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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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4話「帝国領での戦い④」

一方、東へと向かっていたメジェネアもある集団に出会うこととなった。

それは――


「メジェネア陛下!」


「ほう、砂国の勇者もきたんじゃな。大義じゃ。じゃが、もうわらわは、陛下でもなんでもない冒険者であり、婿殿のハニーじゃ」


「ハ、ハニー……とは? いえ、我らにとっては偉大なるご先祖でありいつまでも陛下であります!」


「まぁよい。それよりもこのようなところまでよくこれたものじゃ」


「はっ、獣国の鳥人種部隊と呼ばれるものたちのおかげでここまでこれました!」


「ほう、そうか。あの者らか……さすがは婿殿じゃ」


なぜここでその婿殿とやらを褒めるのか理解できない砂国の勇者たちだったが、特にそこは突っ込まずに自国の古代の女王陛下の役に立てるという意味で、奮起し謎のテンションで迫ってきた。


「主らのやる気誠に大義。じゃが、わらわとしては1人であやつらと対峙したほうが効率がよいというものじゃ……なれば――」


「であるならば、我らはその進む道を薙ぎ払って御覧にいれましょうぞ!」


「そうか、ならばそこはまかせるとするのじゃ」


「はっ!」


元気がよいのも面倒なものじゃと思いながらも、自国の子孫たちがあの時とは比べ物にならないほどに強くなったことに孫を見るかのように誇らしく思っていた。


「というわけで、わらわたちの国はお主らの相手をする気まんまんじゃ。さあ、隠れておらんでかかってくるのじゃ」


メジェネアはそう言い放つと、キセルにて炎を生み出して辺りにとき放つ。


そこに現れたのは、赤黒い肌をした帝国兵たちだった。


「ガ……ガガ……」


「もはや理性もない存在となり果てたか……哀れなモノじゃ……ん?」


そこで、メジェネアはあることに気づいた。


「もしや、あの時のわらわの墓におったものたちかの? 気配がソレに似ておるのじゃ」


そして、彼女はそのまま自らの包帯を蛇のように絡ませたものを解き放つと、それらを炎にして帝国兵へと解き放った。


剣で斬るなどで、対処しようとするもの謎の弾力性によってそれらは斬ることができずに相手に絡んでやがて燃えていく。


そして――


普通の人間ならばもうすでに動くこともできないはずのそれは、構わずに攻撃しようと剣を振るってきた。


「な!?」


その姿に驚く砂国の勇者たち。

メジェネアはある程度あたりをつけていたために、なるほどなのじゃと納得しつまりはこういうことかとキセルで帝国兵の肩あたりを叩いた。すると――


――ボトッ


腕が溶解したように解け落ちて、そこを火花が飛び散っているのが見えた。


「婿殿の世界で見たドーガとやらに出てくる"ろぼっと"という奴か。面倒なものじゃ」


そんなことを呟くと、振り返り勇者たちに告げる。


「砂国の勇者ども、こやつらは異常なほどに丈夫ゆえ普通の人間を相手にするという考えは捨てるのじゃ! もっともっと固い魔物を、あの時のルビーデーモンを相手にするかのように戦うのじゃぞ!」


「はーっ! いくぞ、お前ら!」


そして砂国の勇者たちと帝国兵たちの戦いは始まった。


帝国領は広大で、魔族も住めない地底の世界よりも広大と言えるほどに広い。

西に向かった魔公爵と魔公爵により地底まで開けられた穴によって、魔族の軍が西では暴れていた。


だが――


「人間がこれほどの強さを持つとは異常だな」


赤黒い魔族ほどではないが、赤黒い肌の帝国兵や指揮官はみながみな異常なる強さでもって魔族側の攻撃を受け止める以上に逆に魔族側が圧される状態となっていた。


《なんでわたしが~》


そんな時だった。

一匹の黒い巨躯を持つ竜が現れたのは。


周囲に轟く声とともに、真っ黒なブレスを吐くと魔族を避ける様に帝国兵たちを薙ぎ払っていった。


《フィーナと遊びたかった~》


などと愚痴をいう大竜に近寄り、魔公爵は言葉を投げかけた。


「竜族の助太刀で間違いないか?」


その言葉に竜は、だるそうにその言葉に答える。


《ええまあ~、母様からこっちへ援軍にって言われたので~》


のんびりとした言い方と特徴的な黒い鱗は間違いなく、竜王女だった。


「竜女王殿は、どちらに?」


《母様なら~本陣で指揮にあたっております~あちらは精霊の力を宿した厄介な相手が来ているとのことで~》


「精霊……シュンスケ殿たちが戦ったという連中か……。なるほど」


《ああ、そのシュンスケという人間~フィーナのお気に入りなんですよね~いいな~》


「な、何がかな?」


《だって~いつだって遊べるでしょ~? フィーナと~》


魔公爵はこの竜王女が何を言っているのか理解できなかったが、ともかく今ここでのんびりと話しをしている場合ではないため、自らも剣を抜きそしてまた再びやってくる帝国兵たちを相手に魔族へと号令をかけて戦いに戻った。


なお、大きな体躯を持つ竜王女は、奥のほうへと適当にブレスを放って援護することにした。




世界中の各所で、公国および帝国とそれぞれの国が戦っている間に唯一、瞬介たちが全くの交流を持っていない海の国、海国では――


「なんなのだ、あのような面妖な海獣は……」


海王がそう呟くと、空気の泡が漏れて水泡が漏れた。

海国では直接的に兵を派遣しなかったが支援を行っていたため、戦えるモノたちを温存できていたが、半数ほどの兵をすでに失っていた。


それは、海中に現れた巨大な赤い鮫の海獣が現れたためである。


「ようやく討伐が叶ったが……さて」


そうして海王は今後の趨勢を考えるのだった。

その犠牲が公国の大公――現在陛下と呼ばれる男の企みとも知らずに。

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