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闇鍋

作者: 尚文産商堂
掲載日:2012/04/30

もうすぐ春だっていうのに、なぜか寂しく男だけで鍋パーティーをすることになった。

「なんで鍋なんだ…」

俺は企画者の友人に言った。

「なんでって、そりゃ寒いからに決まってるだろ。寒いときには鍋を食う。定番だろ?」

「さも当然のように言うなよ…」

俺はため息ついて、友人に聞いた。

「それで、何鍋なんだ。それに誰が来るんだ」

「来るやつらと食材については、秘密な。あ、そうそう。一人1つの食材を持ってくるようにな」

「…闇鍋するつもりか」

「ピンポーン。だいせいかーい」

友人の笑顔に、握り拳をぶつけてやりたかったが、それはやめておいた。


前日に友人の家で鍋パーティーをするという話で、親には説明をしておいた。

俺が持って行ったのは、鱈だ。

すでに切り身にしてある。

他の奴らがだれかは知らないが、碌なことにならないような気が、今からしている。

できれば、この予想が外れることを願うばかりだ。


「ちーっす。持ってきたぞ」

闇鍋するからには、食材の名前を伏せておく。

他の奴らは4分の3ほど集まっているようだ。

「おう、待ってたぜ。あがれよ」

友人がさっさと俺をリビングのテーブル脇まで連れてくる。

「食材については、そこらへんに置いておいてくれ。電気切って、それから入れるからな」

「あいよ」

そういって、ビニール袋を近くの戸棚の上に置いた。


全員そろったのは、俺が来てから15分後だ。

「では、これから、闇鍋パーティーを開きます!」

水だけはやたらとあった。

さらに、なぜかカレールーまで2箱ほど置いてある。

「では、電気消すぞ。食材は、電気を切ってから袋から取り出すようにな」

友人が言ってすぐに、電気を消した。

カーテンも閉めてるから、部屋の中の明かりといえば、カーテンから漏れている光だけだ。

一人ずつ、食材を鍋の中にいれる。

「全員入れたか」

友人が聞いた。

数秒待ってから、電気をつける。

蓋が閉まった状態で、後は煮えるのを待つだけだ。


テレビを見ている間も、良い香りが漂ってくる。

「今回は成功かな」

俺が友人にいう。

「ゲデモノ持ってきたやつがいないんだろうな。残念だ」

友人は真剣に残念そうな声を出していたが、俺にとっては、良い方向に予想が外れたから、ホッとしていた。


「じゃあ、そろそろ電気消すからな」

「おう」

友人が再び電気を消す。

こんぢは鍋の中身を掬うのだ。

すでに白米が用意されている。


一人一人が順番によそっていき、終わったころに電気を再灯する。

「なんか無駄に豪勢な鍋だな」

よそった後の器を見ると、白滝と牛肉が入っていた。

「すげえな、牛肉なんか入ってたぜ」

「初回だからな。今回だけ奮発して、神戸牛のA5を買ってきたんだ」

「わざわざすごいな。俺が持ってきたものなんか、タラの切り身だぜ」

「白菜と白滝と、これなんだ…」

別のやつが一口食べると、言い切った。

「これ、鰹節だな」

「それ、こっちが持ってきたやつだな」

そんな感じで、タラ、牛肉、白菜、白滝、ソーセージと鰹節が入った、何とも普通な鍋に終わった。

「次回もこれぐらいでいいんだがな」

俺が食べ終わってから、片付けを手伝いつつ、友人にいった。

「カレーいれなくて良かったっちゃあ、よかったんだがな。これじゃ結構つまらんな」

友人がいらんこと考えているのがすぐにわかった。

「そういや、あのカレーってなんだったんだ」

「ああ。あれはな、どうしても食べれなかった時用さ。なんか、どっかに漫画で読んだんだがな、カレーを入れると何とかなるらしい」

それから友人が俺に言った。

「今度はカレーいれる羽目になりそうだな」

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