40話 楽しい時間はあっという間
『茜今どこにいる?場所わからないだろうから迎えに行くよ?』
『どうせもう帰るだけなら下駄箱で待ち合わせでよくない?茜も下駄箱の場所はわかるでしょ』
『わたしどこいけば良いかわかんなくてとりあえず教室戻ってきちゃった…』
二人にMINEで連絡をしたら程なくして連絡が帰ってきた。
ちなみにこっちのゆるキャラみたいな奴のアイコンが紀穂でこっちのいかにもな自撮りのアイコンが奏だ
え、わたしのアイコン?…雪ねぇとの2ショット…
ってそれは良いだろっ!
『近いし迎えに行くね。どうせならどこ行くか部室でダラダラしながら考えたほうが良いでしょ』
『わたしが部室入っちゃって良いの?
他の人が気を使うんじゃ…教室空いてるよ?』
部員でもないわたしが部室に誘われている事に引け目を感じてとりあえずそう返した。
『いいのいいの!どうせ誰も来ないもん!
それにあたし達が色々持ち込んでるから部室の方が快適よ?』
「茜〜。待ったぁ?…」
自分の席に座ってそわそわしながらケータイを覗き込んでいると奏の元気な声が聞こえた。
「全然待ってないよっ。それに迎えに来てくれた事がもう嬉しいよ!」
教室に一人っていう状況がちょっとだけ心細かった事も相まってか奏が来てくれた事が心から嬉しかった。
「茜可愛い〜!そう言われたらあたしまで嬉しくなっちゃう!!」
そう言って奏が抱きついてくる…
「かっ、かっ、かなでっ!…ちょっ!!」
こみ上げてくる恥ずかしさからわたしは手足をバタバタさせてなんかよくわからない状態になってしまう…
なんて言うか女の子と抱き合ってるっていう嬉しさと恥ずかしさできっとわたしの顔はさぞかし真っ赤になっているだろう…この顔の火照りで尋常じゃなく真っ赤になっていると想像できる…
「そこまでにしてあげて?
茜が尋常じゃなく恥ずかしがっちゃって可哀想だから…」
しばらく奏に抱きしめられていると紀穂が教室までやって来てやんわり奏を止めてくれた。
「あ、ごめんね〜?ついテンション上がっちゃって…」
「う、ううん?大丈夫だよ?…
ちょっとびっくりしちゃっただけだから…」
「とりあえず部室いきましょ?お茶淹れてあげるから。」
なんか微妙な空気になってしまったところを紀穂がそう言って救ってくれた。
「ねぇ、ほんとに行っちゃっていいの?
それに放送室でお茶とか飲んじゃっていいの?」
「いいのよ。わたし達くらいしか使わないわけだし…それにわたし達の部室は放送室じゃないからお茶もお菓子もオールオッケーなのよ。」
「ええっ?そうなの?放送部なのに?」
「放送室は放送研の部室になってるからね!」
わたしが素直に驚くと紀穂がそう言って得意げにポーズをした。
いやいや、誇ることじゃないでしょ…
それに放送研と放送部の違いがわからない…
「正しく言うとわたし達の部活って放送部じゃなくてラジオ研究会なのよね…」
「実質的な放送部は放送研なんだけどぉ…
あっちは放送コンクールに向けたガチな活動しかしてなくって…その分あたし達ラジオ研究会が校内放送とかお昼の放送とかを担当してるからラジオ研究会が通称放送部って呼ばれてるわけ!」
紀穂のコメントに奏が元気よく補足を入れてくれた。
やっぱこの二人のコンビは面白いと思う…
って言うかそんなの初耳だよ!
うちの学校の放送部がそんな風になってるなんて…
「へー…なんか色々あるんだね…大変そう…」
「そーでもないよ?仲悪いわけでもないし…
校内行事とかでも分担して作業してるし〜、合同でお昼の放送したりもするしっ!」
本当かなぁ…奏があまりに元気っ子だからそういう風に見えてるだけじゃ?…
「本当に割と仲良しなのよ?
もともとうちの放送部は強かったから本気でやってる人と楽しみたい人の意見があまりに違っちゃうから自然に今の形になったみたい。
それに割と畑が違うのよ。テレビで言えばあっちは報道でわたし達はバラエティって感じだし。
それに相互で移籍を認めてるからいざこざもなかなか起きないもの。」
紀穂の説明で割と納得した気がする…
純粋に割と自由にやりたい人と本気で色々とやりたい人で分かれてるってだけなんだ…
「そのお陰で放送部は割とテキトーな人しかいないし人もなかなか集まらないってわけ。
どう?茜も放送部入ってみる?」
「うーん。ちょっと考えさせて?」
紀穂がフランクな感じで誘ってくれたけどバンドの事もあるしやっぱり少し厳しいかな…
「そうだよね!色々あるもんね、放送部はいつでも門戸を開いてるからやりたくなったらいつでも来てね!」
奏がそう言ってくれたから空気も悪くならずに済んで良かった。
「ここがあたし達の部室だよっ!」
2年生の教室の並びを抜けた校舎の一番端の少し狭い教室の前で奏は手を大きく広げてそう言った。
扉に掛かっているラジオ研究会と書かれた看板には赤で大きくバツが書かれておりその上に「ほうそう部!」と可愛らしく書かれた看板がかかっていた。
「どうぞ入って〜。」
「お邪魔しまーす。」
紀穂が鍵を開けて扉を開けるとわたしを促してくれたのでちょっと遠慮しながら教室に踏み出した。
「どう?居心地良さそうでしょ?」
後ろから入ってきた奏がわたしに軽く抱きつきながらそう言った。
「確かに色々あるしキレイだし居心地良さそうだけどこれが本当に学校なの?って感じする…」
あたりをキョロキョロと見回しながら率直な感想を言ってしまった…
だって真ん中に四つ並べられた机には可愛らしいラグが敷かれてるし奥の壁側に置かれている棚にはティーカップとかが並んでるしその上には電気ケトルに電子レンジまである。
もっと驚きなのは誰が持ち込んだのか冷蔵庫やテレビまであるところだ…
唯一放送部として主張しているのは窓側に置かれたケーブルがたくさん繋がったパソコンと隣に置かれたPA卓らしきものと卓上マイクくらいだった…
「まあ、普通に考えて色々あり過ぎだよね…
私も入部した当初は割と引いたもん…」
「まあ、お陰で快適に過ごせてるんだしいいじゃん?
茜も早く座って座って?紅茶でいい?」
そう言って奏は電気ケトルの電源を入れてティーセットの準備をし始めた。
「奏が淹れる紅茶美味しいんだよ?毎日飲みたいくらい」
「紀穂は割と毎日飲んでるじゃん」
奏から珍しく冷静なツッコミが飛んできた。
紀穂がそれに驚いていないってことは割とよくあることなのだろう…
「ん!この紅茶美味しい!!
まるでお店で飲む紅茶みたい!!」
紀穂がお上品な手つきで出してくれた紅茶を口に含むと香りが広がってなんていうか…
とにかく美味しい!!
「んふふ〜。そうでしょそうでしょ〜?」
わたしの反応を見て誇らしげな紀穂は結構可愛かった。
「なんか奏も紀穂もイメージと違った一面がいっぱいあってなんだかそれを見れるのが楽しいって言うか嬉しいっていうか…」
なんていうか着実と友達関係を築けてる気がしてなんだか少し感動してしまった。
女の子としてちゃんとやれてるってのがわかったような気がして…
「友達とこうして仲良くなるとかなかなか無かったし…女の子の友達なんてできたことなかったから…」
「じゃあ、今度は茜が色んな面を出していく番だね。
まあ、なかなか勝手は掴めないと思うけどいっぱいお喋りしていっぱい遊んで仲良くなろうね!」
「じゃあさー。茜はどんな部活に入りたい?」
紀穂がきっかけを作ってくれたこれもきっとちょっとでもわたしが自分を出せるように考えてくれてるんだって考えたら本当に二人は優しいんだなって実感する。
「うーん。本当はね、わたしバンドがやりたいの。
出来れば日向達とバンドが組みたいの…お兄ちゃんの状態が本当に良くないみたいで…病気が治ったとしてもバンド活動を出来るか危ないみたいで…
わたしはお兄ちゃんの全てだったバンドを無くしたくないの…きっと何かが違っちゃうんだろうけど形だけでも、名前だけでも残してあげたいの…」
「やっぱり橙哉くん良くないのね…
アメリカにまで治療しに行くくらいだし…
私は茜の気持ち応援してあげたい…」
「茜は本当にお兄ちゃんが好きなんだね…
あたしもアニキがいるけどそこまで思えないなぁ…」
二人ともなんだか優しい目をしてそう言ってくれた。
「お兄ちゃんはわたしが入院してる時にいっぱい構ってくれたし応援してくれたの。それに日向達っていう友達まで作ってくれた。だからわたしは今こうやって前向きでいられるんだよね…」
「茜にとって橙哉くんはヒーローなんだね。」
「もはや大事な大事なわたしの一部だよ。お兄ちゃんは」
「茜って少しブラコンさんなのね。」
奏が少しニヤッとしながらそう言った。
「ち、ち、違うもん! そういうんじゃないもん!」
「ねぇ、茜…
スカーレットのファンとして一つ言ってもいい?
橙哉くんは橙哉くん以外の何者にも代えられない…
わたし達にとっても橙哉くんはヒーローなの。
だから茜ちゃんがもしスカーレットに入ったとして受け入れられるとは限らないよ?
もちろんわたしは茜のこと応援してるけどね。」
「それは…そうだよね…それでもわたしは頑張りたいな…もはやこれはわたしの夢でもあるから。」
そうだよね…もしメンバーを納得させられても今度はファンのみんなを納得させないといけないんだ…
それはきっと茨の道だよね…
紀穂よりも古参のファンの人だっているんだもんね…
「じゃあ頑張らないとじゃん!
あたしも茜の願いが叶うように応援してるよ!
それにしてもさ〜茜ってバンドって言うよりアイドルとかの方が似合いそうだよね?」
奏が何気なく言った一言がなんともわたしの状況を的確に示してると言うか…
「確かにそれは思うわね!まあ、茜の顔ならメイク次第でアイドルにもバンドマンにもみえそうだけど」
「それは言えてる〜。素材がいいもんね!」
「もうっ!おだてたって何も出ないよ!?」
わたしは顔を真っ赤にしながら恥じらうけどこういうやり取りがなんだか楽しいっ!
「そう言えばお昼ご飯どうする?
普通にワクドとかファミレスいく?」
「うーん。それならそのあと遊ぶのも考えてミロードでがいいんじゃない?お店もいっぱいあるし」
紀穂が提案したミロードとは学校から歩いて15分くらいの所にある商業施設でゲームセンターにカラオケに若者向けのショップなど遊ぶにはもってこいな場所だ
ちなみにそんな楽しげな施設なのに駅が遠いので平日は割とガラガラだ…
ちなみにこの辺は学校も割と多いので学生が割と集まりはするけど学校のあるエリアから駅とは反対側なので学生でいっぱいになったりはしないのがいいところだ。
家からだとエオンの次に近いショッピングモールだ。
「ミロードいいと思う!!わたしミロード行ってみたかったの!!」
「じゃあ決定ね!そろそろお昼時だしミロード向かおっか!」
「そうだね!じゃあティーセット片付けちゃうからちょっと待っててね!」
そう言って奏はティーセットを持って教室から出て行ってしまった。
「奏こういう要領いいでしょう?一時期純喫茶にハマってたらしくてコーヒーやら紅茶の淹れ方をマスターしたみたいなのよね…その時にこういう手際が良くなったんだって」
「あははっ…なんだか奏らしい理由だね。
でも一時期ハマってたくらいであそこまで出来るようになるってすごいね。」
「あの子一度ハマるとトコトンやるタイプだからね。
ラジオだって私が教えたんだけど今や私より詳しいしこの春からはピンで番組任されるくらいなんだから」
紀穂はちょっと寂しそうな悔しそうな感じでそう言った。
「紀穂は番組やってないの?」
「私はまだまだ先輩の番組にコーナーを持ってるだけなのよね…私って才能ないのかなぁ〜
裏方の方が向いてるのかな〜って思う時もあるもん」
「まあ、先輩達すごいDJばっかりだもんね…
あたしだって先輩達と肩を並べないとって思うと少し荷が重そうなきがするもん…」
わたし達のやり取りをいつの間に聞いていたのか廊下から戻ってきた奏がそうフォローする。
「二人なら大丈夫だと思うけどな〜。
特に二人のやり取りなんて面白いしわたし好きだよ?」
ピンで番組を持てるほどの奏と紀穂のたまに来る面白さが合わさったら絶対面白いと思う。
「そうね!それもありね!考えておくわ!」
紀穂がすごいテンションで詰め寄ってきた。
「じゃあ片付けも終わったし行こっか!」
奏も紀穂のテンションに当てられたのかいつも以上のテンションで右手を高々と掲げてそう言った。
「「うん!!」」
わたしと紀穂も奏のテンションにつられて三人ともテンションの高いまま部室を閉めてミロードへ向かう事になった。
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「はぁ、それにしても大変だったね…」
「あれは完全に茜目当てだったわね。」
「それにしても学校のすぐ側で制服着てる子ナンパする奴なんているんだね。」
わたし達はミロードのフードコートで食後のお茶を楽しみながらそんな話を始めた。
学校を出てからというもの校門のすぐ側で高校生っぽい人に声をかけられミロードに向かう途中にも割とひっきりなしに声をかけられ…もうグッタリだよ…
「あいつらうちの学校の先輩じゃなかった?」
「たまに見かけるよね〜。あのチャラ男達」
「って言うかちょくちょく出てきたレイクモールの美少女って誰よ?」
そうなのだ。さっきから声を掛けてきた奴らが端々に口にしていたのが「レイクモールの美少女くらい可愛いね君」っていう言葉だ…
そりゃあそうでしょうよ。だってわたし本人だもん…
勝手に祭り上げられてる本人だもん…
「え〜紀穂知らないの〜?
最近twetterとかで有名じゃん!
レイクモールにたまーに現れる謎の美少女だよ!
レイクモールでなんかの撮影をしてる姿を見るのに500人以上集めたとか…まだデビュー前の芸能人だとか…あの話題の宮永緋雪の妹ちゃんなんだとか…もうとにかく凄いんだよ!!
名前は確か〜。『AKANE』ちゃんとかなんとか…ん?茜?んん?」
「んぐっ!!」
な、なんで名前までバレてんのよ…
この間調べた時はまともに顔が分かりそうな写真がなかったら安堵してたのに…
「え、もしかして本当に茜なの?…」
わたしのわかりやす〜い反応を見て紀穂が食いついてきた…
やってしまった…涼しい顔してやり過ごすべきだった…
「勝手に周りに祭り上げられてるだけだよ…」
「デビュー前の芸能人ってのは本当なの?」
「そんなの真っ赤なウソだよ…」
「緋雪ちゃんの妹ちゃんってのも?…」
「そ、それは…ナイショだよ?それにわたしはひーちゃんの誘いを受ける気はないんだって…」
二人が詰め寄ってきて興奮して声が大きくなってきたので二人にコソコソ話でそう言った…
どうせそのうちバレることなんだ…
早めに話しておいて損はないだろう…
「本当にこの話はナイショにしておいてよ?
ひーちゃんにもお姉ちゃんにも迷惑かかっちゃうから…」
口をあんぐり開けて驚く二人にわたしはもう一度念を押した。
「茜ってなんだか凄い人だったんだね…」
「確かに人間離れした可愛さだとは思ってたけど…」
奏も紀穂もなんだか雲の上の存在でも見るかのような目でこっちを見てくる。
「もー。普通にしてよ〜。たまたま雑誌の人にスナップ写真を頼まれただけでそれ以外何も特別なこと無いもんっ!」
「ごめんごめん。なんか茜の意外な一面に驚いちゃっちゃっただけだから…そんなに拗ねないで?」
「そうだよ!ちょっと意外だっただけ!」
なんかご機嫌を取られてるようでなんだかアレだけどまあ、そう言ってくれるならわたしも機嫌を直さないと…
「それにしてもなんで名前まで出ちゃってるかなぁ…
前に調べた時はまともな写真だって見つからなかったのに…」
「名前はフツーにサインの写真が出てたからモロバレよ?」
「ん?…サイン?…あっ!あれかぁ!」
すっかり忘れてたけどわたしあの時声かけられた女の子にサイン書いてるんだ!
あちゃー…わたし自分から名前晒しちゃってるじゃん…
「サインなんか書いたの?茜。」
「ほら、コレ!」
「かかか、奏っ!やめてったら!」
紀穂にサインの画像を見せようとする奏を慌てて止めようとするけど時すでに遅し…
わたしの手が届いた時にはもう紀穂の目にその画像がくっきり映っていた。
素人のサインなんて黒歴史モノを友達二人に見られてしまった…恥ずかしくってたまらない…
「あれ?これどっかで…
もしかして橙哉くんのサインを参考にしてるの?」
「急に頼まれたからサインって言われて思いついたのがお兄ちゃんのサインだったから参考にさせてもらっちゃった…」
「それにしても案外ノリノリだったのね…茜。
サインまで作って書いちゃうなんて…」
紀穂がサインの方に気が向いてくれたからわたしの恥ずかしい行動とかには気が向かなかったんだと安堵したらやっぱりそう思ってたんじゃん!!
「それは…わたしはちゃんと芸能人とかじゃないんだよって断ったんだけど相手の女の子が引き下がってくれなくって…」
「茜そう言うの断れなさそうだもんね
ナンパだって断り辛そうにしてたし」
「さすがにわたしもあーゆう輩は丁重にお断りさせてもらうよ?さっきはもうなんかめんどくさくなってあのままいたらキレちゃいそうで我慢してたってのもあるから…」
さっきのナンパ軍団に内心本気でイライラしていたわたしは下手にうまく断ろうとして揉めるのもやだなぁなんて思っていたらなんだか変な方向に見えていたみたいだ…
「うわっ、案外茜ってアグレッシブなんだね。
怖くて何もできなーいみたいなタイプだと思ってた。」
「まあ、あんな奴らと友達になれるくらいだしきっと肝っ玉は座ってるのよ。意外とね。」
「あははっ!日向達が聞いたら怒りそうだね。」
紀穂のその少し毒が聞いたところとかわたし好きだなぁ…
「実際茜とか紀穂と仲良さ気じゃなかったらあたしからだとなかなか声をかけないタイプだなぁ〜あの三人。」
「あいつら普段あんなつっけんどんな態度なのにいざステージに立つと愛想振りまいちゃうんだからズルいよね…態度が違いすぎるんだよ…」
わたし達ってそう見えてたんだ…
なんていうか悲しいなぁ…
まあ、女の子からしたらつっけんどんな日向にクールで口下手な大和にチャラチビの和希だもんな…
「まあ、あのメンバーならダントツに橙哉くんがとっつきづらかったけどね…
いっつも気だるそうにしてるし音楽の事しか考えてないしそれにあの美形じゃん?女の子に積極的に関わっていくタイプでもなかったし…
それなのにしっかりステージだとアツくて王道でカッコ良いんだよね…」
「あー、橙哉くんってたまに女子から騒がれてたあの子か!なんかカッコ良いのに女の子と喋んないしダルそうだし声掛けづらい!って言われてたね」
まさか自分の話題になるとは…
っていうかわたしこんな風に思われてたんだ…
「お兄ちゃんやっぱり噂されてたりしてたんだ…」
「茜ちゃんなんか黒いオーラ出てるって!!」
へ?なんでわたしがそんなオーラ出さなきゃいけないのさ…
もし本当に出ているんだとしたらそう演じてたら少しずつ本当にそうなってきちゃうみたいな奴かな…
「本当お兄ちゃん好きなんだね」
「本当そーいうのじゃないから!!」
「そろそろ色々見て回る?あんまりダラダラしてると時間なくなっちゃうよ?」
紀穂のイジリに全力で否定して顔を真っ赤にしていると奏がそんな事を言い始めた。
「それもそうね〜。茜どっか見たいとこある?」
「うーん。あんまりこういう所わかんないから任せるよ?あっ!強いて言えばパーカーが見たい!!
プルオーバーで〜大きめサイズの可愛いのが欲しいなぁ〜って…」
昔着ていたやつだとやっぱりブカブカすぎてなんだかそれそれでどうなんだって感じになっちゃうから新しいのが欲しい…
特にプルオーバーなんて肩がずり落ちちゃうから切れたもんじゃない…
「私春物は買っちゃったし特に見るものないんだよね…」
「あたしも先週買っちゃったばっかり。
じゃあ先に茜のパーカー見に行って〜、その後プリクラ行こっか!」
プ、プリクラ!?
え、どうしよう…プリクラなんて撮ったことほとんどないって!
まあ、男同士でプリクラ撮るなんてキモいだけだし…
プリクラ撮るような仲の女の子も居なかったし…
時たま雪ねぇとひーちゃんに連れられて撮らされたくらいしか経験がない…
「わたし…プリクラ…初めて…」
「なんでカタコトなのよ…まあ、安心して?
今のプリクラはなんでも勝手に補正してくれるんだから!すっごく楽しいんだよ!」
まるで自分の事のように得意げに自慢する奏だけどまるで安心する要素が見つからない…
「茜レベルだとプリクラじゃなくって写真撮った方が可愛く映るからハマったりしないんじゃない?」
「わたしはどうせ微妙な顔立ちですよ…」
いやいや、奏が微妙な顔立ちなら全人類の7割はブサイクになってしまう…
ちょっとおてんばな感じが目元とかに出てるけど奏は正真正銘美少女だと思う。
「奏が微妙な顔立ちなら私は何になるのかしら…」
紀穂〜その顔怖いよ…紀穂こそなんか黒いのが後ろに見えるって!
「ご、ごめん…でも大丈夫よ。紀穂も十分可愛いって」
「そうだよ!紀穂すっごく魅力的だと思うよ!」
親しみやすい感じの温かい顔立ちに優しそうな笑顔に知的に見えるメガネだって可愛いポイントだと思う。
「あ、ありがとっ…」
わたし達がそう褒めると紀穂は照れてしまった。
「じゃあ気を取り直して先にプリクラ行っちゃおっか!洋服見たりしたら髪の毛とか崩れちゃうだろうしさっき直したんだし今のカワイイまんまプリクラ撮ろうよ!」
奏がそう言ってわたし達の手を引いてゲームコーナのある方まで歩きだした。
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「プリクラってすごいねっ!!」
わたしは柄にもなく興奮してしまった。
最近のプリクラの進化は凄いみたいでわたしが思ってるより数段可愛く撮れてしまった。
しかもよくプリクラの画像で見る目が異常に大きかったり肌が異常に白かったりすることもなくバランスよく補正されている感じが凄い…
まあ、わたしがプリクラ撮ったのなんてひーちゃんのデビュー前だから3年前くらいだもんね…
「でしょでしょ?やっぱり楽しいよね!」
「うんうん!」
「はいはい。あんまりここで溜まってると迷惑だから次行こうね〜。」
「ほら、紀穂もカワイイよ?」
移動しながら奏が切り分けてくれたプリクラを渡す。
「あ、ありがと…」
「後でデータMINEで送るね!」
プリクラで撮った画像を奏が一括ダウンロードしてくれたみたいでなんか奏がやれば全部のデータをダウンロード出来るらしい。
「じゃあパーカー見に行こっか。」
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「あんま良いのなかったね…」
「そろそろ帰ろっか。もう遅いし」
「私達バスだけど茜はどうする?」
可愛いパーカーがありそうなお店をあらかた見終えたわたし達は中庭みたいになってるとこを歩きながらそんな話を始めた。
「うーん。そんなに遠くないから歩こうかなって…
ついでに晩御飯のお買い物でもして帰りたいし」
「茜ご飯自分で作ってるの?」
「うん。家お母さんいないから…
お姉ちゃんと二人で分担してるの。
お兄ちゃんいなくなっちゃってお姉ちゃんばっかりに負担かけられないし」
「大変なんだねぇ…」
「荷物持ったり手伝おっか?」
「いいよぉ〜。どうせ大したもの買わないし。
それに家の近くバス停ないから帰るの大変だよ?」
「じゃあ私達はバスで帰ろっかな…
明るいうちに帰るんだよ?
変な人についてっちゃダメだよ?」
「わかってるって!あ、わたしこっちからだ…
じゃあまた明日ねー!」
ちょうど家に近い方の出口の近くまで来たのでそう言って別れる事にした。
「うん!じゃあまた明日ね〜!」
「また明日ね〜!」
二人もそう言って手を振って歩いて行ってしまった。
ピロリンッ!
『今日は楽しかったね〜
また遊ぼうね〜!!』
『茜気をつけて帰るんだよ〜!』
わたしがミロードの敷地から出るあたりで二人からMINEが来た。
『ありがと!今日はほんと楽しかったよ!
また明日ね〜!!』
ピロリンッ!ピロリンッ!
わたしがそう返すと二人して可愛らしいスタンプで返してくれた。
ああ〜、今日楽しかったなあ〜。
さっ、買い物して帰ろう。
今日の晩御飯は何にしよっかな〜
そんなことを考えながら帰り道を歩いた。




