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兄が私をただの妹として見ていないということを淳子は分かっている。ただ、私の口からそれを肯定するようなことは言えない。
「血、繋がってない?」と彼女はさらに私を探るように見つめる。
どうしてそんなにも私達兄弟のことを知りたいのだろう。もう兄と別れたのならば、興味本位で関わってこないでほしい。
気付けば、随分と辺りは暗くなっていた。月明かりがよく映えている。海は、休むことなく岸に波打っている。
私は彼女を見下ろしながら「関係ないでしょ?」と口角を上げる。
「……訳あり家族ってことか」
「淳子もでしょ?」
「いきなり呼び捨て? 私、一応紗英ちゃんよりも年上だよ」
淳子は少しだけ眉間に皺を寄せて話すが、そこまで嫌がっている様子はなかった。
別にいいけどさ、と彼女は少し口を尖らせながら呟く。私はもう少しだけ淳子と話してもいいと思い、堤防へと腰を下ろす。
淳子は私がここでくつろぎ始めた様子を見て、堤防に背中をつけて海の方を見つめる。
私たちは、夜の海をぼんやりと眺めながら会話をし始めた。
「なんで死にたいの?」
「なんでだろう。なんとなく? 特に理由はないんだよね。ただ。このくだらない世界に飽きちゃった」
「中二病みたい」
淳子はそんな私の言葉にも怒らずに「酷いな~」とどこか楽しそうに明るい声を出す。彼女を見ていると、死にたいと思っている人には見えない。
人は見えないところで色々と問題を抱えているんだな。
あの荒川君も殺したい人がいるって言ってたし……。もしかしたら、私を虐めてる高橋智花も何か抱えているのかもしれない。
「死んだらさ、転生とか出来ないかな? 今流行ってるじゃん、乙女ゲームとかに転生してみたいよね~~」
「私、流行りとか全然分かんないんだよね。……乙女ゲームって何?」
私から出てきた言葉がそんなに衝撃だったのか、淳子は私へと視線を向けて目を大きく見開く。なんなら、口まで開いている。
……え、そんなに驚かれること?
ゲーム機なんて触ったことがない。スマホさえ持ってないし、最近流行りの漫画ですら知らない。それぐらい私は流行に疎い。
乙女ゲームって言うぐらいだから、女の子がするゲームだってことぐらいは予想できる。
しかし、淳子のボーイッシュな見た目からは、彼女が乙女チックなゲームをしているところが想像できない。
「嘘でしょ……。乙女ゲーム知らないの!? 絶対ハマるよ!」
「本当に死のうとしてたのってぐらい元気だね」
声量が大きくなった彼女に思わず、嫌味みたいな言葉を返してしまう。
別に彼女が死んでほしいわけじゃなくて、死と今の陽気さのギャップに驚いただけだ。
淳子は「確かにね~。いや、そんなことより」と話を続けた。
「私のお気に入りの乙女ゲームを聞いてくれる?」
彼女はキラキラと輝かせた目を私に向けていた。




