無窮蛇
短編です。
あるところに蛇がいた。
蛇は大蛇で、人の家を軽々と丸呑みできるほどの大きさだった。
しかし、蛇は理知的だったので、そんな生産性のないことはしなかった。
大森林を寝床に、今日も惰眠を貪る蛇。
そんな蛇は、こんなことを思いついた。
ーーこの世界って、どこまであるんだろう。
思い立ったが吉日。
そう思い、蛇は旅に出ることにした。
ところで蛇には、ある特性があった。
それは、伸びるということ。
どういうわけか、蛇は身体が伸びるのだ。
どれぐらい伸びるのかは蛇自身も知らない。
何故なら蛇はめんどくさがりやで、今までまともに動いたことなんてなかったからだ。
ということで、蛇は伸びながら旅を始める。
伸びるのはなんとなくである。
傍迷惑なことに、通り道に蛇の巨体が残されることになるが、そんなこと蛇は知ったこっちゃない。
文句があるなら蛇を斃せばいいだけの話である。
もっとも、蛇を斃せる、それ以前に傷をつけられる存在などほとんどいないだろうが。
そうして蛇は旅をする。
森を、砂漠を、雪原を。時には海の中だって。
蛇は謎生物であり、酸素だって必要ないのだ。
わけがわからないよ。
その旅の果てに、蛇は巨大な蛇の尻尾を見つける。
それは…
蛇自身の尻尾であった。
そう。蛇は世界を一周してしまったのだ。
これで当初の目的は果たせた。
世界は繋がっていたのだ。
しかし、世界を見て回ったことで、蛇の好奇心は強まっていた。
ーーじゃあ次は下方向だ。
今まで這い続けてきた土。
その下はどうなっているのか。
そう疑問に思った蛇は、その場から真下に進み始めた。
繰り返すように蛇は謎生物なので、高速で回転することにより地面を掘削することが可能なのだ。
わけがわからないよ。
土、石、マグマ、マントル…。
中心核を貫き、尚進み続けた蛇は、一面に広がる青空と、ついでに顔のすぐ横を通過する蛇の胴体を見つける。
それは…
蛇自身の胴体であった。
そう。蛇は世界を貫いてしまったのだ。
なるほど。
世界は球体だったのだ。
まだまだ蛇の好奇心は収まらない。
ーーなら、次は上方向だ。
蛇は青空を見上げ、空に向かって伸び始めた。
青空を越え、雲を抜け、蛇は宇宙を進み続ける。
無酸素も、無重力も、灼熱も極寒も関係ない。
何故なら蛇は謎生物だから。
世界を巻き、星を貫き、空の果てへと伸び続ける蛇。
人々はそんな蛇を、畏怖の念を込めてこう呼んだ。
無窮蛇、と。
蛇は今もなお、宇宙を進み続けているとかいないとか。
もしかしたら、飽きて寝ているかもしれませんが。




