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番外編2「シカ狩りをしよう」

 射撃を経験する上で避けて通れない「ガク引き」のお話です。

 初めて銃の創造に成功した日から一年ほど経った秋。

 ディナンス村の作物が頻繁に、何者かによって喰い荒される事件が起きた。


 当初はゴブリンの仕業かに思われたが、その被害状況から恐らく、犯人はシカだろうという結論となった。


 元の世界では愛玩動物としての一面を備えていたシカも、この世界では食糧を喰い漁る害獣でしかない。

 放っておけば食糧不足を招いてしまうので、速やかに始末しなければならない。


「というわけで、私とグリムで捕えることになったの!」


「へえ、お二人とも信頼されているんですねえ」


「……自分がやると言って、アシュリンが聞かなかったんだよ」


 木々の生い茂る森の中を、アシュリンとムラサキと並んで歩く。


 アシュリンがシカの狩猟に立候補した結果、お目付役としてボクが、万が一のサポート役としてムラサキが、狩りへ付いていくことになった。


 親しい三人で行動すれば、ボクらとしても大人たちとしても安心できると判断しての決定だろう。


「せっかく遊びに来てくれてたのに、ムラサキまで危険な仕事に巻き込んでごめんね」


「いえいえ、このような経験は初めてですから、少しワクワクします」


「ただのシカ狩りよ? 悪魔が相手でもないし、全然危険じゃないってば」


 アシュリンが鼻歌交じりに先導する。

 悪魔の出没する森にいるというのに、緊張感の欠片もない。

 まぁボクらはみな(アーチン)級程度なら軽くあしらえるので、当然な気もするけど。


「あっ、そっちからゴブリン飛び出してくるわよ」


 アシュリンが冷静に右手の林を指差した。

 その言葉通り、奥から猿のような姿の悪魔が向かってきている。


 ボクらまでの距離は二〇mといったところか。


「まかせてくれ、ボクが撃退するよ」

 マントの中へ手を突っ込み、頭の中にとある銃器を想像(イメージ)する。


 モデルはSIGザウエルP230。

 角張った部分を削ぎ落した滑らかなフォルムと、手のひら大のコンパクトなサイズが特徴の拳銃だ。


 警察などの公安関係機関向けに開発されたこの銃は、威力が低めで取り回しに優れ、突起部が少ないため衣服に引っ掛かりにくく、咄嗟の時に取り出しやすい。海外では対人制止力(マン・ストッピングパワー)の低さを理由にあまり好まれていないが、日本では適度な威力と扱いやすさから警察やSPに多く採用されている。


 創造の力は周囲から見えないようマントの中で使用すべきだ――と師匠であるキャロルさんに忠告されて以来、ボクはその利便性からP230を愛用するようになっていた。


「SIGザウエルP230――創造(ディコード)

 マントの中で拳銃を一瞬で創造し、右へ向き直ると同時に構えた。


 棍棒を振り上げて迫ってくるゴブリン。


 現在の距離は――約一〇m。


 銃身の照門(リアサイト)により、ゴブリンの額へ照準を合わせ、引き金に指をかける。


「…………」

 一瞬の間の後――ゴブリンを間近まで引きつけてから発砲した。


 狙いが外れ、ゴブリンの左の肩口に命中。


 突進の勢いは弱まらない。


 間髪入れず、更に銃撃を三発お見舞いしていく。


 弾丸はそれぞれ耳、首筋、額に命中し、ボクのすぐ目の前でゴブリンは消滅していった。


「よし……」


「よし、じゃないわよ。結構手こずってたじゃない」


 アシュリンに軽く足を蹴られた。


 返す言葉もない。


 ムラサキがボクの顔を、心配そうに覗き込む。


「以前私の村へ遊びに来た時よりも、銃撃の精度が落ちている気がしますね。どうかしたのですか?」


「うーん……力の反動を意識し過ぎてるのかもしれない」


 以前のボクならば、一〇m以内の的は拳銃でも正確に撃ち抜けた。

 しかし最近では、引き金を引く際に身体が畏縮しまう癖に悩まされ、命中率が目に見えて下がっている。

 身体が銃の反動を覚えたせいで、発砲の際につい力み過ぎてしまう。


 射撃を嗜む人の多くが経験するという悪癖。

 俗に言う『ガク引き』という奴だ。


「ガク引きって、本当にあるものなんだな……」


 話には聞いていたが、実際に悩まされる日が来るなど思いもせず、油断していた。


 あれは初めて料理の手伝いをした時の話。

 包丁で手を切ったせいで台所に近づけなくなったボクへ、祖父は強い口調で言い聞かせてくれた――。


「恐れは全てを台無しにするぞ、自分に自信を持って恐怖に抗うんじゃ。あの天才猟師、独唱(アンクル・ソロ)のリーも、些細な出来事で銃の反動に怯えるようになってな、最後はイノシシから仲間を守るために……」


 祖父から聞いたガク引き関連の話は、一つや二つではない。

 それほどガク引きは厄介なものなのである。


「要はビビってるってことでしょ?」


 アシュリンにズバリ言われた。

 その通りなんだけど、そこまでハッキリ言われると、少しへこむ……。


「その力はアンタの切り札じゃない。魔導士(エクソシスト)になろうってのに、ゴブリンを瞬殺できないようじゃ不安だわ。今のうちに克服しときなさい、ピッグ」


「……善処するよ」


 自信を持って答えられなかった。

 ガク引きは身体の反射的な問題でもある。


 直そうと思って直すのはなかなか難しい。


「私の火でもシカくらい殺せるけど、無駄に苦しませちゃうでしょ? グリムの銃撃でやれるなら一発でサクッとやっちゃいなさいよ」


 そう言うと、アシュリンはまぶたを閉じ、自分の額に指を当てた。


 彼女の得意とする魔力探知(サーチ)だ。

 昔からマナの感知能力に長けていたが、魔導士(エクソシスト)になるための鍛錬を始めたことで、現在では周囲数十m以内の悪魔を探知することが可能なまでに向上している。


「西にはゴブリンがうろついている。野生の動物は悪魔を避けて行動するはずだから、取り敢えず東に進んでみるわ」


 アシュリンが東に向かって進み出す。

 ボクとムラサキはその背中から一歩離れ、後に続いていく。


「アシュリンちゃんの言葉で、あまり落ち込まないであげてください」


 ボクを案じてか、ムラサキがそっと微笑みかけた。


「先ほどの言葉は彼女なりに励まそうとしてのものです。決してグリムくんを傷つけるつもりはないんですよ」


「……だいじょうぶ、アシュリンの性格はよくわかってるさ。彼女が優しく『グリム、だいじょうぶ? 私が慰めてあげてようか……?』なんて言ってきたら、逆に怖いだろ?」


「確かに、それは言えてますね」


 一緒にこっそり笑い合った。

 アシュリンはボクらの話に気付きもせず、きょろきょろ辺りを見回し続ける。


「流石に、普通の動物のマナは弱過ぎて感知できないのよね……足跡でも見つかれば楽なんだけど」


 ――がさがさっ。


 その時、近くで音がした。

 茂みから赤毛のシカが飛び出し、真っ直ぐボクたちへ向かってきた。


「で、出ましたよ、グリムくん!」


「ちょっと待て! デカ過ぎないか、あのシカ!?」


 シカの体長は2m近い。

 その体格に合わせ、角も大剣(クレイモア)のように雄雄しく、威圧感がある。


 あんな角で突かれたら、人間だってひとたまりもない。

 串刺しにされる光景が脳裡をよぎり、思わずゾッとした。


「何を見惚れてるわけ? 悪魔でもない相手に怯んでどうすんのよ」


 アシュリンが杖を取り出して詠唱した。


 杖の先から炎が噴き出し、勢い良くシカの眼前へ。


 魔術に耐性のない動物なら、これで簡単に仕留めることができる。

 ――はずだった。


 だん、と鈍い音が響く。


 シカが高々と跳躍し、魔術ごとボクらの頭上を跳び越えた。


「ウソ……」


 呆然としたボクらを置き去りにしていくシカ。

 目の前で起きた現実を信じられず、その場で立ち尽くしてしまう。

 しばらくして我に返り、みんなで慌てて後を追ってみたものの、既にシカの姿は影も形も見当たらなかった。




 それから徘徊し続けること数時間。

 木漏れ日が赤く染まり始めた頃、ボクらは再び大ジカと巡り合った。

気付かれないよう遠くの木陰から様子を窺う。


 大ジカは木の実を齧っているらしく、その場から動かない。


 時間の猶予から言って、これが最後のチャンスだ。


「本当に大きなシカですね……この森の主でしょうか」


「そうかもね。あの化物ジカなら、村の柵を越えられたのも納得だわ」


 アシュリンとムラサキの横で、ボクは獲物を創造した。


 モデルは豊和M300。

 初めて創造に成功して以来、ずっと愛用している自動小銃だ。

 その銃床を肩に当てて構え、照門(リアサイト)で三〇mほど前方のシカに狙いを合わせる。


 探索の疲労と極度の緊張から、照準がなかなか安定しない。


 ――だいじょうぶ、この距離ならスコープがなくても当てられるはずだ。


 心の中で懸命に自分へ言い聞かせた。


 不安というのは厄介なもので、落ち着くように意識すればするほど余計に焦りが募り、どうにもならなくなる。ガク引きに悩まされ、自信を失いかけている時だと、それは尚更だった。


 引き金がまるで錆びついているみたいに固い。


 いくら引こうとしてもびくともしない


 この状態で無理に引き金を引けば、先ほどのように狙いがズレてしまう。


 思考に余計な考えばかり渦巻いて、どうにも止まらなくなっていく。


 ――クソ、照準器(スコープ)の創造を練習しておくんだったな。これで外したらどうしよう。じいちゃんはガク引きを直すにはどうすべきだと言っていたっけ。いや今考えたところでどうにもならない。集中しろ、狙撃に集中するんだ。集中、集中、集中――。


「落ち着いてください、グリムくん」


 ムラサキがボクに向けて回復の呪文を唱えた。


 霧状のマナが身体を包み、疲れを癒していく。

 銃を支えるのが楽になると共に、筋肉の緊張が緩和されていった。


「弾が外れた場合は、私とアシュリンちゃんで何とかします。練習の一環だと思って、気を楽にしてください」


「まぁこの辺りを一面火の海にすれば、あのシカも焼け死ぬでしょ」


 アシュリンの言葉に、呆れてツッコミを入れる。


「いや、それ危険過ぎるから。そんなことボクが許さないから」


「そうそう、その調子。そんな感じで気楽にやっちゃいなさい。どうせ二日三日で直るような癖じゃないんだから、失敗する前提でやればいいのよ」


 アシュリンが背伸びして、いつも自分がされているように、ボクの頭を撫でた。


 実年齢はずっと年下の女の子に慰められたことが気恥ずかしくて、思わず顔を逸らしてしまう。

 ムラサキが笑顔で、その様子を見つめていた。


「ありがとう、二人とも……やれるだけやってみるよ」


 先ほどのような焦燥はもう感じない。


 呼吸が落ち着き、手の震えも消えた。


 ボクは改めて銃を構え、銃口をシカに向ける。



 照準をゆっくり、正確に、シカの頭へ――。



 その刹那、シカと目が合った。


「くっ……!」

 咄嗟に引き金を引く。


 けたたましい銃声と共にシカが駆け出す。


 倒れる様子は一向にない。

 筋肉が畏縮(フリンチ)して狙いがズレてしまったのだ。


「くっ、こうなったら爆発(エクスプロージョン)で」


「だいじょうぶだ、ボクにまかせてくれ!」

 杖を構えたアシュリンを制止し、銃口の向きをズラした。


 かなりの巨体なので、木々の間にシカの姿がよく見える。


 まだ十分に射程範囲内だ。

 すかさずシカの進行方向に向けて、銃弾を放った。


 どうせこの状況では、落ち着いて狙いを定める暇はない。


 まるで、初めて銃の創造に成功したあの日のようだ。


 ――自分の銃で目の前の獲物を仕留めたい。


 その烈々たる衝動にまかせ、がむしゃらに銃撃を続けた。



 全ての弾薬を撃ち終えた時、シカは地面に倒れ込んで、びくびくと痙攣を始めていた。



        ◆



 祖父は昔こう言っていた。


「初心者の猟師ってのは、照準が合ったり獲物が動いたりした時、慌てて引き金を引くんだよ。だから力んで狙いが外れちまう。山ほど経験を積んで、いつも落ち着いて引き金を引けるようになって、ようやく一人前じゃ」


 ――平常心で射撃を行えるようになって初めて一人前。

 その言葉の正しさは、銃弾がシカの脳天へ命中していたことが証明している。


 立ち止まっている状態より、走り出してからの方が上手く狙撃できた。

 それは無我夢中で、余計なことを考えずに撃てたからだろう。


 ボクはまだ銃を撃ち始めて一年足らずの初心者。


 発砲に緊張を伴って当たり前、当たらなくて当たり前。


 今最も必要なのは、もっと銃撃の経験を積み重ね、いつでも平常心で引き金を引けるようになることだ。


 もっと多くのことを経験しなければならない。

 まだまだ、一人前の銃使いへの道は長そうである……。

 

「ム、ムラサキ……アンタ、よく平然とその死骸を運べるわね」


「ふふっ、私もグリムくんに習って魔力強化(エンチャント)を覚えましたから、これくらいの重さなら平気ですよ」


「い、いや、そういうことじゃなくて……」


 アシュリンがボクらから目を逸らす。


 いや正確には、ボクらの運ぶモノから、だ。


 ボクとムラサキは魔力強化(エンチャント)を利用して、射殺したシカの死骸を運んでいた。


 シカは銃撃を額に喰らって、それはもう凄いことになっている。

 衝撃で頭蓋骨が砕け、圧力で眼球が外に飛び出し、下手なスプラッタ映画顔負けのグロテスクな状態だ。


 ボクも一目見た時は軽く悲鳴をあげた。


 平然としていられたのはムラサキだけ。


 曰く「医者志望がこれくらいで怯むわけにはいきません」とのことで、慣れた手つきでシカの血抜きを行う親友の度胸に、ボクとアシュリンは驚嘆するばかりだった。


 そして森の中を進むこと数十分、何とか日が沈む前に村へ到着。


 ボクらは村中の人々から賞賛を持って迎えられた。

 シカの大きさに驚きの声があがり、アシュリンは先ほどまでの消沈ぶりはどこへやら、自分の武勇を色々と誇張して語り始めた。ボクとムラサキはそんな彼女の話に、苦笑しながら耳を傾けた。


「よし、今晩は村のみんなでシカの肉を味わうぞ!」

 アーティスさんがそう宣言すると、村人たちから歓声があがった。


 さっそくシカを捌くための準備が始められていく。


 シカの肉なんて滅多には食べられない。


 思わず心躍り、三人でハイタッチをしていると――


「どうした? 三人とも、早く解体の準備を始めなさい」


 何故かアーティスさんから声をかけられた。


 呆然とするボクらにアーティスさんは、


「獲物の処理は、獲物を仕留めた人たちが中心となって行うべきだろう?」

と言って、大きなナイフを手渡した。


 言われた意味がわからず、硬直してしまう。

 まさか、ボクたちで、シカを捌けって言うのか……?


「つまり、自分の好みで肉を捌けるということですね。どうせならば、私たちで一番美味しいところを頂いてしまいましょう」


 ムラサキが無邪気に告げた。

 手に持つナイフに、青ざめたボクの顔が映り込んでいる。

 アシュリンは空腹の金魚みたいに口をパクパクさせ、茫然自失している。


 先ほどのスプラッタ状態でもグロッキーだったというのに、シカの腹を捌いたり、内臓を取り出したり、肉を切り分けたりすれば、卒倒してしまうことは確実。


 そんなの、死んだってお断りだ!


「何だって最初は怖いものさ」

 ボクの心情を見抜き、アーティスさんが諭すように語る。


「恐怖に負けてはいけない。魔術でも肉の解体でも、経験してみなければわからないことがたくさんある。勇気を出して挑戦してみるんだ、ピルグリムくん」


「ア、アーティスさん……」

 ハッとして、ナイフの柄を強く握り締める。


 ボクがバカだった。

 つい先ほど、自分には経験が足りないと気付いたばかりではないか。


 肉の解体に怯えているようでは、一人前の銃使いになれるわけがない。


 恐怖を克服したいなら、経験を通じて慣れるしかないのだ。


「やろう、アシュリン」

 アシュリンの震える手を握り、堂々と決心する。


「肉でも皮でも内臓でも、ボクらで解体してみせるさ!」

「グ……グリムがやるなら……私も。私もやる!」




 解体は村の中央の広場で、専用の台を使用して行われる。

 子どもによる動物の解体は珍しいので、周囲には大勢の観客が集まり、終始笑顔でボクらの様子を見守っていた。


 だが別に、シカの解体される様が面白くて笑っていたわけではない。


 観客を笑顔にした要因は別にある――。


「まずは内臓を取り出しましょう。アシュリンちゃん、シカのお腹にゆっくりナイフを刺してください」


「え!? ちょ、わ、私ぃ!? こ……こう?」


「あっ! ダメです! そんなに思い切り刺したら、内臓が――」


「にゃにゃにゃーーー!? 血が!? 血がどどどどろろろってぇ!?」


「アシュリン、落ち着け! 肉を裂いたら血が出るのは当たり前だ!」


「次は肋骨を開きましょう。こうやって、刃をぐぐっと」


 ぐちゅぽっ。


「いやぁーーーーっ!? 何か取れた!? 何か取れたァーーー!?」


「ア、アシュリン、落ち着け……こ、こんなことでうろたえていたら魔導士(エクソシスト)には……」


「よし、これで内臓が全部取り出せますよ」


 ぼろろんっ。


「ぎゃああああああああ!? 大盛りで出たあああああああ!?」


「ア、アンタだってうろたえてるじゃない! わ、わ、私はもう慣れたんだから! ムラサキ、次は何をしたら良いの!?」


「内臓のこの、びろーんと伸びた部分の先を切り取って頂けますか?」


「ここね……こんなの私にかかれば、余裕、なんだから……で、でも変な部分ね、これ。一体どこの部位なの?」


「肛門です。バイ菌が多くて危ないので、腸ごと切り取るのが普通なんですよ」


「こ、ここここ、肛も――」


 ばたり。


「アシュリーーーン!?」


 

 このような感じで、ボクらの初めての解体は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


 結局ボクとアシュリンは泣き叫ぶばかりで、終始ムラサキに頼りきりとなり、もはや一種の喜劇として村人の笑いを誘った。 


 銃撃よりも、悪魔よりも、肉の解体の方がずっとずっと恐ろしい。


 きっとこれからは、銃撃に恐れを抱くことも少なくなるだろう。


 ――何かに慣れたいのならば、その何かよりもずっと強烈な経験をすると良いのかもしれない。

 思わぬ教訓を得たボクは、明日からより一層、魔術の鍛錬に励むことを誓うのだった。

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