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第1話 グッドモーニング監禁犯

「――ん……」


 ふと、腹の上から胸にかけて重みを感じて目を覚ます。

 ――と、俺の上に美少女が乗っていた。


「――っ!?」


 カーテンの隙間から零れる陽光を反射しながら、初夏の風に揺れる銀糸の髪。それと同じ色をした長い睫毛が胸元にさわさわと触れてくすぐったい。

 少女、というには少し成長し過ぎた胸のやんわりとした感触と、どこからか漂う甘い香り。


 俺の左胸辺りに顔をうずめて、心地よさそうに寝息を立てるこの少女は……


「――誰、だ?」


 そして……


「ここはどこ、だ?」


 見上げた天井は見覚えのない、白い壁。横目で見ると、枕元には可愛らしいくまのぬいぐるみがちょこんと鎮座しているし、シーツも枕カバーも愛らしい薄ピンク……と花模様。

 どう見ても、女子の部屋だ。しかも、俺はそのベッドに仰向けに寝かせられていた。


 身体を起こそうと力を入れると、俺の上に乗っていた少女が目を覚ました。


「ん……んん……」


 眠そうに目を擦ると、俺の胸元に再び顔をうずめる。

 ――二度寝するつもりか?

 少女は態勢を立て直そうとしているのか、俺の脚の間にフィットさせた膝をもぞもぞと動かしている。


(やめろ!くすぐったいし、色々とヤバイ!)


 それに、少女の挙動はその一挙手一投足がどこか艶めかしかった。

 こうして見ると、案外俺と同じ大学生くらいなんだろうか?

 少女が再び俺の上でもぞもぞと身体を動かす。


(あああ!もう!)

「お前!起きろよ!っつか、誰だよ!?」


 たまらず声をあげると、少女はようやく顔を上げた。


「ん……あ。おはよう」

「……おはよう?」


(――じゃねーだろ!?誰だよ!そしてここはどこなんだ!?お前の部屋か!?)

 俺が心の中で百面相をしていると、少女は目を細めて笑った。


「ふふ……朝からキミの顔が見れるなんて、嬉しいな」

「…………」

「わたしのこと、覚えてない?」


 咄嗟に記憶を辿るが、こんな美少女とお知り合いになった上に、そんな好意的な視線を向けられるのは人生で初めてだ。

 だが、もし万が一どこかで会っていたとしたら、忘れてしまったのは申し訳ない。

 俺はおずおずと返事する。


「その……すまない。覚えて、ない……」


 俺の返事に少女はふっと短く笑うと上体を起こした。

 俺を見下ろしたまま、ゆっくりと口を開く。


「じゃあ、自己紹介しないとね。わたしは涼天(りょうてん)咲夜(さくや)。キミと同じ大学の二年生だよ。社会的所属の上ではね」

「へ……じゃあ、タメか?」


 驚く俺に満足そうな笑みを浮かべる咲夜。


「うんうん。そして、今日からキミの同居人だ」

「同居、人……?」

「てゆーか同棲?」

「…………」

「今日からこの、わたしの部屋は!キミとわたし達の愛の巣になるわけだ!」

「…………」


(満面の笑みで何を言ってるんだこいつは……!?)

 どうやら俺はとんでもない奴に捕まったようだ。


「いやいやいや!待てよ!俺達はそんな仲じゃあないだろう!?むしろ俺にとっては初対面だぞ!?ど、どど、同棲なんて、常識的にありえない!」

「……ダメ?」

「きょとんと首を傾げたところで、ダメに決まってるだろ!?嘘も休み休み言え!」


 俺が一喝すると、咲夜はにんまりと微笑んだ。そして、ゆったりと、俺の足元に滑らせるようにして視線を送る。


「――嘘じゃないよ?」

「……?」


 ――俺は、見た。


 咲夜の視線のその先。俺の足首についていたのは……

 ――鎖に繋がれた足枷だった。

こまめに更新を心がけています。

ラブコメを書くのは初めてなので、色んな方の意見をお聞きしたいです。

コメント、評価、レビューや感想をいただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。

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