36話 初めてのケイケン!?
結局ひーちゃんの会見があった日は二人とも疲れて寝てしまったので制服の着方とかを雪ねぇに教えてもらうこともできなかったので今日は朝から学校についてとか女子としての生活についてとか色々雪ねぇに教えてもらう日になってしまった…
昨日はあかちゃんが外に出てきていて雪ねぇと一緒に学校の場所見に行ったり色々していたみたいだ。
ちなみに早くも病院からの協力費を振り込んだ口座ができたとかで早速お財布とか専用のポーチとか色々買い込んだみたいでわたしの机の半分があかちゃん用にデコレーションされていた…
テープできっちり分けられた机を見るとあかちゃんのはしゃぎっぷりが見受けられるようで何だか可笑しかった…
わたしの側は時計とパソコンくらいしかない殺風景な机なのでわたしもなんか飾ったりしようかなって気になってきた。
「そう言えば隠してたはじっこぐらしのぬいぐるみとかグッズがあったなぁ…
それ置いちゃおっかな…別にもう恥ずかしがる必要ないよね…」
今まで買ってはいたけど恥ずかしくって使えなかったはじっこぐらしグッズを使うタイミングなのではないかと思って今日はまず部屋の中のわたしのゾーンをはじっこぐらしで埋め尽くす事にした。
「あーちゃーん?そろそろ起きた?」
ガチャ…
雪ねぇの声がドアの外から聞こえたと思ったらそのままドアを開けて部屋に進入してきた。
「押し入れなんかいじってどうしたの?
って…そのはじっこぐらしグッズの山…」
「ちょっ…ちょっと…ノックしてから入ってきてよ!!」
そう言ってわたしは慌ててはじっこグッズの山をタンスに押し込んだ…
「そんな恥ずかしがらなくっていいのに…
でもそれにしてもその量はすごいね…
橙くんがはじっこぐらし好きなのは知ってたけど…」
「ほらっ、そうは言っても雪ねぇだって引いてるし…
恥ずかしいものは仕方ないじゃんっ!
って何でわたしがはじっこ好きなの知ってるのさ!!」
わたしは顔を真っ赤にして雪ねぇに食ってかかる…
「そんなの見てれば分かるわよ…
寝る時なんて幸せそうに『ぬこ』のぬいぐるみ抱いて寝てたじゃない。
昨日だってとっても可愛ったわよ…」
雪ねぇがいつもの変態チックな感じでそういうからなんだか自分のそんな姿をリアルに想像してしまった…
「いやいや…!!なんでそんなこと知ってるのさ!!
まさか私が寝静まってから覗いたりしてないよね?」
想像してしまった私の姿を払拭するように頭をブンブンと横に振った後に胸を隠すジェスチャーをしながら雪ねぇにそう返した。
「へっ!?まさかそんなこと…してるに決まってるじゃないっ…
可愛いあーちゃんを見るためならお姉ちゃんなんでもしちゃうぞ」
「うん…早めに部屋に鍵を取り付けなきゃ…
ひーちゃん居なくなっちゃったわけだしこの変態から身を守るにはそれしかないよね…」
雪ねぇの言動に身の危険を少し感じて後ずさりしながら独り言のようにつぶやく…
「大丈夫よ!!お姉ちゃんなら優しくしてあげるから!!」
「優しくって何をだよ!!!」
ラリッた目ですり寄ってくる雪ねぇを右手で乱暴に抑えながら突っ込みを入れる。
「大丈夫よ…安心して私に体を委ねてくれていいのよ…!!」
今の私では抑えられないほどの力で雪ねぇがわたしに襲い掛かってきた。
男のころだったら普通に抑えられた雪ねぇの暴走も今の体ではどう頑張っても抑えることができない…
手加減もなく襲い掛かってくる雪ねぇの姿がもはや恐怖でしかない…
「キャーーッ!!!!」
意識せずともなんとも女の子らしい悲鳴がわたしの口からあふれ出してしまう。
結局雪ねぇに着せ替え人形にされてしまって解放されたのはお昼を過ぎたあたりだった…
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「いやー。楽しかったっ!!」
お昼ご飯を食べながら雪ねぇは心なしか肌をつやつやさせながら心底楽しそうにそう言った。
「わたしはおもちゃにされまくって疲れたよ…」
「でも案外女の子同士ってこんなものよ…
あーちゃんみたいな可愛い子ならだれでもいじって遊びたいと思うわよ?
だから学校でも今のままでいいと思うわよ…」
雪ねぇがそうやってなんだか午前中の行動をうまーく正当化しているような気がしてならないけどわたしには女の子の世界は雪ねぇの言葉を信じるしかないからまんまと受け入れるしかなかった…
「もうっ…そんなこと言ってほんとはわたしで遊びたかっただけじゃないの?…
…って言っても雪ねぇの言葉を私は信じるしかないから信じてあげるけど…」
わたしは当てつけのようにそう疑った後にそう付け加えるしかできなかった…
「ごめんねって…そう拗ねないで…
あーゆう方法が一番わかりやすいと思ったのよ…
午後からはちゃんといろいろ教えてあげるから!!」
顔の前で手を合わせて可愛らしくごめんねのポーズをとった雪ねぇ…
まあ、可愛いから許してあげよう…
「うむむ…わかったよ…
ちゃんと教えてよ?このままじゃわたし何にも知らない娘になっちゃうよ…」
「きゃー!!可愛い……
その拗ねてる感じとか堪らないぃ…」
拗ね気味な感じでそう言ったらいつも通り雪ねぇはまた発狂しだした…
「でもね、そーゆうのは本当に信用してる女の子とか好きな人にしかしちゃダメよ?
ただでさえ可愛いんだから思わせぶりな事はしないようにしないといつか襲われちゃうわよ?
それに女の子の中にはそーゆう行動を媚び売ってるみたいって言って嫌う人もいるしね。」
発狂してハァハァ言い出したかと思ったらいきなり真面目な顔をしてまともな事を言い始めた。
「キョトンとした顔しちゃって…
私だってまともな事言う事だってあるのよ?
あ、そう言えばひーちゃんの会見の後色々調べたんだけどあーちゃんネットでちょっと有名になってるみたいなのよね…
ほら、」
そう言って雪ねぇはケータイで何かのまとめページを開いてわたしに見せてきた。
雪ねぇが見せてきたのは
『SNSで話題沸騰!!
レイクモールに現れる超絶美少女』
と見出しがつけられ、わたしらしき少女の画像がでかでかと掲載されたページだった。
「これ…あの雑誌の撮影したときの服装だしわたしで間違いなさそう…
ってかなんでこんな騒ぎに…」
下にスクロールして進めると買い物している最中やわたしの記憶にない服装の写真まで出てきた…
「こっちは確かあかちゃんが楓さんと遊びに行ったときの服装ね…それにしてもこの画像完全に盗撮よね…
これからは学校とか以外は帽子とかサングラスとかマスクとかした方がいいかもね…」
雪ねぇもしっかりとは見ていなかったのかわたしの持つ自分のケータイをわたしの横から覗き込んでくる…
「ええ…普通に怖いんだけど…
わたし芸能人とかじゃないんだけどなぁ…」
ページを見ているとまるで芸能人のプライベートまとめみたいになっている事に気づいた
「これは雑誌発売されたらもっと話題になるかもね…ひーちゃんの双子の姉だって気づく人も少なからず出てくるだろうし」
「そうだよねぇ…学校始まるってのに不安だよ…なんでひーちゃんあんな事言ったんだろ…」
結局あの会見の日からひーちゃんからの連絡はやって来ないままだ…
「まあ、ひーちゃんはきっと寂しいんだよ…
だからあーちゃんと一緒にステージに立ちたいって思っちゃったんじゃない?
色々考えたところでどうなるかなんてわかんないんだし今は学校の準備とか色々しないとだよ?」
そう言って雪ねぇはお昼ご飯の食器を片付け始めた。
「あ、わたしやるよ?雪ねぇは座ってて?」
お昼ご飯を作ってもらったのにお皿まで洗わせるのは申し訳ないのでそう声をかけて半ば強引に皿洗いの仕事を横取った。
「ありがとう。じゃあ私部屋で学校の準備進めてるからそれ終わったら制服持って私の部屋においで。
それと夕飯は今日はあーちゃんに頼むわね。
当番表作ったから後でそこ貼っとくね」
「うん。わかった…
ってそう言えばお父さんってどうしたの?
最近見ないし雪ねぇもいない様に振舞ってるけど…」
献立を思い浮かべた時に初めてお父さんの事を思い出した。
「あぁ、お父さん?
なんか忙しくなるからまたしばらく帰れないってさ…落ち着くまでは1週間に1回帰ってこれればって言ってたわ。
だからお父さんの分のご飯は気にしなくていいし裸だって見られる人がいなくて気が楽でしょ?」
最後の方はニヤニヤと人の悪い笑顔を浮かべていたのできっとお父さんに半裸を見られて二人して恥ずかしさから固まった事を聞いたなぁ…
「まあ、楽ちんにはなるけど裸は雪ねぇも居るんだから恥ずかしいからね!!
お父さんだから恥ずかしかったってわけじゃ…ないもん!!」
あの時の恥ずかしさを思い出してしまって顔を真っ赤にしながら雪ねぇにそう返した。
「あーあ、私もあーちゃんのあられもない姿見たかったなぁ…」
「雪ねぇはもうそれ以上のもの見てるでしょう!?」
頰っぺたに手を当てて惚けた顔をしながら雪ねぇがそんな事を言うからわたしはそうツッコんだ…
「それ以上ってなぁにぃ?
まさかお風呂で裸見てるじゃんとかって話?
それなら御門違いよ?だっておっ広げられた全裸より見えるか見えないかくらいの半裸の方がよっぽどセクシーじゃない?」
「雪ねぇ…大真面目にそんな事言ってるとさすがに引くよ?
どこかの変態さんみたいだよ…」
「うふふっ…どこかの変態って誰よ?
まあ、それはいいわ。
じゃあ私部屋で待ってるわね。」
クスクスと可愛らしく笑いながらそう言って雪ねぇはリビングを後にしていった。
「はぁぁ…それにしてもこーやって普通に生活し始めるとそれはそれで体の変化を自覚するなぁ…シンクの高さもそうだし…距離感とかもだもんなぁ…」
洗い物をチャキチャキと進めながらわたしはそんな独り言をボヤいてみる…
正直これくらいボヤいたって誰も文句は言わないでしょ…
女の子として生活していかなきゃ行けないだけでも大変なのにネットで有名になってるとかひーちゃんのあの《・・》発言とか色々あり過ぎてもう訳わかんないよ!!
「あーもう!!わたしはバンドだけ音楽だけやっていければそれでよかったのに!!」
洗ったお皿を食器棚に戻しながら側から見たらおかしくなってしまったかの様に叫んでしまった。
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コンコン。
「雪ねぇ、入るよ?」
「どうぞー!」
さっき自分で言った手前やらないわけには行かないのでキチンとノックをして雪ねぇの部屋に入る。
もし雪ねぇが着替えてたりしたら大変だもん。
それにわたしの写真見て興奮してたり変な事してたらそれこそ大変だもん…
そんな事はしないと信じたいけど…
雪ねぇのそんな姿を少し想像しては首を振ってそれを消し飛ばす。
「どうしたの?変な顔して…」
雪ねぇが心配そうにそう声を掛けてくる。
「ああ、ごめんね…なんでもないから。
それよりこの制服の着こなしどうかな?」
そう言ってスカートの裾を持ってクルッと回ってみる…
「うーん。…可愛いんだけど…
やっぱりちゃんと着こなしてたほうが可愛いわね…ちょっとごめんね?」
そういってわたしの腰周りや肩周りをまさぐり始めた。
「ちょっ!!くすぐったいっ!」
そう言ってわたしが体を仰け反らせるとゆきねぇは目を光らせて手をわしゃわしゃしながらにじり寄ってくる…
また雪ねぇに襲われるっ!って思ったその刹那…
わたしは雪ねぇに優しく抱きしめられた。
「って大丈夫よ…私だっていくら可愛くて仕方がないからって嫌がる事を何回もやるほど変態じゃないから。
それに、ほら!こうした方が可愛いわよ?」
そう言って雪ねぇはわたしの肩を抱いて鏡の前に連れてきてくれた…
鏡を覗いてみると大きくは変わっていないけどしっかりと変化が見て取れた。
肩の位置はちゃんと前になっててシルエットはちゃんとしてるしスカートは膝上丈くらいで明るい印象だしリボンはちゃんとまっすぐに止まってて清楚に見える…
「うん。全然違う…さっきまでのわたしがイモっぽく見えてきちゃう。」
「こーゆうのはしっかりとポイント抑えるだけで違うのよ。ちゃんと教えてあげるから学校までにマスターすればいいのよ。」
そう言って手取り足取り教えてくれる雪ねぇの目つきはいつもより優しい…
さっきまでのラリった目とは違った優しいお姉ちゃんといった雰囲気に少し癒される…
「ねぇ、やっぱわたしお姉ちゃんにもっと甘えたい…さっきはああ言ったけどやっぱりいっぱい仲良くしてほしいなぁ…」
なんだか雪ねぇの中にしっかりとお姉ちゃんを感じてガラにもなく甘えていたくなった…
「もうっ…あーちゃんは甘えん坊さんなんだから…」
そう言って心から優しい表情でナデナデしてくれる…
「んふぅ…ふふっ…くすぐったいよ…」
嬉しい気持ちとくすぐったさとなんかむず痒くって声が漏れてしまう…
「うふっ…そんな可愛い声だといっぱい可愛がってあげたくなっちゃうっ♪」
そう言って雪ねぇは可愛くイチャイチャしてくる。
優しく抱きしめながらナデナデしてくれるのが気持ちよさすぎてもう色々どうでもよくなってしまう…
「あーちゃんその顔やばすぎるわよ…
トロンとしててもう可愛すぎっ♪」
そんなにかなぁ…
そう思って鏡を覗いてみるとそこには頬を赤らめて恍惚とした表情のわたしがいた。
なんだかエッチな感じの見た目になってしまっていて恥ずかしい…
なんて言うのだろう…アヘ顔?…的な感じに見えて控えめに言っても変態にしか見えなかった…
「はわぁっ!!わたしこんな顔してるのか!
ってこれは可愛いとかじゃなくってもう痴女とかそういうレベルでしょっ!!
雪ねぇも気づいてたなら教えてよ!!」
「私はそこまでじゃないと思うけどなぁ…
変態的なアレっていうよりは幸せを隠しきれない乙女って感じだし…」
雪ねぇはいたって普通にそう言った。
「うぅむ…そう言うなら…
でもこれからはこんな緩んだ表情しないんだもん!!周りに見られてる時にこんな表情しちゃったら恥ずかしくて死んじゃうよ…」
そんな会話をしているとなんだかお腹の下の方と言うか腰のあたりと言うかなんだか微妙な場所がもやもやする様な変な感覚が襲ってくる…
「うぅっ…なんか変な感じするっ…
お腹がもやもやするぅ…気持ち悪い…」
身体の変化で弱音を吐きたくはないけどなんだかどうしても耐えられないのでボソッと弱音をこぼしてしまう…
「ん?どうかしたの?…
なんだか具合悪いみたいなこと言ってたけど
って顔真っ青じゃない…ちょっと休む?」
「うん…ちょっと休みたい…
とりあえず少し横になりたい。」
「わかったわ…
後で様子見に行くから部屋着に着替えて横になってなさい…制服もちゃんとアイロンかけておくから脱ぎっぱなしにしておいていいわよ。」
雪ねぇは心配そうに私に寄り添って私の部屋の前まで来てくれた。
「うん。ありがと。
晩御飯は頑張って作るから許して?」
「無理しないでいいのよ?
私はあーちゃんの為ならなんでもできるもの!
慣れない身体なんだしまだ体力だって万全じゃないんだから無理はしちゃダメよ?
さっき甘えたいって言ってたばっかりじゃない…頼ってくれていいのよ?」
さっきのお姉ちゃんらしい優しい笑顔でそう言ってくれた。
「そうだね…じゃあ甘えさせてもらうね…
でも、体調良くなったらわたしが作るからねっ!!」
「はいはい。ちゃんと休んでからそーいう事は言いなさい?」
そう言って雪ねぇは優しく扉を閉めてしまった。
とりあえずわたしがする事は休んで体調を良くすることなのでさっさと着替えて布団に籠る事にした。
着替えてる途中襲ってくるもやもやと気だるさになんだかどんどん心細くなって来て少し涙が出そうになってしまう…
だって…前に楓さんから発症したての頃は身体が変化に耐えきれてなくってボロボロで体力もない状態だから気を付けないとって聞いたのを今になって思い出して怖くなって来ちゃったんだもん…
身体が弱ってる所に何か病気でもしちゃって悪くなって来ちゃったのかとか変な想像ばかりしてしまう…
悪い想像は布団に入ってもとどまることを知らずに溢れてきてしまい結局布団に入って縮こまりながら泣いてしまった…
情けないとかそんな風に思いつつも女の子だから仕方ないっていう気持ちも出てきてもうパンクしそうだ…
結局心細さと不安でいっぱいいっぱいになってしまってどんどん溢れてくる涙を止める事は出来なかった…
布団をかぶってはじっこぐらしのぬいぐるみを抱きしめながら泣く姿は我ながら相当惨めでカッコ悪いだろうな…
そんな風な事を考えながら泣くって言う随分と器用な芸当をしているうちに泣きつかれて眠りに落ちていってしまった…
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「あら、やっぱりあーちゃん泣いちゃったのね…まあ、そうよね。退院したばっかりでそうなっちゃったら私でも不安で少し泣いちゃうかもしれないもの…
それにあーちゃんは色々と不安定みたいだしね…当たり前よね…
うふふっ…そんなあーちゃんはとっても可愛いっ…でも側にいてあげるべきだったかなぁ…
こんな小さい身体で精一杯努力して女の子してるんだもの…そーゆう時に側にいてあげるのが私の役目なのかなぁ…」
雪菜は茜の真っ赤になった瞳と涙のあとの残る頬を見て茜が先ほどまで泣いていた事を悟った。
そんな茜の頬をプニプニしたり撫でたりしながら雪菜は自分のすべき事を思い浮かべる…
自分はお母さんが死んじゃった時からあーちゃんとひーちゃんを守るって決めたんだって…お母さん代わりに二人を守るんだって…
そんな思考を巡らせる。
その為には茜の側にいてあげるべきだったのだと軽く自分を責めた…
「あーあ…私も楓さんに色々相談しようかしら…しっかりとお姉ちゃんするって決めたのに…お母さんの代わりにお姉ちゃんがいるって言えるようになるって決めたのに…」
茜の頬を触る手は止めずにそんな思考に耽っていた雪菜だったが今そんな事を考えても意味がないと思い直して椅子にかかっていた茜の制服を持ち出してアイロンを掛けることにした。
もちろん雪菜は制服の匂いを一通り嗅いで満足してからからアイロンを掛けたけれどもそれは茜は全く知らないしむしろ知らなくていいことだろう…
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「んんっ…ふぁぁ…誰だよ…」
わたしはケータイの着信音で目覚めた。
身体を起こそうとすると少しふらっとしてしまう…
なんとかフラフラと眩暈もする上半身を起こしてケータイを確認する…
『遅れてごめんね。』
届いたのはそうタイトルの付けられたひーちゃんからのメールだった…
「んー。ひーちゃんかぁ…ならいっか…
ん?なんかお股のあたりからなんだか違和感を感じる…
ん!?これって…血?…」
違和感を感じたお股のあたりを見てみるとシーツやパジャマのズボンに赤い血のようなものがベットリとくっついているのが見て取れた…
「……きゃぁぁぁ!!!血!!
った…痛い…痛い痛い…ってそうじゃなくて」
くだらない事が一瞬頭をよぎったけど痛いって言うのはどうやら本当に痛くって捻り出されたセリフらしくやけに下のお腹の方が悲鳴をあげているのがわかる…
「どうしたの!!!っあちゃー。
やっぱりそうだったかぁ…」
雪ねぇがもの凄い勢いで扉を開けて入ってきたかと思えばわたしの姿を見るなり額に手を当ててそう言った…
「お姉ちゃん!!血が!!血が!!
しかも痛いし!!」
さっきまで割と冷静だったのに雪ねぇが見えた途端に少しパニックになってしまう…
「大丈夫よ!ただの生理だから落ち着いて!
とりあえず汚れちゃった所洗ってこよっか。
大丈夫?一人で出来る?」
「う、うん。大丈夫…」
わたしは少し涙を流しながらもそう答えた。
「じゃあ洗ったらちゃんと着替えてナプキンつけるのよ?大丈夫?一人でつけられる?」
遂にやってきてしまったか…
わたしもナプキンをつける時が…はぁ…
とりあえず血だらけの下半身を洗ってしまう為に階段を降りてお風呂場へ向かおう…
「わたしの身体こんなにもグロテスクだったとは…ちょっと気持ち悪い…」
お風呂場で見た血塗れの下半身は割とグロテスクでちょっと気持ち悪くなってしまう…
「うう…それにしてもまだ調子よくないなぁ…
とりあえず原因はわかったけど…はぁ…」
眠ってしまう前までよりは元気になったけどやっぱりまだ気持ち悪くって…お腹の痛みも割と痛いしナーバスな気分になる…
「ううっ…もう生理まで来て血まで出ているのにっ…でもっ、最後の砦だもんなぁ…」
もう見た目的にも行動も女の子女の子してるにもかかわらずナプキンを付けるという行為をしてしまったら本当にもう戻れない気がして一歩が踏み出せない…
「でもダメだよっ…つけないとまた色々汚しちゃうもん…」
結局葛藤はしたものの後に引けないのでナプキンをつけて新しいパンツを履いてしまった…
楓さんに教えてもらった方法でナプキンをつけたけど本当に大丈夫なのかって心配になる…
ただ、楓さんの女の子教育がこんなにも役に立ったのは初めてかもしれない…
「大丈夫?ちゃんと付けられた?…うん。大丈夫じゃない。楓さんの教育の賜物ね。
とりあえず汚れてたのはシーツだけだったからシーツ剥がしてきたから戻ったら新しいの引いてね。」
雪ねぇが洗面所に汚れたシーツを抱えて入ってきたかと思ったらわたしのお股あたりを覗き込んで確認すると手をグッドマークにしながらそう言った。
「うう…もう戻れないんだね…」
「その覚悟はもう決めてたんじゃないの?」
わたしの呟きに雪ねぇはあっけらかんとした態度で返してきた。
「まあ、そうなんだけど…やっぱ実感する…
最後の砦が破られちゃった感じだよ…」
「じゃあもうここからは女の子街道まっしぐらじゃない…
生理痛辛かったら後でお薬あげるから言ってね。
そうだ!今日はお赤飯にしましょっか!」
そう言って雪ねぇは鼻歌交じりにスキップしながら台所の方へ消えていった。
「雪ねぇ晩御飯作る気満々じゃんっ…
あ、ひーちゃんからのメール確認しなきゃっ!!」
このままウジウジしているのもなんだからって思ったらひーちゃんのからメール来ていることを思い出した。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「ひーちゃん本気でわたしとステージ上がりたいみたいじゃん…」
ひーちゃんから来たメールは
『遅れてごめんね。
でもあれがあたしの本心だよ?
ちょっと考えてみてくれないかな?』
といったシンプルなものだった
『ちょっと考えてさせて…
わたしはまだバンドとか諦めてないから…
あ、そうだ。今日初めて生理が来たよ。
血がいっぱい出て少しパニックしちゃった…』
わたしはそう返信するしかなかった…
結局その日中に返信が来ることはなかった。
そのあとは雪ねぇが作ってくれた晩御飯の赤飯を食べて早めに寝ることにした。
明後日からもう学校なんだから身体を少しでも休めておかないと…




