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君となら喜んで共犯になるよ  作者: 大木戸 いずみ
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「抜き打ちテストで、満点は一人だけだ~。田原! よく頑張った」


 二限目に一昨日受けたテストが返却される。

 どうして名指しするのだろう。出来るだけ目立ちたくないのに……。

 悪い点数の人の名前を呼ばないのなら、良い点数を取った人の名前も呼ばないで欲しい。「よく頑張った」って公の場で言われるのは嬉しいけど、今のこの状況だと空気としてこのクラスで過ごしていたい。


 世界史の先生、澤崎光一は学校でも人気がある先生だ。この学校ではとても珍しい二十代。

 色白で運動は出来なさそうだけど、元気系の先生だ。明るくて面白いから皆から「光ちゃん」って呼ばれている。

 それに対し「先生をつけろ」と毎度言っているが、誰も付けたことはない。


 私は腰を上げて、テストを貰いに行く。

 一番前の席で良かった。誰とも視線を合わせずにテストを取りに行ける。女子達の圧を背中で感じるが、無視する。

 自意識過剰って思われるかもしれないけど、間違いなくこのクラスの何人かの女子は私のことを物凄い形相で睨んでいるに違いない。それだけは確かだ。


「凄いな~。満点以上だった!」


 先生の盛り上がりとは正反対に、落ち着いた声で「ありがとうございます」と受け取る。

 澤崎先生のテストは記述が多いため、難しいと言われている。いつも平均点は五十点ぐらい。

 点数を取るということは、自分が認められた気持ちになって嬉しい。

 皆の前でこんな風に発表されるのは恥ずかしいけど、満点のテストを返されて思わず頬を緩みそうになる。

「満点の次が八十二点だった。最低点は五点」などと言いながら順番に出席番号順に名前を呼んでテストを返していく。

 荒川が赤井の次にテストを受け取る。チラッとだけ透けて点数が見えた。

 ……やっぱり彼が八十二点なんだ。

「お前はもうちょい頑張れ」と澤崎先生がテストを渡した相手は高橋智花だ。彼女がいじめの主導者。

 茶髪の髪をお団子にして、厚化粧をしている。一重がコンプレックスなのか、大きくアイラインを引いて、ボリュームのあるつけまつ毛を付けている。

 彼女が私の席の横を通ったのと瞬間、私の膝の上に小さく折りたたまれた紙が落ちる。

 ここで「紙落としたよ」と言いたいところだが、彼女はわざと私のところに紙を落とした。誰にもバレないように落とすなんて器用なものだ。

 私はそっと膝の上で紙を開く。太い黒ペンで乱暴に『調子にのんなブス!』と書かれた文字。

 ……もうこれぐらいじゃ少しも傷つかなくなった自分が怖い。

 筆箱から赤ペンを取り出し、文字を付け足す。『調子にのんなブス!って言った方がブス!』

 これでスッキリ。

 心の中で気持ちを静める。

 ふと、斜め後ろから視線を感じる。私はゆっくりと振り向いた。バチッと荒川と目が合う。

 あ、と思わず声が漏れてしまう。

 私はその時、何かが壊れる音が聞こえた。朝のあの瞬間から亀裂はもうすでに入っていたのだ。

 一度起こってしまった変化は次々と連鎖を起こして、大きな変化になる。 

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