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おじいちゃん 〜最後にゾッとする怖い話〜

作者: おりみみ
掲載日:2026/05/13

「お、エミちゃんおはよう、今日もいい天気だねえ。ガリガリ君食べるかい?」


「いいの? 食べる食べる~」


 アイスを手にして喜ぶ私に、優しい微笑みをかけるおじいちゃん。


 夏休みの数日間、おじいちゃんの家に泊まることになったの。


 私はこの日を待ちわびていて、前々から準備万全。

 だってお母さんのお父さん……おじいちゃんに会うのは初めてだったから。


 お泊まりといえば可愛いパジャマに、ぶどう味の歯磨き粉にうさぎなプラスチックコップ! これがあれば女子力アップ間違いなし。

 あとは夏休みと言えば虫取り網は必須級。最近の男の子は貧弱で、幼虫とかイヤ~とか言っちゃう始末……あんな可愛い生き物を触れないとか人生損してるよね。


 女子力セットに加えて暇つぶしのボードゲームやらを詰め込み、二刀流を決め込むための二本の虫取り網がはみ出たクソデカリュックを見たおじいちゃんは動転してた。


 あの驚きっぷり、今思い出しても笑えてくる……ふふっ。


「エミちゃん、小学校で友達出来たかい?」


「もちろん、た~くさんできたに決まってるでしょ! アイちゃんにぃ、スゥちゃんにぃ、エイジくんにぃ、それとターくん! ほら、これでも友達がいないだなんて言える?」


 おじいちゃんは変わらない笑顔で、ほぉ~として言うわ。


「それはそれは、いい友達を持ったもんだ。ワタシの家にでも招いて、皆でアイス食べたいねぇ」


 おじいちゃんは自分のことをワタシって言うの。ワシとかオレとかなら分かるのに、ワタシって女の人が使うんじゃないのかしら? 不思議でならないわ。


 私は胸に手をバシッと置いて言ってあげるわ。


「任せておじいちゃんっ、私がアイちゃん達をここに連れて来てあげる! おじいちゃん、アイスとかクッキーとかお菓子たくさんくれるし、きっとみんなも喜ぶわ!」


「おぉ~頼もしいねえエミちゃん……」


 おじいちゃんの笑みが一層増して、満面の笑みになる。おじいちゃんもアイちゃん達と会いたいだなんて……やっぱり一人だと寂しいのかしら?

 おばあちゃんずっと仕事で家に来てないって言うし。


「お母さんにアイちゃん達をご招待できるように、電話しなくちゃ」


 私がおじいちゃんの家にある受話器を取ろうとすると。


「ああ、ワタシの家電、繋がってなくてねえ、使い物にならないんだ。お手紙とかどうかね? 今の子は便箋、切手を触ったことも無いだろう? この機会に書いてみようよエミちゃん」


 失礼しちゃうわ。

 学校の授業で手紙を書く授業も受けたし、実際に十年後の私への手紙も書いて、ちゃんとポストに入れたんだから。私は手紙完璧超人、大ベテランなのよ。


 でも、ふつーに面倒くさいなあ。電話出来れば一発なのに。


「仕方ない、手紙をみんなに書いてあげる。おじいちゃんも、私の家のポストに手紙を入れてここを教えてくれたものね。へへ……約束より三日も早く来れてラッキーだったわ」


 電車で一人頑張って来た私に、おじいちゃんはえらいえらいしてくれたけど、私としてはもっとえらいえらいして貰わないと割に合わないわ。四人分手紙を書かないといけないんだからね。


「あ、おじいちゃんの住所書かなくちゃだから教えて」


「差出人は住所を書かなくとも、相手に手紙を送れるんだ。なぁに、面倒なんだから、相手の住所だけで充分充分。手紙も四枚書くのは大変だろうし、二枚だけにすればいいさ。ほら、女の子二人、その後男の子二人にしよう」


 ふーん。


 住所を書くだけ、そこまで面倒くさいかなぁ。ま、二枚にするのは賛成かな。友達たくさん呼ぶと、それはそれで楽しいんだけど、人数が多いほどトラブルも発生するものね。


「でも、住所書かなくちゃここに来れないわ」


「エミちゃんが来てくれたように、弥生公園に来てくれればいいよ」


 あぁ、私の手紙にも書いてあった集合場所ね。とっても広い公園で、遊具も豊富、特に大きくて長い滑り台が良き良きなところよ。駅から徒歩10分ってところもポイントが高い。


 アイちゃん達も、学校の電車体験で寄った場所だから知ってるはずだし、名案ね。


「よーし、書けたよおじいちゃんっ! 私をめいいっぱい褒めてよしよししても良いのよ?」


「おー、いい子だいい子だ。よぉしよぉし」


 頭をワシワシとされるととてもいい気分になれる。ずっとして欲しいけど、あまりにもワシワシし続けられると、おじいちゃんみたいに禿げちゃうかもしれないから程々にしないとね。


「早速ポストに手紙を届けて来るね。確か、公園の手前にあるコンビニにポストがあったわ」


「そうかそうか、ま、ワタシと一緒に行こうかね」


「ううん、近いし私一人で大丈夫よ。おじいちゃんは足腰が弱いんだから無理しない方が身のためよ」


「……うんうん、じゃ、気をつけて行くんだよ。あまり遠くに行かないですぐ戻っておいで」


「オッケーよ!」


 私はおじいちゃんの家を後にし、コンビニへとスタスタ歩いて行く。

 横断歩道もしっかり手を上げて渡れるし、左右も二回以上見ているのだから安心安全!


 ……と、コンビニに行く前に、道横に電話ボックスがあったわ。


 せっかく手紙を書いたけど、電話の方がきっとアイちゃん達もすぐ来れるだろうし、電話しちゃおうかな。

 私が頑張って描いたうさぎのイラスト付きの手紙は、手渡しすれば問題ないし。


 それに、三日後にお母さん達が来るっておじいちゃん言ってたけど、今日は四日目で一日遅れだし、お母さんがどうしているのかも気になるわ。


 長い間誰も使っていなかったのか、蜘蛛の巣のはったドアをギィと開け、小さなポーチから十円玉を二枚取り出す。


 電話の仕方を説明欄を見ながら思い出しつつ、受話器を取って番号をポチポチと入れる。


 静かな個室で、耳元で響くコール音……なんだかドキドキするような、それでいて落ち着くような、そんな気分で待つ。


 コール音が途絶え、「もしもし!? もしかしてエミ!?」と、いきなり大きなお母さんの声が聞こえてきた。

 キーンってして耳が痛い。そこまで驚くことないでしょお母さん。


「そうそう、エミだよー。お母さん、いつおじいちゃんの家に来るの? 私もおじいちゃんも待ちくたびれちゃったわ!」


 私の返事にお母さんは。


「どこに、どこにいるの!?」


 ってまたうるさい声で聞いてきた。

 質問に質問で返しちゃダメなんだよ?

 大人なのにそんな事も知らないなんて、学校で習わなかったのかな。


 どこって、それはもう決まってるじゃない。


「おじいちゃんの家に来てるわ、今は近くの電話ボックスにいるけどね。正確な場所は……そうね、〇〇駅の大きな公園のー……あれ?」


 そういえば、私、ここの場所に全然詳しくないわ。

 学校で駅に一回、公園に一回寄ったくらいで、あとはおじいちゃんの家があることしか知らない。そんなおじいちゃんの家の住所も知らない。〇〇駅って言うんだから、〇〇市なのかも……くらい。


 ……あ。


 私は、とある可能性に気づいていなかった。

 学校でも散々言われた注意喚起。それでも、私は気づけなかったんだ。


「〇〇駅ってどこよ!? おじいちゃんの家の近くにそんな駅ない! そもそもおじいちゃん、エミに泊まりに来てって約束してないの」


 お母さんの言葉を最後まで聞く前に、私は公衆電話から出ようとした。


 早くここから立ち去らないと、

 早く誰かに助けを求めないと、

 でも、立ち止まってしまった。


「そのおじいちゃんって誰なの?」


 おじいちゃんがドアの前に佇んで居たから。

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