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茜色で描く未来  作者: みやしろましろ
橙哉→茜 茜の過去と今
18/68

18話 退院パーティー!!

あかねちゃん!

あかねちゃん!………

茜ちゃん!おきなさい!


「茜ちゃん!」


バッ!!


「んあ?

もう朝?」


「そうよ!

もう11時よ!せっかく昨日雪菜ちゃん達に持ってきてもらった可愛い服着る時間なくなっちゃうわよ?」


わたしは楓さんのその一言で完全に目が覚めた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

寝坊したぁぁぁぁぁぁぁぁ!

楓さん起こしてって言ったじゃん!

着替えてる時間ないよぉ〜」


「私は何度もしっかり起こしたわよ。

その度に二度寝してたのは誰ですか?」


「うっ!痛いとこをつかれたなぁ…」


「いいから早く着替えちゃいなさい。

ベッドは私が直してしまっておくから。」


「はぁい。」


そう言って私は着替えを始めた。


なんだか楓さんってお母さんみたいだよなぁ…

わたしって楓さんに依存しすぎかなぁ…

そうだよ、明日からは楓さんがいない生活をするんだ。

もっとしっかりしなきゃ。


急いでるはずなのに着替えながらそんなことを考えてしまう。


「着替えながらボケっとしてると怪我しちゃうわよ?」


楓さんにそう言われてしまった。

もっとしっかりしないとね。


わたしはそう心に決めて楓さんに返事を返した。


「うんうん。

わかってるならそれでよし。」


そう言って楓さんはなでなでしてくれる。

ふぁぁぁ、気持ちい。


なんだか最近なでなでされるととっても気持ちよくなってしまう。

なでなでされると全身から力が抜けていくような感覚を覚えるのだ。


わたしどうかしちゃったのかなぁ…


でも嬉しくなったのでわたしは楓さんに抱きついてしまう。


「こらこら、甘えん坊さんなんだから。」


ガラッ!


「やっほー!!

あ〜ちゃんしっかり起きてるぅ?

ちゃんと宝栄堂のフルーツタルト買ってきたよぉ〜!」


いきなりドアを開けてひーちゃんと雪ねぇが病室に入ってきた。


「あ、あ、あーちゃん何してるのっ!?

そ、そんな格好してそんな顔して楓さんに抱きついてっっ!!」


着替え途中のあられもない格好で頬を赤らめながら楓さんに抱きついているわたしを見て雪ねぇが悲鳴のような声を上げる。


「っっ!

こ、これには大きな理由があって…」


「どうせなでなでされてギューしたくなっちゃったとかそんな理由でしょ?」


ひーちゃんが冷めた目でそう言ってきた。

なんでひーちゃんはこんなにわたしのことがわかるのだろう…


「緋雪ちゃんには茜ちゃんのこと丸わかりなのかな?

まったく緋雪ちゃんの言うとおりだと思うわ。

状況が状況だしね。」


「やっぱりね。

あ〜ちゃんのことはなんだかわかるのよ。

あれかな?双子だからかな?」


「ぬううう…

なんで楓さん言っちゃうのさっ!」


「はいはい。ごめんねっ。」


楓さんが可愛らしく謝るのをみるとなんだかこれももう見れなくなるのかと思ってしまう。

そんなことを考えているとなんだか悲しくなって涙が出てきそうだ。


「あーちゃんそんな泣きそうな顔しちゃダメだよ。涙は明日に取っておかないと…」


「そうだよ!

あ〜ちゃん涙もろすぎっ!」


そんなことを言われるとなおさら涙が出てきてしまうじゃないか。


「感動的なところ悪いのだけど茜ちゃんそんな格好のままでいいの?」


楓さんにそう言われて自分の格好を見直してみる。

そこにあったのはこれからワンピースに着替えようとパジャマの上着だけ脱いで上半身が先ほど替えたばかりの可愛らしい下着のみになっているわたしの姿だった。


「キャァァァァァ!!」


わたしは思わず女の子のような悲鳴をあげて胸を隠すような体勢でその場にうずくまってしまった。


何てことだっっ!

自分があられもない姿を晒してしまったこともさることながらわたしが本物の女の子のような反応をしてしまったことにわたしは酷く落ち込んでいた。


わたしは反射的に悲鳴をあげて胸を隠すくらいに女の子に染まってしまっている…

このままどんどんと心の底まで女の子になっていってしまうのだろうか。


なんだかわたしがわたしで無くなるようでなんだか少し怖くなってしまった。


「あ、あーちゃん?

落ち込むのもわかるけどとりあえずお洋服着たら?」


誰もが声をかけ辛そうにしている中で雪ねぇが優しく声をかけてわたしが着ようとしていた可愛らしい白のワンピースを渡してくれた。


「う、うん。そうする。ありがと。」


そう言ってわたしはとりあえずそのワンピースを着ることにした。

正直このままいたらまたあかちゃんのお世話になってしまいそうだったのでとても助かった。


「はい。お茶淹れたから飲みなさい。」


わたしが着替えを終える頃にはみんなパーティの準備をし終えて机の上にお茶を並べて待っていてくれた。


途中わたしが着替えたパンツを見て雪ねぇがハアハアしていたのがとても気になるが心の底にしまっておこう。

きっと触れてはいけないことなのだ。


「うん。ありがとね。

それにしてもごめんねぇ。

寝坊してあんな格好で出迎えることになるなんて…」


「そ、そんなに落ち込まなくてもいいって…

あたし達は別にそんなことで気を悪くしたりしないし…

それに面白い物も観れたしね。

それにしてもあ〜ちゃんは楓さんにべったりすぎるのよ。

少しはしゃんとしなさいよ、明日からは楓さんのいない生活になるんだよ?」


やっぱりひーちゃんは表情がコロコロ変わって面白い。

心配して見せたりニヤニヤしたり呆れてみたり色々な表情を見せてくれる。

こうしてひーちゃんを見ていると表情が豊かな女の子はとても素敵だなと実感させられる。


そんなことを考えていたせいかわたしはひーちゃんの話が全く頭に入ってきていなかった。


「別に私にべったりでもいいじゃない。

少しずつ慣れていけばいいのよ。

そういう成長も大事なことだと思うのよね。

それにせっかくの退院パーティーだよ?

楽しまなくっちゃね?」


楓さんはいつも通り可愛くウインクをしながらそう言った。


当人をおいて話が進んでいる気がするがまあ別にいっか!

今を楽しむことが大事なんだよ!


「そうだよっ!

今を楽しまなくっちゃ明日はこないんだよ?

だから早くケーキ食べようよ!

宝栄堂のケーキっっ!」


だからこそわたしは無邪気に今を楽しむことにした。


「はいはい。そうしているとなんだか同い年だと思えないよ…

おねぇちゃんなんだからしっかりしてよ。」


「わかったからあーちゃんは少し落ち着きなさい。ケーキは逃げたりしないから。」


そんなわたしを見てひーちゃんも雪ねぇも少し呆れているようだけどなんだかそれが懐かしくそして不思議な光景に見えた。


「なんだか昔と立場が逆転しちゃったみたいな気がするよ。」


「そうね。橙くんは私たちに振り回されてばっかりだったものね…」


「振り回していたのは基本的にお姉ちゃんだったと思うんだけど…」


こんな風の会話はなんだか懐かしい。

でもわたしはひーちゃんにも結構振り回されたと思うんだけどなぁ…


「そんなことないって…わたしひーちゃんにも結構振り回されたと思うんだけど…

たまに帰ってきたと思ったら気持ち悪いくらいベタベタしてきたり…」


「お兄ちゃんそんなこと思ってたんだっ…

ひどいっっ…」


ひーちゃんが涙を拭うジェスチャーをしながらそう言う。


「え、え、

別にそういう意味じゃないよ?

ひーちゃんのことは今も昔も大好きだから別に迷惑とかじゃなかったし…」


ひーちゃんの演技力に押し切られて狼狽えてしまったが

「ほ、ほんと?」


「うん。ほんとだよ?

私のこの目が信用できない?」


「あ〜ちゃん大好きっっっ!」


「とんでもない茶番を見せられた気がするわ…」


わたしとひーちゃんの仲良しトークを側から見ていた楓さんは何故だかげっそりとしてしまっている。なんでだろ?


私たちはいつも通りお茶をしながらおしゃべりを楽しんだ。


最後に宝栄堂のケーキを残しておいたのはファインプレーだと思う。


「そろそろ時間もあれだし宝栄堂のケーキ開けちゃう?」


ニヤニヤしながらひーちゃんが病室備え付けの冷蔵庫から宝栄堂の箱を取り出した。


「あーちゃんが喜んでくれるようないいものも見つけちゃったしね?」


雪ねぇもニヤニヤしながらそう言う。


「えー?なになにぃ?」


「それは秘密だよっ!」


「「ねー!!」」


わたしの質問に対してひーちゃんが答えた後にと雪ねぇは顔を突き合わせてまるで仲良しの女子高生のように同調した。


正直ウザったかった。

これから女の子として生きていくうえでこういうテンションの娘もいるだろうことを考えて少しナーバスになってしまう。


「むーっ!!

教えてくれたっていいじゃん!!」


「まあ、そうすねないでって…

あ~ちゃんはいつもあるお気に入りと新しく見つけた新作どっちかしか食べられないときどっちをとる?」


「ええっ… いきなりどうしたのさ…

まあ、わたしは多分お気に入りを食べると思うけど…」


いきなりひーちゃんは何を言い出すのかと思ったけどとりあえずわたしは食べるであろう方を答えた。


「そっかぁー…

あ〜ちゃんは普通のがいっかぁ。」


「じゃああーちゃんはこれね。」


そう言って雪ねぇは宝栄堂のフルーツタルトをお皿に乗せてわたしの前に置いてくれた。


なんだか二人の顔がやけにニヤニヤしているのを見てなんだか嫌な予感がする。


と言うかあの質問の意味はなんだったのだろう…


「楓さんはどっちにする?」


「うーん…わたしもやっぱり普通のがいいかなぁ」


ほらぁ、楓さんも普通のにしたじゃん。

やっぱり普通のが一番なんだよ。

伊達にお菓子のベストセラーは名乗ってないんだよ。


「そっかぁ。じゃああたし達はこっちだね?」


「そうね。あーちゃんはきっとこっちを食べたがると思ってたんだけどなぁ…」


二人が残念そうに言いながら宝栄堂の箱の中なら取り出したのは桃がふんだんに使われた桃タルトだった。


「うわぁぁぁぁ。すごいっ!すごいよ!

わたしこっちが食べたい!」


そう。わたしは桃が大好きなのだ。

好きな食べ物に桃と餃子って即答するほど桃が大好きなのだ。


宝栄堂の桃タルトなんてわたしが絶対食べたがるのをひーちゃんも雪ねぇも知っていたはずだ…


「え〜?

あ〜ちゃんがそっち選んだんだよ?」


ひーちゃんがにやにやしながらそう言ってくる。


ずるいじゃないか…

新作がなんなのかわかんないなら普通のを選ぶって知っていてこれなんだから…


「ずるいよ…

ずるいよっ!わたしが正体がわからないものは選ばないって知ってて正体隠してたでしょ!」


「そんなずるいずるい言わないでよ…

ゴメンね?わたしの半分あげるから許して?」


ひーちゃんはちょっと不安そうにはにかんだ。


そんなひーちゃんはとても可愛らしかった。

こりゃ世の男の子達が放っておかないのがわかる気がする。


そんなひーちゃんの表情を見てわたしは許してあげようかなと思ってしまった。


まあ、わたしにもまだまだ男の子っぽい部分が残ってるってことだよね。


「ううっ…

わかったよ…半分こするよ。」


「そう言ってくれなくっちゃねっ!

本当はいつものフルーツタルトのホールにしようかと悩んだんだけどこっちにしてよかった。」


「あーちゃん許してあげてね?

ひーちゃんはあーちゃんがどっちも食べたいって言い出すだろうからって言ってずっと悩んでたんだから。」


雪ねぇの言葉で合点がいった気がする。


ひーちゃんはわたしにどっちも食べてもらいたくってこんな回り道をしたのか。


「そっか…

ひーちゃんありがとね!どっちの味も食べれるなんてわたし幸せだよ!」


(あ〜ちゃんやっぱり可愛すぎる。あたしの周りのアイドルにもこんな可愛い子いないって…

この娘はきっといいアイドルになるよ…)


(あーちゃん素敵。もう可愛すぎるわ。食べちゃいたいくらい。絶対世の男には取られたくないっ…)


(着実に魔性の女に近づいてるわね。

こりゃほんとに末恐ろしいわ。ただでさえTS症候群の患者は周囲の異性を惹きつけやすいって言うのにこの娘は格別ね…

同性ですら惹きつけてしまうなんて…)


「え、え? みんなどうしちゃったの?

いきなり固まって…どうしちゃったのさっ!」


いきなりみんながわたしの顔を見て固まってしまったものだからとても心配になってきた…


「えっ?あっ、大丈夫よ?

あーちゃん可愛いなって思ってただけだから!」


「そうそう!

別に変なこと考えてたとかじゃないからね?」


なんだか最近二人の結託がすごい気がする。

ひーちゃんの言い方はなんだかあやしいし雪ねぇの言葉は本当だろうけどいまだにニヤニヤが止まらないのは見ていて気持ち悪い。


「本当かなぁ…なんだかあやしいなぁ…

楓さんもそう思うでしょ?」


結託した二人にはかなわないので楓さんに助けを求めてみる。


「えっ?私?

ゴメンなさい、少し考え事してて聞いてなかったわ…」


「ほらー、きっと楓さんもあたし達と同じこと考えてたんだよ!」


「ぐぬぬ…

っていうかひーちゃんは何考えてたのさっ!」


楓さんに助けを求めることに失敗したわたしはひとりでひーちゃんに立ち向かってみることにした。


「べべべべつになんでもいいでしょ?」


「その動揺の仕方ますますあやしいんですけど。

おとなしく白状しないと…?」


明らかに今のひーちゃんの反応はおかしい…


わたしはひーちゃんの真似をして手をわさわさしながらにじり寄っていく。


「あ〜ちゃん?

こちょこちょはやめてよ?本当にあたし弱いからっ!」


「へぇ〜。ひーちゃんいつもわたしに自分はやられたくないことやろうと迫ってきてたんだ…」


これはひーちゃんにやり返すチャンスじゃん!

そうと決めたらとことんやってやろう!


「そ、それは…

ご、ゴメンね!本当にゴメンね!

だからこちょこちょだけはやめて?」


「それは出来ない相談ね…

こちょこちょされたくないなら早く何考えてたのか白状しなさいっ!」


なんだか楽しくなってきた。

やばい、言葉遣いもなんだかわたしのものじゃなくなってきたよ…

そこまでノリノリになってるってことかな?


「だからそんな変なことは考えてないって!」


「あくまでもしらを切り通すつもりね?

それじゃあ仕方ないわね…」


「いやっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


珍しくひーちゃんの悲鳴が病室にこだましたのであった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



「はあっ、はあっ。

いっつもあ〜ちゃんがこんな思いをしてたとは…」


ひーちゃんは床にペタンと女の子座りをしてぐったりとしながらそう言った。


「わたしの気持ちが少しはわかったかっ。」


わたしは両手を腰に当てて冗談交じりにそう言った。


結局わたしはひーちゃんにこちょこちょ責めをすることはなかった。

ただ、その代わりこちょこちょをすると見せかけてガッツリとひーちゃんのたわわな胸を揉みしだいたのであった。


「ゴメンね。こんなに恥ずかしいものだと思ってなかったわ。」


ひーちゃんも反省をしているようだ。

よしよし。ちゃんと効果はあったようだ。


「それならよろし「なーんてねっ!」」


「きゃぁぁぁぁぁ!!」


安心しきったわたしが余裕をこいているとひーちゃんが手をワシャワシャさせながら襲いかかってきた。


その状況に咄嗟にわたしは胸を守っていた。


まあ結局胸は揉みしだかれてしまったのだけど…


なんだか自分は女の子なんだなぁとイヤでも実感する。


「そろそろじゃれあうのもやめにしたら?

ケーキ食べてる時間なくなっちゃうわよ?」


わたしとひーちゃんが一進一退の攻防を繰り返しているとついに雪ねぇからストップがかかった。


ひーちゃんとじゃれあってみてわかったのはこんなのも悪くないってことかな。


「はあ…はあ、こうしてじゃれあってわかったけどやっぱりあ〜ちゃんはいいアイドルになると思う。どうかな?アイドル。

実はさっきもこのこと考えてたんだ。」


突然のひーちゃんの誘いにわたしは頭が混乱してきてしまった。


わたしがアイドル?

ないない。だってわたし男だもん。べつにイケメンじゃないしアイドルって柄でもないでしょ?


「わたしイケメンじゃないしアイドルなんて似合わないって。」


「「そうじゃないでしょ!」」


雪ねぇと楓さんから同時にツッコまれてしまった。

ひーちゃんなんて頭を抱えてしまっている。


「え?なんかおかしかった?」


何気にパニクってるわたしはそんな回答しか返せない。


「だってあーちゃんは女の子なんだよ?

イケメンってのは男の子に使われる言葉だよ?」


雪ねぇにそうツッコまれてわたしは初めて自分がいまだ男の頃と同じような感覚でいることに気づいた。


「あっ、そういえばわたしは女の子なんだった。パニクっててすっかり男の頃の感覚だったよ…

まあ、わたしが女の子のアイドルにならないかって誘われたとしてアイドルとかありえないでしょ。わたしより可愛い娘なんてゴマンといるでしょ?」


「そんなことないよっ!

あ〜ちゃんはあたしが見てきたどんなアイドルより可愛いよっ!」


ひーちゃんは必死にわたしの言葉を否定した。


「えー。そんなことないと思うんだけどなぁ…」


ひーちゃんにそう言われて少しいい気分になってしまっている自分がいる…


「ぷっっ!なんだかいつも通りしているあなた達を見て少し安心したわ。

少し重荷が降りたような気がするわ。

あと、茜ちゃんはその照れた表情とかたまらなく可愛いわよ?」


楓は少し寂しそうな表情をしたあとこれまた凶悪なまでに可愛らしい笑顔でそういった。


「楓さんまでやめてよっ…

あーなんかだんだん恥ずかしくなってきた。」


なんだか顔が熱くなってきたので手で顔をパタパタと扇ぎながらわたしはそう返した。


「ってか楓さんちょっと涙ぐんでない?」


「えっ、いや、ちょっとなんかウルっとちゃってさ…」


楓さんは目元を拭ってそう言った。


「そーゆーのは明日にするんじゃなかったの?」


「そうねっ。

今日はいっぱい楽しくおしゃべりしましょっ!」


結局わたし達は面会時間ギリギリまでおしゃべりを続けたのであった。



「いやー、ちょっとしゃべりすぎちゃったわね… 片付けが二人だとちょっと大変ね…」


「うん。そうだね。

ねぇ、楓さん。ギュってしてもいい?」


雪ねぇとひーちゃんが帰ったあと二人で病室の片付けをしているとなんだかまた楓さんに抱きしめてもらいたくなった。


きっとさっき途中で止められてしまったからだ…

でもこれで最後にしよう…

明日からは楓さんなしの生活をしなきゃいけないんだっ!


「もちろんいいわよっ!」


「やったー!!!」


楓さんの返事を聞いてすぐにわたしは楓さんに抱きついた。


楓さんの腕の中でわたしが少しだけ泣いちゃったことは内緒だ。


まあ、楓さんは気づいているのだろうけど…

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