3話「迷宮都市内の案内」
唐突の戦いが始まった!
かと思えば、そう問屋が卸さない。
俺が卸させないという感じだが。
「やめろ!クソ妖精!」
いつものようにフィーナを握りしめ、戦いを強引に終わらせた。
―おい、何者だあいつ。
―いきなり出てきたかと思ったらあっさりあの妖精を握りやがった。
いや、いつものことなんだが……まぁそりゃ驚かれるか。
「放しなさいよ!シュンスケ! ようやくあたしと!」
「黙れ、クソ妖精。いきなり攻撃をしかけてそれに巻き込んだのも、全部お前だ! ほら、謝りに行くぞ!」
そうして俺は、吹き飛んだ2人組のほうへと走り出した。
幸いにも建物などは巻き込まれず、通り沿いに滑った感じなので被害に遭ったのは屋台くらいのもので済んでよかった。……まぁ、それらも弁償しなきゃだろうけど。
とりあえず2人組のほうへ向かうと、メイドさんとご令嬢という感じの2人ともにこちらへと歩み寄ろうとしていた。
俺は第一声で謝ろうとしたが――
「ふふふ。さすがにびっくりしたわね。うちのリンスの攻撃を受け止めるだけならず、わたくしたち2人で抑えるのがやっとという攻撃をもらったのは久々のことですわ」
「え? いや、あの――」
「失礼、紹介が遅れまして。わたくしの名はラビィ、この子がリンス。よろしくお願いいたしますわ」
そう言うとカテーシーっていう感じの礼をしてきた。
それにしても、ラビィとリンスなんて……。
ラビリンス(迷宮)みたいな感じでちょっとクスっときた。
「あ、俺は冒険者のシュンスケ、このクソ妖精はフィーナといいます。すいません、てかさっきの人にも謝らないと」
ということでこちらも自己紹介をしたが、ラビィさんが言うにはもうすでにこの場を離れていないということだった。
逃げ足早っ!
「それに先ほどの方は、我々にも粉をかけてきた前科がありますので、ご心配にはおよばず……それよりも」
そう言うと、ラビィさんは俺とフィーナに視線を合わせて上品に笑った。
「あなた方は大変興味深いですわ。フィーナさんでしたか。本来の妖精さんのイメージでは力技は苦手なはずなのにあれほどの力を発揮し、そしてあなたに関してはそんなフィーナさんをあっさり捕まえて叱咤までするという度胸……ふふ」
……なんか別の意味で嫌な興味を持たれた感じだ。
「あなた方は、迷宮攻略のために来られたのですか?」
「いえ、護衛の依頼でここを指定されてきただけです……まぁ興味がないとは言えないので挑戦してみようかなとは思っておりますが」
そう言うと、お嬢様のほうだけではなくメイドさんのほうまでほうっと関心した様子で俺たちのほうに視線を向けた。
「ちょっと、シュンスケ! いつまであたしのことを握ってるのよ!」
というので、俺は戦いなんか挑むなよと釘を差した上で放した。
もうそんな気もないわよ、今は……とかいうこいつだったが、呆れた俺はほっとくことにした。
「先ほど到着を?」
「え、ええ。まぁ……」
「では、わたくしたちがご案内してさしあげましょう」
ということで、なぜかこの二人に迷宮都市を案内してもらうこととなった。
先ほどの騒動で人がごった返していたが、俺たちが連れだって進むとザザーっとどっかの十戒のように道が開けた。
そういえば、あの町でも最初の頃はそうだったな。
―おい、迷宮令嬢だぜ
―あの二人が誰かと一緒にいるのは珍しいな
という小声が聞こえる。
「め、迷宮令嬢とは?」
疑問に思った俺は率直に本人たちに聞いてみた。
「誰か言い出したのか……わかりませんが、そういうパーティを組んでいるということになっているようですね」
ということらしかった。
なるほど、パーティっていうのがあるのか。
それから迷宮都市のことを色々聞いた限りでは、迷宮都市というのは他の町と同様に城壁というのか、10m前後の壁に囲まれた町でその中央に大山となっている迷宮区域があり、そこを中心として町が広がってる感じの作りをしているらしい。
中央区と呼ばれているところが、迷宮を管理している迷宮区となっていて迷宮ダイヤログと呼ばれる迷宮にそれを管理する建物と冒険者協会副支部も併設されているそうだ。
そこから、外にいけば鍛冶やら武具防具などと言った迷宮に挑戦するために必要な武具類、道具類などの販売店があって、その外側に食品類などの店があるということだった。
「じゃあ、その外側が宿とか住宅があるとか?」
「ふふ、その通りですわ。そして、その外側――西のエリアは歓楽街、東のエリアが酒場などがあるということですわ。もし、興味があるのであれば歓楽街など?」
「べ、別に興味があるってわけじゃ!」
「ふふふ」
くそ、からかわれた!
まぁ俺だって、そういうのが気になる年代の男の子だ。
だがしかし、まだ未成年だし……。
ちなみに今いるところがその住宅や宿といった住宅地のエリアだ。
そこを今中央のほうへと向かって歩いていた。
「迷宮の北側は?中心って言ってたってことは……」
「……まぁ、スラムです。身を崩したモノとかそういう方々がいらっしゃる場所ということらしいですわ」
そうなのか。
迷宮は構造上、北側に向けて開かれているらしいので何かあったら……例えば、迷宮から魔物が現れたりした場合は真っ先に被害が遭うのが北側らしいので、そこには誰も住みたがらない。だからということで、スラムなどがいつの間にか出来上がっていたりするということだった。
スラムといえば、犯罪者だったり、浮浪者だったりが溢れている場所だったよな。
……近寄らないようにしないと。
そんなわけで色々話を聞いているうちに、迷宮らしいところまで案内された。
「ここが……」
「ええ。迷宮ダイヤログ――<金剛石ノ記録>と呼ばれる場所ですわ」
目の前にあるのは、一言でいえば小山サイズにできたような空洞だった。
そこの脇には、迷宮管理の職員だろうかまたは護衛か?屈強な男たちとこういってはあれだが、貧弱な制服姿の男が中に入る人の相手をしていた。
驚きと興味でじっと見ている間に、何やらコトっと言う音がしたのでそちらを見ると――
いつの間にやらメイドさんが、テーブルと椅子を取り出して飲み物の入ったカップを置いているところだった。