10話「援軍」
ラビィたちが右の森からゆっくりと、なぜか目の赤いメジェネアが左の森から現れた。
「勝ったんだな……なんで、メジェネアは泣きはらしたような後なのかは分からないけど」
「気にしないでほしいのじゃ」
「あ、ああ」
それぞれの何かの気持ちがあるだろうと俺はそっとしとくことにした。
というわけで、目の前にある帝国城を見上げて俺たちは突入することにしたのだが……。
「ラビィ、あなたが戦っている間にシュンスケ様のことを色々お聞きしました」
「母様?」
「ああ、Halfassという冒険者のパーティのリーダーに属しているお前のためなのだ」
「結果――」
そこで謎の沈黙が訪れた。
そう、なんか知らないがここまで付いてきたラビィの家族全員から待っている間色々な質問が来たのだ。趣味から、収入から、色々だ。
ここでは異世界人なので、俺は冒険者として今まで得たお金やら資産やらを教えたらそうかそうかとなぜか、肩をたたかれた。
フィーナのやつがなぜか自慢げだったし、コーディも機嫌がよさそうだったので俺としては不思議だったのだが……。
「ラビィリンスよ、お前をシュンスケ殿におまかせするという判断となった」
「あの、冒険者としてというのをつけてくれないと」
「……まぁ今はということで」
「ふふふ、私も立候補する予定ですわ!」
「ね、姉さま……」
「とりあえずそういうことは、今回の戦いが終わってからってことで――」
俺がそう声をかけると、なぜかハラハラしていたメジェネアがホッとしたようにして、
「そうじゃ!今より大事な戦いが控えておるのじゃから、それどころじゃないのじゃ!」
――ガシャ……ガシャ……ガシャ……
そんなやり取りをしていると、奥から何かに乗った帝国兵らしきものたちが現れた。
「マジか……」
その乗っているものに気づいた俺は、帝国のアニメ実物化っぷりに驚愕した。
「面妖なものじゃ」
「異世界って感じじゃなくて、もう本当にSFモノって感じになっちまってるな」
搭乗型のあるゲームに登場する魔〇アーマーみたいな見た目から、俺の思っているこれじゃない感が特に強いのが出てきた印象だ。
そんな呆れた状態ではあるが、敵は待ってはくれずある程度近づいたところで一斉にビームのようなものを発射してきた。
全員が素早く避けて次にくる攻撃を待とうとしたが、1人いうことを聞かずに突っ込む奴が帝国兵たちへと突っ込んでいった。
その攻撃は容赦なく殴りつけたかと思えば、周囲にいる連中を壊れて動かなくなったそれを持って振り回して無双しまくっていた。
「あいつ、大分溜まっていたんだな」
「あのままでよろしいんですの?」
「っと! まぁ、今は好きにさせよう」
そんなことを話し合っていると、巨大な体躯が背中側から現れた。
《シュンスケ、まだこのようなところにいたのですね》
その綺麗な白の鱗を持つ大きな竜の言葉に、竜女王と気づいて俺は慌てて挨拶をしようとしたのだが他の竜たちの背中に乗って続々と現れた人たちに驚いた。
「お、シュンスケ殿! ようやく会えたのぅ!」
気安くでかい声をかけてきた相手に見覚えがあった。
たしか――
「ガルンガ様、久しぶりですわね」
「おお! あの時のラビィ殿か!」
そうそう、確か俺が意識を失っていた時にサナダさんとともにドワーフ・ハーフリング戦士団を率いて俺たちを助けてくれたとラビィたちに聞いたのだ。
話によれば、迷宮都市のあのドワーフさんの三男の人だそうで……。
「はじめまして、森国ではお世話になったようで……」
「なーに、こっちこそじゃよ! それに……なかなか面白そうなモノを帝国が作っておると聞いたからのう! そこで、我らの出番というわけじゃ!」
「な、なるほど……」
ドワーフが関わると、あの帝国兵が乗っているなんとかアーマーがどうなるのか楽しみだけど異世界感がなくなるのは嫌だなと思った。
《フィーナ》
そんなやり取りをしていると、その巨大な体躯の首を降ろしてフィーナを呼ぶ竜女王。
「げ! な、なんの用なのよ!」
《あなたは早く彼らとともに、城へと向かいなさい。ここは私たちに任せて》
「しょ、しょうがないわね! シュンスケ! 早くいくわよ!」
本当にあいつは、竜女王が苦手なようだ。
「わかりました」
「あとはわしらにまかせるんじゃ、あんな面白そうなからくりはドワーフとハーフリングの出番じゃ!」
《それから、シュンスケ》
そう言うと何やら転移してきた人が俺のところへとやってきた。
「あ、ミーティアさん!」
「シュンスケさん、私もお連れ下さい」
そういうとラビィやメジェネアたちにも挨拶をしていった。
《その子も連れて行きなさい》
と言われれば、特に反対することもないんだが……。
「わかりました。ミーティアさんもそれでいいんですね?」
「はい、よろしくお願いします」
そうして臨時の冒険者パーティメンバーとして、ミーティアさんが加入することとなった。
「シュンスケ殿、うちの娘を頼むぞ」
「え?」
「我らは、あの城までの道を開く! その間に潜入するのだ」
「ですわね……久々に暴れがいがありそうです」
「ラビィ、終わったら分かってますわね!」
そういうと道を開くようにラビィの家族たち、それからドワーフ・ハーフリング戦士団が先陣を切り俺たちは城の中へと入るために走るのだった。