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プロローグ
いつからだろう。自分が主人公じゃないと気付いたのは。
家庭環境も、家族構成も、日々の暮らしも、特別凄いことなんて何も無かった。
共働きの両親の間にうまれ、兄弟を持ち、成績も中の下位で、運動神経も普通。友人がいないわけでも、やんちゃをした訳でも、いい会社のいいポストについたわけでもなく、人様に自慢出来ることのイベントもなく30歳になろうとしていた。
「生きている意味、あるのかな?」
なんの前触れもなしに死にたいと思ってしまった。どうせなら転生とか都合のいいことが起きたりして…
そんなくだらないことを考えながら、発泡酒を開けた瞬間、狭い8畳の部屋が鈍色の光に包まれた。
いつからだろう。自分が主人公じゃないと気付いたのは。