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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
最終章「バイバイ! シュンスケ!」
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1話「帝国領での戦い①」

魔界がある地底に通じるあの山から外に出て、森国を通り帝国領に着いたと同時にすごい歓迎を受けた。


そのどれもが、一般人というか……とても兵士には見えないそんな連中だった。

一つ違うのはそのどれもが、ドス黒い赤の肌で見た目にもとてもまともじゃないそんな連中だった。


それに対峙するのもまた森国から聖国とまた魔族の人たちが向かい合っていた。


「魔公爵様ー! ここは我らにおまかせを!」


「シュンスケ殿! ここは我らに!」


空を飛ぶ俺たちと魔公爵に声をかけるのは、そんな帝国側に対峙する人たちだった。


あの戦力にあの人たちだけでと思うほどに絶望的な戦力差に見えたが――


「放てー!」


そんな声にそちらを向くと、ミーティアさんの号令だった。

その号令によって放たれた矢は一直線に帝国側へと突き刺さっていき、さらにミーティアさんが放った矢は特別な精霊力を宿したような大きな力を持って蹴散らしていた。


「ミーティアさん、あんなに強かったのか……」


あんな精霊力を秘めてたなんてと驚いているが、ラビィたちは不思議と驚いてはいなかった。


「驚かないんだな? なんか特訓したとか?」


「まぁそれもおいおいじゃ」


「そうですわ。今は、帝国へと」


「そうだな」


そんなやり取りをしている間にも、消えたバリアを超えて帝国領へと入っていく。


「では、我らは西のほうから往く。お互い無事にな」


そう言って魔公爵様は飛んで西のほうへと向かっていった。


「俺たちは――」


「わらわは東に、ラビィは南じゃ。婿殿、そなたは公国のほうへとこのまま向かうのじゃ」


そういうやいなや、ラビィとメジェネアが飛び降りていった。


「おい!」


「……婿殿、無事に」


「シュンスケ様! 帝国城にて!」


俺の掛け声にそう言ってひゅーっと降りていく2人に、フィーナが声をかける。


「ふん! ラビィ、メジェネア! 死ぬんじゃないわよ!」


その言葉に俺は驚きを覚えた。

あのフィーナが人の名前をいうなんてと。


「……クルゥ」


そんな俺にコーディが一舐めしてきたので、どうしたんだろうなというがそれには何も答えないコーディだった。







――ヒュッ!


「遅いのじゃ」


飛んできた何かをキセルで叩き落としてメジェネアは、地に包帯を厚く敷いて着いた。


そのメジェネアの周囲には、ドス黒い肌を隠しもせずに――むしろ誇るように肌を隆起させた暗殺者風の人間たちが取り囲む。


「げに恐ろしき面妖になったのじゃな、公国の暗殺者どもよ」


「……」


「――じゃが、今のわらわにはもはや怖くもないのじゃ」


そしてそっと自分のお腹をさすり、やがて静かに息を吸って吠える。


「我が名は、メジェ=ネ=アラシア21世! 2万5千年の昔に女王に戴冠しておった王族最後が1人じゃ! この首欲しければ――」


その瞳がキラっと輝いたかと思えば、唐突に大地が揺れだした。


「……望みに相応しき力を持って立ち向かうのじゃ!」


そしてシーンとするとその場には、石化した暗殺者たちの石像が崩れていく光景だった。







「この揺れは……メジェネア様、早速御力をお使いに」


「お嬢様」


「ええ、わかっておりますわ」


すでに降り立ち、周囲に気配を感じるラビィたちも駆けながらも自分の担当する地域へと向かいつつ、牽制の魔力のよる遠当てを周囲に振りまいていた。


ある地点までくると、早速と言わんばかりにその場に留まったラビィは――


「――花鳥風月」


自らを中心として回転をし、見る人が見れば華麗なバレリーナのような回転でもって大風を起こして周囲に潜むものたちのみを引き寄せて、


「舞礼"攻" 絢爛豪華!」


凪となる自分の始点で回転蹴りを放った。

その風は回転毎に抗い難く、なおかつその風切りだけで周囲に衝撃波を生み出していく。


次々と巻き込まれていくその周囲は、一切耐えることができずに切り裂かれていった。


そして辺りに沈黙が訪れるとやがて、それを生み出した令嬢はふっと力を抜く。

リンスはそんな令嬢を受け止め、そして――


「では、参りましょう」


「ええ」


自らの主人を背負うかのようにして、目的地へと進んでいった。







「はっ……はっ……、アルダーさん! 無事か!?」


「ふっ、元は冒険者! これくらいの襲撃……!」


「よう、アルダー! 久々に暴れてやがるな!」


「おう、久々だな。ガルマさん!」


場所は代わって――

王国のあちこちでは、国王の予想通り帝国兵らしきモノたちが各所で暴れていて、戦力の一つであるギルドもそれぞれの場所でその対処にあたっていた。


だが、戦力差によって冒険者のみならず、引退したかつての冒険者も予備兵扱いでその戦いに参加していた。そんな中でその一つの戦場で昔はお互いに切磋琢磨していたアルダーとガルマが再び、戦場を共にしていた。


「ギルド長のあんたがこんな前線まで来ていいのか?」


「俺らも出張らなきゃならないくらい戦力が違うんだ。安心しろ!」


「何がだよ」


「大元を叩きに行ってるのは、あの坊主――Halfassハーファスの連中! 依頼成功率100%の最強冒険者どもだ!」


「そうか! そいつぁ心強いなぁ!」


そして彼らもまた再び、競い合うように戦場を駆け巡るのだった。


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