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茜色で描く未来  作者: みやしろましろ
橙哉→茜 茜の過去と今
31/68

31話 楓さんとデート 前編

「ふぁぁぁ…割と自然に入れ替われたなぁ…」


キョロキョロと辺りを見渡す…あたしがいるのは少し男の子っぽいような女の子の部屋だった。


机の上には折りたたみ式の鏡が立ってるし無機質なようで所々にぬいぐるみが置いてある感じがなんとも女の子の部屋だと感じさせる。

逆にクローゼット側にはギターが立てかけられていたりアンプがあったりと男の子っぽくみえる。


まだまだ未完成と言った感じは見受けられるが茜ちゃんっぽさが見える部屋だった。


「茜ちゃんっぽい部屋ねぇ…

このぬいぐるみとかいつ買ったのかな?

ギターとかはなんか割と触ってなさそう…」


ぼそぼそと独り言を言いながらあたしはベッドサイドにあったケータイをチェックする。


今日わたしがケータイを買うまでは茜ちゃんに頼んでロックはかけないでおいてもらったから簡単にケータイをチェックすることができた。


『緋那ちゃん起きたぁ?

今日は私がお迎えに行くから準備ができたらお電話ちょーだい♪』


案の定楓さんからのメールが届いていた。

っていうか朝5時にこの連絡してくるとかあの人気合入りすぎでしょ…


ケータイで時間を確認するとまだ8時をまわったあたり…

この勢いだともう準備して待機していそうだけど一応準備とかもあるだろうから今電話して迎えに来てもらう時間を決めることにした。


プルルルル…


『あ、緋那ちゃん?おはよう。準備できた?』


電話すると見事にワンコールで出た楓さん。

絶対これ待機してたな…


「おはようございます。

楓さん朝早すぎますよぉ…あたし今起きたんで、10時半に来てもらうとかで良いですかぁ?」


『うん。わかったわ。じゃあ10時半に迎えに行くわね。レイクモール行くんだからちゃんとおめかしするのよ?』


「茜ちゃんじゃないからしっかりしますって」


『それもそうね。じゃあ10時半に』


「はい、わかりました。」


そう言ってあたしは電話を切った。

その次にした行動はとりあえず顔を洗いに行くことだった。


とたとたと階段を降りるとリビングの方から料理をする音が聞こえる。


ガチャ…


「あら、…緋那ちゃん?そっか…今日は楓さんとデートなんだっけ」


リビングのドアを開けると対面式キッチンで朝ごはんを作る雪ちゃんが声をかけてきた。


「おはよ。10時半に楓さん迎えに来るって。

っていうかよくあたしだって気付いたね」


「そりゃあ、お姉ちゃんに見通せない事はないもの…

それより、頭ボサボサだし顔テカテカだけどいいの?」


さらっと雪ちゃんがそんなことを言ってくれたことであたしがやりに来たことを思い出した。


ガチャ…


「お、今日も二人とも早いんだな」


あたしが顔を洗いにリビングを出ようとしたらいきなり扉が開いて緋哉さんが入ってきた。


「あ、あ…いやーっっっ!」


バチンッ


顔の近さとボサボサテカテカの状態を見られた事による恥ずかしさからあたしは勢い余って緋哉さんにビンタをしてしまった。


「え??え?なんで俺ビンタされたんだ?」


緋哉さんはあたしにビンタされたところを手で押さえながらキョトンとしている。


宮代家の中で緋哉さんだけはなんか家族って気がしなくって…

正直こんな姿を見られるとか恥ずかしくって死ねる…


だって誰でも知り合いのおじさんにこんな姿見られたら恥ずかしいと思う。


「ああ、お父さんは運が悪かったかな…

とりあえず緋那ちゃんは顔洗ってしっかりしてきたら?」


「うん、わかった。とりあえず顔洗って髪直したらごはん食べるね。」


あたしはそう言い残して洗面所に向かった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「はあぁ…まさか緋哉さんにあんな顔見られるとは…後で謝らなきゃ…」


顔を洗って髪の毛に櫛をかけながら鏡に映るあたしの顔を見つめているとほんの少しの違和感に気付いた。


不思議な事に普通の茶色だった瞳が少し蒼みがかってきていたのだ…


「茜ちゃんそんなこと言ってなかったのになぁ…」


気になりはしたけどきっと茜ちゃんが気づいていないだけだと思って軽くスルーしてしまった。


それよりも髪の毛をちゃんとすることのほうが重要だよ…

茜ちゃんと約束した通りちゃんと顔の横に垂らした髪の毛を右側だけ編み込みをした。

ほかのところはちゃんとブローをしてちゃんとまっすぐにしてセミロングのストレートにした。


やっぱりストレートのほうがこの髪の色の美しさが出ると思う。

この茜色の髪はあたしの自慢の一つでもある。


「とりあえず緋哉さんに謝らないとだしこんな格好だけど朝ご飯食べるかぁ」


ってことで顔を洗って髪を整えただけだけどリビングに向かうことにした。



「さっきはごめんなさい…」


リビングに入るなり緋哉さんにさっきのことを謝りに行った。


「そんな謝らなくっても大丈夫だよ。

それに俺も配慮が足らなかったと思うし」


緋哉さんはソファに座ってコーヒーを片手に優しい顔でそういってくれた。


「そっか、あたしもこれから気を付けるようにします…」


「ひと段落ついたところでご飯にしましょっか!」


緋哉さんにそう返したところで雪ちゃんがテーブルに朝ご飯を準備しながらそういった。


「あれ?ひーちゃんは?

もしかしてひーちゃんって朝食べない人?」


「いや…そういうわけじゃないんだけど…

呼びに行っても起きてこなくって…疲れてるのかなぁ」


雪ちゃんは心配そうにそういった。


「まあ、あいつもいろいろあるんだろ

とりあえず俺らはご飯片付けちゃおう

それに緋那はこの後予定があるんだろう?」


そういって緋哉さんはテーブルについた。


そうだった、今日は楓さんとデートなんだった

はやく準備しなきゃ


「それもそうね。じゃあ食べ始めちゃおっか」


そういってあたし達は朝ご飯を食べ始めた。


ひーちゃんはきっと疲れているんだろうってことで今日はみんな納得した。

あとでひーちゃんにマッサージでもしてあげよう…



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



朝ご飯を食べ終わって部屋まで戻ったあたしはとりあえず今日着ていく洋服を決めるするついでに茜ちゃんの持ってる洋服をチェックすることにした。


「あー、茜ちゃんはこういうのが好みなのねぇ…」


茜ちゃんの洋服を見てまずはじめにパーカーの量に驚いた。

パンツとかもパーカーに合わせる前提っぽいものが多かった。


「こっちはきっと雪ちゃんからもらった系かな~」


そこと少し分けられておいてあったのがだいぶフェミニンな感じできっと茜ちゃんに似合いそうだなってのが多かった。

言うまでもないけどきっと雪ちゃんの趣味全開なんだろうなぁ…

まあ、あたしの趣味にもわりとあってるけど…


「やっぱり今日はこれでいこっかなぁ…」


だいぶ吟味して今日の服装を桜色っぽいシフォンブラウスに白いフレアスカートを合わせた春っぽい甘々コーデにすることにした。


「うん、これにしよう!…

制服かぁ…ちょっと着てみよっかなぁ…」


吟味していたほかの洋服をクローゼットに戻していると昨日茜ちゃんが学校から借りてきた制服がふと目についた…

そのうち着ることにはなるんだろうけどやっぱり着てみたくなるものだなぁ…


ガチャ


「緋那ちゃーんっ!!お姉ちゃんがお化粧してあげよう…ってなにしてるの?」


今日着る洋服をベットの上にのせてちょうど制服に手を伸ばしていたところでいきなり部屋のドアが開いて雪ちゃんが入ってきた。


「え?…な、何でもないよ?…今着替えるとこ…」


別にやましいことをしようとしていたわけじゃないのに妙な恥ずかしさがこみあげてくる。


「なになに~制服気になっちゃったぁ?

よかったら現役生徒の私が着方とか教えてあげよっか?」


雪ちゃんはにやにや悪い笑みを浮かべてにじり寄ってくる。


「いや…、別にそういうつもりじゃないから…

ほら、時間もないし…雪ちゃんがそういうならお化粧お願いしよっかな…

先に着替えちゃうから雪ちゃんはお部屋で待ってて。」


とりあえず話題をそらして雪ちゃんを部屋の外まで押しだす。

あたしの行動はどう見ても照れ隠しなのは明白だった


「はいはい、じゃあ私は部屋で待ってるわね。」


それでも雪ちゃんは何も言わずにあっさりと部屋から出て行ってくれた。

こういう思いやりとかすっごく愛を感じる…

やっぱ雪ちゃんはお姉ちゃんなんだなって実感する。


「なるべく早く着替えるようにするからっ」


あたしは真っ赤な顔をしてそれだけ言ってドアを閉めた。



「はぁ、恥ずかしかったぁ…

とりあえず先に着替えちゃお…」


とりあえず燃えるように熱いこの顔のほてりを冷ます前に着替えてしまうことを選択した。

雪ちゃんの部屋に行くまでにはこの恥ずかしさをどうにかしないと…


そんな事を考えるうちに案外すぐ着替え終わってしまった。

まだ顔は熱いまんまだ…

あんまり遅くっても心配するだろうけど覚悟を決めて雪ちゃんの部屋に向かうことにした…


「メイク中さっきの話題ぶり返されないといいなぁ」


そんな一末の期待を胸にあたしは廊下の手前側にある雪ちゃんの部屋に足を向けた。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



コンコン…

「お邪魔しまーす」


雪ちゃんの部屋にノックして入る


「待ってたよー…って緋那ちゃんも可愛すぎ―!!

それにその洋服緋那ちゃん好みだと思ったんだよねー」


あたしが部屋に入るなり飛びついてくるかのような勢いで雪ちゃんが詰め寄ってきた


「やっぱりこの服雪ちゃんの趣味だったんだ…

まあ、あたしも似合うとは思うしいいんだけどね…」


「そうそう♪やっぱり女の子は似合う洋服が一番だよねっ!

それに合うメイクも重要だと思うけどっ!」


そういってカチャカチャとメイク道具をいじり始めた。


雪ちゃんはメイクをしている途中は集中しているようで割としゃべらないみたい…

したとしても割と簡単なこととかメイク道具について聞いたことに答えてくれるレベルだった


雪ちゃんいわく「人の顔やってるときにしゃべってられるほど私はまだうまくないわよ」だそうだ。


あたしは雪ちゃんのメイクはうまいと思うけどなぁ

雪ちゃんのメイク見ててあたしも興味持ったくらいだし…

それくらい雪ちゃんのメイクは上手だと思ったしあたしと茜ちゃんで別のイメージになるようになるあたりすごいなって思った


「茜ちゃんとはまた違ったイメージにしてくれたんだね」


メイクをし終わって雪ちゃんに着替える時にはねてしまった髪の毛をブラッシングしてもらってる


「そうねぇ…緋那ちゃんのほうがメイクとかが映えそうな性格かなって思ったのとあーちゃんはナチュラルっぽいほうが可愛いかなって思っただけよ」


雪ちゃんは優しい口調でそういった。


「ほら、そろそろ楓さん来る頃でしょう?靴とかはいて準備しちゃいなさいって」


そういって雪ちゃんはブラッシングする手を止めた


「そっか、ありがとね!じゃあ行ってきます!」


そういってあたしは鏡台の前の椅子から立ち上がって玄関のほうに足をむけた。



トントントン…


ブ―ッブーッ


階段を下りている最中に手に持っていたケータイが震えたので確認すると楓さんからのメールだった。


『あと5分くらいしたらつくからもう準備しといて~』


あの人は今運転をしているんじゃないだろうか…

運転中にケータイいじってていいのだろうか…


そんな思考を頭に巡らせつつ玄関で靴を履いて楓さんの到着を待つ。


しばらくすると閑静な住宅街に車のエンジン音が響いてきた

この辺りはなかなか車の通りがないのできっと楓さんの車だろう。



「お待たせ―!!あら、今日もかわいい服装じゃない!とりあえず乗っちゃって!!」


うちの前に車を止めた楓さんはそういって助手席に乗るように促した。

楓さんの車はまさかのスポーツカーでイメージと違ってびっくりした。


「楓さんすごい車乗ってるんですね…」


楓さんの車に乗り込むなりそんな言葉がこぼれてしまった。


「あら、そう?まあ車自体はお父さんから譲り受けたものだし私も最初は緊張しちゃってたけど乗ってみると案外乗り心地もいいし性能もすごいのよぉ…まあ、燃費が悪いのが玉に瑕だけどね…それも正直経費で落ちてるから全く問題ないってわけ!」


自信ありげにそう言った楓さん…その目は車について熱く語るおやじみたいだった…

それにしてもこの人は経費でなんでも落としすぎじゃない?

そんなにあの病院の資金は潤沢なのだろうか…


「緋那ちゃん?大丈夫?興味なかった?それともどこか具合でも悪くなった?」


信号待ちで車が止まると楓さんが心配そうに覗き込んできた

そっか、聞いた割に反応がなかったから心配したんだろう…


「いや、大丈夫ですよ。

そんなに経費で落ちるもんなんだなぁってちょっと考え込んじゃっただけです

それにレイクモールがどんなところか楽しみになってきちゃって!」


とりあえず正直にそう答えた。

レイクモールのことで頭がいっぱいになりつつあるのは本当だし…


「そっか…まあ、経費については大人の事情ってやつよ…

レイクモールについてはそういうと思ったからそこにパンフレットもってきておいたわ

これ読んでイメージをふくらましておくといいと思うわよ。

ケータイの契約終わったらいっぱい買い物できるからどこ行きたいとかあったらチェックしておいてね」


そういって楓さんはパンフレットを渡してくれた

そっか、いっぱいお買い物できるのかぁ…

ケータイのカバーとかも買わないとだしなぁ…


そういえば…あたしお金ないんだった…


「楓さん、あたしお金持ってなかった…」


パンフレットから顔を楓さんのほうに向けて弱弱しい声でそういった



「大丈夫!お金に関しては心配しなくってもいいわよ!

研究協力費ってことで今回はこっちが負担してあげるわ!」


楓さんはエッヘンといった感じでそういってくれた。

ものすごく楓さんが頼もしく見えた。


「まあ、何買ったかだけは研究に使わせてもらうからそこだけは許してね!」


お茶目にそういってるけど別に何買ったかなんてどうでもいいからあたしは気にしないから別に構わない…



そうこうしているうちに大きな湖が見えてきた。

この湖の湖畔にレイクモールがあるみたいだ。


「うわああああ!!きれい!

こんなところにあるなんておしゃれ!!」


「そんなにはしゃいじゃって…

中はもっとおしゃれだから中入ったらどうなっちゃうのかしらね」


少しだけ見えてきたレイクモールのおしゃれな佇まいに柄にもなく興奮していると楓さんはやれやれといった感じで返してきた。


「もう楽しみで仕方ないよー!!

あたし好みの洋服いっぱい見るぞー!」


そういわれてもあたしのワクワクは止めることができないから、あんまりうるさくならないようにいろいろと想像して楽しむしかない。



「ほら、もうつくよー。」


楓さんがそういってハンドルを切るとレイクモールの全体が見えてきた。

駐車場が湖畔側にあって奥のほうからは湖畔まで降りられるようになってるみたいだ。


「どうする?あっちのほう止めたら湖畔まで近いけど…」


「いや、近くでいいと思うよ湖畔で遊んだりするほどあたし子供じゃないし…

それにいっぱい買い物するなら近いほうが楽でしょ」


「わかったわ。じゃあ、あそこ止めちゃうねー」


そういって楓さんは入口からすぐの駐車枠に車を止めた。



「よしっ、じゃあ先にケータイショップまで行っちゃおうか」


そういって楓さんは入口に向かって歩き出した。


「はーい。早めに行っちゃわないと混んじゃいますもんねぇ」


そういってあたしも楓さんについて行った。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「それではこの番号札でお待ちください。

待ち時間が1時間ほどございますので順番になりましたら先ほどお書きいただいた電話番号にお電話いたしますのでどこかご覧になっていただいていてもよろしいですよ。」


店員のお姉さんはなんか違和感を覚えたような顔をしながらもそう案内してくれたのでお願いしますと言ってケータイショップを後にした。



「1時間どうしよっか…緋那ちゃんどこか行きたいところある?」


軽く歩き始めながら楓さんはそういった。


「うーん…ケータイのカバーとか見たいけどそろそろご飯時だし混み始める前にご飯食べちゃったほうがいいかなって…」


いろいろしたいことはあるけれどまずは効率重視でそう提案した。


「それもそうね、ちょっとお昼ごはんには早いかもしれないけどそうしましょっか」


時刻は11時を回ったあたり、お昼ごはんといえない時間じゃないでしょ。


「うん、あたしオムライスが食べたいな!できればデミグラス乗ってるやつ!!」


「私は何にしよっかなー。サラダとかあるところにしようかな…」


楓さんもあたしも同じ階にあるフードコートに行く気満々だった。



「あー、フードコートはもう割と混んでるや…」


「どうする?緋那ちゃん?ほか行く?」


フードコートは割と人が集まっていて席もちょっと待たないと座れないくらいには埋まっていた。

ただ、ちょうど人の変わり目なのかあちこちで席が空いては埋まってを繰り返してる。


「うーん、案外人の回転速そうだしちょっと待ってみるのもあるかもですよ」


「そうね、あ、あそこ空きそうね。」


楓さんは空きそうな席を見つけたようでそこへ向かって歩き出した。



「あ、もう空きますぅ?」


席まで近づいて座っていた人が立ち上がったところで楓さんがそう声をかけた。


「あ、大丈夫っすよ。僕ら今どきますんで…

…って茜?と、病院であった看護師さんじゃないっすか

今日は二人でお出かけっすか?」


楓さんが声かけた相手はなんだかあたしたちのことを知っているようだった。


「え、…もしかして日向くん?…それに和希くんに大和くんじゃない…」


そういって楓さんはバツの悪そうな顔をする。


「え、この人たち茜ちゃんの知り合いですか?」


あたしはきょとんとした顔で楓さんに尋ねた。


その瞬間テーブルに座ってた3人からおかしなものを見るような目を向けられる。


「そう、日向くんと和希くんと大和くんよ。」


楓さんはバツの悪そうな顔をしたままそう答えてくれた。

ってことはこの3人のだれかが茜ちゃんが気になってる人ってことね…


「茜何言ってるんだよ、俺たちのこと忘れっちゃったのか?」


「今度はそんな演技か?やっぱお前おかしいよ…」


「ついに橙哉もそうやって逃げるのか…」


3人は意味の分からないことをいらだちを隠しもせず言い放った。

ただ、最後の言葉を聞いてなんとなく察しがついた。


きっと茜ちゃんはしっかりTS症候群について説明してなかったのだろう。


「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど時間いいかな?」


あたしを軽く責め立てる3人に楓さんが水を差す。


「「「構わないですよ」」」


すぐさまハモってそう返してきた。

まるで俺たちも言いたいことがあるとでも言いたげだ…


「じゃあここじゃなんだから、向こうのカフェにでもいこっか。

お金に関しては心配しないでね、おねぇさんがお茶くらいおごってあげるから」


そういって楓さんは遠くに見える純喫茶風の高そうなカフェを指さした。


とりあえずあたしたちはそこに移動することにした。

いろいろここではできない話があるのだろう。

ああ、オムライス…ぐすん

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