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君となら喜んで共犯になるよ  作者: 大木戸 いずみ
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「これからどうする?」


 暫くして、お互い落ち着いてから、兄は口を開いた。

 私はすぐに答えることは出来ず、頭の中で色々なことを考えた。 

 このまま逃げても行く当てもない。かといって、家に帰るわけにもいかない。何が正解なのだろう。

 ……きっと、何を選んでも正解だと思う。

 私は兄の方へと視線を向けて、「家に帰ろっか」と確かな声で言った。

 

 今の私たちは家に帰る以外に方法がない。

 兄のことを大好きな両親は、兄がいなくなれば必ず警察に捜索願を出すに違いない。そうなれば、兄と今ここで一緒に逃げても意味がない。

 私一人ならこのままどこかに逃げていたかもしれないけど、兄を道連れにするわけにはいかない。


「お兄ちゃんも共犯に出来ないよ」


 私は笑ってそう言った。荒川同様、兄にも迷惑をかけたくない。

 この十字架は私一人で背負っていけばいい。それが最善策だ。


「紗英はここにきて俺を突き放すんだな」


 兄はそう言って、寂しそうに笑った。

 彼は私に迷惑をかけて欲しいと思っている。……ただ、私はあまりにも迷惑のかけ方を知らない。

 今までの人生がそうだった。誰かに頼る人生なんて歩んだことがない。

 それが普通だったし、これからもそうやって生きていく。それなのに、兄は何故か私の生き方に無理矢理入ってきて、私の日常を壊していく。

 ……壊された日常を「良いな」と思ってしまう。


「誰かに頼る方法なんて知らない」

 

 兄が何か言い出す前に私は「それに」と付け加えた。


「一人で生きていく方がきっと気楽。お兄ちゃんさえいれば良いって思っているし、お兄ちゃんのことは好きだけど、それでもやっぱりお兄ちゃんは私と一緒にいちゃだめだよ。嫌いかもしれないけど、ちゃんと家族はいるんだし、学校には友達もいるじゃん」

 

 途中から自分が最低なことを言っているな、ということに気付きながらも私は最後まで言い終えた。

 兄は私の発言が気に食わなかったのか、顔を露骨に顰めた。

 まるで私の言うことを全て否定するかのような表情。……まずいことを言ってしまったかもしれない。


「家族は紗英だけで充分だし、あんな俺たちの最低な噂を流すような学校に友達なんていねえよ」


 それは嘘だ、と私は口には出さないが、心の中で呟いた。 

 あの噂を最低だと思った兄の友達は絶対にいるはずだ。サッカー部の友達や、兄の周りにいる男友達はあの噂に対して嫌悪感を抱いた者もいるだろう。

 それぐらい兄は慕われている。兄が友達と話している時の姿を見かけたことは何度かあるが、とても楽しそうだった。

 彼らは兄が腹を割って話せる友人たちだと思う。……私にはそんな相手はいない。

 あ、でも今日は面白い出会いがあったんだった。淳子という兄の元カノ。彼女と話すのは不思議と居心地が良かった。

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