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29、光、資料の山に立ち向かう

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

今回から、セリフの部分と地の文の行間を一行、空けようと思います(読みにくい、という意見がありましたので)。


 局長である賀茂保通と護の間に結ばれた協定に従って、光は彼からもたらされた情報をもとに、現存している取り壊しを免れている廃墟を徹底的に洗い出していた。

 いや、洗い出しを始めようとしていたという方がより正確だろう。

 なにせ、この国に廃墟と化した建造物はいくつも存在している。

 それらすべてを調査対象とするとしたら、その労力は計り知れない。

 そのため、まずは情報にあった山とその山の植物の植生を探しだし、そのうえで廃墟の存在の有無を確かめていたのだ。


――とはいえ、それでもやっぱり百は超えてるのよね……


 周辺情報の洗い出しを担当してくれている同僚や部下が集めてくれた資料の山を見て、光は重いため息をついた。

 日本は『水の国』と呼ばれるほど水源が豊富に存在している。

 それは同時に、その水源を生みだす山が数多く存在しているということ。

 戦後の高度経済成長期に多くの山が切り崩されてきたが、開発を免れ、自然な状態で残されている山はまだまだある。

 人間と暮らすことができない妖や特殊な事情を抱えている妖は、そういった山に避難し、ひっそりと暮らしているのだ。

 時折、深夜の山の中で不可思議な生物に遭遇したという報告があるのは、その山に暮らしている妖と出くわしてしまったため、とも言われている。


 閑話休題(それはともかく)


 光はまるで親の仇でも見るかのような視線を、目の前の資料に叩きつけていた。


「なんでたって、こんなにあんのよ?!」

「しかたないですよ、先輩!戦前の廃墟とか遺跡ってなってても過言じゃない場所も含まれてんですから」


 光の文句に、ため息をつきながら後輩が合の手を入れてきたが、その後輩から小さい悲鳴が響いた。

 その視線の先には、ジトリとした視線を向けている光の姿があった。


――もしかしてこの人、視線だけで人を殺せるんじゃないだろうか……


 視線を向けられた後輩が、そんな失礼なことを思ってしまったのは言うまでもない。

 幸いなことに光はそのことを察していないらしく、特に言及することはなかった。


「そんなことはわかってるわよ。けど、だからってもうちょっと絞れなかったわけって言いたいの!!」

「気持ちはわかりますけど、仕方ないんですか?だって、協力者の占いの結果ってだけじゃ……」

「あなた、もう少し頭使いなさいよ」

「……へ?」


 思わぬ反応に後輩は素っ頓狂な声を上げたが、そんなことはお構いなしに、光は説明を続けた。


「あいつがよこした情報は、連中が潜んでいると思われる場所と占の時に見えたものでしょう?」

「え、は、はい」

「その結果、まず場所……というよりも、地形は把握できた」

「はい。その結果が、目の前にあるこの山なわけですけれども」

「そうね……で、さらにもう一つ。あいつが言っていた『人の業』というキーワードがある」


 ここまでの説明ではまだ要領をえないらしく、後輩はきょとんと首をかしげている。

 だが、光はその反応を予想していたのか、特に反応することはなく説明を続けた。


「研究施設の所在地と合わせて行った占いに、『人の業』よ?何かしらの関連があるとみるべきじゃない?」


 調査というのは、いくつもの情報を蓄積し、分析しながら行うものだ。

 ならば、示された場所だけでなく、一緒に添えられていた言葉にも何かしらの意味があると考えなければならない。

 加えて、光は護に関して、一つだけ信頼している部分がある。


――確かに、第一印象は最悪だし、胡散臭い部分もあるし、言動一つ一つが人を食ったかのような感じがして、腹立たしいのは事実……だけど


 彼は陰陽師なのだ。

 半人前であろうが、特殊状況調査局の職員でなかろうが、気に入ろうが入るまいが陰陽師であることに変わりはない。

 陰陽師の占には、何かしらの意味が必ずあるからこそ、無視することはできない。

 後輩にそう話す光だったが、今一つ、理解できないらしく、首をかしげていた。


「……要するに、先輩の勘ってことですよね?」

「突き詰めれば、そうなる。けど、陰陽師の勘は、案外と当たるものよ」

「そういうもんですか?」

「そういうもの。さ、いいからさっさとやるわよ?」

「うぇっ?!やるって、この数をですか??!!」


 今度は後輩が及び腰になっていた。


「あのね、さっき言ったこと、もう忘れてるの?もうすでにヒントは出てるの!この資料の中から、人災が発生したことのある地域、それか、それを示唆するような伝承がある地域のものだけピックアップするに決まってるじゃない」

「……あ、なるほど」


 ようやく合点がいったらしい反応をした後輩に、光は呆れたとばかりにため息をついた。

 だが、後輩の反応は調査局の職員たちからすれば一般的なものであり、はっきり言って、護から寄せられてきた言葉をヒントにし、さらに自身の勘で調査する内容を即断できる光のほうが異常なのだ。


「わかったら、さっさと始めましょう」

「はいっ!」


 言いながら、すでに作業を始めている光に元気な返事をした後輩は、目の前の資料の山に手を付ける。

 だが、このときの二人は忘れていた。

 自分たちはすでに場所を特定することができるかもしれない手がかりをつかんでいたということに。

 もっとも、それに気づいたのは、資料の山の中から、ここなのではないか、と思う場所をいくつか拾い上げたあとだったのだが。

いかがでしたでしょうか?

今後も、文章のことで改善点などありましたら、ご意見いただけるとありがたいです。

できる限り、改善できるよう、努力いたします。

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