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第3話 聖女様との関係


「空気……。やっぱりあの人たち、なんだか様子がおかしかったですよね?」


幽霊さんは血がどうのと言っていたけど、確かに血を見てからガラリと様子が変わった。

それに、斬りつけたリュシアンに向かって激昂するならまだしも、なぜいきなり仲間内で殺し合いをするような事態になってしまったんだろう。

いくら考えても分からない。


(違う違う、あいつらの様子がおかしくなった理由はわかってるのよ。アタシが不思議だって言ってるのは、なんでアンタたち二人には効かないのかってこと)


「えっ? どうしておかしくなったか分かってるんですか? どうしてなんですか?」


(そりゃアンタ。アンタの拾った石、あれ、呪いの石なんだもの)


の、呪いの石……?

なにそれ、怖い!


「呪いって、そんな! 私、呪われるようなことしてません!」


(アンタに身に覚えがなくてもさ、はるか遠い昔、とんでもなく酷い目にあった男がいたのよ。その男の念が、あの石に宿ってるってわけ)


「えっ、幽霊さんに昔どんなことがあったんですか?」


たとえどんなことがあったとしても、無関係の私を呪わないでください!


(呪ってるのはアタシじゃないのよ。アタシはまあ、割と最近、間借りし始めたって言うか? 死んだと思ったんだけど、気が付いたらこうなってたのよねー。今はこの石がアタシのおうち)


「やっぱり幽霊……!」


(クッ! その呼び方気に入らないわ! アタシのことは麗しの薔薇とでも、美の大天使とでも、好きなように呼べばいいわよ!)


おそらくサファイアの原石なんだから、薔薇でも大天使でもないことは確かだ。

本人をなるべく刺激しないように、別の名前を考えよう。


「じゃあ、青い幽霊……さん?」


我ながら結構いいのを思い付いたな。


(だから幽霊は止めてって言ってるの! 少し平凡だけど、麗しの薔薇でいいわよ、まったく! それで、なんでアンタたちに呪いが効かないのか、いい加減答えなさい)


薔薇じゃないのに……?

納得できない思いを抱えつつ、いまは質問に答えることを優先することにした。


「えーと、いままで呪われた経験がないので推測になりますが、もしかするとお守りが効いたのかもしれません」


(は? お守り?)



ガサガサガサッ!



続けて説明しようとしたところで、枯れ枝を両腕に抱えたリュシアンが戻って来た。


「何を1人で話してるんですか?」


「それが1人じゃないのよ。さっき川に落ちる前にこの石を拾ったんだけど、これ、呪いの石なんですって」


「呪いの石?」


「これよ」


私はポケットから大きなサファイアの原石を取り出した。

河原では血のような赤い色だったことが嘘のように、いまは綺麗な青い色をしている。


「ずいぶん大きいですね。これはサファイアですか?」


「そうなの。でも、麗しの薔薇と呼ばないと怒られるわよ」


結構ガミガミ口うるさいタイプだから気をつけてね。


「え、誰に怒られるんですか?」


「ーーこの石に間借りしてる幽霊さんよ」


私は思わせぶりに声をひそめてささやいた。

これでちょっとは深刻な状況が伝わるといいんだけど。


「ま、間借り……? ちょっと意味がわかりませんが、話より先に火を起こしましょう」


「ええ、そうね。じゃあ、その間に私は麗しの薔薇と話をしているわ」


「さようで……」


ちょっとリュシアン?

そんな頭がおかしい人を見るような目で見ないでほしい!


(じゃ、続きを話なさい。お守りってどういうことなの?)


「はい。お守りと言っても、ただの気休めのものではなく、我が家の家宝の結界の魔法具のことなんです。私の父の父の母の母の夫の妹が聖女で、その方にいただいたものだそうです」


お守り袋に入れているから便宜上お守りと呼んでいるけど、本当はこの袋に入っている中身が結界の魔法具なのだ。


聖女様に纏わる聖遺物の1つで、値段の付けられないようなものすごく貴重な品でもある。

だから、出来るだけ人目に触れないようにこうしてお守り袋に入れて持っているのだ。


(ちょっと待って……、もう一回言いなさい。ゆっくりよ!)


「わが家の~、家宝の~」


(あんたの父の父、からの部分でいいのよ! 空気読みなさい!)


「私の~、父の~、父の~、母の~、母の~、夫の~、妹が~、聖女様なんです~」


これでいいでしょうか?

まったく、人使いの荒い幽霊さんだ。


(父の父の母の母の夫って、あんたのおじいさんのおじいさんなんじゃないの? もっと分かり易く言いなさい! あんたの父方の高祖父の妹が聖女ってこと?)


「そうとも言うんですか?」


コウソフなんて初めて聞く言葉だ。

よく分からないけど、もうそれで正解ってことでいいと思う。


(自分でも把握しきれてないじゃないの! 聖女から見たらあんたのお父さんは姪っ子の孫ってことよ!)


「ええっ!?」


(ええっ、じゃないのよ。もっと勉強しなさい)


「も、申し訳ありません。既に亡くなっている方ですので、歴史上の人物という感じがして、あまり親戚という実感がないのです」


来年、15歳になったら聖女様の国へ留学することになっているから、長期の休みになったら是非聖地を訪ねてみたいとは思っているけど。

おそらく、遠い親戚を訪ねるというよりは、観光客の1人として観光地を訪ねるようなものになるだろう。


(まあ、会ったこともないんじゃ仕方ないわね)


「父が孫なら、私は聖女様の姪の曾孫なのですね……、なんだか感動します」


(そこまで離れたら赤の他人よね)


そんなことはないと思います!

先祖を辿れば、確かな血の繋がりがあるんですから!


「……ラヴァンダ様が聖女様の姪と言ったほうが早いのでは?」


聖女様と私の関係を説明するのに四苦八苦し終わった後に、横からリュシアンが端的に纏めた。


(ラヴァンダ様って?)


「私のひいおばあちゃまです。ラヴァンダおばあちゃまは聖女様の姪っ子なんですよ。ラヴァンダおばあちゃまが結婚する時に、遠くへ嫁ぐ姪っ子のために聖女様が結界の魔法具を持たせてくださったのです」


話しているうちに、私は聖女様との繋がりが誇らしくなってエヘンと胸を反らした。


説明にラヴァンダおばあちゃまの名前が入っただけで、聖女様と私の関係がより近く感じられるようになった気がする。

最初からこう言えばよかったのだ。


(は!? 生きてるの? いったいいくつなのよ!)


「90歳です。麗しの薔薇がラヴァンダおばあちゃまを呪わないなら紹介してもいいですけど……」


呪いの石なんて迂闊に人に紹介できないから気を使ってしまう。


(私は呪わないわよ! それに、例のあの人も、血さえ見なければ大人しいものなのよ。血を見ると、どうしても昔の記憶が蘇って正気でいられなくなるらしいわ)


「まあ……、お気の毒に……」


どうやら、相当酷いことがあったようだ。

どんな事情があるのだろう?





3話目にして早くもタイトル変更をさせていただきます。

酷いタイトルにもかかわらず、評価・ブックマークをしてくださった皆さま、どうもありがとうございました。

活動報告にお礼SSをアップしましたので、よろしければ時間つぶしにご覧くださいませ。

引き続きよろしくお願いいたします!

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