどに否定する精霊力が俺の感情で爆発するように膨れ上がった。


「それはつまり家族に手を出そうってことだろ?」


精霊力、魔力あらゆる力をふり絞り俺は自らに怒る力を高めて、奴を殴るために拳を固めた。


そしてそれを叩きつけるために全力で走るが……


「な!?」


その攻撃は事前にある男によって止められた。


「これはこれは、兄上。その男の仲間はようやく倒せたのかな?」


「ラビィさん! メジェネアさん!」


ミーティアさんが叫んだほうをみると、そこにはボロボロになった2人の倒れた姿だった。


「……」


皇帝の男は何も言わずに俺へと攻撃をしてきた。

避けるためと2人のことが心配だったために、後ろを振り返ったその瞬間――


「がはっ!」


わ、忘れてた。

大口径の砲撃が……もろ俺の腹を撃ち抜いていった。


「シュンスケさん!」


「おまえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」


「ガルァァァァァァ!!!!!!!!!!」


倒れた俺の目に映ったのは、キレるフィーナとコーディの姿だった。


やめろ……。


そう声に出すまでもなく俺の隣まで吹っ飛ばされたフィーナとコーディ。


「言っただろう? もはや私の上に上はいないのだ。ハッハッハッハ……!」


奴の高笑いが闇に溶けていくような意識の中で響いていた。

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