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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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2話「帝国領での戦い②」

東にメジェネア、南にラビィがいる状態で俺たちは一路、公国を目指してフィーナによる飛行馬車で飛んでいた。


だが――


「!」


銃撃の荒らしによって馬車から強制的に降ろされることとなった。

コーディの浮力も4分の1にして無事に降りることはできたが、ここにきて面倒臭い相手が俺たちに対峙してきた。


「銃撃部隊ってやつか」


「貴様らHalfass(ハーファス)だな、よくぞここまで来たと言ってやってもよいがこの数の銃に――」


「フィーナ! 地面を思いっきり殴って奴らにぶつけてやれ!」


「あたしに命令しないで!」


といいながらも、フィーナは奴らのほうに向かって地面をえぐるように殴りつけてその衝撃で割れた地面の破片が奴らに襲い掛かっていった。


銃撃を超えるほどの威力と化したそれは、奴らの後ろにあった砦ごと吹き飛ばした。ちょっとやりすぎだ。


「フィーナ、ちょっとやりすぎ」


「ふん! もうここは敵地よ! そんな甘いこと言ってられないでしょ!」


「そりゃそうなんだが……」


さすがに非戦闘員を巻き込むのはと思っているんだが――

そんなことを思っていると、やがて元砦跡地から今度は肌が赤黒いルビーデーモンのような人間がわらわらと出てきた。


「……そういうことをするのかよ、帝国と公国は!」


誰もかれもがメイドの恰好だったり、下男っぽい服装の恰好だったりととても戦闘に参加できるような人たちではなかった。

俺は心の中で謝りながらも、立ち向かってこれらを撃破していく。


コーディも自身の巨大な体躯を利用して抑えつけ、せめて苦しまないようにという感じで咥えた剣でもって倒していき、フィーナはいつもの怪力で1人1人を吹き飛ばして散らしていった。


「さて、どうするか。ここがどこらへんかも分からないからな」


馬車は銃によってボロボロになっていた。

なのでここからは完全に歩きというか、自分の足を持って移動となる。

まぁムリすれば、フィーナに持ってもらいコーディには走ってもらえばという感じだが……。


「ガルゥ」


そんなことを考えていると、コーディは伏せをして俺のほうを見て吠えた。


「乗っていいのか?」


その言葉にガゥと声をかけてきたので、分かったと答えて俺はコーディに跨った。


「ちょっと! あたしものせなさい!」


「ガルァ!」


「なんですって! あんた獣風情のくせに!」


「2人ともやめろ。とにかくフィーナも乗せてあげてくれ、ここまで力になってくれたんだし」


「クゥ~ン」


「仕方ないなって感じだな。まぁ、今は争ってる場合じゃない」


ということでフィーナは、なぜか俺の肩に乗って早く行きなさいと偉そうに命令した。もちろん俺がよし行くぞと声をかけることでコーディは動きだし、フィーナがぶーぶー言いだすという一連の流れができたわけだけど。


「コーディ、俺の匂いに近いのを追えるか? そこにアーロンド=レニアってやつが囚われてるはずなんだ」


「ガルゥ」


追えるみたいだ。

俺たちの目的は、アーロンド=レニアを見つけて詳しい話を聞くことだ。

なんせ前世の俺の兄弟なわけだし、そこは俺としてもほってはおけない。


ということで俺たちは、公国を目指していた。







「ぐっ!」


「せいやっ!」


苦戦する冒険者パーティー"奈落の輝石"のリーダー、ルインズ=クルセイドの前に現れたのは皇国から現れた味方だった。


「助かりました!」


「なに、互いにこういう時こそ力を合わせる時でござろう!」


「ええ、それにしても――」


「ふむ、これほどに強いとは……シュンスケ殿はこれらの奥へと向かっているのでござるが、大丈夫でござろうか」


「え? シュンスケ殿をご存知で?」


「ほう? そちらもご存知の様子だが――」


と、出会った王国の冒険者と皇国の侍は意気投合をして次にやってくるルビーデーモンたちを待ちながらもお互いに仲を深め合う。


そういった瞬介を軸とした知り合い同士は、ラピスやミーティアたちなどがある程度攻め寄せてくる帝国軍たちを流しながらも、適度に集団を討ちながらといったまるで合気道のような受け方で帝国軍を翻弄していた。


「それが精霊力だろう?」


「……はい、私としてはとても微妙な形とはなっておりますが」


「そればかりは仕方ないことだろう。妖精女王も認めてくれたと聞く。今はこの連中を討伐することに集中するべきだろう」


「そうですね」


自らのお腹を抑えながらも、そこからあふれ出る力を制御しきることが中々に難しいミーティアはしかし、この困難の中から頑張って生き残ろうと改めて誓った。







「ほほう、中々やりおるな。人間どもは」


もはや自分は人間ではないとでもいうように、公国の主であった男は面白そうに敵の流れなどを見て微笑んでいた。


「よもや、星母に抗う道を示すとはな。だが、そうでなくてはならない」


「大公――いえ、"陛下"」


「どうした?」


「ようやく彼奴らにも"あの力"を与えることができたようです」


「ふん、所詮は時間稼ぎ。だが――」


そうして邪悪な顔をして、呟くように言った。


「せいぜい我ら、公国のために帝国というまやかしは力を使ってくれることを望むぞ……であればこそ、星母もきらめくというものだ」


そうして帝国城の広い謁見の間に、その笑いは高らかに響き渡るのだった。

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