45話 茜のとある休日 後編
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
今年こそはキチンと更新日を守って更新したいと思います。
お話が大きく動き始めている茜色で描く未来を今年もよろしくお願いいたします。
「いやぁー美味しかったねっ!!」
「うんうん。やっぱり最高だったね。」
「あのなんとも言えない肉汁とデミグラスソースのハーモニーが忘れられないかも…」
「「でしょ?」」
紀穂と奏がキレイにハモってそう言ってきた。
「やっぱりレイクモール来たらかぶら屋ね。」
「うんうん。また今度来ようね!」
「そうだねっ!絶対だよ?」
かぶら屋で三人仲良くデミグラスハンバーグを美味しくいただいたのでこれからまたレイクモールを見て回る予定だ。
「そういえば次どこ行くー?」
「まあ、順当に行けばこのままセントラルモールかなぁ。イーストはさっき見たし。茜もそれでいい?」
「うん。わたし未だにどこに何があるかあんまりわかってないからどこでも大丈夫だよ?」
ちなみに前回来たときに回ったのはセントラルモールらしくてちょくちょく見たことあるお店や景色があった。
「茜は何か見たいところとかある?」
「うーん。特にここ行きたいってのはないけど前見つかんなかったし可愛いパーカー探したいかなぁ…あとはCDショップ行きたい。」
「あ、あたしもCDショップ行きたい!」
「あら、珍しいじゃん。奏がCDショップなんて。」
「あたしもDJとして最近の流行には詳しくなっておこうかと思ってね。まあ、あと昨日ラジオで聞いた曲のCD欲しくなっちゃって。」
紀穂の言い方からして奏はあんまりCDショップとか行かない人なのだろう…あんま音楽好きじゃないのかな…
っていうか奏の音楽の趣味とか知らないなぁ…
「奏ってどんな音楽好きなの?
紀穂はまあわかるんだけど奏の好きな音楽とかそういえば知らないなぁって思ったんだけど…」
「んー?あたしは結構なんでも聞くよ?割とミーハーだしCDもあんまり買ったりしないから全然詳しくないけどね。強いて言うならぁ、ジャズとか好きだよ?
誰がどうとかは全然わかんないけど親の影響で割といつも聞いてたし家に結構CDあるから自然と好きになったかも。」
「そっかぁ。奏はジャズっ子だったかぁ。
わたしもジャズ結構好きだよ?小さい頃ピアノやってたからジャズピアノ弾けたりもするよ?」
「えー。本当?じゃあ今度弾いてもらおっかなぁ。
もちろんあたしの番組で!」
「ピアノの用意とか録音とかどうするのよ、 あんた生でやる気じゃないでしょう?」
「そっかそっか。そうだよね。まあ、放送抜きにしても聴いてみたいなぁ…茜のピアノ。」
「そうねぇ。私も聴いてみたいかも!
そういえば奏の気になった曲ってどんな曲?」
そうそう。わたしもそこは気になっていたところだ。
「えーっとねぇ。ブルーなんとかコーリングっていうバンドの曲なんだけどぉ。昨日やってたのが新曲のカラミティって曲と代表曲のリタリンって曲だったんだけど…」
「ブルーシームドコーリング!!!
ブルシムじゃん!!わたし大好きなんだよね!!」
「そうそうっ!ブルーシームドコーリング!!
リタリンって曲のピアノとギターと歌のハーモニーがぐっときたんだよね!!」
「うんうん。リタリンいい曲だよね!!カラミティはまだ買ってないんだけどリタリンはアルバムに入ってるから貸してあげようか?
なんならカラミティも今日買おうかと思ってたから聴いたら貸してあげよっか?」
「え!いいの?でもなぁ…すぐ聴きたい気分だからなぁ…じゃあアルバムだけ借りる事にするね!
新曲の方はシングルだし買っちゃおっかな。」
奏はちょっと恥ずかしそうにそう言った。
「そっかそっか!ブルシムファンとしてはそっちの方が嬉しい!」
「紀穂はCD見なくていいの?話を聞くからに紀穂が一番CDショップで興奮しそうなのに…」
いろんなライブに足繁く通うくらい音楽好きなはずなのに…
「うーん。私はライブ派だしあんまり大手のCDショップ行っても好きなのあんまり置いてないしね。」
「トワレコだよ?インディーズも結構あるでしょ。」
レイクモールに入っているのはここら辺で一番大きいTOWARECORDだから品揃えもバツグンだ。
「私インディーズでもマイナーな奴が好きなんだよね。ブルシムも大手すぎてそこまで…って感じなんだよね。」
「紀穂は若手バンドを応援して成長を見守りたいタイプなんだよね〜。」
「言い方に悪意を感じる気がするのだけど…」
「気にしない気にしないっ♪」
二人がそんな感じでじゃれ始めたからCDを買う予算について思考を巡らせていたら後ろからカシャって音が聞こえた気がした。
急いで振り向いたけど怪しい人物は見当たらなかった…
「盗撮?…」
何を思ったかわたしはボソッとそんな事を呟いてしまった。
「えっ!?茜盗撮されたの!?」
「さっきからずっと視線は感じると思ってたんだけどねえ…」
「なんかカシャって聞こえた気がして…
ううっ!気味悪いよぉ〜…」
なんだかつけられてるのだと思うと寒気が襲ってくる…
「どうする?ストーカーされてるならどうにか対策取らないと…」
「ううん!ダメだよ。せっかく楽しんでるんだから!
気にしない気にしない!」
でもせっかく楽しい事しに来てるのだからここで折れたら負けだ…
「まあ、茜がそう言うならとりあえず今は気にしないでおくね。でも、後で対処してくれそうなところに相談しに行こうね。」
「うん。ありがと。とりあえずCDいっぱい見るぞ〜。」
ブルシムの新曲とかその他諸々のCDについて考えてたら気味悪さなんてすっ飛んでしまう。
「そうだね〜。私も久々トワレコで色々探してみよ」
「よーしあたしもいっぱい見て勉強するぞぉ〜」
そんな勢いでわたし達は色々誤魔化してトワレコにのりこんだ。
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「あれっ、これあ〜ちゃんじゃん。
ってこれ今日のレイクモールだしどう見ても隠し撮り…」
ヘアメイクをしてもらいながら軽くtwetterを見ていたらあ〜ちゃんの画像が何枚か流れてきていた。
「葛原さーん。ちょっといいです?」
さすがに盗撮されたりTwetterで行動が実況されたりしてるのを見過ごすわけにはいかないのであたし達もちょうどレイクモールにいるので葛原さんに知らせて対応を取ってもらう事にした。
「どうしたんだ?」
「コレ。見ればわかりますよね?
なんか困ってそうなんで助けてあげてください。」
「ん?これって例の緋雪の双子の妹ちゃんじゃん」
「違うって。正しくは双子の姉。まあ、世間的にはあたしの妹って認識らしいけどねぇ…」
「で、その双子の姉を助けてあげろと?
俺は君の使いっぱしりじゃないんだぞ?
俺だってやらなきゃいけないことがいっぱいあるんだから…」
「ほとんど全部マネージャー陣とかAPにやらせてるくせに…」
葛原さんがそんな事を言って逃げようとしたから鏡越しにジト目で見つめてそう言った。
「わかったわかった。
とりあえず会場さんと打ち合わせしてくるからその件も伝えておく。
緋雪もなるべく二人の関係を匂わすような事は言わないようにするんだぞ?」
「はーい。」
そう言って楽屋から出て行く葛原さんに向かってそう返事をした。
「ねぇ、フジちゃん。あ〜ちゃんの事どう思う?」
「とっても可愛い子だと思うわよ?」
わたし専属のヘアメイクのフジちゃんにそう聞いてみるとなんだかぽやぁっとした答えが返ってきた。
「そうじゃなくって!!湖の乙女とかそっちについてっ!」
「うーん。どうせすぐ世間の目には止まるわけじゃない?あの雑誌だって発行部数業界トップクラスなんだしすぐ今みたいな騒ぎになると思うんだよね…」
「そうでしょ?あの写真の写り方だったら湖の乙女とか関係なく騒ぎになると思うし生活し辛くなると思うんだよね…」
だからこそ片足だけでも芸能界入りしたほうが会社でネットパトロールも出来るし万が一の時のボディーガードだって付けられる…
「だからうちで囲っちゃったらいいんじゃないかって緋雪ちゃんは思ってるのね。わたしもそれには賛成よ?」
「そうだよねー。タレントとして活動するとかしないとかに関わらずうちに抱えられてたらいろいろできるのになぁって…」
「まあ、それは本人とクズちゃん次第だと思うわよ?
わたし達は今日のイベントのことを考えるのが先よ。
じゃあ、最後サイドやっちゃうわね〜。」
あたしの統括プロデューサーをちゃん付けで呼べるのは全スタッフ探してもこのフジちゃんしかいないだろうなぁ…そんな事を考えながらあたしはコテが入るのを待つことにした。
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「あのっ!湖の乙女さんですよねっ!サインください!」
「おねがいします!!」
三人各々会計を済ませてトワレコを三人並んででたところでわたし達より2つくらい下の中学生みたいな子二人組が声をかけて来た。
「ええっと…」
「もしかして君達かなぁ…さっきから私達をつけて来てたのは…」
わたしがどうしようか悩んでいると紀穂が少し腹立たしげにそう言った。
「えっ、あっ、はい。ごめんなさい!!
声かけるタイミングがわからなくって!!」
そう言って深々と頭を下げる二人をみたらなんとも責めることはできそうになかった…
「わかったから頭を上げて。
今回は特別に許してあげます。サインもしっかり描いてあげましょう。だから今度からこういう事はやめてね。あ、あとネットには載っけないでね?」
たびたび感じた視線がこの二人のものだったならサインを書いてあげた方が早いのではないかと思ったから丁寧に対応してあげることにした。
「は…はい。わかりました!ありがとうございます」
「ありがとうございます!大事にします。」
そう言ってわたしからサインを受け取って立ち去っていく二人の笑顔をみたらねだられたならサインくらいしてあげてもいいなって気になった。
素敵な笑顔を見れるってのは良いことだなってちょっと思ったんだ…
「茜良いことしたなって顔してるわよ?」
奏が少しだけニヤニヤしながらそう言った。
「だって、笑顔も見れたし良かったかなって」
奏のいじるような言い方とニヤニヤした顔に反抗していじけるようにそう言った。
「案外茜はアイドルとかの気質がありそうね。」
「そうだね!しかもこの可愛さなんだしもはやアイドルになっちゃえば?」
わたしの軽いいじけにも慣れてきたのか二人ともわたしのいじけをスルーしてそんな話を始めた。
「えー。なんでそうなるのさっ!」
「だってどう考えてもアイドルとかの考えよ?それ。」
「普通はストーカーされた挙句サインまでせがまれて笑顔が見れたからよしなんて発想にはならないでしょ。」
紀穂はまだしも奏でにまで真面目にそう言われてしまった。
「あの〜。私達にもサインいいですか?」
二人とそんな会話をしていたら今度は同い年くらいの数人の女の子達に声を掛けられてしまった…
「えっ、あ、はい。」
勢いのまま間違えていいと言ってしまった。
「ちょっ!何オッケーしてるのさっ!」
「まあ、いいじゃん!茜もあの子達も楽しそうだし。」
サインを書く流れで色々喋ってみると最初にレイクモールで撮影した時に見ててくれた人みたいであの時の洋服の話とかになって案外楽しいっ♪
「まあ…茜がいいならいっか…」
そんなこんなで女の子達全員にサインし終わって辺りを見回してみると軽く人だかりが出来ていた。
「ちょっとこれはマズい?…」
「「かなりマズいんじゃ…」」
人だかりを見て二人に向き直ってみると二人もおんなじ心配を浮かべていた。
「ちょっと何やってるんですか!?」
人だかりを掻き分けて入ってきたトワレコの店員さんがその中心にいたわたし達に向かって少し怒った様な形で迫ってくる。
「あのっ!ごめんなさいっ…
サインせがまれて書いてあげてたらあんなことに…」
「とりあえずこちらに来てください!!」
慌てている様子の店員に連れられてわたし達はバックヤードの様なところまで連れられて来てしまった。
「コレってやばい?」
「かなり怒られちゃうんじゃ…」
奏も紀穂も少し青い顔をしながら案内されるままに店員さんの後について歩いている。
「ううっ…わたし達サインしてただけなのに…」
そういうわたしもそんな泣き言を垂れて顔は真っ青になっているに違いない…
「もうしばらくお待ちくださいね。ちょっと遠いもので…」
結構歩かされたなぁなんて思いながら歩いていると店員さんがナイスタイミングでそんな事を言い出した。
「これってどこに向かってるんです?
だいぶ店舗からは遠くなっちゃってますけど…」
紀穂が勇気を出して店員さんに聞いてくれた。
「こちらです。……失礼しまーす。お連れしました」
店員さんは少し答えに戸惑った後に白い扉の前に立ち止まってそう言って扉をノックした。
「はーい。どうぞ〜」
ん!?…この声って…
なんだか嫌な予感がしたけど恐る恐る扉の中に入るとそこに居たのはやはりひーちゃんだった…
「ひーちゃんなんでここに…」
わたしは部屋に足を踏み入れるなりそう言った。
「あー…あたし今日ここでイベントやるんだよね」
「答えになってないよっ!!」
少しだけ感情的にになってしまったけどすぐに紀穂や奏が居ることに気づいて冷静になる…
「あの〜。姉妹で仲睦まじくしてるところなんなんですけど私たちってなんで連れてこられたんですかね…」
わたしがハッと冷静になったくらいのナイスタイミングで紀穂が申し訳なさげにそう言った。
「えっ!?ああ、そうだった…
自己紹介まだでしたよね?あたしあ〜ちゃんの双子の妹の緋雪です。ヨロシクねっ?」
「いや、そういうことじゃないでしょ。
あ、こっちのメガネの娘が矢沢紀穂ちゃんでこっちが椎名奏ちゃん。」
ツッコミながらもちゃんと二人を紹介しちゃうあたり自分の真面目さを少し恨んでしまう…
「あ、矢沢紀穂です。茜とは仲良くさせてもらってます。」
「椎名奏です!!会えて感動です!!お姉さんとは仲良くさせてもらってます。」
「うん。ヨロシクね〜。」
二人がひとしきり自己紹介を終えたところでわたしは本題に入る事にした。
「ねぇ、ひーちゃん!どうしてわたし達が連れてこられた先にひーちゃんがいるのさ…連れてきてくれた店員さんもすぐいなくなっちゃうし…」
「あー。一応助け舟を出してあげたって感じかなぁ…コレ、見てわからない?」
そう言ってひーちゃんはケータイを取り出してわたし達の前に突き出した。
「コレって…」
「さっきまでのあたし達?」
「まさか…」
「そうそのまさか。あ〜ちゃん達が盗撮されてこうやって行動が実況されちゃってるもんだからこのままじゃ騒ぎになるんじゃないかって思ってね…」
まさかSNSで実況までされちゃってるとは思わなかった…
やけに視線を感じると思ったら…そういう事だったのか…
「それでわたしがスタッフさんに頼んで騒ぎが起こらないように助けてもらおうと思ったら一足遅く騒ぎになっちゃってたってワケ」
あっけらかんとして言うひーちゃんに少し戸惑ったけど状況はなんとか掴めたような気がする
つまりたまたま居合わせたひーちゃんが私たちを助けくれたってわけだ…
「つまり…わたし達は怒られるためにここに呼ばれたとかじゃないってことだよね?」
紀穂と奏が心配しているであろうことを結論として使うことでなんとか2人の緊張状態がほぐれるようにあえてこんな言い方をした。
よくよく考えてみたらわたしはひーちゃんの姿を見たことで安心したけど2人はひーちゃんとは初対面だしテレビの中の人が目の前に居るのだから緊張で気が気じゃないだろう…
「まっさか〜なんであ〜ちゃんのこと怒んなきゃいけないのさ…」
「そうだよね、はぁ…」
ホッとして胸を撫で下ろして2人の方を見ると2人も同じような顔をしていた。
「そうだったんですね…私達てっきり店員さんとかに怒られちゃうんじゃないかと思ってましたよ…」
「そうそう!店の前であれだけ騒ぎを起こしちゃったんだから何かお咎めでもあるんじゃないかって心配してたんだけどよかったぁ…」
「じゃああたしはそろそろステージの時間だから行くね
3人ともとりあえず状況が落ち着くまではここに居ていいよ。なんだったらそこのモニターでイベントの様子とかも見れると思うし…
それに今出ていってもさっきの二の舞になるのは見え見えだしね」
安心するわたし達をよそにそんなことを言い残してひーちゃんは可愛らしいステージ衣装を揺らしながら出て行ってしまった。
「行っちゃったね…どうする?あたし達…」
ひーちゃんが部屋から出て行ってしまうのを三人でボケっとしたまま見送った後凍りついた様に止まっていた部屋の時間を再び動かしたのは奏だった。
「とりあえずここでしばらく大人しくしてるしかないよねぇ…外に出ても見つかったらまた騒ぎになりそうだし…」
「ごめんね…こんな事に巻き込んじゃって…
わたしがもっとしっかりしてれば…」
冷静に二人が状況を判断しているのを見てなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
せっかく三人で楽しく遊んでいたのに…
「そんな事ないって!あの宮永緋雪ちゃんの楽屋にいるってなかなかない体験をさせてもらってるワケだしむしろラッキーってくらいにしか思ってないから大丈夫!」
「そうよ。かなでの言う通り。
茜か気に病む必要なんてないって。
どうせ目的があったワケじゃないんだし」
そうやって笑って言ってくれる二人に救われた様な気がした…
コンコン。
「失礼します。」
ひーちゃんに促されて三人で並んで座ったソファでそんな会話をしていたらノックをして礼儀正しく30代後半くらいのビジネスマンにしてはラフな格好をした男の人が入ってきたと思ったらさっきまでひーちゃんが座っていたわたし達の向かいのソファにドサッと腰掛けた。
「はじめまして、緋雪のプロデューサーをしている葛原と申します。」
「は、はじめまして…宮代茜です…」
葛原と名乗ったその人の雰囲気は所謂業界人の匂いがプンプンする感じで正直名乗られなくてもこの人はひーちゃんのプロデューサーなんだろうなってすぐわかった。
そのプロデューサーさんが何の用なのか少し警戒しながらとりあえず挨拶をした。
「うんうん。話は緋雪から聞いているよ。
まあ、実際手を打ったのは俺だしな。
それでだ、今回の件も含めてキミに話があるんだ。」
うわぁ…なんて言うかこの自信に満ち溢れた感じとか話が早い感じとか地味に恩着せがましいところとか苦手なタイプの人だ…
「キミ、うちの事務所と契約してアイドルにならないか?
アイドルが嫌って言うのなら女優でもモデルでもなんでもいい。君の容姿ならアイドルじゃなくてもモデルでも女優でも希望するものにはなんでもなれるだろう。」
わたしが少し難しい顔をしたのも御構い無しに葛原さんはそう畳み掛けた。
「すごいじゃん!!茜アイドルだってよ!?
茜なら絶対似合うと思うなぁ〜。」
「こらこら、そう言うのは茜が決める事なんだから私達がとやかく言う事じゃないでしょ。」
わたしが返事に困っているところにテンションの上がった奏がそんな事を言ってくれたけど紀穂がツッコんでくれたからすぐ落ち着いたみたいだ…
嬉しいけれどわたしがアイドルなんて務められるわけはないしそもそもわたしは日向達とまたバンドをやるんだ…
「うーん。少し考えてもいいですか?
わたしやりたい事もあるので…」
「もちろん。すぐに答えを貰おうとは思ってないしそんなすぐ決めてしまうくらいなら逆に少し考える様に言っているところだ。
詳しい話はこの後緋雪にでも聞けばいい。」
わたしがスパッと時間をもらえるように答えると葛原さんもそれを分かったように答えを返してきた。
まあ、確かにいきなりアイドルにならないかって言われてソッコーうなづく人もなかなかいないか。
「最後に、俺から一つ忠告してもいいかい?
君はもう有名人の仲間入りをしようとしてるって事を少し自覚した方がいい。
ワイドショーの1コーナーとはいえテレビにも取り上げられているくらいなんだから。
これからは出かける時は少しくらい顔を隠すようなファッションをするべきだろうな…」
わたし達に喋る隙を与えないくらいのテンポでそう言った葛原さんはそのままソファから立ち上がって扉の方へ向かって歩き出した。
「じゃあ緋雪のステージも始まる事だし俺はドロンさせてもらうよ。
帰りはこちらから車を出すから緋雪と一緒に送ってあげよう。そちらの二人も一緒にね。」
まるでまた面倒な事になるから家まで送るとでも言いたげにそう言い残して葛原さんは部屋から出て行った。
「送ってくれるみたいだし今日はもうショッピング諦めよっか。」
「そうだねー。帰りにあのえげつない満員バスで渋滞に巻き込まれるって事もないしそっちの方が楽だよね。」
幸い二人とも葛原さんの提案に乗り気なようだし葛原さんの思惑通りになっているようで少し気に食わないけどここはおとなしくひーちゃんのステージが終わるのを待って送ってもらう事にした。
二人が言ってる地獄絵図みたいな状況を想像して楽しいショッピングと天秤にかけたワケじゃない…
断じてそんなワケじゃない…
「じゃあゆっくりおしゃべりでもしながらひーちゃんのステージでもみよっか。」
そう言ってこの後の予定を決めてしまうのであった。




