page.01
----人というものは眠りにつくことで夢を見ることができる。
【夢】というものにはいろいろな定説というものが存在するのだが、一説によれば人がその日に見聞きした情報の取捨選択を脳が行う過程で見る記憶の追体験だというものがある。
もちろん、あくまでもこの一説は例として使わせてもらったにすぎない。まぁ、何が言いたいかというとだ…
「お兄様、朝になったのでいい加減起きてくれませんか?」
先ほど夜が来て一高校生たる自分、神峰雫はスマホを弄るのもそこそこに布団に潜り込んで眠りについたはずだ。だが、今目の前に広がる風景は寝る前に見ていた自分の部屋とは似ても似つかない。
「お兄様、どうかしましたか?」
先ほど俺を揺り起こした少女が部屋の入口からこちらを覗き込んでいた。
「…いや、大丈夫だ。少し寝ぼけてるだけだよ、ユイ」
「ならいいのですが…。そろそろ起きないと仕事に間に合わなくなりますよ」
そう言って入口の前から少女は姿を消した。いや、廊下の向こうへと歩いて行ったのだろう。
----さて、ここで冒頭の夢についての一説から考えて今見ているものは夢であるはずだ。夢でなければ困る。
何がどうなれば数分前の日常とは180度違った生活様式にしか見えない部屋とベット、素性すら知らないはずの少女を妹と認識し、あまつさえ頭の中に浮かぶ知らないはずの記憶を思い出せてしまうのだろうか…。
----これは、なんの前触れもなく起きた【夢】を舞台に起きる、摩訶不思議な物語の始まり…