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茜色で描く未来  作者: みやしろましろ
橙哉→茜 茜の過去と今
2/68

2話 女の子になっちゃった⁈

ええええっ!

女の子になっちゃったってマジかよ…

ってか何で…

何で夢の中のあの子なの?…

ってかライブはどうなったの?…


色々気になりすぎる


そこでおれは雪ねぇに一つづつ聞いてみることにした。


『何で女の子になっちゃったの…

ライブはどうなったの?…

いろいろ説明してよ!』


雪ねぇにメールで聞いてみる。


「詳しいことは今から先生呼んでくるから

先生に説明してもらいなよ

ライブはあたしがどうにかしたから大丈夫!

特に問題なく終わったわ…」


そう言って雪ねぇは暗い顔をしてしまう。


『先生って?

ってか雪ねぇがそんなに落ち込むほど悪いのか?

おれの体は…』


雪ねぇの暗い顔をみてちょっと心配になってしまった…


「あなたの身体の状態について日本で一番詳しい先生よ…

死ぬほどの病状じゃないみたいだけど…

とりあえず先生呼んでくるわね


それまでの間あなたにとっても会いたいって人が来てるから

相手してもらってなよ…

入っていいわよ〜」


ガラガラ


そう音をたてて部屋に入ってきたのは東京にいるはずの緋雪だった…


「お兄ちゃん!

あたしがいない間にこんなになっちゃって…

あたしの好きだったお兄ちゃんはもういないのね…


ただこれもありだねグフフh… 

これでお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ったりいろいろできるね!」


まったく騒々しい妹だ…

というか仕事はいいのだろうか…

緋雪は今をときめく超売れっ子アイドルのはず

仕事のキャンセルなんて出来っこないはず…


「はは~ん! さてはお兄ちゃんなんであたしがここにいるのか不思議なんだな~

それはねえ~ 事務所の力で何とかしてもらっちゃったんだよ!!」


腰に手を当てて高らかに宣言する緋雪


なんとかって…

ほんとは失踪疑惑とか出ちゃってるんじゃないの?

ってツッコみたいんだけど声が出ない

なかなか不便なものだ…

仕方ないのでメールで送ってやった


「お兄ちゃんもメールでイヤミ言ってくるとかハイレベルになったもんだねぇ

ってかさっきから右手以外動いてないけど…どうかしたの…?」


いつも通りの口調でそう言ってくるが…

後半は俺の体が動いてないことに気付いたのか不安げな声で言ってくる


『起きたら右手しか動かない…

声も出せなくなってる

さっき起きたばっかりで俺もよくわかんないんだよね(汗)』


隠してもすぐバレるので素直に言葉にした


「えっっっ!

じゃあお兄ちゃんこのまま寝たきりになっちゃうかもなの??」


さっきまでは虚勢を張っていつも通りでいたのか単純に再開を喜びすぎてテンションが上がってただけなのかよくわからないが…


今になって急に心配になったかのように不安げな表情を浮かべている緋雪


緋雪にかける言葉もない

そんな自分がとても不甲斐なく感じて

自分も緋雪のような情けない表情を浮かべてしまった…


二人して暗い表情で重い空気が流れていたとき


ガラガラガラ


不意に病室のドアが開いた

そこにはまだ30代前半くらいであろう男性と雪ねぇの姿があった


「紹介するね こちらが橙くんの主治医の倉田先生よ」


雪ねぇは一緒に入ってきた男性をそう紹介した。


「どうも、あなたの主治医をさせていただいております。倉田と申します。

よく頼りなさそう… とか言われたりしますが安心してくださいね。

これでも今年であなたのような症例を見てきて5年になりますから…」


雪ねぇに続いて一緒に入ってきた男性が自己紹介をした。

そっかおれの主治医の先生なんだ…


見た目は優しそうな爽やかイケメンな倉田先生はちょっと頼りなさそうに見える様な気もする…

でも、まあああいってることだし安心しておくか…

それでも今の状況を説明してもらわないことには信用しようがないし…


『おれは今どういう状態なんですか

なんでこんな格好になってるんですか

どうして体が動かないんですか…

声も出ないし…

わけわかんないんすけど…』


雪ねぇに送って先生に見せてもらった


「宮代さん、心して聞いてくださいね…

あなたはTS症候群という3百万人に一人ていどの難病にかかってしまっていまの状態に至ります


名前の通り性別が変化してしまうとても奇特な病気で、現在治療法は見つかっていません…

ですが命にかかわるような病気でもないのでそこは安心してください


噛み砕いて説明するとあなたはいきなり女の子の身体になってしまって

もう一生女の子の体のままということです。

それ以外に身体の異常はありません」


先生の説明は簡単だったはずなのになぜだか頭に入ってこない…

もう一生女の子ってどういうこと…?


「今あなたに起きてる症状は急激な肉体変化の影響です。

意識が戻ってから一週間もすれば体中どこも悪いところはなくなるはずです。

不便かもしれないですけどちょっとだけ我慢してくださいね。


体が回復するまでは食事や排出などはすべてチューブにて行いますので心配しなくても大丈夫ですよ!

今は体を動かせるようになるまでしっかり安静にしててください


体が回復するまでの一週間でいっぱい説明などはいたしますから今はゆっくり家族団らんを楽しんでください。

それではまた次の採血で!」


そう言って倉田先生は部屋から出て行った

最後のほうはとても陽気な先生だった。


ってかチューブって… なんか痛そうなんだけど…

とりあえずは何となく自分の置かれている状況が見えてきたような気がする…


☆★☆★☆★☆★


倉田先生が居なくなってから部屋の空気は凍りついていた。


「まあ、ピンとこないわよね…

みんなでゆっくり噛み砕いていけばいいわよね…」


凍りついていた空気を溶かそうとしたのか雪ねぇがそう言いだした…


「雪ねぇが何言ってるのかわかんないよ…

あの先生が言ってたことも良くわかんないよ!


こんなの理不尽だよぉ…

お兄ちゃん何も悪いことしてないじゃん

なんでこんなことにならなきゃいけないの?


ひどいよぉ…

うわぁぁぁぁん」


緋雪も相当我慢していたのだろう

心のうちを吐露して号泣し始めた。


「ひーちゃんの言いたいこともわかるよ

でもいま一番混乱してて一番辛いのは橙くんなのよ!」


雪ねぇも相当混乱しているのだろう

普段は俺たちの前でこんなに感情を露わにすることはないのに…


今は語気を強めてそう言ってくる…


「そうは言ってもさぁ

どうしたらいいかわかんないよ…

アタシはどうしたらいいのさ!」


このままだと病院で兄弟げんかとかっていう恥ずかしい事態になってしまうのでそろそろ止めに入らないと…


『おれは別に混乱なんてしてないし

辛くもないからさぁ

とりあえず二人は落ち着いてくれないかなぁ ここが何処かわかってるよね?』


おれはケータイのメモ機能を使って二人に言いたいことを伝えた…

実際には混乱してないのではなくて

事実が受け止められてないだけだけど…


「「と、橙くん(お、お兄ちゃん)がそういうなら仕方ないなぁ…」」

さすが姉妹だな

反応がそっくりだよ…


「ははっ あははは」

面白くって声にだして笑ってしまった



……ん?

声でるじゃん‼︎


「いまの可愛らしい笑い声橙くんだよねぇ

声出るようになってきたの?」

「キャー‼︎

お兄ちゃんの声カワイイ‼︎

緋雪ちゃん興奮しちゃうよ‼︎」

おれの声を聞いて二人はそれぞれの反応をしてしてきた…


「な、なんとか… こ、声でるみたい…

あんまり大きい声とか出せないけど…」


俺の口から出た声はやはりあの時に見た夢と同じ声をしていた…

あの夢はなにか関係しているのだろうか…

あとで倉田先生に聞いておこう…


「お兄ちゃんカワイイよぉ このスーパーアイドル緋雪ちゃんに似たのかなぁ〜?」

また緋雪は…

「いいえ、橙くんは私に似たんです…

ぐふふ… おねぇちゃんが好きすぎてついには自分までおねぇちゃん似にするなんて…」 雪ねぇも壊れ始めたよ…


「おれたち兄弟なんだから似てるの当たり前じゃない? 特に緋雪とは双子なんだし」

おれはまだ聞きなれない鈴のような声で二人にツッコミを入れる


「ひーちゃんばっかりずるいよぉ」

「お兄ちゃんっ! もう兄妹じゃなくて姉妹だよ! 宮代家の美人三姉妹だよ!」

二人の暴走はとどまることを知らない…


でもこんな感じも昔に戻ったみたいで懐かしい…


ズキッ‼︎

『アナタバッカリズルイヨ

ゼンゼンオンナノコジャナイジャナイ

アタシガカワッテアゲテモイインダヨ』


感傷に浸っていると突然激しい頭痛がした

それとともにあのバケモノのような声がおれに話しかけてくる…


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

おれは不甲斐ない叫び声を上げてしまった


「「どうしたの‼︎橙くん(お兄ちゃん)」」

二人が不安そうな顔でおれにかけ寄ってくる…


「なんか頭痛いし… 変な声が聞こえてきた…」

おれはありのままにあったことを伝えた


「それも症状なのかしらね…

後で倉田先生に聞いておくわ…

とりあえずあなたはやすみなさい」


雪ねぇはそう言っておれをねかしつけようとしてきた…

正直やめてほしいが体が全然動かないので抵抗もできないので諦めて寝ることにした


なんだかふわっと眠くなってきた…

とりあえずは寝よう…

zzz…



☆★☆★☆★☆★☆



橙哉が寝静まってから緋雪と雪菜は今後について話し合うことにした…


「とりあえずはどうしましょうかね…

橙くんは混乱してないみたいだけど

きっと実感がまだないだけのような気がするのよね… ちゃんと私たちでフォローしてあげないとね」


雪菜はそう言って物憂げな表情を浮かべた


「そうだよね…

あたしたち本当に三姉妹になるんだもんね… お兄ちゃんちゃんと受け止められるかなぁ 緋雪は心配だよ…」


緋雪もある程度落ち着いてきたようだ


「とりあえずはお父さんとこれからについて話し合わないとね… あの人ちゃんと帰ってくるかなぁ…」


ちなみに宮代家は一人親家庭である

母親は緋雪が10歳の時に他界している

父親はフリージャーナリストとして世界中を飛び回ってるらしい…


「お兄ちゃんのことについてお父さんに伝えたの?」

緋雪はもっともな質問をした


「一応はね… 死なないように見ておいてくれ!だってさ… 適当なんだからぁ もうっ でもひーちゃんが芸能活動休んでること知ったら飛んでくるでしょ」


雪菜は呆れた顔でそう言った

宮代家の大黒柱である宮代緋哉は緋雪にベタ甘なダメオヤジである…


「あははは… できればお父さん帰ってくる前に帰りたいなぁ」

緋雪が愚痴るように言うと


「お父さんのことそんな風に言っちゃダメよ緋雪ちゃん?」

鈴の音のような橙哉の声が聞こえた…


「あっ、お兄ちゃん起きたんだ…

…ん? いつものお兄ちゃんと違う!」

緋雪が言ったように橙哉の雰囲気はいつもと違っていた


「するどいわね… そうね、あたしはこの子のもう一人の人格って所かしらね」

そう橙哉の口から発せられた


「ひーちゃん! 私先生呼んでくるからお願いね!」

そう言って雪菜は倉田医師を呼びに病室から出て行った。


「とりあえず、あたしの呼び名を決めたいわね… なんかないのぉ?緋雪ちゃん♪」


橙哉は完璧な女の子言葉で雰囲気も違う…

なので緋雪も困惑している


「あなたがお兄ちゃんと違うってことはわかったけどあなたは一体何者なの?

お兄ちゃんの別人格ってどういうことなの?」


緋雪は畳み掛けるようにそう告げた


「あたしはあたしだよ。

まあ、しいて言うならこの子の運命を知る者かな… 導いてあげるかとって変わるかそれはあたしの自由だけど…


この子と区別するためにあたしに名前でも付けたらって話よ」


橙哉の体でそう説明する自称運命を知る者


「うーん、よく理解できないよ…

雪ねぇと先生がきてからまた説明してよ…


とりあえずわかったのは名前が欲しいってことだよね! 運命を知る者とかなんとかだし運子ちゃんとかどうかな」


緋雪はよく理解できてないらしいが最後のだけはわかったようで笑いながらそう告げた


「人に汚物みたいな名前つけないでよ!

まったく、こんなかわいい女の子に失礼しちゃうわね!

…ぷっ、はははは」


橙哉の体でそう喚く運子(仮)はいきなり笑い出した 心なしかその目には涙が浮かんでいた


「えええ、どうしたの?

泣くほど面白かったかなぁ運子ちゃん…」

緋雪がすごく困惑していると


「うんこって呼ぶなぁぁぁ!!

………まあ、なんだかこんなのも楽しいかなって思ったんだよね

でも、それと名前は別だからね!!

ちゃんと親しみやすい名前つけてよ!!」


運子(仮)が感慨深げにそう話していると


ガラガラと音を立て倉田医師が部屋に入ってくる。


「なんだか楽しそうですねぇ…

私も混ぜてくださいよ…まあ冗談ですけどあなたが宮代さんの代理人格ですね?」


緋雪と運子(仮)が騒いでいるのもお構い無しに倉田医師はそう運子(仮)に問う。


「そうよ、代理人格って言い方するのかは知らないけどあたしはこの子を守り、順応させる人格よ…

名前は…「運子ちゃん!」違う!

ちょっと緋雪ちゃんその呼び方やめてって言ったじゃん‼︎‼︎

名前はないからこの子と区別できる名前をつけてちょうだいよ」


緋雪の付けた名前がどうも気に入らないらしく 違う名前をつけるように運子(仮)は病室にいるメンツに催促する。


「ええっ…

代理人格って何?とか色々聞きたいことはあるけどとりあえず名前付けてあげないと可哀想ね…

それにしても運子ちゃんって…

ぷっ… くくくっ…

じゃあ私とひーちゃんの名前をとって緋那とかどうかしら…」


雪菜は必死にわらいを堪えている


「ちょっと‼︎‼︎

そんなに笑わなくてもいいでしょ‼︎


でもいいわね…『あかな』気に入ったわ‼︎

これからはそう呼んでちょうだいね!」


「私も会話に加わってもよろしいですか?

なんてのは冗談ですけどお伺いしてもよろしいですか?

うんk… ゲフンゲフン失礼、緋那さんは宮代橙哉さんの代理人格ということでよろしいですね?」


倉田医師は3人のやり取りをニヤニヤしながら見ていたが話が終わったと思うといきなり3人に話しかけた。

それもニヤニヤした顔のままで…


「先生の顔気持ちわるいですよ?

せっかくカワイイ顔立ちしてるのに…

まあ話は戻るけどさっきも言ったけどあたしが宮代橙哉の代理人格よ。」


ちょっと嫌悪感を浮かばせながらも小悪魔のような口調と仕草でそう言い切った


「気持ちわるいですか…

まああまり気にしないでおきます…

緋那さんの目的は何ですか?

貴女は何を望みますか?

そして最後に橙哉さんと取って代わるつもりはあるのでしょうか?」


緋那に言われたことがそうとうきているのが沈んだ表情でいった。


「うーん…

目的ねぇ… あたしはこの子の順応を手助けするだけだし…

まあ、この子があまりに順応しないならあたしが取って代わってあげるけどね」


最初は戸惑った様な顔で答えていたが最後の一言は妖しい笑みを浮かべながら言い放った。


「そうですか!

では橙哉くんには頑張って順応していただかなければいけないですね…


とりあえずはなんともなさそうですね

ゆっくり休んでその体直させてあげてください。

貴女もつらいでしょう?」


倉田医師は少し俯いたあと緋那にそう促した。


「はーい。

早く体治してこの恥ずかしい状態からおさらばしまーす。

こんな状態清らかな乙女にとっては最悪の恥ですからね!」


そういってまだうまくうごかせない右手を使って恥ずかしがるジェスチャーをして見せた。


「そのくらい元気なら大丈夫ですね

3日ほどでそれも取れるでしょうから我慢してくださいね。


あと雪菜さんと緋雪さんはちょっとこちらでお話があるので…

緋那さん、ちょっとお二人をお借りしますんでゆっくり休んでください」


そんな緋那の様子を見て微笑みながら倉田医師は雪菜と緋雪に声をかける


「ってことだから私たちはちょっと先生と話してくるわね…

ゆっくり寝てるのよ?緋那ちゃん?」


「そうだよぉ?

早く治すんだよ?あかちゃん!」


倉田医師の言葉に何処と無く寂しそうな顔を浮かべていた緋那に雪菜と緋雪が声をかける


「わかったわよ…

ゆっくり寝てるから心配せずにいっておいでよ」


☆★☆★☆★☆★☆★☆


「緋那さんのことですが…


代理人格というのはですね…


TS症候群の後期症状で基本的には性別への順応を促すための人格です。


ですが、本人が性別への順応を拒否した場合やあまりにも順応が遅い場合には本人となり変わってしまうという恐ろしい症状になります。


代理人格という名前ですが立派に病気の症状です

私たちは根本的にTS症候群を治すことは現在の医療技術では出来ません


なので対症療法的方法でこの後期症状に対処することしかできないのです…


そのために私たちTS症候群の専門医は遺伝子学に精通した臨床心理医です。

私たち専門医は患者本人の人格を守り抜くことを目的としています。


ですが、残念ながら患者の自我が代理人格に飲まれてしまうことも稀にですがあります。


今の橙哉くんは代理人格に飲まれてしまう一歩手前の危険な状態にあります…

お二人のお力が必要になることもあると思います…


ですから、お二人のご協力をお願いいたします。」


終始暗い顔で申し訳なさそうに代理人格という症状について説明し、いきなりアツくなって2人の協力を乞う倉田医師


「橙くんのためなら私はなんでもやります

それくらいの覚悟はできています。」


「あたしもお兄ちゃんのためならなんでもするよ!

そのために仕事休んでまできたんだから!」


倉田医師の言葉に間髪入れずに応える2人

その目には決意の炎が宿っていた


「ありがとうございます。

まあ、協力していただくといっても普通に橙哉くんの味方になってあげるだけでんですけどね…


あとは本人の意思で順応していけるようにサポートしてあげるだけなんです

なかなかそれができる人というのはいないんですよね…」


寂しそうな顔でどこか遠くを見つめる倉田医師


「とりあえずお兄ちゃんにはなるべく女の子になじむように接してあげて

いつまでも味方でいてあげればいいんですよね?


そんなの簡単だよ!

だっていつも通りお兄ちゃんのことをいじったり想っていればいいんだもん」

緋雪は溌剌とこう答えた


「そ、そうですか…

それならとりあえずは身体の自由がきくようになるまではどちらかが橙哉くんのそばにいるようにしてあげてください


あと、法的にもいろいろあるので橙哉くんの新しい名前も身体の自由がきくようになるくらいまでに決めてあげてください

もちろん本人との相談の上で決めてあげてくださいね」


喋り出しこそ戸惑っていた倉田医師だが

最後の方ははにかみながらそう告げた


そのあとすぐに「私は行かないといけないので…」


といいのこし足早に部屋を去って行った。


☆★☆★☆★☆★☆★☆


「お姉ちゃんどうする?

お兄ちゃんのこと…

名前とか洋服とかいろいろ問題あるよ?」


緋雪はもっともな意見を雪菜にぶつけた


「そうねぇ…

やっぱお父さん呼ばなきゃダメかしら…

あの変態緋雪大好きオヤジよぶのは躊躇われるのよね…」


雪菜は父親のことを毒づきながら一回呼び出す決意を固めた


「あたしから電話しようか?

あたしならしっかり返事くれるだろうし」


「いや、いいわ…

私がガツンと言ってやらなきゃいけないのよね…」


緋雪の提案を押し除けて雪菜は父親の緋哉へ電話をかけた。


『んばっばー

なんかあったのかい?』


「とにかくなんでもいいから帰って来なさい!!

また、あの過ちを繰り返したいの?

また、家族が壊れるのを止められないの?

仕事とかどうでもいいから早く帰ってきて

これでこなかったら今度こそ私はあなたのこと許さないから!」


雪菜は珍しく感情を露わにして電話に出た緋哉に怒鳴りつけた


『は?

橙哉になんかあったの?

いいから状況を説明してくれ

それからじゃないとどうしようもない』


緋哉は至って冷静な声でこう告げた


「橙くんが大変な状況にあるからいろいろ相談とかしたいし帰ってきてじゃダメな訳?

お父さんは橙くんのこと大事じゃないってことなの?」


もう雪菜はヒステリーのような状態だ

これ以上どうやっても状況は悪化する一方だろう


「お姉ちゃん変わって

あたしが電話にでるから」


緋雪は雪菜が結構ヤバいのを察知したのか咄嗟に電話を変わるように申し出た


「お父さん! あたしだよ!わかる?

お姉ちゃんの電話にあたしが出るって意味わかるよねぇ?

あたしですらお兄ちゃんが心配で帰ってきてるんだよ?

お父さんは帰ってこないの?」


緋雪は懇願するような声で電話口に語りかける


もっとも、その言葉には「お父さん帰ってこないとあたしも嫌いになるよ」っていうニュアンスが大分に含まれているが…


『緋雪‼︎

お前帰ってたのか!

仕事はどうしたんだよ

「休むよ、お兄ちゃんの状態が落ち着くまでは。 一週間でも、一ヶ月でも」

うぅぅぅ

わかったよ!

今すぐ帰るから!』


そう言って緋哉は電話を切った

緋哉に仕事休むと啖呵を切ったときの緋雪はいつもの朗らかさからは想像できないほど冷たい顔をして冷たい声をしていた。


「お父さん帰って来るって

よかったねっお姉ちゃん♪」


電話を切られた緋雪は雪菜にケータイを返すと満面の笑みで勝ち取った戦果を誇るかのようにそう言った


「ひーちゃん…

さすがねぇ、ドラマとかにも引っ張りだこなわけだわ…


ありがとね…

あのままだったら私どうなってたことか…

想像するだけでこわいわ…」

雪菜は青い顔をして震えている


「大丈夫だよ! お姉ちゃん!

あたしはあの日から強くなるって決めたんだよ! だから、私たち3人で協力し合おうよ! もっと頼ってくれていいんだよ!」

緋雪は輝く笑顔でそういった。


「ふぅぅひぇぐっ、いいの?

ごんなダメダメお姉ちゃんのままでいいの? ひーちゃんにもっと迷惑かけることになるかもしれないよ?いいのぉ?」

雪菜はボロボロに泣き崩れた


「いいんだよ!

いっぱい迷惑かけてくれて、あの時みたいにお姉ちゃんだけに背負わせたりしないよ」 そう言って雪菜に手を差し伸べた


「ありがとう…」

そう言って雪菜は緋雪の肩にしがみついて泣いた


緋雪は無言で肩を貸していた

その日は面会時間が終わるまで雪菜は待合室で泣きじゃくっていた

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