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茜色で描く未来  作者: みやしろましろ
茜&緋那 新生活はハツラツに!
47/68

47話 家族とアイドルと音楽

「それにしてもお葬式か〜お母さんの時以来だね」


お父さんにお詫びとして宝永堂のフルーツタルトを買いに行かせている間雪ねぇのクッキーをつまみながらわたしの淹れた紅茶を三人で飲んでいるとひーちゃんがそう言った。


「そう言えばひーちゃん明々後日なんてスケジュール大丈夫なの?明日休みになったばっかりなのに…」


「ん〜?大丈夫だよぉ。さっき喜多山さんから明々後日も休みになったからって連絡きたし。」


そう言ってひーちゃんが見せてきたメール画面からはきっと急に決まったんだろうなって事が読み取れた。


「これ絶対お父さんがなんか裏で調整したってことだよね…」


正直お父さんが伝説のプロデューサーだっていう実感が湧いていなかったけどこんなところからお父さんの権力の強さを感じた…


「あはは。まあ、本当ならこんな急に言われてもって感じだろうしお父さんのおかげでお兄ちゃんのお葬式に出れてよかったかなって私は思っちゃうな…」


そう言ってひーちゃんは複雑な笑みを見せた…


「なんて言うか複雑な気分よね。ある意味橙くんとはこれでお別れな訳だし…でもあーちゃんはちゃんとここに存在してるわけじゃない?」


「わたしもなんか変な気分…

ある意味自分のお葬式なわけじゃん?でもわたしはここにいるわけだし…頭こんがらがっちゃう。」


「まあ、ある意味あ〜ちゃんが自覚をもっと持つにはいいのかもしれないよね。なんて言うか過去の自分と一線を画す為にもって言うかなんて言うか…」


ひーちゃんが言いたい事は何となくわかる気がするしそう考えたら少し気が楽になった気がする…


「そう考えたら気が楽になった気がする。ありがとね。」


それより問題なのはひーちゃんとのユニット計画とか事務所の勧誘とかだよね…


ああ、ちょっと考えただけで憂鬱になってくる…

確かに今日みたいにわたしが対応しただけで笑顔になる人もいるっていうのはとっても嬉しい事だし楽しかった…

でも、事務所に入ったり芸能界で活動したりするのはこれ以上有名になるって事だし…


これ以上有名になったら今日みたいに囲まれたりする機会も増えるわけだしそれはちょっと嫌だよね…


それにわたしはバンドが一番やりたい事なのだ…


いったいどうするのが正解なのだろう…


「あーちゃんどうしたの?そんなに考え込んじゃって

お父さん宝永堂のフルーツタルト買ってきてくれたよ?」


そう言う雪ねぇの声とほのかに香る宝永堂のフルーツタルトとショートケーキとモンブランの匂いで一気に現実に引き戻される…


「タルトの匂いだ!これはショートケーキとモンブランもあるな!」


「あ〜ちゃん一体どんな嗅覚してるのよ!?

それにケーキもいいけど晩御飯どうするのさ?

もう8時過ぎちゃうしあたしお腹ぺこぺこだよぉ。」


ひーちゃんがお腹をさすりながらそう言う。

そっか。ひーちゃんさっき1ステージ踊りきったばかりだからそりゃお腹も空くよね…


「いつも同じところで悪いんだが政寿司に行こうかと思うんだけどどうだ?」


さっきまでの土下座していたお父さんとは打って変わって普通のお父さんらしい感じでそう言った。


「いいと思う。わたし達としてはこの時間からご飯作るのも大変だからありがたいし。」


わたしはムスッとしながらそう返した。


お葬式の件も仕事の件も仕方ない事だってわかってはいるんだけどどうにも態度が追いついてこない…


「あーちゃんそんなにムスムスしてたら可愛い顔が台無しだぞ〜?確かに気持ちはわかるしお父さんが完全に悪いからお父さんは何にも言えないけどこれからご飯行くんだからちょっとでも楽しい気分でいなきゃ。」


「そうだよ〜?外食するのにそんな顔してたら楽しくないぞ〜?それにあたし実は政寿司行きたいなぁって思ってたんだよねー。」


雪ねぇにもひーちゃんにもそう言われて頑張ってムスッとしない様にしてるんだけどどうにもうまくいかない。


「わかってはいるんだけど…どうにも態度が追いつかないんだよね…」


「帰ってきたら宝永堂のフルーツタルト食べるって考えたらルンルン気分になれるんじゃない?」


フルーツタルト!!

ううっ…楽しみ過ぎて今からヨダレが垂れてしまいそう…


「ムスッとしてるよりはいいけどちょっと変態チックよ?その顔。」


「なんて言うかお兄ちゃんに抱きついたり妄想したりしてる時のお姉ちゃんの顔とソックリだよ?…

姉妹でもそんなところまで似たくないんだけど…」


なんだって…

流石にそんな顔になってるならどうにかして直さないと…

流石にあの変態な顔はキツイって…


「流石にわたしもそれは嫌かな…」


「二人とも酷くない!?」


「「「ぷっ…あはははっ。」」」


なんだか入院していた頃みたいに三人で笑いあえて結構幸せな気分になる


「とりあえず雪菜は着替えて来たほうがいいんじゃないか?その部屋着で外へ出るわけにもいかないだろう。」


家では結構ズボラな雪ねぇはいつも中学時代のジャージにフリースとかそんな格好なのでお父さんの言いたいこともわかる…


「そうね。流石に私でもこの格好で出たりしないわよ?じゃあ着替えて来るからゆっくり待ってて。」


そう言って雪ねぇは席を立って軽やかに部屋へ向かって行った。


「あ!!お父さん!お葬式なんだけど日向達とかにも伝えて来てもらってもいいかな…

あの3人には橙哉の最期を見てもらいたいの。」


「いいけどお父さんの実家の方でやる事になったから遠いぞ?」


「来るかはわからないけど伝えるだけ伝えなきゃ。」


「そうだな。一応緋雪も参列するから親族とその3人以外はお断りさせてもらう事にするから。」


「そうだね。あたしとしてもその方がありがたいかな。きっとお兄ちゃんならバンド関係の人とか結構集まりそうだもんね。」


「だから遠いけどお父さんの実家の近くでって話になったんだ」


「じゃああの3人以外にはお葬式が終わるまでは伝わらないようにしておくね」


そう行ってMINEを開いて3人とのグループラインを開く。


『お兄ちゃんが遂に死んじゃいました。

明々後日お葬式をする事になりました。

お父さんの実家だからちょっと遠いけど3人には是非来て欲しいかな…

それとこの事はお葬式が終わるまで公表しない形で…』


唐突にそう言ってお父さんに教えてもらったお葬式場の住所を添付した。


きっと3人ともこの時間はバイト中だろうししばらく既読つく事はないだろうけど送信するのに大分勇気が必要だった…



「緋雪は月曜も仕事だろうから月曜の夜仕事終わってからでいいけど緋雪と雪菜は月曜日からお父さんの実家に行って葬式の準備とか茜の顔合わせとか色々するからな。」


わたしがケータイから顔を上げて少しため息を吐いたタイミングでお父さんはそんなことを言い出した。


「本当はあたしもそうしたいんだけどね〜

久しぶりにおじいちゃんおばあちゃん家に行くわけだし…わたしのスケジュール3日も切るのは流石にお父さんでも無理だったんだね。」


「まあ、そんなところだな…」


「はぁ〜…おじいちゃんおばあちゃんに会うのかぁ…

ちょっと憂鬱…一体どういう態度取ればいいのかなぁ…」


「宮代のおじいちゃんおばあちゃんは優しいからちょっと戸惑うかもだけど大丈夫だって!」


ひーちゃんはそう言うけどこの前弦之助さんにだって変な間違われ方した訳だしやっぱり心配になる…


って言うかそれを思い出して内心黒いものが湧き上がって来る…もちろん弦之助さんに悪気があった訳じゃないのはわかってるけどやっぱり思い出すとなんて言うかイラっと来るのだ…


「準備できたよ〜

ってあーちゃんなんか黒いもの纏ってない?…」


はっ!!いけないいけない…

考えてた事がダダ漏れていたみたいだ…


「ん?なんでもないよ?」


「あ〜ちゃん流石に取り繕えないでしょ今のは…」


「なんでもないって。少し別なこと考えてただけだもん。」


「んじゃ雪菜も着替えて来た事だし行くか。」


「「「はーい。」」」


お父さんがそう言って玄関に向かうとわたし達も声を揃えてそう言ってお父さんの後に続いて玄関に向かった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



「お!やっと来ましたねぇ〜。

茜ちゃんも割と時の人になりつつあるんで今日はしっかり貸し切りにしておきましたよ?」


政寿司の貸し切りと書かれた札を避けて暖簾をくぐると弦之助さんのそんな声で出迎えられた。


「おー。助かるわ。あとでその分色つけておくよ。

まあ、この店なら二人を見て騒いだりする輩も来ないだろうけどな。」


確かに政寿司は外から見た感じも料亭っぽさまであるしお値段だってかなりの物なお店だから普通わたし達に反応する様な年代の人はまず来れないと思う…


弦之助さんがお父さんの後輩って事もあるしひーちゃんが有名人って事とかお父さんが芸能プロデューサーっていう事もあるから来れてるだけなのだ…


「そんなのいいですって俺と緋哉さんの仲じゃないっすか。それに緋雪ちゃんみたいなVIPはちゃんと対応してあげたいですから」


「弦之助さんお心遣いありがとうございます。」


お父さんと弦之助さんが遠慮しあってるところにひーちゃんがそう言ってペコリと頭を下げた。


「いえいえ。あ、そう言えばこの前サイン貰うの忘れちゃってたんで書いてもらえます?

できれば茜ちゃんのサインもあると箔がついて嬉しいんですけどね」


「あたしはいいですよ〜?いつもの美味しいお寿司のお礼だと思ってますから。」


ひーちゃんはそういうの慣れてるのか色紙を受け取ってなんの躊躇いもなくサラサラとサインを書いている


「わたしは…どうしようかな…」


よくよく見てみるとこの辺出身らしい大御所演歌歌手とかゴールデンタイムで毎日と言っていいほど見かける有名司会者さんとかオリンピックメダリストとかのサインが所狭しと並んでいる。


「うう…わたしはやめときます…こんなすごい人達の隣にこんな一般人のサインなんて置けないですよ…」


「そんな事ないと思うよ?

テレビで紹介されるくらいの有名人なんだから堂々としていいと思うんだけどなぁ。」


「そうですよ。やっぱりテレビでも何かと話題ですから湖の乙女のサインなんてあったら何かと話の種になるんですよ。」


「うむむ…わかりました…

普通によく書くサインでいいですか?」


「湖の乙女って入れてくれるとなおよしですね。」


「ぐぬぬ…わ、わかりました…

わたしその二つ名みたいなの嫌いなんだけどなぁ…」


そうは言いつつも貸し切りにしてくれたりわたしのことを黙っててくれてる弦之助さんの為にもちゃんとその文言も書き加える。


「これでいいですか?…」


「えーと…湖の乙女AKANE 政寿司さんへ…

うん!いいじゃないですか。」


弦之助さんがそう言ってひーちゃんのサインの隣に楽しそうに飾ってくれた。


なんか楽しそうな弦之助さんの様子を見たらなんだかやっぱこう言うのはいいなって思って来た。


「うんうん。やっぱりあ〜ちゃんはそういう才能あるんだって。サイン喜んでもらって嬉しいって顔に出ちゃってるよ?」


「あーちゃんのそういう顔はなんだか癒されるわね」


「まあ、才能というよりは絶対条件だな…

人に喜んで貰うことを喜べる人間じゃなけりゃタレントなんて無理な話だからな…」



「まあまあ、難しい事はいいですからとりあえずお寿司食べちゃってください。なんでも頼んでくださいね。ガンガン作っちゃいますから。」


「お!いいねぇ。じゃあ俺はアジにしよっかな。」


「あたしも光り物から行こっかな。」


「私はいつも通りタコからください。」


弦之助さんがそう勧めてくれたのでお父さんもひーちゃんも雪ねぇもそれぞれ食べたいものを注文していく。


わたしは何にしよっかな…

やっぱり鯛が食べたいかなぁ…でもなぁ…鯛は最後にも食べたいしなぁ…

やっぱり鯛行こう!!


「茜ちゃんは鯛ですね。」


わたしが軽く悩んでいると弦之助さんはサラッとわたしの食べたい奴を言い当てた…


「へ!?あ、そうですけど…」


「あーちゃんよく鯛頼むものね。鯛とブリとイカばっかり食べるくらい大好きなんだもんね?」


へ!?わたしそんな食べ方してたかなぁ…

確かにその3つは大好きだけど…


「昔っからその3つだったよね。やっぱそういう所は変わらないんだね。あ、あたしウニください!」


「そう言うひーちゃんもウニ好きだよねぇ…」


ひーちゃんの方がウニに目がない偏食家だって言うのに…


「ウニ以上に美味しいネタはないのよ!!」


キメ顔でそう言うひーちゃんはなんだか面白い…

ぷっ…くくくっ…


「あー!!あ〜ちゃん笑ったなぁ!?」


そう言って隣に座るひーちゃんがじゃれてくる。


「こーら。いくら貸し切りだからってあんまり羽目外しちゃダメよ?」


「「はーい。」」


すっかり外行きのしっかりお姉さんモードの雪ねぇに怒られてしまったわたし達は双子らしくしっかりハモってそう言った。


なんて言うかこういう時間を取れてるってのがとても幸せな事なんだなぁって実感する…



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「「ごちそうさまでした〜!!」」


「ごちそうさまでした。」


「ごちそうさん。」


みんな〆に頼んだお味噌汁を飲み終わったところでちゃんとごちそうさまをした。


わたしとひーちゃんは双子らしくまたもやハモってしまった。


「いえいえ、お粗末様でした。

それにしてもサインまで書いてもらった事ですし茜ちゃんにももっと有名になって貰えるように応援してますよ?もちろん緋雪ちゃんの事もですけど。」



弦之助さんからの返しは意外なものだった…

またこの話をぶり返されるとは…


「うう…ん…」


「あれ、茜ちゃんどうしたんです?」


「あーちゃんはまだ芸能人になるって決めたわけじゃないんですよ。バンドやりたいみたいですし…」


「あー。そういう事ですか。俺個人としての意見ですけど芸能人になったからって出来ないことなんてないと思いますし芸能活動をしてたらバンドをやる上でそういうノウハウだって学べると思うんですけどね。

アーティストって踏めるステージの数だけ大きくなりますからね。踏めるステージを踏まないって選択肢はないと思いますよ?」



「そう…ですよね…」


「まあ、目一杯考えて決めるべきだと思います。

茜ちゃんの人生を変えてしまう決断ですから」


「じゃあ会計済ませちゃうから3人は車行っちゃっててくれ。ほい。雪菜」


そういって重くなった空気をぶった切ってお父さんはそう言って雪ねぇに車のキーを渡した。


「「「はーい。」」」


お父さんの有無を言わさぬ雰囲気のせいか3人とも素直に返事をして車に向かう事にした。


きっとなんか弦之助さんと話があるんだろうな。

いつもカードでポンと払ってるしなんならお会計も〆の味噌汁が来るまでの間に済ませちゃうくらいだもん。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「で、どうだったんです?実際上手くいったんです?」


茜達3人が出て行って少ししてから弦之助はそう切り出した。



「まあ、俺の仕事バレはあったけど概ね上手く行ったと思う。それにさっき弦之助が言ってくれた事とかも後々効いてくると思うんだ…だいぶ意識してはいるみたいだしな。」


「緋哉さんも悪い人ですよね。実の娘をその気にさせる為にあの手この手で暗躍してるんですから。」


「それも自分の商品にする為にってか?」


弦之助の言いたい事はよくわかる。自分の商売道具にする為に実の娘を騙したりは普通しないと思う…


まあ、実際は茜にその才能があると思ってるから俺は動いてるだけで本当は商売なんてどうでもいい。

どこの事務所から出ようと関係ないしあいつならトップに立てると思ってる。


「まあ、緋哉さんがそんな軽い気持ちじゃない事くらい知ってますけどね。そうじゃなければこうして手を貸したりしないですよ。」


「そうだな。じゃあ、コレ。」


「あれ、明らかに多くないです?しかも現ナマだし。」


「そりゃあ、協力代とか口止め料ってやつだ

弦之助にはよくしてもらってるからな。じゃ、またくるわ」


「うす。いつでもお待ちしてますよ」


そう言う弦之助の声に後ろ手を上げて応えて店を後にした。


自分で言うのもなんだけどなんとも任侠映画とかそっち系なやりとりだったなぁと思ってニヤけてしまった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



『そうか。あとで親に相談しておくよ。

もしかしたら行けない可能性もあるけどな。』


『俺もとりあえず聞いてみないとって感じかなぁ』


『俺はなんとしてでも行くぜ?橙哉の最期を見届けないわけにはいかないからな。』


『どうせ家にはねーちゃんしかいないわけだし学校だって1日くらいフケたって大丈夫だろ。』


『いやいや、日向割と頭悪いんだから気をつけないと留年するよ?』


『さすがアホだな。』


政寿司から帰ってケータイを見てみるとMINEで3人からの返信が返ってきてた。


3人ともちゃんとわたしの意思を汲んでくれてるみたいで前向きに考えてくれるみたいだ。

日向は少し前のめりすぎだと思うけど…


それにしんみりするんじゃなくっていつもの様に日向いじりが行われているあたりなんだか安心する。


『3人ともありがとね。結構遠いのに…』


『当たり前だ。』


『俺たちの仲ならこれくらいなんて事ないって!』


『仲間の最期を見届けないなんてありえないでしょ』


3人がそれぞれに励ましてくれる感じのスタンプを返してくれててなんだか泣きそうになる…


『ありがとっ。そう言ってくれるみんなの為にも頑張って歌えるようになるね?』


『俺たちにできることがあったらなんでも言ってね!


『早くお前とライブしたいよ。』


『待ってるからな!』


そう言ってくれるのがとても嬉しいし頑張らないとっていう気持ちになる。


そうは言っても割と毎日練習してるのに未だに満足のいく歌は歌えてないし理想と現実のギャップに絶望するばかりなんだけど…



こんなままだったらもう自分の音楽なんて捨ててアイドルにでもなって求められた音楽だけやって行くほうが辛くなくていいのかなぁ…


ふとそんな考えがよぎる…

ダメだダメだ。

わたしはただ音楽がやりたいわけじゃないんだ。


「自分の音楽を表現したいんだった。」


わたしはただのプレイヤーになるつもりはないんだ…



そう考えたらアイドルなんて論外なんだろうな…


『アーティストなら踏めるステージを踏まないって選択肢はない』


ふと弦之助さんの言葉が頭によぎった。


ステージを踏むことの大変さってわかってる様でわかってなかったかも…


「あー!!もうわかんない!!」


なんだかよくわかんなくなってきて頭を掻きむしってそのままベッドに倒れこんだ。


こうやって倒れこんでみると気づかないうちに女の子の匂いのするベッドになってしまっているのに気づいた。


まあ、もうわたしも初めての生理を終えたれっきとした女の子な訳だし当たり前なんだけどね…


なんてことを考えながら『ぬこ』のぬいぐるみを抱きしめる。


「なぁ、ぬこ。わたしどうしたらいいんだろ…」


「わかんなくなっちゃった。何がしたいのか何をするべきなのか…」


なんていうか無意識に『ぬこ』に話しかけていた。

答えが返ってくるわけないのはわかってる。

だからこそ安心して悩みを話しかけることができた。



しばらくそうしているうちにだんだん意識はまどろんでいった。


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