38話 クラスと係とお姫様!?
「はぁぁ…疲れたぁ…」
教室に帰ってくるなりわたしは机に突っ伏してそんな弱音を呟いてしまう。
「校長先生の話長かったもんねー。
私の前にいた奏とかもう首カクンカクンしてて面白かったよ。」
「いやー。昨日は学校楽しみで眠れなくってさ…それに校長先生の声ってなんだか眠くなるんだよね〜。まるで眠くなる効果でもあるんじゃないかと思っちゃうよ…」
机に突っ伏しているわたしの方を向いて希穂は奏のそんな姿を思い出したのかクスクス笑いながらそんな事を言ってきた。
それにきっちり返す様にどこからともなくやってきた奏はおどけた風にそう言った。
「奏はきっと校長先生の話じゃなくっても寝るんじゃない?」
「失礼なぁ!」
そう言ってじゃれあう二人はやっぱり普通の女子高生だなって思ってとても眩しく見えた。
「大丈夫。茜だって同じ様に見えてるさ。
もっと自信持っていいんだよ。茜はしっかり女の子なんだから。」
突っ伏した体勢のまま二人をまぶしげに見ていたら日向がそう囁いた。
もうっ!勝手にわたしの心を読まないでよ!
「ひゃんっ!!
ちょっとやめてよ日向!」
くすぐったさと気恥ずかしさからわたしは自分でも聞いたことのない声を出してしまった。
わりかし教室に響いてしまったのか教室中の視線がわたしと日向に集まる。
さらに、わたしが心を読まないでって意味で言った言葉が誤解を生んだのか日向に嫉妬と憎悪に満ちた視線が突き刺さる。
「ちょっと日向こっち来ようか…」
「日向今のはないよ…」
なんだか少し怖い目をした大和と和希に日向は連れ去られてしまった。
その後ろにはさっき嫉妬と憎悪に満ちた視線を送っていた男子達が列をなしてついていく。
「大丈夫っ!?あいつに何されたの?」
「茜ってばちょっと隙が多すぎるんじゃない?」
日向が連行されると希穂と奏が心配そうにそう言った。
「えぇ?別に何もされてないよ…
ちょっと耳元で励まされただけ…
なんで日向連れてかれたんだろう…」
わたしが変な声を出したから心配してくれるのはわかるけど本気で日向が連れて行かれるほどの理由がわからない…
「まあ…茜が可愛いからじゃない?」
「茜可愛いんだからしっかりしないととって食われちゃうよ?」
「そんな事ないって!」
「あの〜。」
わたしが二人の会話に馴染んできたあたりで数人の女の子グループにそーっと声を掛けられた。
「あー。あいつらいたから声掛けづらかったって事だよね?」
希穂がざっくばらんにそう切り出した。
「そうなの。わたし達もぜひ仲良くして欲しいなって…」
「わたし達も〜!」
最初に声を掛けてきたグループの子達以外の子達もわたしの席の周りに集まってきてそのまま質問責めを受けたりその流れから色々みんなで話すうちにクラスの女子の結束は早くも固まり始めた。
うちのクラスには派手な感じの子もいないしこの感じなら上手くやって行けそうな気がする…
まあ、わたしがクラスの中心に据え置かれてるのが少し予想外だけど…
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「お前さぁ…いくら仲良いからってあれは誤解されるだろ…」
「そうだよ…ただでさえ茜は目立つんだから…」
「ごめん…」
廊下でそんなやり取りをし始めた大和と和希と日向だったけどすぐに後ろから他の男子達が集まってきたのがわかった。
「お前あの子とはどういう関係だ!」
「あの子を辱めるとはどういう了見だ!」
「うちのクラスの姫様に手を出すとは!」
「お前達落ち着けって!!」
そのまま日向は男子達に囲まれて問い詰められる。
終いには茜の事を姫様とまで言い出したので日向もなんとか落ち着けようとするがどうやっても止まらない…
「そこまでにしといてあげて〜。
日向は何もしてないし悪気があったわけじゃないから!」
「お前達の騒ぎ方ちょっと異常だぞ…」
このままだと日向が血祭りにされかねないので和希と大和が止めに入る。
「それにお前ら会ったばっかりのやつによく姫君とかつけられるよな…」
やっと解放された日向が身体を払いながらそう言った。
「お前達こそ姫様とどういう関係なんだ…」
「ただの幼馴染だよ…あいつの兄貴が俺らの親友だからな。」
日向がそう言うとみんな黙ってしまった。
「………幼馴染だって抜け駆けは許さないぞ!」
「別に抜け駆けもなにも茜とどうなろうとか思ってないから…」
一人が捨て台詞の様に言った言葉がまた話題に火をつける事になりそうな勢いだったけど日向の一言ですぐに鎮火した。
「じゃあお前は抜け駆けしないってんだな…」
「クラスで抜け駆けした奴は全員血祭りだぞぉ! yes!姫様 noタッチ!」
「「「うぉぉぉ!」」」
クラスのほとんどの男子の間で密約が交わされた瞬間だった。
これが後々宮代茜親衛隊の理念となるとはこの場にいる誰もが思わなかったであろう…
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「みんな揃ってますか〜?」
さっちゃんが教室に入ってきた時にはもう男子達も戻って来ていて女子のグループもさっちゃんが入ってきた事で席に戻り始めた。
戻って来た男子の中で日向だけ制服もはだけてボロボロだった理由は深く考えないでおこう…
なんか申し訳ない気持ちになりそうだもん…
そんな事はともかくわたし達がおしゃべりに熱中している間に予鈴はとっくに鳴っていたらしくさっちゃんも少し呆れ気味だ…
「この時間もホームルームで良かったですね。今度からしっかりしてくださいよ!も〜。
それじゃあこの時間は自己紹介と係決めまでやっちゃいましょう!
まずは私からですかね!」
そう言ってさっちゃんは自分の自己紹介を始めた。
「と、まあ、こんな感じですかね。
あんまり私がやってもアレなのでじゃあ早速青森くんからやってもらおっかな。」
きっと昨日の夜から練りに練ったであろう自己紹介をちょうどいいとこで終わらせてその流れから出席番号一番であろう男子を指名した。
意外だったのが出席番号一番であろう彼がいたのが真ん中の方の座席だった事だ…
「出席番号順じゃないのはわかってたけど全くのバラバラで座席決まってるとはね…」
希穂が見るからに訝しがっている様子でそう呟いた。
私の周りの作為的な配置を隠すための配慮である事は間違いないしそれがわたしの為だってのがなんだか申し訳ない気がする…
「珍しい事する先生だよね。」
わたしはとりあえず当たり障りのない感じでそう希穂に問いかけた。
「いや、さっちゃんはそーゆうタイプの先生じゃないんだけどなぁ…生真面目だし…」
「そうなの…じゃあなんか特別な理由でもあったのかしらね。」
わたしの質問は希穂から帰ってくる前に日向が答えを返してくれた。
希穂はまだ訝しがってはいるけどそこまでじゃなくなった。
「潮崎くーん。潮崎日向くーん!」
こそこそ話していると日向の出番が回ってきた様でさっちゃんが不思議そうにこっちを見ている。
「潮崎日向!好きなものはバンドとベース。
嫌いなものはベタベタしてくる女子とあらぬ噂です。こいつとは何もないから特に気にしないでください!ああ、あと新歓でライブするからよろしく!」
日向はなんかいかにも取っつきにくそうな感じでそう言った。
なんかイライラしてるっていうか…
いつもの一笑い取りに行くような日向の方が絶対良かったって。
「じゃあ次は宮代さんね。」
日向の自己紹介に少しモヤモヤしつつ和希と奏の自己紹介を聞いたりしていたらいつの間にかわたしの番になっていた。
ちなみに男子が終わってから女子の出席番号が始まるのでわたしは本当に後ろの方になってしまった。
昔だったら真ん中辺りで適当に終わらせて後はボケ〜っと他の人のを聞いたりしていたのに今となってはなんか注目もされるし順番も遅いしでド緊張してしまう…
「はいっ…わたしはさっきも自己紹介したんですけどとりあえずもう一回…はじめまして!宮代茜と申します。病気の事で色々ご迷惑をおかけすると思いますが仲良くしてくれたらいいなって思います!
よろしくお願いします。」
「いっぱい仲良くしよーねー」
「迷惑とかじゃないよ〜!」
ペコっと頭を下げるとみんなから暖かい声が飛んでくる。
なんか好意的に受け入れられた気がしてとても嬉しい。
もう一回ペコっと頭を下げてわたしは自分の席に戻った。
「みんな優しそうでなんか楽しいね」
わたしが席に戻ると希穂が楽しそうに声をかけてくる。
「そうだね。怖い感じの人達もいないし安心したよ」
「怖い人と言ったらそこのアホとかになっちゃうんじゃない?うちのクラス。」
面識は確かにあったけどここまで砕けた表現をするコだとは思ってなかったからちょっと意外…
まあ、日向がアホなのは概ね同意だけど…
「そうだねっ。この3人が見た目的には一番怖いかもね。」
わたしがそう返すと日向がジロッとこっちを見てきたから少しおびえた様子をしてやった。
「脅かさないであげてよ?いくら幼馴染でも怖がられちゃうわよ?」
「前までの猫被ってたキャラの方が良かったぞ?お前…
大和を射止めたからって本性だしやがって…
だいたい茜と俺のやり取りはちゃんと通じ合ってるんだぞ?なあ、茜。」
まるで昔から仲良しかのように言い合う二人がなんだか違和感だ…
日向の言い分もわからなくもない。
「私は別に猫被ってたわけじゃないわよ?
本当に緊張しまくりだったのよ?」
「二人とも仲良いんだね。
関係性自体は知ってたけどこんなに仲良い感じだとは…」
「「仲良くなんてない(わよ)!」」
ハモってくるあたり仲良しと言うか似た者同士みたいだ。
「きっと二人は似た者同士なんだね。」
「えー!絶対違うって…コイツと似てるとかありえないでしょ!」
「はーい。そこまで!
矢沢さーん。最後は貴女の番よ。
あと、そこの3人はあとで私のところに来なさい。」
わたし達が自己紹介なんて他所に盛り上がってきたところでさっちゃんからのストップがかかった。
さっちゃんの目が本当に怒ってる目だったのでとりあえず3人とも静かにすることにした。
「矢沢希穂です。
趣味はライブハウスに行くことで好きなバンドはスカーレットメモワールです。
嫌いな事、物は友達をいじめられる事と友達に迷惑をかける奴です。
気安く声をかけてください。仲良くしたいです。」
希穂も日向の様になんだか素っ気ない感じでサラッと自己紹介をして帰ってきてしまった。
「はい。じゃあこれで全部ね。
じゃあ次は係決めをしましょう!
まずはクラス委員から。
やりたい人いるなら名乗り出てくださいね〜!」
希穂が席に戻ったのを見計らってさっちゃんは係り決目に取り掛かった。
「おっ、いいわね。じゃあ男子は菊池くんで決まりにしましょう。」
さっちゃんが声を掛けるなりピシッと手を挙げた男子がいた。
菊池と呼ばれたその男子はいかにも真面目で物静かな感じがする。さっきも男子達が一気に出て行った時につられていかなかったしきっと本当に穏やかで物静かな人なのだろう…
「男子は菊池くんに頼むとして〜…
女子はどうしますか?」
………
さっちゃんがそう問いかけるとシーンと静まり返ってしまった。
うちのクラスの女子は引っ込み思案の娘が多いんだなぁ〜
誰でもいいから名乗り出ちゃえばいいのに…
男子は菊池くんみたいなのが居て楽チンだなっ♪
……って私も女子なんだった…
「じゃーあたしやろっかなぁ〜」
わたしが一人でノリツッコミのような事を考えていると沈黙を切り裂くように奏の元気な声がした。
「あっ、いいですね!じゃあ女子は椎名さんで決定でいいですか?
うん。いいみたいですね。じゃあここからの進行は早速クラス委員の二人にやってもらいましょう!
はい、これ委員会と係の表ね。
この時間中に決め終わったら次の時間はみんなでうまく使ってもらって構わないから頑張って決めちゃってくださいね!」
さっちゃんは菊池くんに紙を渡してからみんなに向かってそう言うと隅っこの方に下がって傍観し始めた。
「じゃあ、ここからは僕と椎名さんで進行させてもらいます。まず最初に委員会から決めたいと思います。
僕が係まで全部読み上げるのでどれか興味はあるか考えてください。椎名さんは黒板に委員会から係まで書き出してもらっていい?」
「らじゃ〜!」
さっちゃんからバトンを受け取った菊池くんは手慣れた感じで進行を始めた。
奏もこなれた感じで振られた仕事をこなし始めた。
「奏ってあーゆうの積極的にやるタイプなんだね。」
「そうね〜。あの子楽しそうな事とかすぐ首突っ込むタイプだからこーゆうのも割と自分からやるのよ。
でもね、案外しっかり考えてるみたいで自分よりやりたそうな人とか自分より適任そうな人が立候補したりすると案外すぐ譲っちゃうのよ。
自分はなんか楽しそうなのに首を突っ込みたいだけだからって言ってね。
なんだかそれ見てると案外しっかりした子なのかなって思うわよ?」
わたしが机にグデーっとしながら話しかけると紀穂はしっかりと答えてくれた。
「へー。そうなんだぁ…なんだか奏の内面が少し見えたような気がする…」
「そー言えば茜はどんなのやりたい?」
「えっ?なんのこと?」
「係よ、か・か・り。
早めに決めておかないと後々は変なのしか残らないよ?」
紀穂に言われて今が係決めの時間だと思い出した。
「ん〜。病気の事とかあるからあんまり忙しいのは厳しいかなぁ…あんまり仕事がなくって重労働とかしない奴がいいな…」
「そうすると教科係とかが良いんだろうけど担当の先生の良し悪しもあるしなぁ…
さっちゃんどうせ国語はさっちゃんが担当だろうしそれが安泰かもね…
もしくは保健係とかになったらどう?仕事しながら保健の先生とも仲良くなれそうだし…
しかも保健委員もいるからほとんど仕事ないと思うし。」
わたしがなんとも後ろ向きな意見を出すと紀穂はさっき読み上げられた中から最適そうなのをしっかり考えてくれた。
「うーん。そのどっちかかなぁ…まあ、後は音楽係とかもありかもね。」
「えー。でも音楽の先生は結構厳しい感じすると思うんだけど…」
「うーん。でもわたし音楽好きだしピアノも弾けるから割と話しも合うと思うんだけどなぁ…
ねぇ、日向はどうするの?あと大和も…」
このまま悩んでいるのもなんだから隣で大和となんかくだらなそうな話をしている日向に問いかけてみた。
大和を置いてけぼりにするのもあれだしでも紀穂の手前あんまり親しげにはできないからついでくらいの感じで大和にも話を振る。
「えー?なんでも良いよ。とりあえず俺は女子とペアじゃない奴が良い。」
「俺は紀穂に合わせようかと…」
日向は面倒くさそうにそう答えた。
いつも通りの日向とは違って大和の大和らしくないの答えに紀穂は少し嬉しそうにしている。
「わっ…わたしは茜次第だから茜が男女ペアじゃないのにしたら茜と一緒のにするわよ?」
嬉しそうに少し微笑みながらも紀穂は強がってわたしに軽く抱きつきながらそう答えた。
「なっ…」
「だって茜一人で知らない子と組むことになったら可哀想じゃない。それにわたしが大和と組む理由はないでしょう?」
絶句している大和に追い打ちをかけるように紀穂はわたしに擦り寄ってそう言った。
「紀穂…わたし達一応紀穂と大和が付き合ってる事知ってるから別に我慢しなくて良いんだよ?」
わたしは顔を近づけて来ていた紀穂にそう耳打ちした。
「そこが問題じゃないから大丈夫。
それに大和とは他でいくらでも一緒に色々できるもの。クラスの中の事くらい友達と一緒にやりたいわよ。でも…とりあえずなんで知ってるのかは後で教えてね。」
爽やかな笑顔の紀穂がなんだかセリフとの対比でとても恐ろしく見えた。
「う、うん。」
「まあ、別に隠れて付き合ってる訳じゃないけどね」
「じゃあ俺ら4人で保健委員と保健係固めちゃうか。和希にはちょっと悪いけど…」
そう日向が言ったのでみんなして隣の列の和希の方を見ると隣の女の子とか前の席の女の子とか周りの席の子達と割と仲良さげにやってて全員で胸を撫で下ろした。
「じゃあそうしちゃう?
私と大和で面倒くさい保健委員やるから二人は保健係でよろしくね。」
「じゃあ次は保健委員ー。保健委員やりたい人はいませんか?」
そんな事を話しているとちょうど保健委員を決める番になっていた。
「はいっ!私とこいつでやります!」
紀穂がキャラに合わないテンションで勢いよく手を挙げて大和を指差した。
「他にやりたい人は居ないですか〜?」
「居ないみたいだし次行っちゃおうよっ!」
「そうだね、じゃあ次は〜」
奏はわたし達の企みを理解してくれたのか他より少し早めに進めてくれた。
次に話が進んだ所で奏がこっちにウインクして来たのでそれがよくわかった。
「じゃあ次は保健係かなー…ってか男子全然決まんないけどそんなにやりたくないかぁ?…」
保健係の順番が回ってきたところで菊池くんはボヤいた。確かにさっきから男子は全然手を挙げる様子もない。実質委員会しか決まっていないような感じだ…
「まあ、いいじゃん!じゃあ次保健係行くよー!
やりたい人ー!」
「「はいっ!」」
奏が声をかけた瞬間にわたしと日向は一斉に手を挙げた。
「じゃー。保険係は茜と潮崎くんでい「はい!!俺もやりたい!」」
「「俺も俺も!!」」
今まで手を挙げてなかった男子達が一斉に手を挙げ始めた。
「あちゃー。やっぱりそー言う事だったか…菊池くんこれどうする?
あたしは真っ先に手を挙げた二人でいいと思うんだけど…」
奏は額に手を当てて悩み込んでしまう…
まあ、ある程度予想できていた事ではあるのだろう…
「「そんなの公平じゃないぞー!」」
「「そうだそうだー!」」
奏の意見に手を挙げた男子達が不満の声をあげる…
「不満は出てくるよね〜…
みんな下心丸出しっていうか…
ジャンケンとかだとあまりに茜が」
「坂井先生どうします?
宮代さんを守るって観点も含めて…」
奏も菊池くんも困り果ててついにはさっちゃんに投げてしまう。
「ん〜。まあこの様子だと茜ちゃんが辞退しても辞退者が増えるだけだろうし…
いっその事ジャンケンで決めてもらうとかが得策かもね…」
「先生!保健委員ってやっぱ男女じゃないとまずいですか?」
先生も諦めかけてジャンケンを勧めようとしたところで紀穂が何かを思いついたのか意見した。
「そうですねぇ…本当はそうなんですけど今回は保健係も立ててる事だしその限りじゃないけどするなら本当に特例中の特例ですよ?」
「じゃあ私保健委員降りて保健係を茜と一緒にやるから保健委員のもうひと枠をみんなで競い合って貰えばいいんじゃないかな?
だってそんなにみんなやりたいんでしょ?委員の実務はわたしがやるからそれなら仕事量の差に文句は出ないでしょ?」
紀穂の無慈悲な日向を切り捨てる発言に大和も日向もギョッとしていたけどそれは確かに名案かも…
「あら、それは名案かもしれないですね。じゃあみなさんそれでいいですか?」
さっちゃんはそう言ってみんなに聞き返すけどみんな対応を悩んでいる感じのようで沈黙だけが教室を襲う。
「わたしは公平にジャンケンするべきだと思うなぁ。
だって真剣にやりたい人が可哀想だもん。
でもそうするなら居ないとは思うけど一緒にやる相手とかで考えてる人は悪いけど諦めてもらいたいなぁ。
わたしだって譲りたくないもん…
それにジャンケンするならわたしも参加するわけだしやりたい人しか居ないならそれで問題ないでしょう?」
わたしは悪くなくても自分が発端でこんな事態を起こしてしまっているって考えたらそう意見せざるおえなかった。
だって話を聞く限りわたしと一緒に係をやりたいからってみんな手を挙げてるみたいだし…
そんなにわたしとやるのが楽しそうなのか楽そうなのかよくわかんないけど早くも変な人気を博してしまっているのは間違いないみたいだ…
「だってよ?みんなそれでいいですか?
宮代さんの言う通り誰かとやりたいとかそういう考えの人はやめてもらってもいいかな?
みんなの言うお姫様たっての願いな訳だし…」
お姫様ってなんだそりゃ…
まったく誰の事を指してるんだか…
よくそんな恥ずかしいあだ名で呼ばせられるな…
そんな事を考えていたら手を挙げていたみんなはしゅんとしてしまって手を下げ始めていた。
「じゃあ残ったのは宮代さんと潮崎くんだけだし二人に保健係を任せます!」
わたしと日向以外がしゅんとして手を下げてしまったのでそのままわたし達が保健係になる事ができた。
「はあぁ…それにしても一悶着あったねぇ…
結果ちゃんと保健係になれたし良かったけどね。
それにしてもさっきのお姫様って誰のこと指してるんだろ…変なあだ名だよね〜」
他の係を奏と菊池くんが着々と決め始めたところでわたしはそんな事を呟いた。
「えっ!まさかあれで気付いてないの!?」
「茜ってそこまで鈍感だったかぁ?」
わたしの呟きに紀穂も日向も必要以上に驚いてみせた。って言うか今の呟きに驚くとこあった?
「いやいや、なんで驚いてるのかわからないって顔してるけど普通驚くからな?」
「茜って天然さんなんだね…色々と…」
ひさびさに聞いた日向らしいツッコミに懐かしさを感じるけど二人のそのなんだかアホな子を見るような目が少しイラっとくる…
「茜ぇ…お姫様って呼ばれてるのお前の事だぞ?」
「え?」
日向が言った言葉があまりに衝撃的だったのでわたしは一言そう返す事しかできなかった。
「今日会った女の子にお姫様とかってあだ名付けちゃうのは私もどうかと思うんだけどね〜…
それだけ男子達が過熱してるっていうか…
茜が可愛すぎるっていうか…」
「うぇぇぇ?…うそぉ…
わたし裏でお姫様とかって呼ばれてるの?
恥ずかしすぎるんだけどぉ…」
紀穂の返答も割と反応できないほどショックを受けてしまったわたしはそのままホームルームが終わってさっちゃんから呼び出しをくらうまで何も頭に入ってこないまま机に突っ伏す事しかできなかった。




