~時は遡り、プロローグ②~
「魔王様?」
「主様?」
「…どうかなさいましたか?」
最後にメイド、先の発言二つはローブ姿の二人…やはりどう考えても女性…それも結構若い感じがする…。
「……。」
まずは落ち着こう、ボクは…そう、弓曳かなめ…先日誕生日を迎えたばかりの24歳の社会人だ。
…ボクの職業、は……うん?あれ?
…家族、母と父と…いも、うと…うん。妹を含めた4人家族…あとは…
………
……………
「…思い出せない、名前はわかる、家族もわかる、あとは…」
なんだ?まるで必要な知識以外はボヤけてしまっている感じがする…
石の椅子…装飾から判断するに玉座だよな?
ゲームとかで似たようなものは見たことがある感じからしてここは…お城なんだろうな、随分と広いけど…魔王って呼ばれたからにはここは…間違いなく…
「魔王…の城…ボクの城?ボクは…ワタシは…っ」
頭が…痛い…なんだコレ?
知らない事がどんどん浮かび上がってくる…
知っていた事が…だんだんわからなくなってきて…
「主様…?」
「魔王様?いかがなさいましたか…?」
「これは…。すみません、失礼いたします」
近付いてくるローブ姿の女性二人に既視感をかんじる……ボクは、この二人を知っている?初対面なのに?なぜ?
金髪が見え隠れしている方は…
「…シャーリィ、か?無事でなによりだ…我が騎士よ」
え?シャーリィ?誰の事だ?
金髪…シャーリィ?ボクの…いや、ワタシの騎士…って、何でそんな事がわかるんだろう…?
いや、そもそもワタシって…あれ?ボクは…
「「!?」」
「ハッ!星魔将が一柱シャルティリア=フラムベルク、ここに!」
こぼれ落ちるように出てきた名前…いや愛称を耳にした途端ローブ姿の女性が一人、その場に膝を付く
「……!すごい熱です…。転生の副作用かもしれません、シャーリィ!至急、寝具を整えて来てください!用意が出来次第そちらに運びます!
「ハッ!今すぐに!」
…お辛いところすみません魔王様、私とこちらの者の事はわかりますか…?」
メイドの声にシャーリィ…金髪の女騎士が凄まじい速さで駆けていく
って、メイドさんじゃなくて騎士がベッド整えるんかい!?…あ、いかん。しょうもないことすら突っ込んでしまう…
(それは仕方ない…なぜならこのメイドはメイドに見えてメイドではないのだからな)
あ、そうなの…?
って、この声…誰だ?
頭に響いてくるけど…この声、何故か落ち着く…
(おや、声を誉められるのは有り難いな…ありがとう、我が半身よ…辛いところすまないが、この二人の名を呼んでやってくれまいか?)
え…いや、でも…
(我が記憶の一部を使うが良い…だから頼む)
……あとで説明してくれるなら
(よかろう…というか、そもそもそのつもりだから安心するがいい。
さ、もう一頑張り頼む)
…………
「…相変わらずその姿なのだな、久しいな我が娘」
「っ!!」
目の前のメイドが何かを…涙を堪えた顔を見せる
「息災で何よりだ…愛しのリエラ」
「お母様!!」
抱きついてくるメイドの少女が『母』と呼びつつ泣きじゃくる姿を見てもう一人のローブ姿の少女があわてふためいているのが視界に入る
「やれやれ甘えん坊な娘だ……。
シャーリィとリエラが迷惑をかけていないか?久しぶりだな、我が友フェニア」
「…っ主様!」
名を呼ばれピタリと動揺が止まると、リエラ同様抱きついてくるローブ姿の少女
見え隠れする髪の色は真紅、涙で潤んだ瞳は色鮮やかに輝く深緑が特徴の少女
…フェニクス=アルヴィアス。愛称はフェニアか…。なぁ、この子って…
(うむ。カナメの記憶にある不死鳥とほぼ同じであるな…そちらの世界には存在しないようだか…説はあると。不思議なものだ)
…ってことは、あなたはもしかしなくても…この子らが言うところの魔王、様だったり?
(ふふふ…然り、である…が、その話は後にしよう。今は身体を馴染ませねばな…暫し、休むが良いカナメ)
確かにそろそろ限界、かも…
でも…わからない事ばかりなんだから、きちんと説明…してもらわないと…
(うむ、安心するがいい。とにかく今は休め)
……そう、させてもらう、かな…ダルくて眠くて…もう限界かも…
(しばし眠れ…これからのために。今は眠るがいい…カナメよ…)
………うん、そうする…よ
薄れゆく意識のなか、思うのはひとつ
随分とリアルな夢だったなぁ…次はベッドで眼が覚めるとありがたいかも。石の椅子はちょっと勘弁です…お尻痛いし。