第07話『初陣』
広い駐車場に敵は3体。3機とも同じ形状だ。特徴のない人型の機体。【僕 / 私】から見て一番奥の1体だけ、頭に鬼のような角飾りがある。隊長機か。
「そういえば」【僕 / 私】は肝心なことを忘れていたことに気づいた。「この機体、武器はないの?」
『アームピックだけだよ。あとは、強いて言うならパンチにキックだ』
「これが八百長でないのなら、ラマイカさんはわざわざ蜂の巣にされに来るつもりだったのかな?」
『レディ・ラマイカならアームピックだけで充分さ。それに、武器があったとしてもすぐ側に病院があって、患者達が避難してない状況で銃撃戦になるのはまずいな』
「それはそうだけど……」
『怖いとは思うけど、できるだけ接近戦に持ち込むんだ』
――大丈夫よ、すーちゃん。
「オーダー、アームピック!」
機体を前進させながら、WGの右腕を振る。音声入力に従って下腕部の装甲が展開、手首を起点に拳が回転し、腕部装甲内に収納される。
替わって表に出てきたのは、鋭い金属杭だ。
WGの標準装備の1つ、アームピック。
その先端に運動エネルギーの全てを乗せ、目前の敵機、その顔面に叩きつける。
敵の頭部が弾け飛ぶ。
間髪入れず仰け反る相手の腹を蹴ってジャンプ。【僕 / 私】は大きくとんぼ返りをして、次の獲物の背後に着地する。
敵の動揺が感じられた。
だが、一番呆気にとられていたのは【僕 / 私】自身だ。
それもそのはず、【僕 / 私】がさっきやって見せた動きは一般的なWGのそれではない。いかに卓越した運動神経を持つ吸血人であっても、数トンもする鋼鉄の鎧を着てアクションスターの真似事は無理だ。姉から指示されなければ、【僕 / 私】だって試そうさえ思わなかった。
だが【僕 / 私】は――このWGは実際にやってみせた。それができるポテンシャルを持っているのだ、この『陽光の誉れ』は。
ロルフが夢中になるわけだ。とんでもない機体に乗ってしまった、という高揚感と不安をミックスしたような感情が腹の底でグルグルととぐろを巻く。
――すーちゃん!
姉が急かした。そうだ、まだ戦闘は始まったばかりだ。【僕 / 私】はWGの右腕を金属杭から拳に戻し、目前にいる敵の頭部を両手で鷲掴みにする。
そして力いっぱい、捻った。
鉄骨が折れる音と共に敵の頭部が胴体から外れる。断面からは火花が飛び、冷却液が血のように溢れ出す。
これで相手が人間なら、【僕 / 私】は殺人者の汚名と引き替えに2人の敵を排除できただろう。だけどそうはならなかった。WGは機械で、人間ではないのだ。
頭をもぎ取られた敵は、咄嗟に背後に向かってタックルを繰り出してきた。
避けられなかった。姉の指示は的確だが、【僕 / 私】がそれを実行できるかは別問題である。2機まとめて転倒。敵がのしかかっているおかげで起き上がれない。首だけをもたげた【僕 / 私】の目に、こちらに銃口を向ける敵隊長機が映った。
「仲間もろとも撃つの!?」
轟く発砲音。【僕 / 私】は自分にのしかかる敵を盾にした。だが敵機とこちらの体格はそう変わらない。盾にするには不充分な大きさだ。
カバーしきれなかった肘や肩の装甲が削り取られていく。
「くっ、この……!」
盾にした敵を敵隊長機に向けて蹴り飛ばす。隊長機はそれを受け止めるどころか、邪魔だとばかりに脇へ突き飛ばした。
その隙に【僕 / 私】は機体をバック転させて跳ね起こし、更に後方に跳んで間合いを取った。取ってしまった。
「しまった……!」
危険から離れようとするあまり、『接近戦に持ち込め』というロルフの指示を忘れて自分から距離を開けてしまった。これは姉の指示ではない。完全に【僕 / 私】の失態である。
しかも最悪なことに、背後には病院の建物がある。避けられない。避けるわけにはいかない。
チェックメイトという単語が脳裏に閃く。
どんなに強力な機体が用意され、姉が的確な指示をくれても、実際に動く自分がバカなら意味がない。
だが、幸運にも、敵は撃ってこなかった。銃口を向けはしたが、すぐに引っ込める。代わりに取り出したのは、WG用鎚矛だ。
命拾いをした――。【僕 / 私】は大きく息をつく。
どうやらさっきの連射で敵は弾切れになったらしい。これで接近戦になった。そして1対1。この機体の運動性能なら勝ち目は大いにある。
アームピックを展開。昔時代劇で見た剣豪の果たし合いのように、【僕 / 私】と敵はゆっくりと弧を描くように立ち位置を変える。
病院が背後ではなく右手にくる位置で【僕 / 私】は足を止めた。敵もその場でメイスを構える。
そのまま、しばし【僕 / 私】らは睨み合った。コクピットの外壁に亀裂が入って、そこから漏れる外の光がひどく目障りだ。
……外の光だって?
ラマイカさんの手首が燃える瞬間を【僕 / 私】は思いだした。
相手はこっちを殺しにかかっている。やはりこれは八百長試合なんかじゃなく、本当の殺し合いなのか? だが、だとしたら【僕 / 私】が駆けつけるまで病院が無傷だったのは何故なんだ?
――すーちゃん、前を!
今まさに、敵が地を蹴ったところだった。自分の迂闊さには嫌気がさす。戦闘中に考え事をするなんて。この戦いはパーティでの演武とは違う。勝っても負けても大差ないお遊戯とは違うのだ。伊久那、シスター・ラティーナ、皆の――そして自分の命がかかっているのに!
時間がひどくゆっくり流れているような気がする。メイスを振り上げて走ってくる敵の動きがひどくスローモーだ。相手が踏み出す一歩一歩がしっかり見える。
大丈夫だ、やれる。【僕 / 私】はアームピックを構えた。相手の一撃を紙一重でかわし、土手っ腹に突き刺してやる。
それはひどく簡単なことに思えた。
――すーちゃん! 避けて!
必要ない、やれる――なんて思ったのが間違いだった。まっすぐこっちに走っていた隊長機が大きく右に跳んで【僕 / 私】の視界から消える。
その向こう側にパイルガンを構えた敵の姿を見つけた時、【僕 / 私】は自分の愚かさを知った。
【僕 / 私】ごと味方から蜂の巣にされたあの哀れな敵だって、頭部を失ってもなお向かってきたのだ。だったら、最初に頭を潰したもう1機の敵だって、まだ動けて当たり前だった。
【僕 / 私】は咄嗟に頭部をかばった。メインカメラの前にかざした左腕に金属杭の弾丸が突き刺さる。
――すーちゃん、右!
右後方に回り込んだ隊長機が、すくい上げるようにメイスを閃かせた。【僕 / 私】は後方に跳んで回避。間に合わない。右腕に衝撃。体勢が崩れる。だがこんなところで転んだりすれば、それこそ終わりだ。【僕 / 私】は必死でステップを踏み、なんとか転倒を免れる。それでも並の機体では追撃を受けてやられていた。常識外れの跳躍力を持つこいつだからこそ逃げ切れたのだ。
損害チェック。機体がやや左に傾いている。左腕に刺さった杭の重みでバランスに支障が出ていた。右腕は動かしても反応がない。見れば関節部分のフレームが大きくへしゃげ、破裂した人工筋肉の血管からは血に似た冷却液が零れていた。言うまでもなく、さっきの一撃だ。
冷却水の流出はすぐにせき止められたが、右腕はもう使えない。左腕のアームピックも刺さった杭が邪魔をして展開できない。
「万事休すか……」
そう呟いた【僕 / 私】の唇は、何故か笑みを形作っていた。
その意味に気づいて、愕然とする。
これで勝たなくてすむことに、【僕 / 私】は安心していたのだ。
「なん……で……? いや、そう、か……」
嫌だった。姉の手柄を横取りしてのうのうと生きている自分が。そんな【僕 / 私】が勝利を得るなんて畏れ多い。敗北こそ【僕 / 私】にはお似合いだ。
相手は勝って嬉しい。【僕 / 私】は負けることで罰を与えられたような気になれて嬉しい。これでみんな幸せだ。何がいけない?
これでようやく【僕 / 私】は死ぬ。死という絶対の罰を持って他人の幸福を奪ってきた【僕 / 私】の罪はあがなわれる。でなきゃこれ以上どうしろっていうんだ?
もう充分頑張ったんだ。もう仕方ない。精一杯やった。やっと楽になれる。解放される。【僕 / 私】が死んだ後でみんながどうなろうが知るもんか。【僕 / 私】が許されれば、それでいい。
「――違う!」
正直なところ、自分の『勝ちを譲ってしまう性質』に対しては、それだけ大人だからだ、なんて生意気なことを考えていた。
でも本当は、それよりずっと悪かった。自分が罰を受けられれば他のことはどうでもいいという、独善的で身勝手な理由だったのだ。みんなを助けるためではなく、自分が楽になりたいから戦っていたのだ。
そのエゴイズムには吐き気さえおぼえる。だけどそうやって自分自身を憎む気持ちさえ、【僕 / 私】にとっては自分への罰という快楽の1要素でしかないのだ。
身体が強張っていくのを感じる。さあ、待ちに待った『罰』の到来だ。楽になってしまおう――と心の奥にたまったヘドロのような自分が【僕 / 私】の手足をつかんで離さない。
そして【僕 / 私】は、その誘惑に抗う意志を持たない。
『あきらめるな!』
通信機から響いたその声は、ロルフのものでもなければ姉のものでもなかった。
「まさか……ラマイカさん!? どこに!?」
『ハッチを開けろ!』
【僕 / 私】はそれに従った。背後でもぞもぞと何かが動く。振り向いた【僕 / 私】の鼻先に、焼けただれた手だけがぬるりと伸びてきた。
「ひっ!?」
「……驚くな。私だよ」
「ラマイカさん!?」
人工筋肉をかきわけて、遮光ローブを被ったラマイカさんの首が突き出される。美しい顔にはところどころ醜い火傷ができていた。
「その顔……」
「吸血人がこんな格好で日光の下を全力疾走すれば、こうもなる」
「…………」
「左から来るぞ、ボサッとしてるな、動け!」
「は、はい!」
右にジャンプ。振り下ろされた戦棍が機体をかすめる。
「もっとだ!」
「はい!」
パイルガンの弾丸がさっきまでいた空間を横切っていった。
「そうだ、そのまま動き続けろ。歩みを止めるのは死ぬ時と思え」
言いつけ通り、【僕 / 私】は無茶苦茶に逃げ回る。
「すまないな」ラマイカさんが言った。「本当は私が自分1人でケリをつけるはずだったんだ。渋滞を抜けるのに手間取って、君には二重に迷惑をかけてしまった」
「まさか、それで日の照る中をここまで来たんですか。火傷してまで」
「気にするな、私は傷の治りが早い方なんだ。むしろここに2人でいる方が辛いな。君は日本人だから満員電車には慣れているかもしらんが」
機体が揺れ、おっと、と言いつつラマイカさんが【僕 / 私】にしがみつく。【彼 / 彼女】が【僕 / 私】の腰に回した手は、一面ケロイドにまみれて所々から血を吹き出していた。【彼 / 彼女】の頬を伝う汗は、暑さの所為だけではないだろう。
【彼 / 彼女】を疑ったことを、【僕 / 私】は後悔した。
「……でも左腕のアームピックは使えないし、右腕だってもう……」
「左手の指はまだ動くか?」
「えっと――動きます」
「それなら大丈夫だ。さっさと片付けようじゃないか」
ラマイカさんは背後から【僕 / 私】を強く抱きしめる。残念ながら救命胴衣代わりに身体を挟み込む人工筋肉のおかげで、【彼 / 彼女】の体温や【胸板 / 2つの膨らみ】の感触を背中に感じるとか、そういう甘酸っぱいイベントは発生しなかった。
「――えっ、何を」
がっしりとヘルメットをつかまれ、首を捻られる。戸惑う【僕 / 私】の目に、接近してくるラマイカさんの唇が見えた。
その造型に目を奪われる。心臓が跳ね上がった。反射的に【僕 / 私】は身体を強張らせ、目を閉じた。息を止める。
「ら、ラマ……」
「――オーダー、プラン9!」
機体が勝手に180度回転して、ショックで【僕 / 私】は我に返った。よしここからでも音声は届くな、とラマイカさんが呟く。
「音声……入力ですか?」
「そうだ。私がオーダーを入力したら剣指を作り、手首を胴体側に90度倒せ。――マドラス主任!」
『いいんですね? 機密漏洩でブタ箱は勘弁してもらいたいんですけど』
「全責任は私が負う」
『イエス・マイ・【ロード / レディ】! スモークグレネード発射します!』
ひゅるる、と間抜けな音がした。花火が打ち上げられた直後に聞こえるような、あんな音だ。
だが空中で爆ぜて広がったのは美しい光の花ではなく、日の光を遮るほどの真っ黒い煙だった。
「煙幕……?」
「行くぞカリヴァ君! オーダー! ブラック・ミスト!」
【僕 / 私】は左指で剣指の型を作る。わかりやすく言えば、指を閉じたチョキの形だ。そして手首を傾けた。
WGにおいて、人間の身体を使って操作できないもの――メインカメラのズームだとか、エアコンの調整だとか――や、簡略化したい定型動作には音声による入力が使用されている。
それ以外に、第3世代以降のWGでは指動認証――指を特定の形に動かすことで設定された動きを取らせる――も使われている。たとえば、右の小指を3回曲げたら武器をホルスターから抜く動作を自動で行う、というように。記憶力と判断力次第では、未熟なルーキーでも1動作単位ではベテランパイロットのように動くことが可能だ。
今、ラマイカさんがやろうとしていることはその両方を必要としている。しかも音声入力に至っては【彼 / 彼女】本人でなければならないらしい。だからこそこの人は火達磨になる覚悟でここまで来たのだろう。
それだけ厳重にロックのかかった機能とは、なんだ?
その答えはすぐにわかった。
バシュ、と蒸気が噴き出すような音と共に背後で振動。見れば、肩の後ろについていた箱状のパーツ――最初に見た時はミサイルポッドかと思っていた――の蓋が開いていた。
しかしそこから勢いよく吹き出してきたものは、蒸気でもなければミサイルでもない。
それは、やや紫がかった黒い濁流だった。
一旦後方へと吐き出されたそれは、空中を泳ぐ大蛇のように、Uターンしてこっちに戻ってくる。そして、渦を巻く黒い霧となって【僕 / 私】を追い回す敵隊長機にまとわりついた。
隊長機は半狂乱の態でそれを振り払おうとしたが、水を切ろうとするようなものだ。
もう1体の敵は、どうすることもできずオロオロとしている。
「カリヴァ君、銃を持っている方は失った視覚を隊長機からの指示で補っているらしい。今のうちだ!」
「はい!」
【僕 / 私】は全力でダッシュ。『陽光の誉れ』の運動能力を最大限に活かした跳び蹴りをお見舞いした。衝撃で敵がパイルガンを取り落としたので、左手でそれを拾い上げる。倒れた敵の背中を踏みつけ動きを封じ、関節部を狙って連射。これでようやく敵は完全に無力化できた――はずだ。
「できるじゃないか。腕が使えないとベソをかいてたが」
「……言わないでくださいよ」
『スヴァル!』
ロルフが叫んだ。隊長機は霧を無視することに決めたらしい。斧を振り上げこっちに向かってくる。
「オーダー! デモンアーム!」
ラマイカさんの声に反応し、霧が動きを変えた。敵隊長機から離れ、『陽光の誉れ』の周囲を駆け巡り始める。
メインカメラのすぐ前を横切ったので、【僕 / 私】はそれがなんだったのか知ることができた。
それは無数の、3ミリにも届かない小さな虫の集合体だった。何千何万、いやひょっとすると億すら超えて何兆匹ものそれが『陽光の誉れ』の右腕に殺到する。
そしてできあがったのは、悪魔を思わせる奇怪で醜悪な腕だった。無数の虫が細胞のようにより集まって、まるで生物のような――脈動していた――腕を作り上げている。
WGの腕を操作すれば、悪魔の腕もその通り動いた。指を曲げると、猛禽の爪を持った指がそれに従う。
「カリヴァ君、煙幕が消える前に、早くとどめを!」
『スヴァル!』
――すーちゃん!
向かってくる敵に向かって、【僕 / 私】は右腕を突き出した。
瞬間、手首の部分から腕が伸びた。砲弾のように拳が敵へ向かう。驚きのあまり足を止めた敵の目前で、拳がぱっと裂けた。指を開いたのではない。拳の形をした蛸が擬態を解いたかのようだった。触腕が敵を絡め取り、呑み込む。触腕に挟まれた敵WGの手足が、小枝のようにアッサリとへし折れる。
「や、やめろ!」
呆然と見ていた【僕 / 私】は我に返った。このままでは相手が死んでしまう。正直テロリストなんて死んでもかまわないが、自分自身がその執行者になる覚悟はなかった。
「やめろって!」
だが、悪魔の腕は【僕 / 私】の操作を受け付けない。
なんなんだ、これは――。うっすらと抱いていたこの装備に対する嫌悪感を【僕 / 私】は自覚した。まさかコレは、本当に悪魔の力なのではないだろうか。
その時だった――光が差したのは。
上空を漂っていた煙幕が、全て流れて行ってしまったのだ。陽光に照らされた瞬間、悪魔の腕はたるんだゴムのように力なく地面に落ちた。蒸気を上げながら溶けていく。
後には、四肢をもがれ全身をヒビだらけにした敵隊長機の残骸だけが残された。
「初陣にして3機撃墜。状況を鑑みて悪くないスコアだ、カリヴァ君」
ふう、とラマイカさんが汗を拭う。だいぶマシになったとはいえ、腕にはまだ火傷の痕がくっきりと残っていた。
「まだ、治らないんですね」
「血婚申し込みの時みたいに、ちょっと焦がしたってわけじゃないからな。だがすぐ治る」
それよりすまなかった、とラマイカさんは言った。
【僕 / 私】は首を横に振る。
「謝らないでください。あなたがWGを用意してくれたおかげで、【僕 / 私】も宿舎の皆も、病院にいる人達が助かったんです」
「…………」
「ありがとうございます、ラマイカさん」
【僕 / 私】に【僕 / 私】を許させないでくれて、ありがとう。
ラマイカさんは泣きそうな顔になった。だが感激のあまり、という感じではない。
「どうしたんですか? まさか、他に怪我でも?」
「……違うんだ、カリヴァ君」
「え?」
「私は……そんな言葉をかけられるべき人間ではない」
「えっ……?」
ラマイカさんは俯いて肩を震わせる。【彼 / 彼女】は泣いていた。
軍のWGキャリア数台が病院の敷地に入ってくる。荷台から立ち上がったWG隊がパイルガンを構えて【僕 / 私】を取り囲む。彼等が外部スピーカーで何か呼びかけてくる。そんな中、【僕 / 私】は突然嗚咽し始めたラマイカさんに困惑するばかりで、ただ立ちすくんでいた。