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途中、少々の問題こそあったものの無事に街が見えてきた。さて、ここで少しこの世界について語るとしたものだろう。
----この世界はどうやら広大な一つの島を五つの種族がそれぞれに領地を決めて治めているらしい。島の中央には不可侵となっている堅牢な山脈があり通称《霊峰》と呼ばれている様子。
五つの種族はその中でも細かく分類できるようなのだが大きく分けると人間種族、森人種族、獣人種族、竜人種族、妖人種族----に分類される。
自分たちのいる領地は森人領地。主に住まうのはエルフであり、自分達ヒューマンと比べて魔法適性が極めて高い。ロッジのある森は人間領地にほど近い場所柄、あまりエルフですら近寄らない場所でもある。
(だからこそ、さっき見た人影は何だったのかってことになるんだが…)
これから向かうのは森人領地の中でも辺境にあたる。が、そこそこ大きな主要街の一つに数えられる。
「おっ?」
「見えてきましたね」
見えてきたのは堅牢な塀で囲まれる街の外側。街道から見えるのはそこに繋がる大きな門。街内部に繋がるいくつかの主要門の一つ。そこを守るように佇むのは二人の槍を携えた兵士の姿。
「止まれっ!」
「何用だ!」
「いつも通りの薬の納品を兼ねた買い物に」
「むっ、シズクか。毎度ではあるがごくろうさまだ」
1人の厳つい兵士はシズクをよく知っているのか、厳しい顔つきから相好を崩して笑いかけてきた。その視線が隣にいたユイに移ると、驚いたように目を見開いていた。
「ユ、ユイ嬢がお供とは珍しい…。あの時以来、か…」
「お、お久しぶり、です…」
「う、うむっ。こんなことを我々のようなものが言うのもおかしな話だとは思うが…。ユイ嬢、これからは街に顔を出すようになってくだされ」
「善処、します…」
「御二人方、入門の許可がおりました。どうぞ、お入りください」
その言葉とともに門がゆっくりと内側へと開いていく。道を開けるように敬礼する兵士に軽く会釈すると、ユイを連れ立って街の中へと歩き出した。
門が閉まり、再び静寂の訪れた門の前で2人の兵士は小さく息をついていた。
「まさか、ユイ嬢が街を訪れるようになるとは…」
「あの、彼らはヒューマン、ですよね?どうしてこちらの領地にまで来たのでしょうか?」
「うん?あぁ、お前は最近に兵科を卒業したばかりか」
厳つい兵士はまだ青さの抜けない新人兵士に対して頷きながらも先ほどここを通って行った二人の背中を幻視するように門を見上げる。
「彼らは元はこの街の住人であり、あの子たちの両親は俺の上司でもあった」
「なんと…。----ん?では、なぜ今は街の外に住んでおられるので?」
「それはな----」
その先に続いた言葉に、新人兵士は驚愕するしかなかった----
「あの子達が《混ざり者》で、隊長でもあった父親がエルフの先祖返りをしていたヒューマンだったのさ----」