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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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3話「帝国領での戦い③」

「まさかここで再会するとは思いませんでしたわ」


「そうね、ラビィ……」


2人はじっとお互いを牽制し合い、そして――


「ああ、ラビィ!」


「……おやめ下さい姉さま」


ラビィ目掛けて抱き着いてきたのは、彼女の姉だった。


「まぁ、そんなひどいことを言うなんて……あなた少しどころか、とても変わられたわね!」


「リーステッド子爵家がお取り潰しになりはや3年。その間に、わたくしも成長いたしましたわ」


そう言い放つと、そっとカテーシーを行い足で構えた。


「まぁ、あなたのその舞踏……どれほどなのか」


そしてラビィの姉という女性もまた同じ所作で構えた。


ラビィの地を鳴らす音を合図にお互いが動く。

それは互いが互いにではなく、自分たちをつけ狙い暴漢たちを相手にすれ違いでの攻撃だった。


「円脚!」


「美円脚!」


ラビィは、いつもの足技で姉と名乗る女性はその上を行く技の名前にて交互にすれ違ったモノたちを蹴り倒していった。

そこへ――


「おお! 我が娘たちよ!」


「まぁ、あなた! ラビィよ! ラビィが……ラビィがぁぁぁぁ!!」


そこへ現れたのは、彼女たちの大事な家族である元リーステッド子爵家の両親だった。母親のほうは、親ばかで自分の美しき血を受け継いだ娘に攻撃をする不埒モノに容赦なく自らの腕を振るった。


その衝撃は驚くほどに高く、周辺の地を巻き込んでの攻撃力だった。


「まずい、"青の女傑"だ! 散れ!」


「散らせると思っておるのか? 我が娘らに手をかけようなど!」


とても元貴族とは思わない大柄の父親は、そんな彼らを片手で握りそれらを武器として暴れ回るのだった。


やがて周囲が静かになったと同時に、母親はラビィへと抱き着き丁寧にその綺麗な髪を撫でつけていた。


「お母さま、もうそのような――」


「なにをいっていますの! あなたはこの母の子、大事な大事な子供なのですわよ!」


「そうだ! ラビィリンス。お前は……ふむ、しかし何やらお主縮んでいるような気がするのだが」


その言葉に、ラビィは仕方ありませんわねと告げそしてこれまでのことを語った。


「なんと! 冒険者パーティと! それで、その男はどういう奴だ! 俺よりも強いんだろうな!!」


「……お父様、シュンスケ様とはそういう関係ではありませんわ」


「シュンスケ様とおっしゃるの!? まぁまぁ、あなたが殿方を様付けとは……」


「姉としても一度、その方とはお会いしてみたいものですわね」


チュルっと唇を濡らした姉のその表情は、相変わらずという感じだった。


「姉上、決してそのような態度をシュンスケ様の前で取らないことをおススメいたしますわ」


「あら? 何か問題でも?」


「……わたくしと同じ仲間の元女王陛下の冒険者が消し炭にしますわよ。おそらく本気で」


「も、元女王陛下? 一体どういう冒険者パーティを組んでおりますの?」


「ふふ。こういってはなんですが、とても信じられないメンバーですわ」


口に手をやりたおやかに笑うと、そばに控えているリンスのほうに目を向けた家族。


「……背が縮んで見えるのはつまりはこういうことですわ」


「迷宮で何かあったのですわね」


「ええ。ですが、こうしてわたくしは2人となってもこうして元気にしておりますわ」


「……そうか。ならば俺たちが何かを言うべきではないな。それで、帝国領でのこの変異はラビィリンス、お前たちに何か関係があることか?」


「ええ。実は――」


そして、ラビィはそこらへんの理由も話した。


「ということはだ、もはや帝国皇帝は命がないと思ってよいと思う」


「それはどういうことですの?」


「ああ、知らんかったか。皇帝陛下に公国の大公はな、代々双子が受け継ぐ仕組みとなっている。それは急逝した場合の身代わりという意味でな」


「まぁ、あなたが成人を迎える前にお取り潰しにあったこともあるので知らなくても仕方ないことですわね」


「ではやはり今回の騒動……」


「大公が仕組んだとみて間違いないだろうな。……ならばもはや帝国という国は存在しないということとなるな……全く持って愚かしいことだ」


それは家族を平気で亡き者にし、古代国家の復興などという企みのために今まで栄えていたこの国を犠牲にするという意味での憤りだろうとラビィは読んだ。


「であるならば、我ら元子爵家。その責任を追わぬわけにはいかぬな」


「ええ、大公がどう動こうが我らリーステッド家は帝国に忠誠を尽くしておりますものね」


「では?」


「ラビィ、あなたは単独で事を?」


「はい、お父様。わたくしはここの南から帝国城を目指しつつも、あのような不気味な人となってしまった者たちを弔っていくつもりですわ」


「ならば、我らもそれに手を貸そう」


「ありがとうございますわ」


「お礼はそのシュンスケ様との面会を要望しておきますね、ラビィ!」


「姉さま……」


「私も断然興味がありますわ!」


この家族は本当に色々と残念すぎる。

だが、戦力としては超一級なのでラビィとしても助かることこの上ないことに変わりはなく、ラビィはこうしてリーステッド家の面々と行動を共にすることとなった。


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