──*──*──*── 宿泊室
今にも潰れてしまいそうな食堂で夕食の食事を終えたセロとオレは宿泊室に戻っていた。
意外にも魚介料理は何れも美味かった。
数量限定の特製海鮮丼は売り切れで注文は出来なくて残念だったけど、新鮮な魚介を盛り合わせた刺身は絶品だった。
天麩羅も美味しかったし、白身魚を使った土瓶蒸し料理,赤身魚を使った炒め料理,揚げ料理,焼き料理,汁物も御世辞抜きで美味しかった。
何よりオレが驚いたのは、予め調味料みたいなのに漬けられた魚介料理だ。
初めて見る奇抜な料理だった事もあって、口に入れるのに戸惑いもあったんだけど、覚悟を決めて口の中に放り込んで食べてみると、おつまみ感覚で食べれる料理だった。
ライスがあまり美味しくないのが残念でならないんだけど、魚介類に関しては申し分なかった。
お代わりが出来なかったのがオレ的には残念だった。
けれども、明日の朝食も楽しみで仕方無い。
特製海鮮丼は予約しないと駄目なのが判ったから、朝食の時にセロとオレの分を予約しようと思う。
“ 特製 ” って付くから値段はお高いけど、美味い料理を食べるなら、出る金を惜しんだら駄目だよな!
値段が高いのには、其なりの理由が必ずある訳だしさ!
でもなぁ……、こんなに料理が美味い宿屋なのに、今にも倒壊しそうなオンボロなんて勿体無いよな…。
リフォームとか建て直しとか出来たらいいのに…って、すんごく思う。
専門業者に依頼すると、お金が掛かるから出来ないのかなぁ…。
セロに頼んでみてもいいんだけど、肝心のセロは此のホラーチック感が半端ないオンボロ雰囲気を大層気に入っちゃってるから、リフォームとか建て直しとか頼んでも無理っぽい……。
オレに出来る事は、美味しい料理を沢山食べて、沢山のお金を宿屋に落とす事ぐらいなのかな……。
────夕食の話は此ぐらいにしとこうかな!
オレは今、椅子に座っている。
テーブルの上に広げている便箋と睨めっこをしながら文章を書いてるんだ。
オレが書いてるのは伯父さん,マーフィ,ラオインダに宛てた手紙だ。
予想に反して美味かった魚介料理の感動を忘れたくない為に書いてるんだ。
オススメの魚介料理は勿論だけど、魚介の漬け物の事も書いた。
漬け物が日持ちするなら、3人に送りたいくらいだ。
そうそう、ライスの味が残念な事も忘れずに付け加えておかないとな!
美味しいライスと一緒に食べれたら、絶対に食も今よりも進むと思うんだ!
もしかしたら客入りが悪くて、客があまり寄り付かない理由には、ライスの不味さも一役かってるんじゃ…………。
伯父さんに美味しいライスを要求してみよう。
──うん、そうしよう!!
オレの文字は癖の強い汚文字だったけど、甲斐甲斐しいセロの指導のお蔭もあって、癖の強さは完全にではないけども何とか改善している。
未々美文字には遠く及ばないけど、少しずつ、着実に汚文字も読める文字に変わって来てるんだ。
“ 継続は力なり ” って言われてる様に、諦めずに持続してる努力の賜物だと思う。
オレ、頑張れてるよ!!!!
3人宛の手紙を書き終えたら、セロがオレの為に態々作ってくれたオレ専用美文字練習帳を使って、文字の書き方を練習する事になっているんだ!
セロの手作り練習帳からは、オレへのセロの深い愛情が駄々漏れてる!!
セロとオレとの愛の結晶だ!
テーブルを挟んだオレの前には愛しのセロが座っている。
セロもオレと同様に伯父さん,マーフィ,ラオインダ宛に手紙を書いている。
相変わらずのブレない美文字でスラスラと文章を書き続けるセロは、ラオインダ宛の手紙を書いていた。
オレよりも早く伯父さん,マーフィへの手紙は書き終えてるみたいだ。
セロがラオインダ宛の手紙を書き終えた頃には、オレは漸く伯父さん宛の手紙を書き終えて、マーフィ宛の手紙を書き始めた所だった。