第1話・誕生日
「おめでとう!」
そういいながらやって来る友達達は、皆片手にプレゼントを持ってニコニコ顔でそう言いながら部屋に入って来る。私も笑いながら、
「ありがとう!」
と言って先に来ていた他の友達と部屋の中に迎えた。そして、その友達が最後だったので、みんなでテーブルにある料理を行儀よくいただきますをした後、食べ物におそいかかっ・・・いや、書き表せないような食べ方で食べ始めた。もちろん私も。そして最後にいくつか残ったカラアゲをつまみながらみんなが談笑していると、誰かが、
「そろそろやろう!」
と言いだした。するとみんなも、そうだ!ヤロヤロ!と言い始めた。もちろんやると言うのはプレゼント隠しだ。皆がプレゼントを隠し、その日の主役が見つけるという簡単なゲーム。
「分かったわよ。私はトイレにいるから終わったら呼んでね。・・・二階以外ならどこに隠してもいいから。」
私は苦笑しながらそう言って立ち上がり、部屋を出ると廊下の先にあるトイレに向かった。トイレの中に入ると鍵を閉め、そして左側にある鏡をボケーッと見つめながら今朝の夢の事を考え始めた。
(あの事故現場、私の住んでいる家の近くだったような・・・ならば、そろそろかしら。私の夢は六時間後に起こることを見せるんだから・・。)
「ハァ。」
心の中で思いながらため息をついて、先程よりも鏡をジーッと見た。鏡には、曾祖母譲りだというサファイアみたいな青い目を黒いカラーコンタクトで隠し、肩より少し長いくらいの髪をしている自分の姿が見える。
(当たり前ね。私の姿形がそんな簡単に変わるわけないか。)
そう思いながら、いつしか私は思い出に浸っていった。
『お前、悪魔の子供なんだろ?うわぁーキモチワリィ!近くによるな!』子供の頃、私が近くによるとみんなそう言って私を避けたり虐めたりしていた。理由は目。みんなは私の青い目を忌み嫌った。そしてそのお陰で私は友達も出来なかった。それに先生や親や親戚でさえ、私を毛嫌いしているのが分かった。そして、小学校が終わるまで後1ヶ月、そんなときだった。親が殺されたのは。すぐに犯人も捕まったが、周りからはものすごく白い目で見られた。しばらくの間は、親の保険で食べていけた。元々、家事ができた私は心を閉ざしながら一生懸命生きていった。しかし、そんな生活はすぐに終わった。引き取り先がきまったのだ。そこは、母親と唯一仲良くしている親戚の所だった。母親と仲良くしている親戚の家とはここ。その頃大学を出たばかりだった若いおばさん(今では自分の事は佐智子さんと言いなさいとか言っているけれど。)だった。
カラン
いつの間にか昔の嫌な事を思い出していた私は、水晶玉が落ちたような音を聞いた瞬間ハッとした。そして、手で頬を軽く叩いた。
(いけない。いけない。また昔の事を思い出しちゃった。)
そう私は思い、自分を過去から引き上げた音の方を見た。そこには、思った通り水晶玉が転がっていた。
(・・あれ?この家に水晶玉みたいなものなんてあったかしら・・。)
首をかしげそうっと手を伸ばし、水晶玉を触った瞬間頭の中がグルグル回されるような感覚がして不覚にも私は気絶してしまった。