俺の幼馴染可愛すぎかッ!?
「寒いねぇ」
温かさなど微塵もない程のからっとした冷たく寒い下校時。
俺はいわゆる選ばれし者なのか、こんなにも可愛く面倒見もいい、成績優秀……完璧的な幼馴染がいて、今現在俺の隣に存在しているわけで。
ドキドキしないほうが可笑しいともいえる。
しかし……そんなもの10年ちょいも一緒に居れば、やはり慣れてしまえるようで、俺は幼馴染のことでは心が揺れなくなってしまっていた。
「まぁそりゃそうだろう。だって12月だもんな」
「え!? もう12月かぁ。そっか今日12月1日だったね」
「そして明日は入試……面倒だ」
「大丈夫だよ!」
「お前も一緒の大学選ばなくてよかったのに。ってか、お前ならもっといい大学いけんだろ?」
「んー……有君と一緒が楽かと思って。えへへ」
痣と可愛い……が、こんなもの俺からすれば毎日の出来事でしかない。さぁラブコメの神様よ! この事態をどうしてくれようか!! こんなにも可愛いのにドキドキ出来ない俺は、どこかおかしいだろうか。
「はぁ、明日は何時に家でるんだっけ?」
「朝の6時だよ。寝坊しないよう迎えに行くからさ」
「いつも来てるだろ。じゃぁ明日な」
「うん! じゃぁね」
その日は復習に励み早めな就寝――。
次に目を覚ましたのは5時15分。
もぞもぞと出たくもない布団から仕方なく出動する。
「あ、やっときたー! ちょっと遅くない?」
「は? 遅刻してないだろ? 今は5時50分だし」
「うん! ……おはよ」
「あ、あぁ……」
彼女は俺をじーっと見つめてくる。
「……おはよ」
「はい、おはよ! じゃ、行こうか。それよりその格好大丈夫? 寒くない?」
「あぁ、まぁ大丈夫だろ」
「ダメだよ! これ巻いて」
彼女は自分の首に巻いていたマフラーを解き俺の首に掛けた。
そして巻き始めたのだ。胸が……近いッ! 近い近い近い! 男なら揉むしかないのか!? いやいや、入試前に何やってんだ。
「できたよ」
「お、おぉ。さ、サンキュー」
「じゃ行こうか」
入試後――。
「どうだった? 出来たかなぁ?」
まぁ彼女はきっと当たり前のように全問正解なんだろう。対して俺はというと……頭を抱えながらのペーパーテスト。
「お前よりかは出来てないから心配するな」
「えぇ出来てないの? 心配だよ。エイッ!」
彼女は自分の両手を俺の頬にピタッとくっつけた。
「冷たいだろう」
「ヒャッ! とか言うと思ったのに……なーんかつまんないよ」
「それよか、そろそろ教えてくれないか」
「何を?」
「何故俺と同じ大学に行くことにしたか。親には反対されてたろ」
「理由かぁ……有君はずるいね」
「何が?」
「知ってるくせに、知らないフリして。知らないくせに、知ってるフリして」
言葉も出ない。
「まぁわからないではないが、確信がないから聞いてみたまでだ」
「曖昧だね。教えてあげよう。私は有君がとっても好きだからです」
「知ってるよ」
「もおぉー! 駅前のケーキ奢ってもらうからね! ……本当に好きなのに」
「え? なんだって?」
「なんでもないよッ。これからもずっと一緒だったらいいね!」
「あぁ、それもまたいいかもな」
根拠はない。
そんな未来も退屈そうではなく、むしろこれまでと同じような未来なら歩めそうだと思った。だから、思ったより幼馴染な彼女と未来を歩んでいくのは、それもまたいいかもしれないと――。