25 新たな出会い
担任に荒川の家を教えてもらい、放課後、彼の家に寄る。
今日の連絡事項を伝えに行くので、と言ったら簡単に教えてもらえた。こんなにあっさり個人情報が流出されるのかと思いながら、私は先生にお礼を言って、早足で学校を出た。
荒川の家は私の家から二駅先の所にあった。電車通学なんだ、と思いながら私は額に汗を滲ませる。
夕方になり少し涼しいが、それでも二駅分歩くとなると結構体力を使う。
電車に乗りたいけど、残念なことに私にはお金がない。歩くしか出来ない。良い運動になるけど、もしこれを毎日しろと言われるときつい。
そもそも、何故私は荒川の家に向かっているんだろう。暑さで頭が上手く回らない。
昨日のことで罪悪感を多少なりとも抱いているのは事実だけど、こんな律儀に家まで行かなくていい。
……嬉しかったのかな、誰かに心配されたことが。
「お嬢さん、可愛いですね」
横からいきなり声を掛けられる。
「え、私?」と思わず足を止めて、反応してしまう。今までこんな経験がなかったから、どう接するのが正解か分からない。
身なりが整っている背の高い男性が私の隣に立っていた。肥満型ってわけでもないが、少しだけ肉付きが良い体形。加齢臭がするわけでもないし、禿げているわけでもない。
薬指にはしっかりと結婚指輪がはめられていた。
「今、時間あるかな?」
穏やかな口調と胡散臭い笑顔。無視すれば良かった、と後悔の念が押し寄せる。
私が何も言い返せないでいると、男は話を続ける。
「モデルとかって興味ない? 君、絶対売れるよ」
こんな田舎で、そんな夢物語あるわけない。
ないです、とあしらうように答える。良い態度じゃないけど、興味ないことをちゃんと示さないといけない。
「話聞くだけでも! 高校生? 高校生には出せない魅力を感じるよ」
そうやって私を『特別』だと思いこませて、舞い上がらせようとしているのだろう。
……けど、もしかしたら彼は本当かもしれない。私を騙す詐欺師なんかじゃないのかも。
そんな風に希望を見出してしまうのは、私がこの生活から抜け出したいと思っているからだろう、人生を変えることが出来る可能性があるのなら、勝算がない賭けにも乗る。
あまりに冷たい態度を取るのは無礼かなと思い、私は少しだけ男の相手をすることにした。
「契約金とかってかかるんですか?」
「お! 興味あるの? じゃあ、どっかカフェでも入って話す?」
私がまさか乗って来るとは思わなかったのだろう。驚いた表情を浮かべた後、彼はいそいそと鞄から名刺を出して私に差し出した。
「こういう者です」と、私は彼から名刺を受け取る。自分の手が微かに震えているのが分かった。
私、緊張してるんだ、とその時初めて自分の感情に気付く。この一枚の名刺が私の人生を一転させてくれるかもしれないって、心臓の鼓動が速くなる。
「レインボープロダクション、浅井雅人?」
私は名詞に書かれている文字を読み上げる。




