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38、敵は狼男のみにあらず

いつのまにやらPV25,000オーバー、ユニーク7,000人超えしてました

これからもよろしくお願いします!


 突然、姿を見せた人間たちに、護と光、そして後ろに控えていた職員たちに動揺が走った。

 だが、すぐに気を取りなおし、自分たちの装備を構える。


「……なるほど、今度の侵入者はそれなりに場数は踏んでいるということか」


 突然、入ってきた一人がそんなことを口にする。

 侵入者ということは、この施設の関係者ということになるだろう。


――職員?いや、あの服装だったら、実験体(モルモット)と考えた方が妥当か

――なら、うまくすればこの施設の中を案内してもらうこともできるんじゃないか?


 彼らの服装からそんなことを考え、あわよくば利用できるのではないかと策謀する職員たちもいた。

 だが、それが甘い考えだということを思い知らされることとなる。


「侵入者」

「排除」


 その言葉が聞こえてきた瞬間、彼らの方から異様な音が聞こえてきた。

 バキッ、ゴキッ。

 ゴキリ、バキン。

 まるで体中の骨という骨が折れていくような音が部屋中に響き渡り、そこに立っていた人間が、多くの異形へと変貌していく。

 対峙していた護と月美、光を含め、その場に全員が目を見開いた。

 いきなり多くの異形が出現したというだけではない。


「……おい、調査局の隊長さんよ。一つ、いいか?」

「すまない。言いたいことはわかるが、こればかりはこちらでも把握しきれていなかった」


 現状、出没している異形は狼男だけだった。

 むろん、それは確認できる範囲の中でという話だ。

 ほかの種類も存在しているも示唆されていたのだが、目撃情報がなかったため、その可能性は低いと考えられてきた。

 だが、目の前にいる異形は狼男だけでなく、レッドキャップや馬こそいないが首なし騎士(デュラハン)と思しき鎧騎士。

 そして、もはや鬼以外の何者も連想できない、額に鋭い角や牙を生やした人間もいる。


――くそっ!まさかほかの特殊生物にも変化させることができるとは!!


 光はその光景に、驚愕すると同時に、苦虫を噛み潰したような顔になった。

 調査局だけで出現している異様な特殊生物を調査するにも限界がある。

 だが、調査局は内閣府所属の組織であり、政府組織が。

 それなりに広い範囲を地域ごとに調査し、情報を相互交換することだって可能だった。

 あれらの異形は自分たちが担当していない場所で発生していた可能性だって十分にあるし、その情報を確かめることだってできたはずだ。

 だが、自分たちはその確認を怠っていた。

 今さら悔やんでいても仕方のないことなのだが、それでもやはり自分の未熟さと迂闊さに苛立ちを覚えてしまう。


「とりあえず後悔するのと反省するのは後回しにして、目の前のことに集中して!!」


 未熟さと迂闊さに自己嫌悪に陥っていた光に、喝を入れるかのように少女の声が響く。

 声がした方へ視線を向ければ、そこにはその風貌からは想像できないほど険しい顔つきになっている月美の姿があった。


「す、すまない!……てっ?!」


 思わず謝罪した光は、目の前に広がっている光景にさらに驚愕した。

 迫ってきている異形相手たちと自分たちの間に、いつの間にか強固な結界が施されている。

 異形たちはどうにかして不可視の壁を壊そうとしているが、破壊することはできずにいるようだ。

 その結界を施しているのは、自分の視線の先にいる月美と、先ほどから大口を叩いている護の二人だった。

 いや、さらに驚くべきことは。


「さて、こっからどうすっかね」

「どうにかしようにも、まず結界を解かないことにはどうしようもないんじゃない?」

「けどなぁ、これ解いたら一瞬でミンチだぞ?」

「……それはごめんだわ」


 二人が雑談を交わしながら、片手間で結界を維持していたということだった。

 二人がかりで築いているというのはまだわかる。

 だが、何十という異形が押し寄せても傷一つつかないほど強固な結界を維持するには、相当な集中力が必要となるというのに。

 夢でも見ているのだろうか。

 その光景に、光はそんな感想を抱かずにはいられなかったが、呆然としていた意識はすぐに引き戻された。


「なぁ、調査局の職員さん!ちょっと協力してもらってもいいか?」

「な、なによ、藪から棒に!」

「さっきから口調がぶれてるぞ?」

「いまはそんなことは関係ない!それより、何をすればいい?」


 からかうような護の言葉に、光は若干、顔を赤らめて返し、自分たちにできることを問いかける。

 もはや面子もなにもない。

 火界咒での炎のコントロールもそうだが、目の前にこれだけの結界を片手間で維持できるほどの術者を相手に、そんなものを保つ必要はないものだ。

 開き直りに近いかもしれないが、そう思ってしまったのだから仕方がない。


「道を開いてくれ。それくらいはできるだろ?」

「それなりに術に力を込める必要があるから、時間はかかるけど?」

「さっきからそこで呆けてる人達も使えばいいでしょ?」

「……ごもっとも」


 呆れたような月美の言葉に、光は職員たちに視線を向けて、苦笑を浮かべる。

 さきほどから目の前で展開されている光景に、頭がついてきていないらしい。

 連れてきた自分の班員は、呆然として動こうとはしていなかった。


「道を開けるための術もそうだが、その前に援軍を呼ぶ。彼らと援軍の職員たちにこの場を任せて、私たちは奥を探索。そういうことでいいか?」

「問題ない。というか、援軍呼べるならさっさと呼んでくれ」


 光からの提案に、護と月美はうなずいて返した。

 もっとも、護の方については、苦情のおまけつきではあったが。

 光はその苦情を聞かなかったことにして、無線機で分かれた部隊と連絡を取り、援軍要請を済ませ、術の準備にかかった。


「……いつまで呆けている!民間人ばかりに仕事をさせるな!給料分はしっかり働け!!さっさとこっちを手伝うんだ!!」


 相変わらず呆けている職員たちに気迫を込めた言葉をぶつけると、職員たちはやっと気が付き、素早く、光の手伝いに入る。

 職員たちは光がどんな術を行使するつもりなのかを一見しただけで理解し、それに必要な真言と神咒を唱え始めた。

 詠唱が続くこと数分。


『ノウマクサンマンダ、ボダナン、インドラヤ、ソワカ!!』


 真言が響いたその瞬間、光たちが囲んでいる中央にまばゆい光が収束される。


「完了!」

「月美!」

「はい!」


 光が叫ぶと同時に、護は月美の名を叫び、月美は鋭く返す。

 その瞬間、結界が解除され、異形たちが押し寄せてきたが、彼らは一瞬でその半数近くが姿を消した。

 異形たちが押し寄せてきたと同時に、光たちが準備していた術が解き放たれ、異形たちを焼き払ったのだ。

 そして、その光が反撃開始の狼煙となった。

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