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街へと向かう街道を駆けながら街の方角を見上げるが、見えるのはほとんどが黒煙で何が起きているのかはわからない。それでも、今はただ街へ向けて走るしかない。
(いったい何が起きてるっていうんだ…!!)
近づくにつれて森を煌々と照らす炎と押し寄せる熱波に顔が歪む。ようやく見えてきた城壁はしかし、爆撃でも受けたのか、半ば崩壊しており門に至っては融解してあってどこまでが門だったのかわからないほどの破壊が行われていた。
「シャレに、なってねーだろ。いくらなんでも…」
「お兄様、どうしますか…?」
想像以上の破壊の爪痕に足がすくんだ。だが、少なくともクロウの安否がはっきりしないことには危険を冒してここまで来た意味がない。
「…俺のそばを離れるなよ、ユイ」
「はい、お兄様」
崩壊した門の瓦礫を乗り越えて街へと足を踏み入れる。轟々と焼け落ちる街並みの中を2人で駆けてクロウの営む宿屋まで進む。
ようやく見えた宿屋もやはりというか燃えていた。だが、2人の視線は燃える宿屋よりもそのそばで宿屋を見上げる1人の男を捉えていた。
「クロウさん!」
「っ!シズク、それに嬢ちゃんまで!何しに来やがった!」
「そんなことどうでもいいだろっ!あんたはなんで避難してないんだよ!?」
「うるせーっ!最低限持ち出さねーとまずい物を荷造りしてただけだ!」
「怪我はありませんか?」
「そこは大丈夫だ。鍛え方が違うからな!」
力こぶを見せて快活に笑うクロウに思わず脱力しそうになりながら―――
「だったら、とっとと避難するぞ。街中に火の手が回ってるからここにいるのは危険だ」
「そうだな。じゃあ、先導頼めっか?」
「あぁ。ちゃんとついて来いよ!」
燃え盛る街を駆け抜ける。ほとんどの家屋は燃え落ちており、住んでいるはずの人々の姿は見えない。
「避難は早かったのか…?」
「いや…。街のやつのほとんどは城に避難してったはずだ」
「は?城に避難?」
「おうよ。なんか、おかしなこと言ったかよ?」
「そんなことあるわけないだろっ!だって、一番火勢が強いのは―――」
駆け抜けた広場の先―――街のシンボルでもある城は、黒煙を吐き出しあちこちから火の手が上がっている。避難先にするには地獄としか形容できない有様だ。
「マジか…」
「城主は逃げたんだろうな…?」
「民をほったらかして、か?さすがにねーと思うぞ…」
「―――」
「…お兄様?」
城を見て思い出されるのは一つの記憶。生きているのか、いや…この有様では生きている可能性はほぼ0だろう。それでも―――放置するわけにはいかないやつが城にはいる。
「悪い…。自殺行為なのはわかってるさ」
「なにをぶつくさ言ってやがる?」
「それでも――!」
「お兄様?!」
燃え盛る城に向けて背負っていた荷物を放り出しながら走り出す。放っておけない1人のために―――
「ユイ、クロウ!2人は安全なところまで避難しててくれ!俺は、姫さんだけでも拾ってくる!」
「お兄様!」
「死ぬんじゃねーぞ、シズク!」
背中にかけられた声に腕を振り上げて答えると燃え盛る城へと踏み込んだ―――




