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無窮蛇

作者: たし
掲載日:2026/09/26

短編です。

あるところに蛇がいた。

蛇は大蛇で、人の家を軽々と丸呑みできるほどの大きさだった。

しかし、蛇は理知的だったので、そんな生産性のないことはしなかった。

大森林を寝床に、今日も惰眠を貪る蛇。

そんな蛇は、こんなことを思いついた。


ーーこの世界って、どこまであるんだろう。


思い立ったが吉日。

そう思い、蛇は旅に出ることにした。


ところで蛇には、ある特性があった。

それは、伸(・)び(・)る(・)ということ。


どういうわけか、蛇は身体が伸びるのだ。


どれぐらい伸びるのかは蛇自身も知らない。

何故なら蛇はめんどくさがりやで、今までまともに動いたことなんてなかったからだ。


ということで、蛇は伸びながら旅を始める。

伸びるのはなんとなくである。

傍迷惑なことに、通り道に蛇の巨体が残されることになるが、そんなこと蛇は知ったこっちゃない。

文句があるなら蛇を斃せばいいだけの話である。

もっとも、蛇を斃せる、それ以前に傷をつけられる存在などほとんどいないだろうが。


そうして蛇は旅をする。

森を、砂漠を、雪原を。時には海の中だって。

蛇は謎生物であり、酸素だって必要ないのだ。

わけがわからないよ。


その旅の果てに、蛇は巨大な蛇の尻尾を見つける。

それは…


蛇自身の尻尾であった。

そう。蛇は世界を一周してしまったのだ。


これで当初の目的は果たせた。

世界は繋がっていたのだ。


しかし、世界を見て回ったことで、蛇の好奇心は強まっていた。


ーーじゃあ次は下方向だ。


今まで這い続けてきた土。

その下はどうなっているのか。

そう疑問に思った蛇は、その場から真下に進み始めた。


繰り返すように蛇は謎生物なので、高速で回転することにより地面を掘削することが可能なのだ。

わけがわからないよ。


土、石、マグマ、マントル…。

中心核(コア)を貫き、尚進み続けた蛇は、一面に広がる青空と、ついでに顔のすぐ横を通過する蛇の胴体を見つける。

それは…


蛇自身の胴体であった。

そう。蛇は世界を貫いてしまったのだ。


なるほど。

世界は球体だったのだ。


まだまだ蛇の好奇心は収まらない。


ーーなら、次は上方向だ。


蛇は青空を見上げ、空に向かって伸び始めた。


青空を越え、雲を抜け、蛇は宇宙を進み続ける。


無酸素も、無重力も、灼熱も極寒も関係ない。


何故なら蛇は謎生物だから。


世界を巻き、星を貫き、空の果てへと伸び続ける蛇。

人々はそんな蛇を、畏怖の念を込めてこう呼んだ。


無窮蛇(むきゅうのへび)、と。

蛇は今もなお、宇宙を進み続けているとかいないとか。

もしかしたら、飽きて寝ているかもしれませんが。

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