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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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5話「帝国領での戦い⑤」

「ここが……」


俺がようやく着いたところ、そこは古城のようなそれほどに大きくはない城だった。


「こんなぼろっちい城になにし来たのよ!」


「お前なぁ……っ!」


―ヒュッ!


力を使い、速度を下げるとコーディは咥えた剣でそれらを薙ぎ払った。


「助かった、コーディ」


「ガルゥ」


そうして姿を現したのは暗殺者風のモノたちだった。

もはや相手は人間とは違う存在にも見えるが。


「ココマデコレルトハ……」


「へえ~片言ながらも話せるんだな。……それで、アーロンド=レニアはここにいるってことで間違いないか?」


「キサマタチガシッタトコロデ――」


そんな呟きなど関係ないとでもいうように、フィーナが突っ込んでぶっ飛ばす。

周囲にはとてもこんな小さな体躯で攻撃したようなと思うほどの衝撃が、こちらまで伝わってきた。


「ぶっ……ペっ! フィーナ! 砂が口に入ったじゃねえか!」


「ふん! だらだらと話してる暇あるなら攻撃しなさいよ!」


いやいや、普通はこういう時話してある程度情報を引き出す駆け引きを……って、基本脳筋のフィーナに言っても通じないか。


にしても、フィーナのやつますます攻撃力が上がってないか?

ていうか、攻撃の一瞬になんかあいつの精霊力みたいなのがめちゃめちゃ膨れ上がったような……。


砂煙が落ち着くころには、そこは無残な状態の元暗殺者の遺体が散らばるのみだった。


「グロ……」


以前オークでも同じようなことがあったが、養豚所を思い浮かべるという考えで何とかなったが、今回はさすがに同じ人間だった者だとくるモノがある。


「ガルゥ?」


手をぺろぺろと舐めるコーディに大丈夫と声をかけて、フィーナにも行くぞと声をかけ古城へと向かっていった。


城全体としてはそれほど大きくはない。

某ドームで表すくらいで事足りるほどだった。

一個分ほどくらいだ。


そんな城へと入るのは、裏口からが基本だが……


――ドーン!


フィーナが城門をどうどうと壊していき、それはそれは正面から堂々とっという具合で入城することになった。


暗殺者風の男たちが現れることはなく、また非戦闘員らの姿も見えない。

もはやもぬけの殻といった城内だった。なので――


「アーロンド=レニア……たしか、気配は……」


『シュンスケ、こちらです』


「うわ! って、妖精女王様……驚かさないで下さいよ」


『? いいからこちらへ行きなさい』


いや、え?何か?って顔をされたけど……こういうところがなんかフィーナっていうか人間とは違って抜けているところだと思った。


今はそれどころじゃないと俺は妖精女王のいうほうへと向かい、そして――


手を杭で打たれ、拷問を施されたままというとても酷い状態の懐かしい顔を見るのだった。


『この者です。あなたの探す少年は』


「う……」


まだ生きてる!


思わず目を背けたくなるような状態だったが、俺は杭を抜いて体を横にし、上着をその上からかけてあげた。


「き、君は……」


「久しぶり……だな。ちょっと待ってろよ」


そして俺は腰につけていたこの世界にある一番効くポーションを飲ませた。


「まさか君が助けにきてくれるとはね」


「ああ、悪かったな。敵だと思ってたんだ」


「……はは、本当に君は兄さまに似てるね」


その言葉に俺は、前世のモーメンツ=フラッシュのあの情けない髭面のおっさんにどこが似てるんだと思ったが言うのをやめた。


「それは後ほど議論が必要なことだけど……それで? 敵に内通してまで俺に何かを話したかったんだろ?」


「ああ。公国の"真の狙い"をね」


真の狙い……それは――


「星母を用いての古代国家の復興、そして世界支配とかだろ?」


「いや……違うよ」


違う……?

どういうことだ。


「大公の狙いは、この世界を滅ぼし自らが生み出した船によってたゆたう冥海を渡ること。そして――」


「おいおい、もしかして……宇宙に出て新しく人の住める惑星をってことか?」


俺はその言葉に信じられない思いでいた。


『シュンスケ、宇宙に出ると人の住める惑星……とは?』


「あなたは……妖精女王陛下……」


俺の他に人がいることに気付いたのだろう。

驚いた顔だったが、何かに納得したようにそうかと口にして黙った。


「えっと……つまりは、冥海を渡って別の世界へ向かおうとしてるってことでその力をこの世界の星母の力を使って行おうとしている……って言えば分かるかな? 例えば、この世界から脱して俺の世界……まさか……」


「ああ、その通り。大公が目指す世界とは……君の元いる世界だよ」


その言葉に衝撃を受けた。

一体どれほどの距離があるのか……たしか今の太陽系には他に生命がいる星はなく、無星卵ばかりの星だけだろうし、いや――


「太陽系の外? 例えば、冥王星よりも外の別の太陽系みたいなところがあったとして……でもなぁ何千光年離れてると思ってるんだ……」


『シュンスケ、あなたの呟きのどれもが謎すぎます』


「そうでしょうね、妖精女王様はあちらの……俺が元いた世界のことを何も知らないのですから……」


そう、この世界に住むものはまだ俺たちの世界ほど宇宙については知らない。


「シュンスケ……話はまだ続きがあるんだ……」


アーロンド=レニアからのそんな言葉に俺は、話の続きを聞くことにするのだった。


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