37話 新学期と学校と友達と
ピピピピッ!!ピピピピッ!!
「うぅーん…」
ピピピッ…ガチャッ!
わたしは寝ぼけながらもけたたましい騒音を吐き出し続ける目覚まし時計を止めた。
「うぅーん……もう朝かぁ…
…んぁ?もうこんな時間じゃんっ!?」
わたしは寝ぼけながらも時間を確認してその時間に驚いて一瞬で目が覚めた…
今日から一応転校生なので早めに学校に行かなければならない…
職員室を8時15分までに訪ねなければならないから7時50分くらいには家を出なくては…
って思って6時半に目覚ましをセットしたは良いけどただいまの時刻は7時ちょうどくらいだ…
朝の時間のない時にこのロスは痛い…
とりあえず慌てて飛び起きて顔を洗いに行く…
「あら、あーちゃん遅かったじゃない…
昨日はあんなに6時半に起きるから起こさなくって良いって息巻いてたのに…
とりあえずわたしが髪の毛とかやってあげるから顔洗って着替えてきなさいよ…」
洗面所に着くとちょうどすれ違いで雪ねぇが出てきた所だった…
「うぅ…まさか30分も目覚ましに気付かないなんて…」
「まさかじゃなくってあーちゃん寝ぼけて何回も目覚まし止めてたじゃない…」
そういって顔を洗い始めると雪ねぇが入口付近で立ち止まってそう言った。
「まさかのスヌーズ機能だったか!!」
「はいはい、いつものことでしょ?早く着替えちゃいなさーい。」
雪ねぇはわたしが顔を洗い終わるのを見るやわたしの方にタオルを投げた後そう言ってリビングの方へ消えていった。
「いつもじゃないもん…この身体になってからはちゃんと起きてたもん…」
わたしはボソッとそう呟いて部屋に戻った。
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「雪ね〜ぇ。着替えてきたよぉ〜。」
「じゃあ朝ごはん用意したから食べちゃってー。今日は健康志向でサラダよ!」
そう言って雪ねぇはキッチンから大盛りのサラダを二つ持ってきた。
「雪ねぇそれ自分作りすぎちゃったって奴?」
「失礼ねぇ。サラダなら一人分でも二人分でも変わらないからよ。
それに朝いっぱい野菜食べると1日調子良いのよ?」
食卓につきながらわたしがサラダの量を皮肉ると雪ねぇは二人の前にドンとサラダを置いて反論してきた…
「こんなに食べたら体冷えちゃうよ…」
「そこは安心して。ドレッシングを暖かいのにしたから!!
ってこんなことしてる時間ないわよ…
早く食べちゃいましょ?」
そう言って雪ねぇはサラダに手をつけ始めた。
わたしも雪ねぇはよく考えてるなぁと感心しながらサラダに手をつけた。
案外ペロッと行けちゃうもんで大盛りのサラダを平らげるともう時間は7時半になろうかという所だった。
「あーちゃん早く髪の毛とかやっちゃいましょ。割と時間ないわよ。」
割とのんびり片付けをしていたら雪ねぇに急かされてしまった。
「はぁい。って雪ねぇもう準備バッチリみたいだけど一緒に出るの?」
「そうよ。妹が初登校なのに一緒に行かない姉は居ませんもの。
私はもうそこのカーディガン羽織って出るだけなんだから早くやっちゃうわよ。」
そう言っていつもの鏡台の前に座らされてテキパキとベースメイクという奴を進めていく。
「雪ねぇ…これで悪目立ちするなんてことないよねぇ?」
お化粧をしているっていう罪悪感からかたちまち不安になってそんな事を聞いてしまう…
「大丈夫よ。これくらいしてる子いっぱいいるし何せあーちゃんのその絶世の可愛さなら僻まれすらしないと思うわよ?
私を見ればわかるでしょう?」
何を隠そう雪ねぇは学校では知らない人は居ないくらいの有名人で男子の人気もダントツである…
なのに何故か女の子にも人気でお姉様などと呼ばれている…
そんな雪ねぇは周囲から僻まれてるとかいう話すら聞いた事がない…
「そりゃあ雪ねぇはキレイだし可愛いし人柄も良いじゃん…
わたしはただの女の子初心者のちんちくりんだよ?」
「大丈夫よ。間違いなくあーちゃんは学校で一番可愛いしキレイだから。
はい。ベースメイクかんりょー。
髪の毛はいつものサイドアップで良い?」
雪ねぇがナチュラルに可愛いなんて言うから少し顔が火照ってしまう。
「うん!お願い。」
最近は少し伸びてきたセミロングの髪を右側のサイドで纏める髪型がお気に入りだ。
しかも今日は和希と大和にもらったシュシュなのでご機嫌だ。
本当は日向に貰ったネックレスも付けていきたいけどなくしちゃったら困るから仕方なく我慢する…
没収とかになっても嫌だし…
シュー…
「はいっ!出来たよ!」
最後にこの前貰ったフレグランスのスプレーをしてもらってわたしは姿見の前まで行って全身をチェックする。
この前教えてもらった通りちゃんと制服も着れているし姿見の前でクルッと回ってみたりしたけど特に変なところは見当たらない…
「うん。ちゃんと女の子してる。」
「大丈夫よ。制服だってちゃんと着れてるし纏ってる香りも仕草も女の子そのものよ」
確認する様に呟くと雪ねぇが後ろからわたしの肩を抱きとめてそう言ってくれた。
「じゃあ行こっか。あーちゃんそれで寒くない?カーディガン貸してあげよっか?」
うちの学校はブレザーなので下に厚着をしたりできないので春先のこの季節とかはカーディガンやセーターを着ないと少し寒い…
まあ、わたしはジャケットの下にパーカーだったし最早パーカーが制服みたいなものになっていたから全く気付かなかった…
「いつもパーカー着てたから気付かなかった…じゃあ借りてもいい?」
「去年のやつだけど我慢してね。」
そう言ってベージュのカーディガンを渡してくれた。
「ありがと!うん。暖かい。」
ジャケットを脱いでカーディガンを着ると割と大きかったけど格段に暖かくてホッとした。
「じゃあ出よっか。」
「そうだね。」
わたし達はそう言った後にこの前下ろしたあの可愛いローファーを履いて新しい日々への扉を開いた。
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「あれ!雪ちゃんじゃん!おはよっ!」
学校までの道を雪ねぇと歩いてると不意に後ろからこう声がかかった。
「おはよっ!渚。」
雪ねぇがそう返す頃にはわたしと反対側の雪ねぇの隣に追いついてきた声の主はレーゾンのメンバーで雪ねぇの親友の渚さんだった…
「この娘が例の妹ちゃんね?
初めまして。雪ちゃんの親友の渚って言います。よろしくねっ?」
「あ、はい。初めまして。お姉ちゃんからお話は良く聞いてます!よろしくお願いします。」
もともと面識があまり無かったので素でモジモジしながらそう答える。
「あはっ!確かにこれは可愛いわっ!
雪ちゃんが傾倒するのもわかるかも」
なんだか雪ねぇと同じ部類の反応を見せた渚さんに少しビビって雪ねぇの陰に隠れる様な反応をしてしまう…
「渚ぁ…あーちゃん怖がってるじゃない…」
「雪ちゃんと一緒にしないでよっ…
大丈夫。わたしはこの変態みたいに襲ったりしないからね。安心して?」
雪ねぇがわたしの反応を見て渚さんにツッコミを入れるとすかさずそう返したと思ったらわたしの方に寄ってきてそう言った。
「あ、はい。それなら…」
「なんでよ!わたしの時には割とずっと警戒してるのに…」
「あ、そういえば渚さんってステージの上とだいぶ印象違うんですね…
もっと静かな人だと思ってました…」
雪ねぇがツッコンで来るのをスルーして落ち込んでいる所を一瞥して渚さんの方に向き直ってそう質問した。
「そうねぇ。確かにステージの上だとお嬢様気取ってる所はあるかもね…
まあ、あれは見た目とキャラの問題だし普段はこんなもんだよ?」
なんだかサバサバしてるっていうかステージで見るホワホワした渚さんと違って自然体で気のままって感じてかっこよく見えた。
「本当にお嬢様で家では丁寧語のくせにっ」
わたしが憧れのこもった視線で見ているのをあざとく見つけた雪ねぇが衝撃の事実をへそ曲げ口調でツッコんだ。
「今のあたしが本当のあたしなの!
家では窮屈すぎて仕方ないもん!!」
そんな反論をする渚さんは割とコミカルでさっきの格好良さとは真逆の可愛さでますます素敵にしか見えてこない。
「はいはい。まあ、そんな渚が好きなんだけどね。あ、私あーちゃんを職員室まで連れて行くから後で教室でね。」
「うん。わかった。
茜ちゃん。ファイトだよ!」
二人の仲良さすぎなやり取りを見ていたらいつの間にか昇降口についてしまったのでここで渚さんとはお別れだ…
最後にそう声を掛けてくれた渚さんは可愛くて格好良くてもうステキとしか言いようがない…
「はい。頑張ります!」
わたしも渚さんと同じポーズをとってそう答えると渚さんはにこやかに手を振りながら下駄箱の方へ歩いて行った。
「渚にゾッコンなのかしら…あーちゃん…
お姉ちゃん悲しいなぁ…あの憧れのまなざしは少なくとも私は見たことないなぁ…」
渚さんと別れた途端異常に落ち込んだオーラを漂わせながら雪ねぇがそんな事を言い出した。
「ベベベ、別にゾッコンとかじゃないもん!
どうせなら渚さんみたいに可愛くて格好良いい女の子になりたいなって思っただけだし!!雪ねぇ関係ないじゃん!」
わたしの発言を聞いて異常に落ち込む雪ねぇの周りからどこからともなくどんよりとした空気が漂ってきているような気がした。
「あ、雪ねぇ。そういえば行くの校長室だった…」
大事な事を思い出したわたしはフラフラと歩く雪ねぇになんとも可愛らしい感じで声を掛けた。
「え、そうなの?じゃあこっちじゃないじゃない。早く戻りましょ!」
わたしの可愛らしい感じを見た雪ねぇはたちまち元気を取り戻してそう言った。
「あら、茜ちゃん。偶然ね。わたしも向かうところだったのよ。今日は雪菜ちゃんと一緒なのね。お父様がいらっしゃらないのは少し残念だわ…」
校長室に向かって歩いていると後ろから国広先生に声を掛けられた。
「父は忙しいですから。なかなか顔を出せないんですよ。それに先生も厄介な父兄がいない方が楽なんじゃないです?」
国広先生のコメントに外行き態度の猫かぶりモードで答えた雪ねぇはなんだか闘争心をたぎらせているように見える。
「あらあら、そんなに対抗心だだ漏れでいいのかしら?まあ、いいわ。私と貴女は協力しなければならない立場なんだから仲良くしましょ?」
そんな雪ねぇをうまくあしらった国広先生はそんなセリフを言って手を差し出した。
「ええ、そうですね。あーちゃんの為ですから。先生にも多大な協力を頂きたいところです。」
そう言って握手する雪ねぇと国広先生との間にはヒリヒリした空気が漂っている。
怖いよっ、二人の雰囲気怖いよっ!
「あら、もうこんなところですね。
雪菜ちゃんはそろそろ教室へ向かいなさい。
茜ちゃんはしっかり預からせてもらうから安心していいわよ?」
二人のヒリつく空気のなか歩いているともうそこは校長室だった。
「いえ、私からも校長先生にご挨拶差し上げたいのでご一緒させていただきます。
父の代わりですから。」
「下手したら遅刻しちゃうわよ?
それは教師として見過ごせないわ。」
「一言だけご挨拶差し上げたらすぐ教室へ向かいますから安心してください。」
そう言って雪ねぇは校長室の扉にノックをしようとした……のだけれどノックは未遂に終わって校長室の扉が急に開いた。
「そんな小競り合いしてる暇があるなら入って来ればいいではないですか。」
扉を開けたのは校長先生だった。
「「申し訳ありません。」」
二人して頭をさげる様子はなんだか笑えた。
「こんなところじゃあれですから入ってきていいですよ。」
そう言って校長先生は私たちを招き入れた。
「失礼します。」
そう言って私は校長先生の後に続いて校長室に入った。
続いて国広先生と雪ねぇも校長室に入ってきた。
「先ほどは失礼致しました。
茜の姉の宮代雪菜です。妹を宜しくお願い致します。今日は父に代わりまして挨拶に伺わさせていただきました。」
校長先生が応接セットのようなソファに腰掛けると私たちもソファに腰掛けるように促されたのでとりあえずそっちに移動すると雪ねぇがそう切り出した。
「いやいや、わざわざ雪菜さんまで挨拶に来てもらわなくても良かったんですよ。
お父様も忙しい方でしょうから。
ついでですから遅刻しない程度にゆっくりしていきなさい。」
そう言って雪ねぇにも着席を促した。
「それにしても国広先生にも大人になっていただきたいものです。
まあ、今日は時間もないですからお小言はこの辺で…
先に茜さんにはこの校章をお渡ししますね。
まあ、付けたかとかは知っての通りですし持っては居ると思いますが一応女子用で新調させてもらいました。
それと今日の始業式で名前は触れませんが茜さんの話を少しさせていただきますね。
入院明けで身体を労ってほしい生徒がいるといった形でお話させていただきますけどよろしいですか?」
国広先生へのお小言で始まった校長先生のセリフはゆったりとした口調だったからかもしれないけどすごく長く感じた。
とりあえず内容的には全然問題ないし校長先生のお話の案を崩しちゃうのは悪いのでわたしはこくこくと頷いて肯定の意を示した。
「わかりました。
では、一応その形で私からお話させて頂きます。キチンとプライバシーは守りますから安心してくださいね。」
コンコン。
そんな世間話をしていると校長室のドアがノックされた。
「どうぞ。」
「失礼いたします。」
校長先生がそう言うとさっちゃんが深々と頭を下げて入ってきた。
「そろそろ時間ですね。
ここからは坂井先生が案内しますから安心してください。
雪菜さんはそろそろ行かないと遅刻しちゃいますよ。」
そう言って校長先生は立ち上がった。
「じゃあ、茜ちゃんは私と行きましょっか。」
さっちゃんはわたしに向かって手招きしている。
「じゃあ私は教室向かいますね。
頑張ってね、あーちゃん!」
雪ねぇも鞄を持って一礼すると教室へと向かってしまった。
「し、失礼しました!」
わたしも雪ねぇに続くようにそう言ってさっちゃんの方にかけ寄った。
「じゃあ、教室の方に案内しますね。
校長先生。失礼致します。」
さっちゃんが真面目な表情でそう言って校長室を出たのでわたしもそれに続いて一礼してから校長室を出た。
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「じゃあ、ここで待っててください。軽くホームルームをしてから紹介しますので。」
そう言ってわたしを教室の前方のドアの前に立たせてさっちゃんはホームルームをしに教室の中に入っていった。
教室の中がざわざわし始めたので何人かがわたしの存在に気付いたのだろう…
期待に満ちた空気がそこはかとなく漂ってくる。
「今日は、その他に一つ連絡があります。
このクラスに新しい仲間ができます。
皆さんもクラス替えをしてそわそわしていると思いますけど仲良くしてあげてください。
入ってきていいですよ〜。」
さっちゃんからのキューが出たのでわたしは教室のドアを普段通り何も気負わないようにして開けて教壇の隣まで歩を進めた。
「はっ、始めましゅて!!」
みんなの前に向き直って呼吸を整えて放った一言目がこれだった。
もちろん言った瞬間に教室の空気は凍りついたしわたしの緊張も一気にマックスまで上昇した。
「噛んだ?…」
誰かがそんな事を言った。
それを皮切りにみんな一気に喋りだした。
「えっ!!可愛い!アイドルみたい!」
「誰かに似てない?それこそアイドルの!」
「ドジっ娘っ…いい!」
「あちゃー。やっちゃったね」
「まあ仕方ないでしょ。」
「あいつらしくていいじゃん!」
最後のは絶対に和希と大和と日向でしょ!
どんどん収拾がつかなくなっていく。
「みんな静かにしてー!気持ちはわかるけどちゃんと自己紹介聞いてからにしましょうね〜。」
さっちゃんが声をかけるともともとさっちゃんのクラスだった奴らはしゃべるのをスパッとやめた。
するとその雰囲気に飲まれたのか他の奴らも段々しゃべるのをやめてくれた。
「え…あ、改めまして!
わたしは宮代茜と申します!
ある程度察しは着いた人もいると思いますが宮代橙哉の双子の妹です。
長いこと入院してて最近やっと退院したばかりなのでわからないことばかりなので色々と教えてください!よろしくお願いします!」
たどたどしくもなんとか自己紹介を終えたわたしが顔を上げると一気にみんなから拍手が起こった。
「茜ちゃんが言った通りで退院したばかりだから体力とかも不安だと思うのでみんなでバックアップしてあげてください!
あ、茜ちゃんの席はそこの窓側の列の後ろだからね。」
そう言ってさっちゃんが指さした先はさっき日向達の声が聞こえた方向そのものだった。
そっちの方に目を向けると案の定日向達に囲まれる様に私の席は配置されていた。
わたしが席に向かって歩いて行くと3人してニヤニヤしているのが見える。
「1時間目は始業式なので予鈴がなったら教室にいるようにしてください。
早いですけどこれでホームルーム終わります。でも、うるさくしたり教室から出たりしないでくださいね!」
わたしが席に着くのを確認したさっちゃんはそうホームルームを締めて教室から出て行った。
「よろしくね。茜ちゃん。」
さっちゃんが出て行って教室が割とガヤガヤし始めた途端前の席の希穂ちゃんが声を掛けてきた。
「うん。よろしくね。えっと…矢沢さんのところの…」
「あ、自己紹介まだだったね。矢沢希穂です。フランクに希穂って呼んでくれて構わないよ?」
「うん。わかった。よろしくね、希穂。」
わたし達のそんなやり取りをこそこそ聞いているからなのか教室の雰囲気はとてもソワソワしている。
「きーほっ♪それと…えーと、茜ちゃんっ!
よろしくねっ!あたしは椎名奏!呼び捨てで奏って呼んでくれて構わないよっ!」
そんなソワソワした雰囲気も気にせずわたし達の所までやって来たこの元気っ娘はどうやら希穂の友達らしい。
「うん。よろしくね、奏!
わたしのことも呼び捨てで茜って呼んでくれたら嬉しいなぁ…」
「わかったわ。茜。」
「おーけー!茜!」
なんだかうまく打ち解けあえた気がしてとても嬉しくなった。
「俺たちも無視しないでくれよ、茜。」
わたし達がキャピキャピと盛り上がっていると隣の席の日向がちょっと不機嫌にそう突っかかってきた。
「え、今わたしが日向達に絡む意味あった?
どうせ知った仲なのに…」
ちょっと弄るかの様な言い方で日向にはそう返した。
今は女の子の友達と仲良くなる事が一番だってことわかんないのかなぁ?…
「あれれ?もしかして二人はお知り合い?
どんな関係なのか気になっちゃうんだけど!」
わたし達のやり取りを見て奏がそんな事を言い出した。
「わたしのお兄ちゃんの幼馴染なの。コイツ」
わたしはあえてちょっと辛辣な言い方をした。
日向と変な噂でも立てられたら大変だしそんな事になれば日向にとっても迷惑だろう…
「ふぅん。本当かなぁ…
もの凄く仲良さげだけど…」
「そうだって言うならそうなんでしょう。」
訝しむ奏を希穂が上手いこと止めてくれたから下手に追求されることは無かった。
希穂にいなされた奏は納得いかないといった感じでふてくされているけど割と理解はしてくれてる様だった。
「そういえばなんであの時うちの喫茶店で三人と会ってたの?」
一難去ってまた一難と言うか今度は希穂の方から追求が飛んできた。
「えっ!ああ、それは…」
「俺が橙哉の状況聞きついでに退院祝いしたいって言ったんだよ。」
わたしが答えに困っていると日向が援護射撃をしてくれた。
「あ、そうなんだぁ。
いや〜、なんか知らない美少女と大和達が一緒にいたからびっくりしちゃった。」
そう言って隣の席の大和を見る希穂の目は少し怖かった…
「この三人とはどんな関係なの?」
奏がわたし達のやり取りを見てキョトンとした感じでそう言った。
きっとこれは希穂とわたしどちらにも聞いているのだろう…
「ん〜?この三人は私がよく見に行ってるバンドのメンバーよ。
それでそのバンドのボーカルが茜ちゃんのお兄ちゃんってわけ。」
希穂がわたしの分まで説明してくれたおかげでわたしはウンウンと頷くだけでよかった。
「そっかぁー。よく希穂が騒いでた奴の人達なんだぁ……その人達が前にいるとか凄くない?あたし全然知らなかったけど…」
「学校では割と有名なんだけどなぁ俺達…」
奏の言い分を聞いて大和が割と落ち込んでしまった。
「そろそろ予鈴なるから席戻ったほうがいいんじゃない?奏ちゃん。」
和希がいいタイミングで奏に言ってくれたから大和がこれ以上落ち込むことはなかった。
奏が席に戻った頃に予鈴とともにさっちゃんが教室に入ってきて体育館への移動が始まった。




