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Crystal Earth Online  作者: 真幸
1、終わりの始まり
2/9

<01> = Beginning =

 全体的に書き直している最中です。

(2012/05/27)改変終了。

 彼、久遠 幸(くどうゆき)がこのゲームを始めて既に二年という月日が経っていた。その始まりを思い出すだけで、なぜ自分がこのゲームをプレイしてしまったのだろうかと後悔してもしきれない気持ちをが渦を巻いて彼を戦場に駆り立てた。そもそも彼がこのゲームを始めたきっかけは引き込まれからだ。

 彼自身どちらかと言うと、格ゲーなるレバーをガチャガチャするゲームは嫌いな方であり、それと同様にFPSなる銃を持って敵を倒すのも嫌いで、根本的には練習不足なのもあるが初心者と熟練者との差が大きすぎるゲームはあまり好かなかった。

 だから彼は最初に聞いたこのゲームの本質、対戦型のオンラインゲームは自分には合わないと心底思っていたのであった。


 話は戻って今から約二年前。もうすぐ高校生活最初の冬休みを迎えようとしていたことを思い出す。

 Crystal Earth Onlineのオープンβ(ベータ)が始まり、ちょうどそれと同時に彼宛に荷物が届いた。彼宛だったので部屋に置いたという母親の言葉を聞いたときは、ユキ自身手紙か何かだと思っていたら携帯端末接続式フルフェイス型のマウントディスプレイ。通称【Lギア】というものが梱包されて置いてあったのだ。一緒に入っていた封筒に【ご当選おめでとうございます】という言葉を添えられていたが、まったく見に覚えの無いユキにはもしかしたら両親が興味本位で彼の名前を使って懸賞にでも送ったのかもしれない。そう解釈したユキはベットの下のお宝本と一緒にそれをいつか使う日まで取っておくことにしたのであった。


 この情報をどこで聞いたのか―――。


「おい。久遠!!」

「うへぇ?」


 帰りのSHRが終了し、自分の席で1日が終わる喜びをかみ締めながら大きく欠伸をしていると彼、遠藤(えんどう) 正明(まさあき)に声をかけられた。


「お前だろ?久遠幸って。俺、遠藤。遠藤正明って言うんだ。よろしく」


 彼は気さくに笑ってみせ右手をユキに差し出した。

 それが握手を求めているとは知らず。むしろ何が起きたのか理解できなかったユキにとっては状況を理解することに頭を回転させていた。

 まず彼、遠藤は入学式の新入生代表挨拶のときに「自分ゆーしゅーなんで授業受けません!でも卒業はします!」とか言ってしまった学校公認の変人である。聞く噂と言えば『資産家の息子で昔から英才教育を受けている』とか、『由緒正しいスパイの家の子でハッキングやら情報操作はお手の物』だとか『あの有名な泥棒の三世』だとか色々聞いた。

 先生方も本当に授業を出ないとは思わなかったらしく、親を交えて話あった結果。毎期ある試験をパスしたら許可するとか何とか。事実そいつは半年間テストの日以外見ることはなかった。毎回張られる試験結果には堂々と

 

 1位 遠藤 正明


 の名前が乗られている。ついでに500点満点中500点という馬鹿げた点数だ。

 そんな別の生き物のような奴かお声にかかるとは夢にも思っていなかったのだ。


 曇り一つない子供のような笑顔だった。流されるままにユキは「はぁ……」と小さく零し、出された手を握った。周りからは「あれ遠藤だよな?」「あれ?テスト期間じゃないのになんで……?」とか話し声も聞こえてくる。

 遠藤は交わした握手をそのまま引っ張り、「一緒に帰ろうぜ」と顔を近づけてくる。それはあと少しでキスできるような距離で見つめあい、嘔吐染みた不快感が彼を襲った。馴れ馴れすぐると少し複雑な気分に浸り、特にこれといった約束もあるはずもないので彼の提案に乗ることにしたのであった。


「Lギア?」

「うん。持ってるんだろ?」

「持ってるには持ってるが……」


 帰り道。彼がいきなり誘ってきた理由を聞くと、どうやら昨日届いたLギアのことだった。むしろどこからそんな情報を嗅ぎつけたのかユキには疑問だった。ユキにはこれといった友達は学校にはいないし、遠藤の元中にもほとんど縁が無かった。友達がいないというよりもコミュ障なためまったく友達がいないのが正しい。外面的には普通を装っているが、内心心臓バクバクだとはその場にいる彼以外知る由もなかったな。

 少し先を歩いていた遠藤がクルりと反転してこちらを向くや、同じ十六歳とは思えない子供らしい姿を振りまいた。ユキの身長が一七〇あるとすると、遠藤は一五〇と言ったくらいだろう。


「じゃあさ。お前も一緒にやらないか?」

「一緒に?」

「早い話ネットゲームを俺とやらないか?」

「あんまりそういうの興味ないから―――」

「んじゃゲームは?」

「RPGとかなら人並み程度に」

「ん~~……まぁ。いいか。きっと久遠もハマると思うよ」


 遠藤の時折見せる笑顔があまりにも子供じみていて同い年なのか疑いたくなるユキであった。

 それよりも……まさか授業受けませんとか言ってたのはネットゲームするためだのではないかと首を捻らせた。ある種うらやましい奴だなと心底思い知らされた気になる。


「これクライアント。端末にインストールすればできると思うよ」

 

 ほぼ無理やりという形でディスクを受け取ったが気乗りできなかった。ただでさえコミュ障のユキがネトゲなんかはじめたらそれが加速してしまいそうで滅入る。当の本人を見ても、返ってきたのは無邪気の笑顔。断り辛いこの上なかった。


「あ―――あとこれ俺の番号。ゲームやるときにでも電話くれたら手取り足取り教えてやるぜ?んじゃねー」


 いきなり手のひらに紙くずを手渡され、遠藤はそのまま手を振りながら去ってしまった。

 どうしようかと手のひらに握られた紙くずとディスクを見つめ、途方にくれるユキであった。





 * * *





 正直なところ興味はあった。仮想現実でのもう一つの世界というものが。それは小説の中での話しだと思っていたし、夢物語だと思っていた。まさかこんなヘルメットを被るだけでゲームの世界にいける時代になるとはユキ自身技術の進歩を思わずには入られなかった。

 とりあえずインストールしてみることにした。Lギアの初起動だったため、初期設定をしないといけないようだ。体の動きを取るとかで、ラジオ体操みたいなことをやらされ、声紋やら網膜やらを取られた。

 時間にして約三十分という短いようで長い時間拘束され、設定とインストールを終えた。


 ふと、さきほどもらった紙くずに視線を行く。遠藤への電話は……ちょっと触りだけやってみよう。なぜかあの遠藤の頼み事は断り難い。もし自分に合ってないゲームだったら彼に連れられて嫌々やってる自分が想像できた。小奇麗なLギアの表面に写った自分の苦い顔を見て苦笑いを漏らした。

 腹をくくり、Lギアをセットした。

 

「ギア・アクセル」


 音声認識で端末に接続したヘルメットが起動する音が微かに聞こえる。徐々に意識が薄れていき、ベッドに倒した体の重さも消えていった。


 後に、この自分の接続によりデスゲームが開始されるとは夢にも思わなかっただろう。

 彼、久遠幸と遠藤正明の二人の物語の始まりである。


<<以下の単語が用語集に追加されました>>


【Crystal Earth Online】…… 略称はCEO。100人対100人の対人戦をメインとしたVRMMO。パッケージには『100人が君を……狙っている』と書かれている。


【オープンβ】…… 主にソフトウェア関係の用語で、試作品(ベータ版)を一般に広く公開されるもの。誰でも自由に無償に試すことができるという意味。これに対し、限られた人や団体にのみ提供されるものをクローズドベータという。最初に限られた範囲のクローズドβテストをし、機能面や性能面での改良を進め、安定してきたところでオープンβに移行して改良を行う。


【Lギア】…… 通称『Link-Gear』。形状はフルフェイス型のヘルメット。ヘッドギアの内側に埋め込まれた無数の信号により使用者の脳と直接接続し、感覚器に直接ではなく脳に直接五感情報を送る事で仮想空間を生成している。同時に脳から体への命令信号も回収するので、仮想空間で激しい動きをしてもリアルの体は指1つ動かない。謳い文句は『世界と生活を繋ぐ歯車!!』


【お宝本】…… 大人の女性がポージングを決めている表紙の本。対外は友達のタカユキ君から貰ったものばかり。稀に帰宅時なぜか机の上に置いてある。


【VRMMORPG】…… Lギアによって作られた|仮想空間(VR)を舞台にしたMMORPG。数世代前のマウスとキーボード等の入力機器を使っていた人間が夢見た究極のネットゲーム。


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