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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第一章「メイドとお嬢様」
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プロローグ「現実世界での新生活」

うーん。


俺は今、学校内に併設された部活掲示板前で腕を組んでいる。




あれから3日はあっという間に経ち、そしてみんなから遅れること数週間の入学と相成った。そこからは特に珍しいこともなく、前の学校で見た人だったり新しく見る顔ぶれだったりと色々事故とかのことを聞かれたりもしたが、さすがに異世界に行ってたぜ!なんて言いふらせないので、適当にごまかしておいた。


ちなみに、慰謝料として渡されたお金は親父と母さんが喜び勇んで報告してくれて、リフォームをというのでここまで世話になった2人のためにこっちも喜んで承諾した。


……金持ち風だったし、俺も金額にびっくりしたけど。


と、そんなことよりもだ。

俺は今から入る部活で悩んでいた。


それは異世界側での身体能力やら戦闘能力を鍛える場所で手っ取り早く鍛えられる場所を探したいがためだった。

もちろん、退院してから小遣いで買ったバーベルや、スポーツウェアでマラソンも早速始めた。


おかげで体力が――とはならないのが、異世界側でもらったハーフリンカーの力である。体重なども半分になって軽くなったかと思えば、成長力も半分になってるので1週間で伸ばせた体力など微々たるものだったのだ。


力については、考えないようにして眠ればあちら側に行くことはないと理解できたので、あのオーク討伐帰りからずっとあっち側には行っていない。


……時間もだいたい半分くらいしか経ってないみたいだし。

2週間くらいで行ったり来たりできれば、良い感じだろうと思う。


問題は俺の頬がどうなってるかだが。


さて、そんなことよりも部活だ。

と思っても、入りたいところがない。


ちなみに中学生の時は、帰宅部だった。

交差利きでなんでも小器用にこなせたのだが、今の俺じゃそういうのはできそうにないし何より体力がつかないという理由で文化系は選択肢に入ってない。


というわけで、運動系なんだが……。


「特に入りたいとこがないんだよなー。ふむー」


まぁいいかと俺は掲示板前から立ち去ろうとして、校門のほうへ振り返ると何やらきゃーきゃーという声が聞こえたりしてた。

なんだ?と思って校門に向かうと――


そこには、黒い高級車に寄り掛かり、誰かを待っているイケメンが立っていた。

見慣れたイケメンだ。


一応顔見知りなので、声かけてみた。


「あ、あの~……東郷さん?ですよね」


「! あ、君か。びっくりした、そうだよ。半田君」


と、女の子ならキャーといいそうな――実際にきゃ~という声が聞こえる――笑顔で応えてくれた。くそ、イケメンはこれだからと毒づいていると……。


「君を待っていた」


今度は別の意味でのきゃ~が聞こえてきた。

くそ~腐女子め。


そんなこんなで、車で送るよと言われたのでありがたく送ってもらうことにした。


車内は、ふかふかのシートでさすがは高級車という感じの感触だった。

飲み物も用意されていて、運転席にはあの時一緒にいた初老の男性が運転をしていた。


「何か、飲み物でも飲むかい?」


「いや、いいです」


そんな高級そうなもの、烏滸がましすぎる。


「ああ、それから僕たちは同い年だからね。敬語を使う必要はないよ」


といってチラっと見せた彼の制服を見ると、そういえばと思い出した。

ここらへんじゃ珍しい私立の超有名校の制服だ。

その襟には、"Ⅰ"というデザインのされた金具があったので、それが一年生というのを指しているのだろう。


「わ、わかった」


ということで、ため口で接することにした。


「体調のほうはどうだい? あれからどこか不調があるなら、すぐに言ってほしい」


「いや、特には問題ないよ。色々ありがとう」


そう言うと彼は申し訳なさそうに、


「何を言ってるんだい。迷惑をかけたのはこちらのほうだよ? 気にしなくていいさ」


と言ってくれた彼は、心もイケメンかという印象だった。

そんな東郷は再び申し訳なさそうな顔をしながらあることを伝えてきた。


「こういってはなんだが、あれから一週間ほどそっと様子を見させてもらっていたんだ。申し訳ないね。経過を知りたくてさ」


「あ、そうなんだ」


どうやら彼なりに心配してくれたらしいので、本来はストーカーかよってなるがまぁ相手は男だし特に気にせずにそこまで心配してくれてありがたいよと返しておいてくれた。


「君はなんていうか……影が薄いから、なかなか大変だったけどね。でも、元気に毎日走ってたし調子もよさそうだったからよかったよ。そういえば、運動系の部活にでも入るのかい?」


さっき驚かれたけど、やっぱりこっちでの影の薄さは顕在だった。

そして聞かれた質問だが――


「……検討はしてるけど、まだって感じかな。手っ取り早く鍛えられるところがないかと思ってさ。え、えーっと、ほら、またドジって車とかにも轢かれないようにっていうか」


「……そ、そうだね」


あ、しまった。

彼らにとっては、悪いことを言ってしまった。

だがしかし、こうでも言わないと異世界側での能力も上がるからとは言えないしな。


「それならば、もしよければ僕の家にトレーニングジムがあるから自由に使ってくれればいいよ。でも、部活はいいのかい?」


「うん。中学時代も帰宅部だったし……とにかく走って体力とか、筋力とかも鍛えたいなってさ」


「なら丁度いいよ。僕の家にこれから来るかい?」


と言われたので、俺は一にも二にもなく飛びついてお世話になることにした。




「じゃ、また明日。……本当に送らなくていいのかい?」


東郷の家は一言で言えば、宮殿という感じのお宅だった。

世の中にはこういう貴族みたいな家があるんだなというくらいの。

そしてその中も凄まじいし、なんていうかジムというかグラウンドくらいの広さに各種色々な器具が設置されていたのは驚いた。あとは道場なんかもあるそうだ。


そこで走ったり、器具を使ったトレーニングをさせてもらったのだが

なんとスポーツドクターやらトレーニングコーチなどがいて、色々なアドバイスをもらった上で効率的なトレーニングができたのだ。


……いくら被害者とは言っても、ここまでされては逆に申し訳ないというか……。


「ここなら走っても40分くらいだから丁度いい距離だし、走って帰るよ」


「そうかい。帰りは気を付けて帰るんだよ?」


おおう、イケメンのくせにそんな心配そうな顔をしないでくれ。

目覚めそうだ。


「ありがとう。じゃ、今日は本当にありがとう」


そう言って走り出した俺は、気を付けながら仮の家となるリフォーム中の家からすぐのアパートへと帰るのだった。




「ただいま」


「あら、おかえり」


母さんからの挨拶を受け、俺は荷物を降ろして自分の部屋でバスタオルを取り出して風呂に入ることを告げて早速入った。


「瞬介、着替え置いておくわね。……今日も走り込みをしてきたの?」


「いや、それがさ――」


というわけで東郷の家でお世話になったことを話すと、


「そう。彼は心までイケメンね」


「……頼むから親父の前で、それを言ってあげるなよ」


親父はああ見えて繊細なんだから、愛する妻に言われたらショックだろうし。


「ふふふ、大丈夫よ。私が愛しているのは瞬介とあの人なんだから!」


いや、嬉しいけどなぜ先に俺の名前が出るのか。

相変わらず母さんは親ばかというか、そんなような感じである。

今思えば、本当に全転移とか転生しなくて良かったと思えるほどに。


風呂から上がると、ちょうど親父が帰ってきた。


「ただいま、なんだ風呂入ってたのか瞬介」


「おかえり。うん、先にいただいた」


そう言うと、親父も風呂に入るというので夕飯は親父の風呂上りを待って済ますことにした。


飯も済み、自分の部屋でのんびりとしながら今日一日のことを考えた。


まさか東郷がうちの高校で待っているとか、おそらく明日は質問攻めなんだろうなだとか、心からのイケメンだったなとか、学校生活のほうではなく比重としては東郷のことばかりだったけど。


そんなことを考えつつも、あちらの世界の自分のことがふいに気になった。




それがいけなかったんだろう、充実したトレーニング疲れによって異世界のことを考えて眠ってしまったのだった。


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