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Crystal Earth Online  作者: 真幸
1、終わりの始まり
4/9

<03> = Diamond Dust =

(2012/06/16)改変終了。

 声のする方を振り返ると大きく肩を動かし、呼吸を整える女性がいた。

 さっきのうるさいハミール女だ。ユキはなぜこの場所を知っているかと疑問に思ったがかまわずに水辺を見つめた。


「探しましたよぉ………」


 一生懸命に呼吸を整える。 

 何をしているのだろうか。このVRMMOであるCEOでは呼吸という概念は存在しない。どちらかというと無意識という名の慣れが出ているのが正しい。慣れというものはそうそうに消えるものではない、それも生まれたときからの行為だとすると治りようの無い癖だといえる。などと考えている自分も鼻から空気を吸うという行為を大げさにする。『うんざり』という言葉を表現したと言えば正しい。


「【ダスト】さん?」

「―――。ダストっていう言葉。意味知ってるか?」


 何気なしに彼はその場にあった石を拾って川に投げる。ゲーム上では石というアイテムを拾って捨てていることになるが、この場ではそれがアクション的にできるのだ。あたかもその場でその行為をするためのように。


「ご、ゴミ―――って意味ですよね?」


 言葉を選ぶようにハミール女は口にした。ユキ自身、自分はそんな存在だとわかっているので今さ言われてもなんとも思わないでいた。―――そう自分は味方殺しのダスト。ゴミくずでしかないのだから。


「本当の意味は『塵』とか『埃』とかそんな意味なんだぜ?まぁ、日本人的にはダストシュートの意味合いが強くてダスト=ゴミっていうのが定着してるんだけど」


 なぜ自分が【ダスト】と言われるようになったのか口を滑りそうになるのを閉じる。いまさらそんな事を口にしても過去の栄冠、一昔の輝かしい昔話だ。ガラスのヒビはあと一撃で割れそうだというのだ。それを自分自身の手で割ってしまっては死んでしまった仲間達に合わせる顔がない。


「じゃあ本当の―――ッ。ゴミって英語はなんていうんですか?」


 彼女は彼に気を使ってゴミという言葉を溜めて話す。逆にそれがいたたまれなく、人を小ばかにしているようにも感じた。

 話題逸らし。ある意味気分転換にいいと結論付けて彼は口を動かした。


「ガービッチ。G、A、R、B、A、G、E。ガービッチだ」

「なんか下品ですね」

「そんな思考がでてくる時点でお前のが下品だ」


 彼の発言でクスリと彼女は笑った。

 それを見てユキは少し崩してしまった表情をもとの眉間にしわを寄せたむくれた顔に戻した。

 自分は笑ってはいけない。人間らしくあってはいけない。ただ機械のようにしていないといけない。そう言い聞かせた。


「どうしてそんなに暗い顔するんですか?」


 暗い顔もするだろう。

 ………だってここは檻なんだよ。

 監獄なんだ。

 囚人なんだ。

 死刑執行を言い聞かせられた囚人なんだ。


「そんなに帰りたいんですか?」


 帰りたいさ………。

 だって俺ははただの学生だったんだ。

 ここには俺の居場所がないのだから。


「顔をあげてください」


 言われるがままにユキは顔をあげた。眉間にしわを寄せたままのその顔を声のする正面にあげる。

 するとなぜか冷たいものが顔にかかるのを感じ、反射的に避けると顔面が濡れているのを感じる。


「冷たいでしょ!?ここはこうして遊べる場所でもあるんですよぉ!!」


 さっきまで隣にいたはずが、いつの間にか目の前に膝まで水に浸かる彼女が存在していた。彼女は指先で器用に水しぶきをユキに放つ。

 なぜかユキの表情は驚いていた。その表情を見て彼女もどう反応していいのかわからず、水しぶきを放つ手を止めざるおえなかった。

 内心。あれ?気を紛らわそうとして「やったなーこのやろうー」と言ってやり返してくるパターンを予想していた彼女にはこの反応は、彼女自身どう反応していいのか困る反応であった。


 その放とうとする格好を維持すること数秒経ち、ようやくユキは開いた口を動かした。


「驚いた。この場所は川の中に入れたのか」


 出てきた言葉そんな事だったとは思ってもみなかった少女は堪えきれず、小さく声を出して笑った。


「な、なんだよっ―――」


 ばつの悪い思いに駆られ、ユキは頬を染めて小さく言った。

 まだ笑いが終わらない少女は片手を口元に持っていき、なおも肩を上下させながら声を出して笑っていた。


「だ、だって―――。ックフフ。で、出てきた言葉がなんか。ックフ。可愛かったんだもんっ―――フフフ」


 そこまで笑うものでもないだろうと。さきほどよりも軽い表情、片方の口元を吊り上げユキはため息を漏らした。


 ユキ自身、このゲームついてはどんなことでも知っているつもりだった。

 街中にいるNPCから受けれるクエストや、設定、このエーフィという国の歴史も、全て知っているつもりでいた。どんなものにゴールへの手がかりがあるかわからないのだ。それはもう必死になって探した毎日だった。

 彼自身この場所にはよく来ていたし、石を川に投げるというアクションがここしかできないからだ。要すればこの場所はそういう場所なんだと理解していたし、何かあるとは思っていた。しかし調べれば調べるほどに根本的な物な彼が求める答えとは違う物が見えてくる。どちらかといえばこの国の成り立ちしか見えてこなかった。この川自身、現エーフィ帝国の国王、聖帝ロイドに縁のある場所でしかなかったのだ。こと聖帝の英雄譚にこの場所が多々存在するのだ。要はエーフィ帝国の観光地といってもいい。


 しかし、首都内部で水に入れるとは夢にも思っていなかった。上半身まで水に浸かるようなマップでの戦闘を経験したことはあったが、このような形で水に触れ合うのはいつ以来だろうか。

 ユキは立ち上がり、ゆっくりと川に足を進めた。

 冷たいというよりもヒヤリとした感覚が足中を駆け巡る。

 装備している鎧の中に浸水しているというものはないし、彼女が着ている布地の服も濡れている様子はなかった。

 どちらかというと水に触れているという感覚だけが存在し、他の現象は置き去りになっている状態だ。

 それでも目の前で彼女がすくった手のひらには半透明な水というものが存在してユキに向かって放たれた。


 冷たい。

 しかし心地よかった。

 その場に体を倒してみると浮くことは無く、沈んで水のそこで寝転がっている状態だ。

 先に言ったとおりこのゲームには呼吸というものは存在しない。むしろ水中でも呼吸ができている状態だ。水中で空気を吸いこみ、鼻から空気の玉を噴出す。なかなか滑稽な風景だった。

 気づくと同じく隣で真似する少女が一人。横を向くと目が合い、妙に気恥ずかしかった。


 しかし心地よかった。

 温泉とは―――かなりかけ離れ、どちらかというとぬるま湯のいつまでも浸かっていられるプールのが近いかもしれない。ゲーム上なので水に体温を持っていかれる心配もないので自身が望むならいつまでも浸かっていられるのだろう。

 空気の泡の先を見つめる。もうすぐ太陽が沈もうとしていた。ちょうど向いている空には月らしい白い丸が顔出しているのが見える。

 まるで自分も泡のようになったかのように心が軽く、気分が楽になるのを感じる。

 「パァ」と音を出して水中から体を起こした。隣を見るとすでに立ち上がっていた少女と目が合った。

 沈みきった夕日は辺りを黒く塗りつぶし、人気のないここら一体を群青色に染めようとしている。 

 その中に一つ、スポットライトに似た光が照らされている。

 彼女に当たるスポットライトは幻想的な雰囲気をかもし出す。

 ユキの金髪とは対照的な彼女の銀髪は辺りの群青色を吸って銀色の輝きを一層強く光らせる。ハミール装備の頭巾を肩に下ろし、横顔を向けてこちらじっと見つめていた。

 とても美しく、とても綺麗だった。まるで一枚の壁画だと言われれば頷けれるような幻想を額縁にはめてそこに存在していた。

 それがとてもいたたまれなく、自分とは違う場所に存在するのだと痛く思い知る。

 あぁ。彼女は自分とは違ってこの世界に居場所を持って自分を証明しているのだと教えられているような。自分には居場所がないのだと再確認させられる。

 彼女と数秒見詰め合うなりユキは視線を下に向けてさっきまでの仮面染みた表情を浮かべる。


 ―――自分には。


「居場所はありますよ」


 見透かされたかのような言葉だった。二回目の驚きの表情だったがすぐに表情を戻す。


「何が言いたい」

「知っていますよ。【ダスト】のユキさん。いえ、【ダイダス】のユキさん」

「ッ!?」


 ダイダス。懐かしい言葉だ。


「―――知っていたのか」

「えぇ。気づいたのはこの場所で素顔のアナタを見たときでしたが」


 【ダイダス】。詳しくは【ダイヤモンドダスト】のが正しい。

 それは昔呼ばれていた彼の通り名であり、少し言うには長いので縮めて【ダイダス】と呼ばれるようになった。

 ―――ダイヤモンドダスト。大気中の水蒸気が冷やされてその小さな水晶がゆっくりと降り、太陽の光に照らされてキラキラ光る現象のことだ。

 大層な通り名がついたなと仲間内で笑われたのが彼の思い出であった。

 彼が操る大剣が氷を模様した武器で一振りするたびに塵のような銀色のエフェクトを発したのだ。さらには彼の無鉄砲な、無茶な戦い方で最前線を銀色のエフェクトで埋め尽くされたことからついたのだ。

 無茶と無鉄砲と聞くとあまり彼自身腕がないように捉われしまうかもしれないが、CEO内でとっては無茶と無鉄砲は一番性質が悪いものでもあった。

 HP回復がリジェネと呼ばれる数秒間隔に僅か回復する物だけしか存在しないこのCEOにとって災害のような存在は特に毛嫌うものだ。考えてもみてくれ二、三分かけて全快させたHPが一人の男が暴れた攻撃に巻き込まれHPが三割以上削られるのだ。下手したら半分になっているかもしれない、そんな災害じみた男は敵にとって天敵であり、味方にとっては敵のHPを削ってくれるアイテムみたいな物にも捉えられる。

 なら【テンペスト】の合ってるのでは?とユキは思ったこともあったが、名づけの親に当たる人物がたまたま、偶然、運がよくユキが敵を全滅させるのを見つけたのだ。

 それは敵の抜け殻だけが辺りに倒れ、彼が振ったであろう剣から舞うエフェクトがあたり一面に舞い散られ、とても幻想的だったと語っていた。彼自身、そういった場面は対外死ぬことのが多いので、本当にそのときはたまたまとしか言えなかった。

 しかし彼の周りはその名に異を唱えず、【ダイヤモンドダスト】、【ダイダス】と呼ぶようになった。

 その名はエーフィ以外でも知れ渡り、災害じみた無茶と無鉄砲は前線ではとても目につき、その剣から発せられるエフェクトも目印の一つだとも言えた。


 だが、その名も消え。今ではただの塵であり、ゴミにまで格落ちにされているのが現状だ。

 ユキは思い出の映像が写った閉じた目蓋を開け、月明かりに照らされる彼女、『Mischaミーシャ』の目を見つめた。

 何か強い意志があることを促す決意の目だった。強く光り、まぶしい程にまっすぐな視線だった。


「なんだ」

「はじめは戦い方を知らない人なんだと思いました。だからそんな人を少しでも長生きさせるために仲間にしようと思っていました。だけど―――」


 この会話でだいたいの察しがついた。ユキは視線を逸らしてまた仮面を被った。


「だけど―――アナタが【ダイダス】のユキなら話は別です。お願いです、アタシの部隊に入ってください」

 

 予想通りの発言にまたため息を漏らすユキであった。


<<以下の単語が用語集に追加されました>>


【リジェネ】…… 一つの回復剤の名称。リジェネのように徐々に回復する物。パンのように即時回復の2つがある。リジェネは『32』の回復を8~12回、回復する。上位版のハイリジェネになると『48』回復を12回と値段相応の効果を発揮してくれる。パンの場合も1回使用で『50』回復。上位版のビフテキは『200』回復になる。このポーションとベーコンの違いは追々。


(2012/06/16)

 改変終了。

 話が変わっているのでこの話の続きはまだ存在していません。<04>以降はこの話とは違う話になっていますのでご了承ください。

 <04>改変次第この文章は消させていただきます。


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