49話 セッションっていいな
「あ〜ちゃ〜ん。会いたかったよぉ〜。寂しかったよぉ〜。日向くん。今度あたしからあ〜ちゃんを奪ったらメッ!!だからね?」
わたしが玄関先の小さな門を開けて玄関に向かおうとするとひーちゃんが待ちきれなかったといった感じでわたしに抱きついてきて日向にそう文句を垂れた。
「え、あ…うん。ゴメンゴメン。」
勢いに流された日向はそのままひーちゃんに頭を下げた。
「まったくぅ。日向くんはいつでもあ〜ちゃんを満喫できるでしょぉ?」
「ひーちゃんっ。ちゃんと帰ってきたからゆるしてって。色々相談したいって言ったのはわたしなんだから。」
「あ〜ちゃんがそう言うなら…」
「ひーちゃーん?あんまり外に出てるとまた騒ぎになるわよー?」
そんなやりとりをしていたら雪ねぇが出てきてそう言った。
それもそうだ…それに日向と一緒にいるところなんてパパラッチでもされたら…うん。早く家の中に入ろう。
「じゃあまたね、日向!」
「おう。とりあえずは明後日だな。」
日向はそう言うとじゃ、って感じで右手を上げてわたしと歩いてきた方向へ帰っていった。
「ちゃんと時間に帰ってくるとは思ってなかったから嬉しいよぉ〜!!」
家の中に入ってもべったりなひーちゃん。
あれ?ひーちゃんってこんなに甘えん坊だったかなぁ…
「昔は今みたいにスキンシップできなかったからあ〜ちゃんになってくれて嬉しいところだなぁ〜。」
あ、そう言うことか。昔は一応にも男女だったからひーちゃんも自重してたところはあるのか…
まあ、それでもよく抱きついてきてたしなでなでをせがんだりわたしの横にぴったり座ったりブラコン全開ではあったけど…
「ぐぬぬ…今日ばっかりはひーちゃんに譲ってあげるけど本来そこは私の席なんだからねっ!!」
あー出ちゃったよ…雪ねぇの変態モード…
こうなったら正直キモいよ…
目がイッちゃってるもん…
「別に雪ねぇの席とかじゃないから。」
「あー、ツンケンしてるあーちゃんも可愛い!可愛い!!可愛い!!!」
「あ、お姉ちゃんが壊れた…」
ひーちゃんも大いに引きまくっている。…
まあ、そりゃこんな姉の姿引くに決まってる…
「こうなったら止められないからしばらく放っておくしかないよ…。」
「そ、そうだね、」
「あ!そういえばさっきお姉ちゃんが外は出られなくてもっていってロピシアで紅茶買って来てくれたから後で飲もうよ!!」
「いいね!じゃあ、午後はまったりお茶しながらおしゃべりだね〜。」
「久々地下で楽器鳴らしてみるのもありかなって思ってたんだけど…」
復活した雪ねぇがいきなりそんな事を言い出した。
確かに昨日そんな話はしていたけど…
わざわざ地下に降りてまでするぅ?
せっかくひーちゃんとおしゃべりするチャンスだしロピシアの紅茶もあるのに…
「いいねぇ!あたしももうプロなんだから二人にも負けないよぉ〜?」
「久々に家族でセッションとかもいいかもね!」
「そうしたらお父さん呼んで来なくっちゃだね!」
「叩き起こして来なきゃ!」
わたしが関与する暇もなく家族セッションをする事が決まってしまって雪ねぇなんて勢いのまま出ていってお父さんの部屋に向かってしまった。
「あれ、あ〜ちゃんなんか不満そう?」
「普通にお茶しておしゃべりしたかったなぁ〜って」
「お父さんも集まる事なんてなかなかないんだしそれにお父さんとせっかく仲直りしたんだしさ」
「わかってるよ。この流れが止められないのもお父さんとセッションするチャンスなんからなかなかないってのは…わたし部屋から機材をおろしてくるね。」
そう言ってわたしも機材を取りに部屋に戻る事にした。
「あ〜ちゃんも結局楽しみなんじゃん。あーちゃんがあんな風に不敵に笑ったの初めて見たよ…」
いけないいけない…ニヤケが止まらないよ…
雪ねぇとやるのだって久々なんだしワクワクが止まんない…
わたしは部屋に上がるまでの間ニヤケを堪えてる事に必死だった…
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「お前ら元気だよなぁ〜。ふあ〜ぁ…
もうちょっと寝させてくれよなぁ…ふぁ〜あ…」
わたしが機材を地下におろして戻ってくるとリビングではずり落ちたズボンでヨレヨレのスウェットに手を入れてお腹をぽりぽり書きながら文句を言うお父さんの姿があった。
「ほぉら!せっかく全員揃ってるんだからちゃんとセッションとかしようよぉ〜!」
「そうよ!お父さんこれくらいの家族サービスはしてもいいでしょ?」
「そうだそうだ〜。」
ひーちゃんと雪ねぇに相槌を打つかのようわたしもそう追い討ちをかける。
「しっかたねぇなぁ…着替えてくるから昼メシの準備でもしておいてくれよ。」
「はーい。さすがお父さんね。話が早いわ。」
「お父さんちゃんと顔洗わないと眠気取れないからね?ちゃんと顔洗うんだよぉ?」
「じゃあお昼何にしよっかなぁ♪」
娘3人からの集中放火を浴びたお父さんは仕方なさそうにぽりぽり頭を書きながらリビングを出て行った。
わたしはと言うとお父さんにお昼と言われて初めてお昼がまだな事に気がついてお昼を何にするかに頭が行ってしまっている。
「あ!久しぶりにあ〜ちゃんの作ったサンドウィッチ食べたいなぁ〜ねぇ!!作ってよ!!」
わたしが何を作ろうか思案しているとひーちゃんがそんな事を言い出してそういえばひーちゃんはわたしが作ったサンドウィッチが好きだったなぁなんて思い出した。
「いいんじゃない?私も久しぶりにあーちゃんのサンドウィッチ食べたいなぁ…」
あー。雪ねぇまでそんなことを言い出したらお昼はサンドウィッチにするしかないじゃないか…
「はいはい。じゃあ今日はサンドウィッチにしよっか。って材料あったかなぁ…」
そんな風に言いながら冷蔵庫を漁るけど内心久々だし材料を買いに行ってでも作ろっかななんて思ってしまった。
「うーむ…生ハムが足りないなぁ…
最近そういうのつくってなかったからなぁ…」
「じゃあ私買ってくるわね?あとなんか欲しいのある〜?」
対面式のキッチンの向こうから雪ねぇがそんなことを言ってきた。
「うーん。特にないかなぁ。」
「あ!わたし豆乳飲みたいから買ってきて〜。」
「さすがアイドルね。じゃあぱっぱと買ってくるわね。」
「「行ってらっしゃーい」」
二人でそう言って雪ねぇを送り出すとおもむろにひーちゃんはキッチンの中に入ってきてわたしが下ごしらえとかしてるのをふむふむとか言いながらジロジロ見てくる。
「ねぇ、ひーちゃん。どうせだから作り方教えてあげよっか。」
「いいの!?」
わたしがそう声をかけるとひーちゃんは目をキラキラさせながらそう答えた。
「おかーさんから受け継いだレシピな訳だしわたしだけが享受するのもあれかなって。」
「でもこうやって作ってくれてるわけだしあたしはそれだけで嬉しいけどね〜。」
「そうは言っても覚える気満々だったじゃん。」
「あははっ。ばれちゃった?」
「じゃあ、そろそろゆで卵が出来上がるからぁ…
ボウルとマヨネーズと塩胡椒用意しておいて?」
「はぁい、先生!」
そんな感じでわたしはひーちゃんに手順とかを教えてあげながら生ハムが必要なやつ以外のサンドウィッチを作ってしまう。
どうせ雪ねぇも遠くまで買いに行ったりはしないだろうし生ハムのサンドウィッチもあとは生ハムを乗せて挟むだけの状態にしておいた。
「たっだいまぁ!あ、もうだいぶ出来てるのね。」
「おかえり〜。お姉ちゃん早かったね。」
「あー!!ひーちゃんずるいぃ!!
あ〜ちゃんと一緒に作るなんてっ…」
そう言って雪ねぇはキッチンに駆け込んできた。
「ちょっ!!お姉ちゃん狭いって!!」
「賑やかにやってるなぁ。お、今日はサンドウィッチか。いいねぇ。お父さんもサンドウィッチ大好きだぞ?」
そう言ってお父さんが対面式の部分から覗き込んできた…
顔近いって…ってお父さんってこうやって見るとまだまだイケメンだしなんだかいい匂いも…
ってどうしたわたし!!男の匂いを嗅いでいい匂いとか…よりにもよってお父さんの…
「お?茜どうした?なんだか顔真っ赤だぞ?」
「お父さん…顔近い…
ほら、準備できたから早く食べよ?」
「あ、ごめん。つい茜菜にするみたいにしちゃったわ。」
雪ねぇは何か言いたげにニヤニヤしてるしひーちゃんは気持ちはわかるよ?と言った感じでウンウン頷いているし…
ああもぅ!!恥ずかしいから掘り返さないでぇ!!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「いやー。あーちゃんイジるの楽しかった。」
「真っ赤になってるあ〜ちゃん可愛かったなぁ!」
「茜お前いじられてたのか?…」
お父さんまでニヤニヤしちゃって!!
元凶はあんたなんだからなぁ!!
「も、もう知らないっ!!ふん!!」
お昼ご飯を食べ終わって地下のスタジオに向かう途中までもわたしはいじられている…
お父さんのニヤニヤはなんだか本当に気持ち悪い気がしてきて近づいて欲しくない…
娘に抱きつかれて鼻を伸ばすオヤジみたいで気持ち悪い…
「お!案外キレイにしてあるもんだな。昔のまんまじゃないか。」
防音扉をくぐるとお父さんはそう感嘆の声をあげた。
「そりゃあ私達家族にとってこの場所は特別だからね。」
「まあ、わたしも雪ねぇも普通に練習に使ってたからキレイにしてあるんだけどね。」
「ドラムもしっかり調整されてるしアンプだってこと使われてる感がしっかりあるもんなぁ。
やっぱり割とここ使ってたんだな。」
「ねぇ、早く準備しちゃお〜よ〜!もうあたしウズウズしちゃって!!ねぇ、あ〜ちゃん!!」
ひーちゃんがわたしにそう振ってきた…
ってわたしそんなにウズウズしてるかなぁ…
「本当にお前は音楽が好きなんだな。
よし、とりあえずセッティングしちゃうか!」
「そう言えばパートとかはどうするの?
昔みたいにって言っても昔はお母さんのピアノとお父さんのギターとかだったじゃん。」
「そんなのバンドスタイルに決まってるじゃない。
お父さんはなんでも楽器できるわけだし私達だってほとんどなんでもできるわけじゃない。」
雪ねぇは自信満々にそう言った。
確かに本職としてはわたしも雪ねぇもギタリストだしひーちゃんはピアノしかできないけどわたしと雪ねぇは作曲の為に割となんでもこなす様にはしてる。
「とりあえずあたしは歌とちょっとのピアノしかできないからあたしはキーボード立てて歌うだけだよね。」
ひーちゃんはしっかり自分の役割を理解してさっさと準備を始める。
うーん、ギターだったら雪ねぇの方が上手いしわたしはベースに回ろっかなぁ、
「じゃああたしは今日はベースかなぁ。
ドラムは割とヘタクソだし」
「じゃあお父さんはドラムかしらね。
私もあんまりドラム上手じゃないし」
「ええ、…俺ドラムかよ…まあ、いいか。」
そんなこんなでパート分けも決まっていざセッティングをして音を出し始めるとお父さんが軽く叩き始めたので最初はそこに乗せるようにベースラインを作り始めた。
するとお父さんもわたしのベースに呼応するようにテンションを上げてきたのでわたしは少しだけスラップフレーズを入れて挑発してみる
「お前やる様になったなぁ。」
「わたしもお父さんがここまでイケるとは思ってなかったよ」
嬉しくなってベースまで下ろしておいて良かったと心から思った瞬間だった。
そんな会話を始めてわたしとお父さんの攻防が下火になった刹那、雪ねぇのギターによってわたしとお父さんの攻防は切り裂かれた。
「ねぇ、私達も忘れないでよ」
「そうだよ〜二人だけで楽しそうにずるいよ。」
そう言ってひーちゃんが弾き出したメロディはよくお母さんとお父さんが聞かせてくれた曲だった。
そう言えばこの曲だけはどれだけ探してもどんな曲かわからなかったんだっけ。
ひーちゃんが弾き出したメロディを聞くとお父さんは少しだけニヤリと笑ってドラムのパターンをガラリと変えてきた。
それに応えるように雪ねぇもわたしもしっとりとしたプレイに切り替えた。
それでもわたしは攻めに出ていくことを忘れない。
しっとりとした中にもブルージーなベースフレーズをちょくちょく差し込む。
「この曲懐かしいね。歌ってみたいけど歌詞が思い出せないや…」
ひーちゃんがそんなことを言い出した。
「そこの棚に歌詞カードあるぞ?」
お父さんが軽く言った爆弾発言のおかげで演奏はストップしてしまう…
「ええ!?お父さんこの曲なんの曲か知ってたの?」
「そりゃ〜。俺が書いた曲だからなぁ。知ってるも何も…」
「「「えええっ!!」」」
お父さんがポロッとそう言ったのに反応してわたし達は3人とも驚きの声をあげた。
「お父さんが書いた曲だったの!?」
ひーちゃんがドラムに駆け寄ってタムに手をかけて身を乗り出しながらそう言った。
「昔な、お父さんはお母さんとユニットを組んでたんだよ。あれはその時の曲だな…」
「ええ…まさかの新事実じゃん…」
うなだれるようにしてわたしはそう言った。
「これはあれだぞ?お前らが自分達の音楽を貫いて欲しいっていう茜菜の希望で言ってなかったんだからな?これは文句言わせないぞ?」
「まあ、この際それはいいとして…お父さんが作った曲やるならギターはお父さんが弾いた方がいいんじゃない?」
「いや、やるなら俺はドラムに徹するよ。お前達の音で俺の曲をやってくれたらそれでいいさ。茜菜もそれを望んでると思う。」
あらら…話が凄い方向に進んでいってる気がする…
お母さんに向けてとか緊張するにも程があるって!!
「そう言うならあたし達の成長した姿をお母さんにもみせてあげないとだね?」
「そうよ。ひーちゃんの言う通り。それにお母さんが歌ってた曲をやるってのはワクワクするわ。」
「歌詞カード何枚もあるから3人とも譜面台使って立てとけよ。どうせなら天国の”お母さん”に届けてやろうぜ?茜もいけそうだったら歌っていいんだぞ?
この際緋那ちゃんを出したって構わないだろ。ここは家なんだし。」
「う、うん。わかった。やってみる…」
お父さんがそう言うと雪ねぇもひーちゃんも期待の眼差しでわたしを見てくるからそう言うしかなかった。
確かにわたしもお母さんがやっていた曲を歌って見たくてウズウズしてるけど思い通り歌えないならただ落ち込むだけだってのは見えてることなのだ…
「茜、自分の音楽に素直になれ。」
「そうだよ!!あ〜ちゃんだって歌いたくって仕方ないって顔してるじゃん!!」
「ううっ、わかった!やれるだけやるよ。」
みんなわたしの気乗りしない気持ちが見え見えだったようでそう言われて初めて本気で歌う準備ができた。
「やっぱあーちゃんはその表情が一番ね。ステージ上で時折見せるこの顔が一番好きだったのよね。」
「うし、行くか。」
カンカンカンッ…
お父さんがそう声をかけてカウントから始めたドラムはしっとりとしていて優しさに満ち溢れていた。
ひーちゃんがピアノでメロディを取り始めたところにわたしがベースラインを乗せて行く。
気をつけるべきところはわたしはしゃしゃりでないことしっかりボトムを支えること。
イントロをしばらく3人で続けていると音の感じをつかんだ雪ねぇがしっとりとしたアルペジオで入ってきた。
さすが雪ねぇ…
ピアノのメロディと被らず他のパートを殺さずの絶妙なギタープレイだ…こういう感性みたいなものはわたしにはあんまりないものだからちょっと羨ましい…
3人が3人とも記憶にあるのはピアノとギターで奏でられるこの曲なのでAメロへの移り変わりとかは割と苦労したけどそれでもしっかりと繋げることはできた。
最初はひーちゃんのパート。Bメロからは雪ねぇのパートでわたしのパートはサビだけにしてもらった。
Aメロに入るとひーちゃんのピアノが少しだけヨレ始めたけどこれくらいは歌ってる分を差し引けばなんてことはないだろう…
それにしてもひーちゃんの歌はやっぱり上手だなぁ…
アイドルは歌が下手なんてよく言われるけどひーちゃんに関してはその限りではない。
歌だけでもやっていけるほどの歌唱力はあるし何よりひーちゃんの歌はとっても繊細だ。
歌だってダンスだって壮絶なレッスンを受けた先に今のひーちゃんがいるのはわかるけどひーちゃんの才能がなければここまで素敵な歌は歌えないと思う…
Bメロからの雪ねぇパートはさすが圧巻といった感じでプロであるひーちゃんに引けを取らない歌唱力を発揮している。
若干癖のある歌い方もいい味を出している雪ねぇのその歌はやっぱりレーゾンの雪菜なんだと実感する。
このあと歌うわたしの歌は本当に大丈夫なのだろうか…お母さんに届くのだろうか…心配になる。
『迷うならば始めてみればいいの
輝く道を進むあなたはまるで天使のよう
これから待つどんな辛い事も乗り越えて行けるの
あなたとなら』
雪ねぇパートが終わってついにわたしの番がやってきた。もうここまできたらどうなろうと関係ない…全力で出し切ろう。
『届けこの世界の全てに届けわたしのこの想いよ』
なんていうか3人の纏う空気がなんだか劇的に変わったような気がする。
そんなにダメだったかなぁ…
『届け大切な人にほら届けアイシテルのサインを』
あれ、ここからは3人で歌うんじゃなかったっけ?
それにしてもわたしの歌はこんなにも…何も表現できてないのか…足りない…圧倒的に足りなさすぎる…
歌いながらもわたしの心はみるみるうちに沈んでゆく
サビを歌い終わる頃には視界は歪んでだんだんと白くなっていた。
うわ…やっぱりこうなるんだね…あかちゃん…ごめん…
だいぶ慣れたあかちゃんとの入れ替わりのサインをしっかりと受け取ってわたしは流れに身を任せて歌うことをやめてあかちゃんとバトンタッチをした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「あ、あかね?…」
起きたらそう声が聞こえたんだよね…
「あらら、やっぱりやっちゃったか…
でもあれだけいい歌だったのに茜ちゃんも残念な娘だよね」
茜ちゃんがちゃんと心の準備をしていたおかげでスムーズに入れ替わることができてちょっとうれしかったなぁ…
「もしかしてあかちゃん?」
「あ、ひーちゃん久しぶり〜!!」
「珍しくケロッと入れ替わったわね。」
「それに関してはあの子も慣れてきたとしか言いようがないわね」
ひーちゃんも雪ちゃんもわたしにすぐ気づいてくれて普通に会話できた。
やっぱりあの二人の見破る力ってすごいね。
正直
「緋那ちゃんもあいつは才能あるとおもうだろ?」
「うん。あたし茜ちゃんの歌大好きなんだけどなぁ
練習してる時とかはいつ入れ替わってもいいように見守ってるんだけどとっても素敵だもん。」
緋哉さんの唐突の問いにもちゃんとすぐ答えられた。
やっぱり茜ちゃんの歌にみんな驚いていたんだね。
見てた通りで嬉しくなったなぁ。
「そうなんだよ…ちゃんとあいつも歌を取り戻して欲しいものだよ…」
「そうだね〜。茜ちゃんの全てって言っても過言じゃないと思うのに…そう言えばセッションどうするの?あたしベースとかできないよ?」
緋哉さんのしみじみとした呟きに応えると肩にかかる重みでふと思い出したのでそう聞いてみたら。
「じゃあお開きにすっか。十分楽しかっただろ?」
「「うん!!」」
って感じで流れちゃった。
結局茜ちゃんがなかなか出てこなくって夜まであたしは入れ替わったままだったからゆっくりおしゃべりとかして過ごしたよ?
ひーちゃんは「どうせ明後日会うんだし今日はあかちゃんと楽しく喋れたし良かったよ。」なんて言ってたけどお互い短い姉妹の時間をもっと作らせてあげたかったなぁなんて思った今日でした。
じゃあ、今度はお葬式終わったら学校の日に入れかわらせてね?
4月8日 にちようび 緋那




