39 覚悟
何も考えずに歩いていると、気付けば、昔よく小学校の帰りに兄と寄り道した公園に足を運んでいた。
……なんでここに来ちゃったんだろう。
少し迷いながらも、公園の中へと歩いていく。
夜の公園なんて不気味だし、危ないことは理解している。けど、今の私には他に行くとこなんてない。
荒川の家に行くことを考えていたはずなのに、どうしてこの公園に来たのか自分でも分かっていない。
誰もいないよね……?
ガラの悪い高校生たちが集まっているのが怖い。
小さな公園は静寂に包まれており、人のいる気配が一切ない。私は安心して、この公園のメインと言える滑り台へと向かった。
ごく普通の滑り台。錆びかけている階段を上る。
上まで来ると、転落を防ぐための柵にもたれてその場に座り込む。……今日はここで寝よう。
「冬じゃなくて良かった」
もし冬なら私は凍え死ぬところだ。
カチカチと今にも消えそうな街灯に照らされているベンチを見つめる。幼い頃、あのベンチの下に兄とタイムカプセルを埋めた。
……今の今まで忘れてた。
何を書いたのか全く思い出せない。ただ小学生ながらに真剣に書いたのは覚えている。
誰もいない時にこっそりと兄と二人で紙の入った瓶を埋めた。……懐かしい。小学三年生の時だっけ?
「まだあるのかな」
誰かに掘られているかもしれない。それでも、まだあってほしいと期待を抱きながら私はベンチの下をぼんやりと眺めていた。
小学三年生の時の私も必死だった。
いつも両親の顔色を窺いながら生きていた。怒鳴られたり、殴られたりするのが怖くて、日々怯えながら生きていたっけ……。
今思えば、異常な光景なのに……。当時は彼らの態度を受け入れていた。
あの時に兄に相談していたら、私は今ここにいなかったのかな。
もう少し明るい未来になっていたのかもしれない。……けど、今更「たられば」のことを考えても意味がない。
「紗英!!」
どこか遠くから兄の声が微かに聞こえた。
……兄が私を探しに来てくれた。
その事実が何よりも嬉しかった。私を心配してくれる家族がいることで心が救われる。
兄のおかげで私は今まで生きてこれたのかもしれない。彼の優しさに私はずっと甘えていた。
「紗英!!」と、私の名前を呼ぶ声がどんどん大きくなっていく。この公園に近付いてきていることが分かる。
どうしよう。兄に会ったらなんて言えばいいのだろう。
あの家にはもう帰らない。その覚悟だけは確固たるものだった。
私は兄と向き合うためにも、重い腰を上げた。




