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茜色で描く未来  作者: みやしろましろ
橙哉→茜 茜の過去と今
23/68

23話 わたしの洋服とこれから…

ジリリリリッ!ガタッ!


「ふぁぁぁ…眠っ…」


昨日セットした目覚ましは見事に仕事を全うして寝ぼけ眼のわたしを叩き起こした。


時刻はまだ6時半だけど久しぶりに朝ごはんを作ろうと早起きをしたのだ…


とりあえずいつもの癖でリビングにある当番表を見に行く。


わたしが茜に変わってから色々あったからかそれともひーちゃんやお父さんに家事能力がなかったからかはわからないけど当番表はまたわたしが橙哉だった頃のままになっていた。


ちなみに宮代家ではお母さんが死んでからはわたしと雪ねぇで家事は当番制でこなしていた。


もちろん各々の用事などで当番通りには行かなかったりするけど概ね当番通りこなしていた。


ちなみに言うとわたしは料理が得意で雪ねぇは掃除や洗濯が得意だったので自然と当番の振り分けはそう別れることが多かった。


「もー。わたしが入院してる頃ちゃんと当番振り分けてなかったなぁ?」


当番表が使われていないということは家事をそもそもしていなかったかもしくは当番の振り分けをしていなかったかであろう。


家を見る限り家事は行き届いているように見えるので前者はありえないから…


「後でひーちゃんに問い詰めてみよ…」


そんな黒い事を考えながら玉ねぎを取り出してスープの準備をし始める。


昨日の夜にご飯を炊き忘れてしまったので今日の朝ごはんはパンにした。


「んぉ。あれ、いい匂いがすると思ったら朝ごはん作ってくれてたのか…」


ごはんの匂いにつられてきたのかお父さんが起き出してきた。


「はい、コーヒー。」


自分用に淹れようと思っていたコーヒーを先にお父さん用に淹れて先に出した。


「ありがとう。こうしてると本当に茜菜せんなとの日々が蘇るよ…」


「もー、お父さんったら…懐古するのもいいけどわたしはお母さんじゃないんだからね?」


お父さんが懐古趣味のオヤジみたいなこと言いだしたから先に釘を刺しておく。


「んー茜に茜菜せんなを重ねて見てるっていうよりは娘が嫁似に育って嬉しく思う父親ってところかな…

ほら、お前なら少しは分かるだろ?

息子とキャッチボールをしたい的なアレよ。」


なんだかお父さんの語り口が娘に対するものから息子に対するものに変わったような気がする…


「そんな気持ちとかも頭ではわかんなくはないんだけど気持ち的にはよくわかんないってのが正直な所かな…」


お父さんが橙哉の頃も含めてのわたしを見てくれているのが嬉しい。


だからわたしもお父さんに応えるように正直な自分をお父さんにぶつけた。


「元々男だったって言っても茜はもう女の子なんだもんな…男のノスタルジー的なものはもうわかんないよなぁ…」


お父さんは少し残念そうに呟いた。


「ん〜なんていうのかなぁ…

わからなくはないんだけど少しずつ理解できなくなってきてるって感じかなぁ…」


「そうか…茜大丈夫か?

だいぶ震えてるみたいだけど…」


お父さんに言われて初めておたまを持つ手が震えてることに気がついた…


「え、なんで?…」


震える手でスープをとりわけようとするがだんだんと震えは大きくなって上手く取り分けられなかった。


「大丈夫だ…俺は何があってもお前達を守るって決めたんだ…

だから俺の腕の中では安心していいんだ」


いつの間にか対面式キッチンの向こう側からわたしの隣に来たお父さんは震えるわたしを包むように抱きしめてくれた。


「お父さん…ありがと…震えの理由が少しわかったよ…きっとわたしは知らないうちに自分が変わっていくのが怖かったんだ…

いつか今のわたしも変わっていってなくなってしまうんじゃないかって不安だったんだ…」


なんとなく見えてきた心の深いところにあるモヤモヤを口に出せば出すほど涙が溢れてきた。


「大丈夫。どれだけ茜が変わってしまっても俺は変わらずに接し続けるから…

それにこれから茜が変わっていってしまっても今の茜がいなくなるわけじゃないんだ…

だから安心して今を生きろ!それしかないんだ」


お父さんはわたしを抱きしめる手に力を込めてクサい台詞を熱く投げかけてくれた…


ただ、そんな台詞だからこそ心に突き刺さってくる気がする…


「うん。そうだね…ありがと。」


涙は止まったもののまだウルウルしている目で上目遣いをしてそういった。


「うぇぁぁ……んんっ…んふふ〜♪」


わたしを抱きしめていた腕は離してくれたけど今度は頭をナデナデときたもんだ…


まあ、気持ちイイから別に何も言わないけど…


「茜、お父さんはずっと味方でいるからな…」


そんなことを言われてしまえばなんだかお父さんが格好良く見えるじゃないか…


んぎゅ…


なんだかそうしたら安心するような気がしたので今度はわたしからお父さんに抱きついたみた。


「茜…」


「ふぁぁぁあ…

え、あ〜ちゃんとお父さん何やってるの…」


お父さんに撫でられながら気持ち良くなっているとひーちゃんの信じられないものを見たような声が聞こえた。


「ええっ…ひーちゃん!?

これにはね、深い訳があって…」


なんとも言い訳がましくなってしまった。


それにしてもお父さんは堂々としたもんだ…

まるで娘と仲良くして何が悪いとでも言いたげだ…


「お父さんっ!?あれ程あ〜ちゃんに手出しちゃダメだよって言ったじゃん…」


「娘と仲良くしたら悪いのか?」


お父さん開き直っちゃったよ…


「あ〜ちゃんばっかしズルいっ!!」


開き直ったお父さんをみて観念したひーちゃんは攻め方を変えて自分から抱きつきに行くという凶行にでた。


ひーちゃんがお父さんといちゃいちゃしている間にご飯を作り終えてしまおう…


どうせ後はウインナーを炒めてお皿に盛るだけだし。


「朝ごはんできたよー!」


「わかったぁー!おねぇちゃん起こしに行かないと〜」


キッチンからリビングにいる二人に声をかけた。


「わかったからご飯の前に手洗ってきたら?」


「そうだねっ…じゃあおねぇちゃんはあ〜ちゃんに任せたっ!」


「うん。任せて。」


そういってわたしは階段をのぼる。



ガチャ…


「雪ねぇ起きてー!!朝だよー!」


雪ねぇの部屋に入ると昨日の鏡台とは反対側にあるローテーブルで雪ねぇは眠りこけていた。


周りにはなんの曲かはわからない譜面が散乱していた。

ローテーブルに某リンゴ社のノートパソコンが広げられているあたりを見ると昨日は遅くまで作曲をしていたのだろう…


「ほらっ!雪ねぇっ!そんなとこで寝てると風邪ひくぞっ!朝ごはん作ったから食べちゃって!」


声をかけても一向に起きる気配がないので揺すって起こす事にした。


「んぁぁ… あさ?」


体を起こして伸びをする雪ねぇはまだ寝ぼけているようでなんだかとてもカワイイ。


「雪ねぇまた夜更かしして曲書いてたでしょ!

そーゆーの体に悪いよ?」


「うん…でもかきあげたかったから…

…ってあーちゃん!?お姉ちゃんのこと起こしに来てくれたのかな?」


寝ぼけている雪ねぇは可愛かったけどわたしが声をかけるとだんだんと目が覚めてきたのかいきなりエンジン全開でいつもの雪ねぇだった。


「そうだよっ!早くご飯たべよ?」


そう言い残してわたしはリビングにおりた。



リビングに戻るとひーちゃんがトースターをセットしてパンを焼き始めてくれていた。


「あっ、ひーちゃんありがと!

あとはわたしやるから食べてていいよ!」


そういって焼きあがったパンをひーちゃんのお皿に乗せてあげた。


「そう?ありがと。

でもおねぇちゃん降りてくるならみんなで食べ始めよ?」


「それもそうだねっ!」


そうしているうちに焼きあがったパンを雪ねぇのお皿とわたしのお皿に盛って雪ねぇが降りてくるのを待つ。


階段を降りてくる音は聞こえたからきっと顔と手を洗っているんだろう。


ガチャ…


「あれ、待ってなくても良かったのに…」


「そんな寂しいこと言わないでよ、なかなかみんな揃って朝ごはんたべれるなんてないんだから」


申し訳なさそうに言う雪ねぇにひーちゃんがもっともなことを返している。


「そうね…こんな事なかなかないもんね!」


珍しくみんなで食べる朝食は和気あいあいと楽しく食べることができた。


こんなに楽しく食べれるなら毎日でも作るのに…


ちなみに宮代家では朝食は各自食べるようにしてるので基本バラバラで食べている。


だからこんな事は滅多にないのだ。

今度からわたしに余裕があれば朝ごはんわたしが作ろうかな…



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「病院から持って来た荷物整理する前に男モノの服整理したほうがいいかもね。」


朝ごはんをみんなで食べたあとに少し食休みをした後に3人でわたしの荷物と洋服を整理し始めた。


「そうだね。もう着れないやつとかは売るなり誰かにあげるなりしよっか。」


「じゃあ早速クローゼットから行きますか…」


ガラガラ…


「うわぁ…結構あ〜ちゃん衣装持ちだったんだね…」


「ひーちゃん引いちゃダメよ…これ半分くらい衣装だから…」



「一応わたし達ビジュアル系だからね…」


「衣装はちょっと避けておこっか…

サイズ的に着れないだろうしそもそもステージ以外じゃ着ないでしょ?」


「じゃあ衣装は1回そっちの衣装ケース行きだね…」


服を仕分けるのにひーちゃんの部屋で余っていた衣装ケースを貸してもらったのだ。


「ズボンは履けないでしょー…シャツもキツイか…下着系なんて論外だし…

やっぱ着れるのなんてないんじゃない?」


「体格が変わり過ぎてるのよね…

まあ、でもあーちゃんが残したいのはきっとこっちよ!」


そういって雪ねぇはクローゼットの中でもカーテンで仕切られたスペースのカーテンを開けた。


「うわぁぁぁぁ……これ、全部パーカー?…」


中を見たひーちゃんは完全に引いてしまっている。


「うん。バンドのパーカーとかイベントのとか…あと格好いいパーカーは結構買い込んでたから…」


ひーちゃんの哀れなものを見るような目が心に突き刺さる…


「さすがにこんなに残してても着れないのとかあるだろうしお気に入りの何着がだけ残したら?ジップパーカーとかは大きくても着れるとおもうわよ?」


「そうだよね…さすがにだぼだぼすぎてプルオーバーは着れないか…」


「おねぇちゃん達パーカー詳しすぎない…?」


ひーちゃんが完全に引き始めてしまったのでそろそろこの話題を終えるためにもさっさと何枚か残す奴を決めないと…


「やっぱりこれは外せないなぁ…

って言うかこれ以外はどれって決められないや…」


結局決められなかったわたしは一番のお気に入りのよれよれになってしまっているブルシムのプレミアムパーカーだけを残すことにした。


「やっぱりそれを選ぶのね。

最近は見なかったけどよく着てたもんね」


雪ねぇは昔を思い出すようにそう言った。


「確かにっ!昔お兄ちゃん着てたよね!

じゃあそれに合うようにあたしの着れなくなったやつ何着かあげるよ!」


と言ってひーちゃんはそそくさと自分の部屋に戻ってしまった。


「じゃあ私も探してみようかしらっ…

うふふっ…」


雪ねぇもニヤニヤしながら自分の部屋に戻っていく。


二人が洋服を探している間にわたしも着ないやつを衣装ケースにしまっちゃおうっ…


「日向達今何やってるかなぁ…

スカーレット解散することになるのかなぁ…

そうなったら悲しいなぁ…」


着れなくなったバンTとかを衣装ケースにしまっているとなんだかそんな事を考えてしまって涙が出てくる…


あれっ…?おかしいなぁ…

泣くつもりなんてなかったのに…


「あれっ?あーちゃんどうしちゃったのさ…

よしよし、泣かないで?女の子は笑顔でいた方が素敵なんだよ?」


「う…うん…

泣くつもりなんてなかったのになぁ…」


そうは言いつつも溢れてくる涙は止まらない…


「バンTとか見てたらなんだか涙が溢れてきちゃって…」


「うんうん。悲しい時はしっかり泣いた方がいいわ。そしたらきっとスッキリするから」


雪ねぇは震えるわたしを抱きしめて頭をナデナデしながら優しく語りかけてくれた。


雪ねぇに言われた通りわたしは思いっきり泣いた。

そしてそのまま眠りこけてしまった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



コンコン。

「いいわよ。」


雪菜が扉に優しく語りかける。


「あれ、寝ちゃったんだ…

そろそろ落ち着いたんだと思った…」


緋雪はそう言いながらそろそろとドアを開けて茜の部屋に入ってくる。


「よく眠ってるわよ?…きっと泣き疲れちゃったのよ。」


雪菜は茜の頬をプニプニしながらそう答える。


「とりあえずあーちゃんをベッドに寝かせてあげるの手伝ってもらってもいい?」


「うん。もちろん。

こーやって寝かせて貰うなんてあ〜ちゃんもまだまだ子供だねぇ…」


雪菜の問いかけに緋雪はいつもなら見せない慈しみに満ちた笑顔をして二つ返事で答えたみせた。


そのあとすぐにいつも通りのニヤニヤとした笑顔を見せたのだけれど…


「とりあえず下でお茶でも飲む?」


「いや、いいよ。あ〜ちゃんが寝てる間にあげられそうな服をピックアップしなきゃだしね。」


一苦労して茜をベッドに寝かせる(いくら小柄で軽い茜でも華奢な二人では少しの距離も苦労するのだ…)と雪菜は一息つかないかと提案してくるが茜は楽しげにウインクしながら断った。


「それもそうね。楽しくコーディネートしてあげないとだもんね。ぐふふ…

あーちゃん起こしちゃ悪いから私の部屋でやりましょっか!」


「うん!そうしよう!」


二人してニヤニヤと性格の悪そうな笑みを浮かべながら茜のブルシムパーカーと病院の時に来ていた服を持って雪菜の部屋へと向かった。



「やっぱり楓さんが言ってた通りあ〜ちゃんの心は不安定になってるみたいだよね…」


「そうねぇ…そこからくるストレスを少しでも軽減してあげないと今度は緋那ちゃんにもしわ寄せが行くものね…」


雪菜の部屋にもどると雪菜はベッドに緋雪は鏡台の椅子に腰を下ろしてちょっとした会議が始まった。


「そうだよねぇ…あたしもう少ししたら東京に帰っちゃうから心配だよぉ…」


「なんとか私となかなか帰ってこないみたいだけどお父さんとで頑張ってみるわ。

きっと緋那ちゃんも協力してくれると思うしね…」


雪菜がため息をつきながらそう言った。


「そうだね。でもお姉ちゃんが無理したら意味ないからね?その時はすぐ助けを求めてよ?」


「うん。わかったわ。ひーちゃんこそ無理しちゃダメよ?ひーちゃんは無理しがちなんだから…」


心配そうに双方を見つめる二人。


「「あはははっ!!」」


二人は顔を向かい合わせると同時に吹き出した。


「二人して心配し合ってるとかあたし達らしくないねっ!」


「そうね。早くあーちゃんに着せる服選ばないとっ」


「明日お姉ちゃんが空いてれば三人でショッピングでもいこっか!」


「そうね。気持ちが沈んだ時こそ楽しいことしないとだもんねっ!

ぐふふっ、沢山可愛い服着させてあげないとっ…」


「そうだね!そうだねっ!」


そうして今まで心配し合っていたのが嘘のように一気に姦しくなった二人であった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「あら、こんなところにいるなんて珍しいじゃん…」


「んふぁ?

あ、あかちゃんか…」


なんだか安らぐような聞き覚えのある声がしたので目を開けてみるとあかちゃんがわたしを覗き込むようにしゃがんでいた。


「また何でこんなところで寝てるのよ?」


とても困惑したような表情であかちゃんはわたしにそう問いかけてくるので辺りを見回してみるといつもあかちゃんと喋ったりする椅子よりも玉座から離れたところにいるようだとわかった。



「んー。何でだろ…っていうか泣いてたら寝ちゃったみたいだからよくわかんないや…」


「ふぅん。どうりで目が赤いわけね…

なんか辛いことでもあった?あたしでよければ聞くけど…」


ふむふむと頷きながらあかちゃんは心配そうにわたしの瞳を覗き込んできた。


「うーん…辛いことっていうか何ていうか…

未来への不安っていうのかなぁ…昔着てたバンTとか見てたらこれからバンドとか色々心配になって怖くなってきちゃったんだよね…」


わたしはいつも対話するときに座っている可愛らしい椅子に腰を下ろして少し考えながらもそう答えた。


「そっか。そーゆう事もあるよね。

でもね、心配しないで。わたしも一緒だから…

誰でもそんな事思うもの…」


「そっか…ありがと。あかちゃんの笑顔は本当安心するなぁ…」


あかちゃんの笑顔を見てるとなんだか元気が出てくる。これも代理人格としての力なのかな?


でも安心してばっかりもいられない。

バンドを続けたいって気持ちがあるからあんなに泣いたのは自分でもわかってる。


って事は日向達にも今の状態を黙ってるっていう選択肢はないのかもしれない。


それでも日向達に正体を明かすっていう事はとっても大きなハードルのように感じる。


「ねぇっ!なんか考え込んでたみたいだけどどうかしたの?…あんまり一人で抱えこんじゃダメだからねっ?」


そっか。あかちゃんに相談にのって貰えばいいのか…

だってあかちゃんはもう一人のわたしだもんね。


「実は…これから暮らしていく上で男だった頃の事をどう扱うかっていう問題にぶち当たってて…

日向達に黙ってるってのもどうかと思うし…

でも男だった事を開けっぴろげにしてるのもなんかなぁって思うし…」


わたしはいつになく真剣な表情であかちゃんに相談を持ちかけた…



「うーん。そればっかりはなんとも言えないけどあたし的には茜ちゃんが男だった事はあんまり公表しないで欲しいなぁ。

でもね、結果的にはそーゆうことは茜ちゃんが決める事だと思うよ?


まあ、日向くん達にはもう一回あって話してみるべきだと思うわよ?

その上で考えてみたらどうかな?」


やっぱりあかちゃんに相談するのは正解だったかな…


「そっかぁ、じゃあそうしてみようかな…

とりあえず茜として連絡とってみる事が最初かなぁ……」


「うんうん。その意気だと思うよっ!

あっ、ごめん。あたしは一旦休むね。」


「わかった。またね…」


何か忘れていた事を思い出したかのように突然そう言いだしたあかちゃんはそそくさとわたしがまだ行った事のない奥の方へ消えていってしまった。



そっかぁ…日向達と今の姿のままもう一回遊んでみるってのは思いつかなかったなぁ…


一回連絡して遊びに誘ってみようかなぁ…

でも、わたし一人だったらきっとボロが出るだろうしなぁ…


かといって、雪ねぇとかひーちゃん連れて行ったら1発でバレるよね…


ん?…そういえば何か忘れているような気がしたけどそういえば茜として日向達と連絡先交換してない!!


あちゃ〜。これじゃあ日向達と連絡とれないじゃん……

和希がバイトしてるパン屋にまた行くしかないかなぁ…


って言うかケータイ昔のままだからこのまま行ったらバレるのも時間の問題じゃん!!


「ケータイ買わなきゃ!!!」


珍しくわたしはこの白い空間に響き渡るほどの大声で叫んだのであった。

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