33話 やっぱり慣れてないんだなぁ…
「ふぁぁぁ…あ、もう朝か…」
気が付くとわたしは部屋のベッドで目を覚ました。
あたりを見回すと私のケータイの隣に付箋で『緋那の』って貼ってある桜柄のカバーのmyphoneがおいてあった。
「そっか、あかちゃんケータイ契約しに行ったんだっけ。
あかちゃんこういうのが好きなんだ……まあ、あかちゃんらしいかな…」
そんな独り言をこぼしながら日課になっているあかちゃんとの交換ノートのチェックをする。
「え!まさか日向達に会ってたとは…
それにそんなに有名になってきてるなんて知らないよ!!」
そんな事に驚きつつもその日向たちに会いに行かなきゃだから早めに着替えなきゃ…
そう思ってクローゼットを開けるとなんだかいつもと違うような気がする…
「あ、!!そっかぁ昨日あかちゃんが買ってきた洋服があるからかぁ…」
よくよく見てみるとわたしがもともと持っていた洋服と昨日買ってきたであろう洋服がきっちり左右で分けられていて新しい洋服側には『こっち側は緋那のっ!!』って張り紙がしてあった。
この感じで二人分洋服が増えていくのならクローゼット大きいのとかにしないとダメかもなぁ…
そんな事を考えながら洋服を吟味しているとちょくちょくあかちゃんの洋服が目に入ってくる。
案外あかちゃんの趣味もいいかもなぁ…なんて考えを巡らせながら少しあかちゃんの洋服を見ているとなんだかわたしもこんな洋服着てみたいなぁって気分になってくる。
特にレイクモールでモデルまがいなことをしてからというもの洋服を見るなり自分が着たらどうなるかとか想像してしまうようになった。
昔だったらなんだか女装しているみたいで気が引けていたのに…
「はぁ、とりあえずいつも通りな感じでいくかな…」
日向達に会うだけなのに気合い入れる必要もないだろうしみんなに会うならやっぱり昔からの自分のスタイルで行くしかないよね。
いつも通りパーカーを選んでそれに会うようにコーディネートして着替えはじめてもなんだかあかちゃんの洋服がとても気になってくる…
今度あかちゃんに頼んで借りてきてみよっかなぁ…
ピロリン…
いつも寝るときははずしているはずのブラジャーをはずして新しいのに取り換えている間にわたしのほうのケータイが鳴った。
きっと日向からの集合時間とかのメールだろうけどこんな状態でケータイをいじるのもなんだからとりあえずTシャツを着てメールを確認する。
『今日お昼に駅前集合とかでもいい?それとも起こしに行ったほうがいいか?』
やっぱり日向から届いていたメールで文面的になんだか昔みたいでちょっとにやけてしまう。
まあ、それでも女の子相手に起こしに行くとかいくら幼馴染でもしないでしょ…
『もちろん駅集合でいいよ!それとも寝ぼけたわたしの無防備な姿が見たかった?』
わたしはちょっとイジワルなメールを返してしまった。
これでは男を翻弄しようとしてる小悪魔な女の子みたいじゃないか…
『そんなわけないじゃん…起きてるならよかった』
ってまじめな返信が返ってきた…ちぇっ面白くないなぁ…
まあ、いつもの私の朝の弱さを考えたらそうなるよね…
お昼に待ち合わせになったのでまあ時間はあるとはいえ時間はもう9時半をまわったあたり…
案外ゆっくりしている時間はないものだなぁ…
そのまま顔を洗いに行こうと階段を下りるとなんだか胸のあたりが少し違和感がする…
あれ、わたしの胸ってこんな揺れるほどおおきかったっけ?って思ったけどどうせそんなことはないだろうからきっとまだ寝ぼけているからだと結論付けて洗面所に向かう。
「おお、おはよう。……今日は茜だな…!!」
最近珍しく家にいるお父さんが洗面所のほうから歩いてきてわたしの顔をみてよくわかんないことを言った後に視線を落としていきなり焦った顔をしていた。
「ん?どうしたのさ?あ、あかちゃんからブレスレットの要望もらってるからあとで紙に書いて渡すね!」
ぎょっとしたような顔をしてちょっと恥じらってるお父さんにそう言い残してわたしは洗面所に向かって顔を洗う。
顔を洗い終わってタオルで拭きながら鏡を覗き込むと白いTシャツをぴちっと着ていて少しピンクがかった胸が透けて二つの突起が浮き出てしまっているというなんともエロチックな女の子が立っていた。
「ん、ちょっとこれは目に毒だなぁ……ん?……これわたしか…」
目の前に目に毒な格好をしている女の子がいるもんだと思ってよくよく見直してみるとそこにあるのはただの鏡なわけで…
ということはそこに映し出されているのはわたしなわけでしたがって目の前に見えている目に毒な女の子はわたしってことになる…
「*%#2#*%&>$#!!!」
思わず意味の分からない声で叫んでしまった…
いっくら家族とはいえこんな格好をよりにもよってお父さんに見られてしまうとは…
自分が女ってことをみせつけるのが一番くらいに恥ずかしいのにぃ…
(ちなみに一位を争っているのは他は日向達である)
こういうところが未だに男が抜けきらないってところなのだろうなぁ…
そんな事を思いながらも誰にも見られないようにこの体になってから一番早いのではないかってほどのスピードで部屋に戻った。
「はぁ…はぁ…朝からついてないなぁ…
それにしても客観的に見たらわたしあんな感じなんだ…
結構かわいい…かも?」
今度はちゃんとブラをして透けないようにしっかりとキャミソールも着てちゃんとしたTシャツを選んで着る。
その間にもさっきの自分がフラッシュバックしてくる…
あんな格好だったっていう恥ずかしさと女の子のエッチな姿をみてしまったっていう男のような恥ずかしさが混じり合って襲ってくる。
こんな気持ちが出てくるなんてやっぱりまだまだ男の子の気持ちが残ってるっていう証拠なのかなぁ…
とりあえず自分でも自分の危うさが少し見えた気がしたのでこれからはちゃんと気を張っていかないと…
自分でも可愛かったりエッチに見えちゃうのに他人が見たらそりゃあそう見えるのだろう…
「とりあえずご飯食べちゃわないと…はぁ…お父さんいたら気まずいなぁ…
ってかお父さんなんだから注意してくれてもいいじゃん…
そんなにわたしのあの格好が見たかったか…
娘に対してそうなるってだいぶやばいと思うけどね…」
そう気付いてしまったからにはなんだかお父さんが少し汚らわしく感じてしまう…
わたしも男だったんだからそうなってしまう気持ちはわからなくもないはずなのに…
「おはよ~。ってあーちゃん顔赤いけどどうしたの?
さっきもお父さんが顔真っ赤にして入って来たけど家族で風邪でも引いたのかしら…」
リビングに入ると朝ご飯を食べなている雪ねぇがそんなことを言ってきた…
「大丈夫だよ…わたしもお父さんもそんな理由じゃないから…」
さっきのことを思い出してむすっとしながらもそう返した。
「なんかあったのね…とりあえず何も聞かないであげる…
これ以上あーちゃんに追い打ちかけてもなんだし…」
「ありがと…わたしも早く忘れるようにする…
あれ?そういえばひーちゃんは?」
ご飯を盛ってきて食卓に着いたところで感じていた違和感に気づいた…
「ああ、寝かしておいてあげて…この頃いろいろあるみたいでね…
昨日も夜遅くまでなんかやってたみたいだから…」
雪ねぇも心配そうにはしているけど自分にやれることはないって感じのようだ…
まあ、実際わたし達にできることなんてないだろうしゆっくりさせてあげるのが一番なのだろう…
「おはよ~…ご飯…まだある?」
噂をすればってやつでちょうどひーちゃんが入ってきた。
ただ、普通の様子ならよかったのだけれど明らかに憔悴しきった様子でふらふらと歩いてきたので驚いて雪ねぇと二人でひーちゃんに駆け寄る。
「ちょっと!…だいじょうぶ?」
「ひーちゃん?しっかりしてよ!」
わたし達が駆け寄るとひーちゃんはふらついてそのまま床にへたり込んだ…
「多分いろいろあって忙しいんだと思う…ちょっと休ませてあげてくれ…
こう見えて国民的アイドルの宮永緋雪なんだよな…お前たちが支えてやってくれよ?」
そう言ってお父さんは書斎にすたすたと入って行ってしまった…
「とりあえずソファに寝かせましょっか…」
すぅすぅと寝息を立てるひーちゃんを二人で頑張ってソファに運ぶ…
「そうだよねぇ…ひーちゃんってアイドルだもんね…
そりゃぁいろいろあるよね…」
「そうだよね…わたし達なんてモデルの真似事みたいなことしただけでもあれだけ大変だったもんね…」
雪ねぇとわたしは朝ご飯そっちのけで安堵して表情で寝息を立てる可愛いひーちゃんをそっと見守りながらそんな話をした…
「とりあえずそっとしておいてあげよっか。
朝ご飯食べなきゃだしね。あーちゃん今日もお出かけなんでしょ?」
「ごめんね…いろいろ落ち着いたら家事とかやるから…」
雪ねぇにそういって軽く頭を下げた…
「いいのよ…私今暇だもん…
やることないから家のことやってるくらいがちょうどいいわ」
雪ねぇがちょっと寂しそうな顔をしてそういった。
そうだよね…雪ねぇもバンドをなくしてつらい時期なんだよね…
わたしがもっとしっかりしなきゃいけないんだよね…
「そっか…なるべく私も手伝うようにするからね…
いつまでも雪ねぇに頼ってちゃだめだと思うもん…
私だって家事やるくらいの女子力持ってるんだから!」
そういってわたしは胸を張った。
「あーちゃんの女子力は今に始まったことじゃないじゃない。
昔っから一番家事上手だったもんね、いいお嫁さんになるねっていじってたらほんとにお嫁さんに行っちゃえるようになったんだもん…
さすがに想定外よ…」
なんだか空気が重くなってきた…
朝からこんな空気だと気が重くなっちゃうから何とか話題変えなきゃ…
「わたしがお嫁に行くなんて相当先の話でしょ…
最悪わたしがおうちに残ってあげなきゃこの家がかわいそうだし何よりお母さんがかわいそうだもん」
冗談のようにわたしはそういった。
「その時はあたしも残ろっかなぁ…
この広い家にあーちゃん一人なんて持ったいないもの!
そのときは前みたいに二人で楽しもうね!」
そこはかとなくいつもの雪ねぇの危うさを感じたのでさっさと退散することにする…
「ごちそうさまでした!!
あ、あとでシュシュ借りに行ってもいい?」
「ああ、話はまだだって…
まあ、いっか…私ひーちゃんについてるから多分下にいると思うから準備できたら降りてきてね」
「うん!わかった。」
そういってわたしは洋服を吟味しに部屋に戻る
ついでに自分で髪の毛やってみようかな…
とりあえずゴムとかでとめて最後可愛いシュシュとかリボン借りればいいよね!
いつまでも雪ねぇに頼ってたら成長しないもんね…
部屋に戻るなりパーカーの吟味を始める…
パーカーにするなら下はショーパンがいいかなぁ…
ショーパンにするなら上はこのプルオーバーがいいかなぁ…
そんなこんなで着ていく洋服を決める。
パーカー中心にするとやっぱコーディネートに迷わなくて楽だなぁ…
とりあえずカバンに必要なものも入れたし着替えも済んだので自分で髪の毛を整えてみる。
「雪ねぇはこうやってたからぁ…」
試行錯誤を重ねるけどなかなかうまくいかない…
とりあえず何とか頭の横で束ねることに成功したのであとは雪ねぇに直してもらおう…
自分でできる最大限までやったのであとは教えてもらいながら直してもらうしかないのでかばんも持って下まで降りることにした。
ついでなのであかちゃんのブレスレットの要望の紙をお父さんのとこまで持っていってから雪ねぇのところに行くことにした。
「おとーさーん!あかちゃんのブレスレットの紙持ってきたよ!」
書斎の前でそう声をかけたら
「リビングの分かりやすいところにでも置いておいてくれ」だってさ…
そんなに部屋の中みられたくないもんなのかね…
お父さんがほとんど帰ってこなかった時でも掃除することすら許されてなかったくらいだもん…
お仕事上家族にも見られちゃいけないものとかもあるらしいから仕方ないって言ってたけどほんとかなぁ…
まあ、どうせ断固として入れてくれないから時間の無駄だしちゃっちゃとリビングのボードに張り付けて雪ねぇに髪の毛直してもらわなきゃ…もうすぐ11時っていう時間なのでちんたらしている暇なんてないんだ…
「雪ねーぇ。自分で髪の毛やってみたけどどうかな…」
「あ、今日はチャレンジしてみたのね!
……わたしが直してあげるからちょっとそこ座りなさい」
リビングに入ってボードにさっきの紙を張ってから雪ねぇに声をかけると嬉しそうに言いながら振り返ってきたけどすぐにすっごく微妙そうな顔をして机に座るように言ってきた。
「はぁい…やっぱりヘタクソだよね……」
「そんなしょぼんとすることじゃないわよ。こんなの慣れだもん
だからあーちゃんも慣れればすぐできるようになるわよ。
はい、でーきた!じゃあ、軽くお化粧もしてあげるから私の部屋いこっか。」
雪ねぇはそういってドアのほうに歩を進めた。
「えー、別にしなくてもいいと思うんだけどなぁ…」
そんな雪ねぇにわたしは少し駄々をこねるようにそうつぶやいた
「だーめ。ベースメイクくらいはしていきなさい。」
まるでお母さんのような口調で雪ねぇはそういった。
「はぁい…それって学校のときもしていかなきゃダメかなぁ…」
しゅんとしながらふと頭に浮かんだ疑問をぶつけてみた
「うーん…絶対にしていかなきゃってわけじゃないけど…
うちの学校校則ゆるいしこれくらいはしていったほうがいいんじゃないかなぁ
これくらいのお化粧はお肌の保護にもなってるんだから!」
雪ねぇはそうやって熱弁するけど正直学校始まってから朝こんなことしている余裕なんてないと思うんだけど…
「そうは言ってももわたし朝弱いからそこまでやってる時間ないと思うんだけど…」
「遅刻しない程度にはしなきゃいけないと思うけどそこまで時間のかかることじゃないしどうせ髪の毛やらなきゃとかおのずと早起きするようになると思うわよ?はい、でーきた!うん、今日もかわいいわよ!」
雪ねぇとそんな話をしているうちにメイクもおわって髪の毛にはなんだかいい匂いのするスプレーをかけてもらった。
「まあ、頑張ってみるよ…こんど教えてね!で、このスプレーはなに?」
「ん?女の子を魅力的にしてくれるスプレー♪…
ってのは口実でただのスタイリング剤よ…その目怖いからやめて…」
雪ねぇがふざけた答えを返してきたのでにらんでやったら正直に白状してくれた。
「そっか、わりとこの匂い好きだよ!わたしもこれ買ってみよっかな…」
「え、じゃあこれあげよっか?わたし新しいのほしいなぁって思ってたところだし
まあ消耗品だからすぐ買うようになるとは思うけど…」
そういって雪ねぇはヘアスプレーを渡してくれる。
「いいの?シュシュだってこの可愛いのくれたしなんかもらってばっかりじゃない?」
「いいのいいの♪あーちゃんがどんどんかわいくなっていくのが楽しいしシュシュだって私があんまり使わないってのもあるから…
それにそのうちあーちゃんの服借りたりすることもあるだろうしね!
姉妹なんてそんなもんだと思うわよ」
そういう雪ねぇの笑顔は優しくってとても幸せそうだった。
「そっか。じゃあ素直に受け取ることにするね!
ありがとね!お姉ちゃん!」
わたしもありがとうの気持ちをいっぱい込めて笑顔でそういった。
「じゃあ、そろそろ向かったほうがいいと思うわよ?
駅までは歩いていくんでしょ?昔の感覚で行ったらたぶん遅刻しちゃうわよ?」
「うん。そうだね!じゃあこのスプレー部屋においたら出よっかな」
そういってわたしは雪ねぇの部屋を後にした。
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「じゃあ、行ってきまーす!」
リビングに置いてあったカバンをもって入院してるときに買ってきてもらったショートブーツ調の靴を履いて家を出た。
三月ももうそろそろ終わるっていう時期にどうかとも思ったけどローファーよりはいいかなって思ってこっちにした。
ローファーは学校行く時にも使うわけだし普段使いの靴で行くべきだろうっていう考えもあった。
ちょっと歩いたところでケータイで時間を確認すると時刻は11時20分をまわったあたりだった。
ここから駅までは歩いても15分くらいなのでまあ、どれだけ遅くなっていたとしても時間に間に合わないってことはないだろう…
ほんとなら自転車で行く距離なのだろうけどあいにくもともと乗っていた自転車はサイズが合わなくなっちゃったし雪ねぇは自転車を持っていないから借りることもできなくって歩いていくことになった。
あれ、案外進むの遅いなぁ…思ってたより歩くスピードが遅いことに今更気づいた…
日向と帰ったときはおしゃべりしてたし日向がゆっくり歩いていてくれたってことか…
「はぁ、まあ時間には着くと思うけど…誤算だったなぁ…
この調子ならバスの時間見てバスで行くべきだったかなぁ…」
ブ―ッブ―ッ
そんな弱音を少し吐いたところでケータイが鳴った。
『俺もう家出ちゃったから案外早くつくかも…
着いたら駅のモスドで時間つぶしてるわ』
日向は駅から歩いて20分くらいのところに住んでいるのでちょっと早いくらいの時間に出ちゃったってくらいなのだろう…
まあ、自転車だとしたら早すぎると思うけど…さすがにそんなことはないでしょ…
『わかった。近くなったらメールするからわたしのポンポンリング買っておいて』
日向が自転車じゃないと踏んでわたしはそう日向に返信した。
『わかった。良きタイミングで買っておく』
返信にこんだけ時間がかかるってことは自転車乗ってる可能性もあるなぁ…
まあ、そんな事どうでもいっかわたしは少しでも早くつけるように頑張るだけだもんね…
はぁ、それにしてもまた大和たちと喧嘩になるかもって思うだけでなんか気が重たいなぁ…
でも仲直りするためには必要なことだもんね…
だってみんなでまたバンドやりたいもん!
そんな事を考えながら歩いていたら駅のちょっと手前にある商店街までたどり着いていた。
「なぁんだ、かかる時間そんな変わんないじゃん…」
安堵してケータイで時間を確認したらもう11時50分になろうかという時間だった…
メールの履歴にも日向からの
『もうついたよー。』っていうメールと『もう近くまで来た?ポンポンリング買っておくね。』っていうメールが入っていた。
「はぁぁ…案外ぴったりにつきそうじゃん…」
あれだけはやく出たっていうのにこんなに時間かかるなんて…
それだけでどっと疲れが出てきてしまった。
とりあえずモスドまで行けば休めるしポンポンリングが待っているのでモスドまでは頑張っていこう…
そうやって目標を下方修正してなんとかモスドまで頑張ることにした。
「あれぇ?お嬢ちゃん一人?だったら俺たちとお茶しない?」
モスドまであとちょっとといったところでちょっとオラついた男とチャラ男というなんともテンプレなナンパに声をかけられた。
「いや、向こうで待ち合わせしてるんで…」
そういってなんとなくあしらおうとする。
「そんな奴いいじゃん…俺らと遊ぼうぜ?」
そういってチャラチャラしたほうがそういいながらわたしの腰に手を回してきた。
…ちょっと、手が軽くお尻にあたってるんだけど…
だんだんと下に落ちてくるその手に背筋が凍った
「いや、大事な用なんで…待たせちゃ悪いんで離してもらえませんか?」
背筋を走る気持ち悪さに耐えながらも気丈にふるまおうと必死になって震える声を抑えてそういい放ってこの場を立ち去ろうとした。
でも、それはオラオラしたほうがわたしの腕をつかんで引き留めたことによってかなわなかった。
「まあまあ、そうつれないこと言わないでさぁ…俺たちと遊んだほうが楽しいぜ?」
ニヤニヤしながらそういってくるナンパに心底気持ち悪さを感じていままで取り繕っていた愛想笑いが思わずゆがむ…
これ以上は本心からあふれ出す罵詈雑言を抑えられそうにない…でもそんなことをしてしまえばこの男共を逆上させてしまって暴力を振るわれてしまうだろう…
「離してください…」
か細く震える声でそう言っても男達は聞こえてませんって体で何も反応しなかった
女の子になって初めて男に心の底から嫌気がさした。
もちろん男が全員こうじゃないってことぐらいわかってはいるけどもはや自分がこんな奴と一緒の男だったっていうことが気持ち悪く感じるまでになってしまっている…
それまでにこいつらの強引さと力の差ってものに恐ろしさを感じた。
「たすけて…
誰か助けて……日向ぁ…」
わたしは恐怖で何もできなくなってしまって小声でそうつぶやくことしかできなかった。
「おい、俺の彼女に何してくれてんだよ…
警察呼んだから早くお縄につきやがれ…クソ共が…」
わたしの横に立って腰に手を回していたチャラ男が前につんのめったとおもったら後ろからわたしの肩を抱きとめる優しい手とともに日向の声が聞こえた。
「もう、遅いよ。」
一瞬で日向だって確信したわたしはその優しい手に体をゆだねた。
「ごめん…」
そんなやりとりをしている間にオラオラしたほうが日向に襲い掛かろうとしてきた。
「てめぇ!なにしやがる!」
「そこ!なにやってるんだ!」
でもちょうど襲い掛かってきたところで警官がやってきて声をかけたらそそくさとナンパ達は逃げていった。
「大丈夫ですか?お怪我とかはありませんか?
彼氏さんも通報ありがとうございます。
今行った奴があいつらを捕まえるので安心してください。」
後ろからやってきた警察官が優しくそう声をかけてくれた。
「お願いします。
とりあえず僕らは向こうに移動してもいいですか?
このままここにいるのもなんですし…」
「わかりました。後でで構わないので少しお話を伺いたいのでそこの交番まで来ていただいてもよろしいですか?
もちろん落ち着いたらでかまいませんしお時間は取らせませんから。」
「わかりました。とりあえずこいつが落ち着き次第向かいます。
じゃあ、行くぞ。立てるか?」
そういって日向は手を差し伸べてくれた。
いつの間にかわたしはぺたんと座り込んでしまっていたようだ。
「ありがと。怖かった…怖かったよぉ…」
日向の優しい手に触れてそのまま引き寄せられて抱きとめられるとさっきまでの緊張が嘘みたいにほぐれていく。
安心したからか体の震えは止まったけどぼろぼろと大粒の涙があふれてきた。
そのまま泣きじゃくるわたしを日向はモスドの席をとっていた場所まで連れて行ってくれた。
わたしはポンポンリングの優しい味と紅茶の優しい香りと日向の優しいナデナデのおかげで徐々に落ち着きを取り戻していった。




