第一章 創造者
現代。西暦2075年、超大型の地震が発生した。
その地震は日本、そして世界を揺るがした最悪の出来事である。
その地震は別名、「万有素爆発」と呼ばれ、その影響により、人々の中には、「万有素」と呼ばれる要素を持つ人種が現れた。
彼らは特殊な能力を持っており、全ての物を自分が想像、想定、空想、妄想したものを生み出すことができ、その能力のことを「創造性」と呼び、その能力を持つ者達を、「創造者」と呼んでいる。
彼らのクラフト能力は世間では「病気」として扱われており、いつの間にか能力が発現した者は「自然発症者」、人工的に能力を発症させた者を、「人工発症者」と言われている。
そんな中で、この物語の主人公である「橘 逢月」は自分でもまだ気づいていない能力の事を知るのであった···
西暦2095年、8月10日。
私立蒼立学園に通う、橘 逢月は運命に巻き込まれた。
「誰だよ···お前···。」
彼の目の前には同い年くらいの少女。
彼女の冷酷に見える眼差しは、彼を陥れようとしているのか、彼自身には分からないことだった。
「橘 逢月さん。貴方は『能力者』です。」
突然の言葉に俺は唖然として何も言い返すことができなかった。
だが、
「確かに信じ難いことだとは思います。ですが橘さん、貴方はこの運命を受け入れなければならないのです。」
と、彼女が言った。
「いや、そんなこと言われても···信じようにも信じられない!」
「大体なんで俺が能力者だなんて言われなくちゃいけないんだ!」
「あんたはつまり、俺が病気だと言いたいのか?」
俺は必死に否定を続けた。
でも彼女は、
「いいえ、能力は病気ではありません。」
「ただ、世間にそう知らされているだけです。」
「それにこのままでは貴方の能力が暴走する危険性があります。」
暴走?どういうことだ···?
「暴走って、何だよ···?」
彼女は話を続ける。
「能力調査のための機関が極秘に調査をしたところ、貴方が『自然発症者』である事が判明し、能力ランクが危険度Sの能力値であったため、暴走の危険性があると言いました。」
「ですので、貴方にはこれから『箱庭学園』で暮らしていただきます。」
「箱庭学園」···?聞いたことがない名前だ。
「そ、そこで暮らすって···?」
「文字通り、学園内の寮で暮らしていただきます。可能な限り有無を言わさず、学園に来て頂きたいのですが。」
俺は悩んだ。自分が能力者であるならば、周りの皆に迷惑を掛けてしまうかもしれない。
そんな思いが自分にはあった。また、俺は悩んだ。悩んで悩んで悩み続けた結果、俺は···
「わかった。その『箱庭学園』ってとこに入ればいいんだろ。まあ、今の友達には迷惑かけられないしな。」
「だから俺は行くよ。」
少女は「フッ」と笑い、
「そう言ってくれると、思っていました。」
「では正式に橘 逢月。貴方を学園の生徒として迎えます。」
「詳しい話は後日、お話しします。では。」
そう告げると、彼女は歩き始めた。少し進んだ所で振り向き、
「あ、そうでした。名前、言い忘れていましたね。」
「私の名前は『柊 涼香』です。これからよろしくお願いします。」
と、言ってそのまま帰ってしまった。
「『箱庭学園』、か···。」
まだ疑心暗鬼な自分がいた。
「まあ、なんとかなる···かな?」
そして橘 逢月は歩き出す。だが彼はまだその時は知らない。この決断が後に大いなる選択に繋がることを···