ルールの後の話
この話は別に難しく考えないで下さい。
あ〜それでくらいの気持ちで楽に呼んでください。
疲れちゃうからね。
僕は変わったのだろうか・・・。
確かにあの晩の事を考える。頭をよぎる光景は今でも夢だと思ってしまう。
夜中の一時が過ぎた今、僕の目の前に彼らが居る。
「で、僕はいったいどうなったんですか。」
クライスと呼ばれるスーツの男に僕は聞いた。
「ん。吸血鬼になったんだよ。」
僕の部屋のテレビを勝手に写し、もはやその番組の虜の彼に何を言っても無駄だった。
「こうなっちゃうと何を言っても無駄なんですよ。あ、私の名前は咲子です。草薙 咲子です。年齢は十七才です。よろしくね。」
そんなクライスを見ながら咲子が言った。
「ちょっと君達静かにしてくれ。テレビが聞こえないぞ。」
この男わぁ〜。そう思ったが口には出さなかった。そのまま僕と咲子も彼と同じくテレビの虜になっていった。
あの後、いろいろ考えたが僕はやっぱり駄目な僕だった。結局はあのまま特に深く考えることなく今に至っている。
今までテレビに夢中だったクライスは突然テレビのスイッチを切った。
「そうだ。こんな事をしている場合じゃない。今日は武君にいろいろ教えなくちゃいけないんだった。」
「あ・・・ああそうなんですか。」
「ゴホン。私の名前はアクドレス・サラス・クライス。まあ、クライスと呼んでくれ。それでこっちの彼女は・・・。」
「ああ。咲子さん。」
「おお。君は吸血鬼でありながらエスパーでもあるのか。」
多分彼は本気で驚いているのだろう。
「いや、さっき教えてもらったんで彼女から・・・。」
そんな会話を咲子は笑顔で頷くだけだった。
「まあ、それでだね。君は昨日から吸血鬼の仲間になった訳だが、どうだったね。ん。」
楽しそうに話をするクライスの顔はにやけていた。
「太陽の光は痛かっただろう。」
「はい。痛かったです。でも、すぐに直りました。」
「すごいね〜もう自分で治せるようになったの?」
「え・・・。自然に治ったんだけど・・・。」
「咲子君も自然に治るよ。時間が経てば。」
顔を赤らめて咲子はそのまま黙ってしまった。
「話を戻すが、君は血を飲まないと干からびて死んでしまうよ。」
笑顔で彼が言った。えっと思わず声を出してしまったが、それが本当なら僕はどうすればいいのだろうか・・・。
「え・・・。それじゃあ僕はどうすればいいのでしょうか・・・。」
「あはは。バカだな〜君は血を飲めばいいのだよ・・・。」
・・・いや。だからどうしろと・・・。
変な沈黙が続いた。いや沈黙では無いな、この時クライスは僕の事を腹を抱えて笑っていたのだから。
怒りがこみ上げてきたが、僕は大人だ其処は我慢だ。
この状況を変えたのは咲子だった。
「あ・・・あの。だからですね。この夜の世界にもルールがあってですね、その為のルールブックもあるんですよ。今日はそれを武君にも聞かせに来た訳です。ね、クライスさん。」
「あ〜ゴホン。そうなのだよ。このスーツの裏から・・・夜のガイドブック〜。」
『ド・・・ドラ○もん!そ・・・それにしても似てねー』心の中で思った事は今の僕では言葉に出来ない。
少し呆気に取られたのは僕だけじゃなく、咲子ちゃんもだった。
「え〜コレによるとだねのび○君・・・。」
『あ、やっぱり。』
「吸血鬼はその会社ごとに配られるリスト以外の血液を口にしてはいけない。」
「あ・・・あの〜。」
「何かな武君。」
「その会社って・・・。」
「今から説明するからおとなしく聞いてなさい。」
怒られてしまった。
「各会社はそれぞれ五人までの吸血鬼によって組織されており、リストに載る悪人の血液を飲みながらその悪人度によって報酬が貰える・・・って訳だよ。」
「ほーそれで・・・。」
彼の言った事が正しければ、僕はその会社に入りこれから自分の為に悪人と戦わなけれなならないと、そうゆう事になる。
まるでアニメや漫画のような展開に正直驚きが隠せないが、それよりも今きずいたがクライスはヲタクなのではないか・・・。
部屋の本棚に並ぶ漫画を一つずつ確認する彼の目はまるで少年の様に輝いていた。
「あの〜では、僕もその・・・あれをですね飲まないと・・・死んでしまうと・・・。」
「血ね。」
『NO〜!!本物だ〜!!』
咲子ちゃんはその小さな牙を見せながら言った。
「そうだね〜大体普通は一週間に一回飲めば生命は維持できるけど、君の場合はなったばっかりだから。」
しきりにクライスはその腕に巻かれた高級そうな時計を気にするようになった。
「だからどうなんですか・・・。」
咲子ちょんと目が合った瞬間、彼女は顔を背けた。
「あと三時間以内に血を飲まないと灰になっちゃう。ゲームオーバーだよ。」
一瞬意識が飛んだだろう。僕の体を揺らしながら咲子ちゃんが大丈夫だよっと見るからに分かる作り笑顔で僕を励ましていた。
「じゃあ時間も無いから早速お仕事いきますか。」
その時、クライスの目つきが変わったのが分かった。
僕は、このままこの世とおさらばしなきゃいけないのか・・・。