表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/18

#16「公開会見#13——“最初の印”の名/来場熱量の拡張(市場と港)」

 朝の湖は、白紙の上を乾いた筆で一度だけ撫でたように、細い光を置いていた。掲示板の合言葉は**「保留は欄干。拍は呼吸。」。水晶投影は三分割——王都広場の会見台、面管理控室の灰通路、そして市場と港の計測台。端にはいつもの二択投票**。


二択

A:“最初の印”の名の出し方(保護条件)

B:来場熱量の外延(市場・港への本拡張)


 扇の骨を膝で一度。拍。場の呼吸が揃う。数字が置ける。


「証言は最後、数字は先に。本日は二本立て。欄外“仮→確”の“最初の印”の第二次〈名〉、そして来場熱量の市場・港への拡張ですわ」


 ルカが白墨で大書する。

合言葉:名は刃、退路は柄。


A or B の前に“設計”を置く


《“最初の印”・保護設計(第二次〈名〉)》

 1) 退路の先置き:灰通路を八間へ延長、二鍵一致(こちらの“今日の責任者”=ナナ/王都側=灰外套の老商人)

 2) 静域の強化:音拍を半分に、半径六間→八間

3) 供述の相互写し:二名一組(写字生)で同時写し

4) 免責の枠:第一次(記録)以前の“設計のみ”は講座+配置換え、漂白への関与のみ第三次〈手〉

5) 注記:保留は欄干。迷いは罪ではない


 第一次集計。

 A(“最初の印”)57%/B(外延)43%。

「先に**“最初の印”**から」


“最初の印”——段階で名を置く


《根拠束(要点)》

 ・印面歯型:初期ロットにだけある位相ズレ0.12

 ・インク配合:王造局標準にすすの微量混入(夜間作業の即興)

 ・筆致:欄外“芽”印に似た“m”の三画目が長い癖

・接触ログ:写字生工房→王造局見習い室→月桂館控所の三点呼吸一致


「段階①(役割)——王造局・刻印工房の見習い〈当時〉/月桂館・記録補助〈現在〉」


 灰通路の鍵が光り、二鍵一致。静域を八間へ。私は短く息を整え、扇を半分開く。


「段階②(氏名)——二鍵一致」

「ミーナ・モラン。——“最初の印”の設計者。退路は灰。供述は相互写しで」


 人波の端で、小さなざわめき。ミーナは静域へ灰拍三つで入り、深く頭を下げた。頬は青いが、声は折れない。


『……夜勤で、保留の印が欲しかった。“仮だけでは揺れる、確だけでは硬い”。だから試しに**“仮→確”を一つの印**で作った。返礼に使われるとは思ってなかった』


「設計は道具。道具は柄次第。あなたの印は、保留を短くする便利だった。——第三次〈手〉は漂白だけ。あなたは漂白ではない」


 写字生二人が相互写しを開始。はね/とめを合わせ、払いは各自の癖。一致率が板に出る。

《一致率 0.83→0.91(第二巡)》

 数字は短い。短い上昇は信頼の段差を低くする。


 ボーモン侯が扇を半分閉じて低く言う。『設計は刃だ。君は柄を付けたと言うが、顔は切れる』

「顔は退路で守ります。柄は二鍵一致と相互写し。——処遇は二択」


質問#1

Q1-1:ミーナの処遇(講座+配置換え/資格停止一年)

Q1-2:“仮→確”印(仮/保留/確の三択制で再設計/廃止)


 集計。Q1-1:講座+配置換え 72%/Q1-2:三択制 81%。

「恥は分割、功績は共有。——講座+配置換え。印は三択制で再設計へ」


 リュシエンヌが短く頷く。『短く布令を書け』

「十六字で」


《布令(印)》

仮・保留・確の三択。偽装は没収。漂白のみ手。


来場熱量の“外延”——市場と港


 二択の第二回。

 A(“最初の印”)46%/B(外延)54%。

「市場と港へ。——祭の拍は売買と潮に翻訳できます」


《来場熱量・拡張(市場)》

 熱 = 灯り×足音×値段板の更新拍 × 風補正 − 同相減算

 ・値段板の更新拍:上げ・据え置き・下げを二拍記法で記録

・同相:呼び込み十人一組の同相は減算(歌は除外)

・在庫指標:積み上げ高さの影で補正(夕刻の誇張を是正)


《来場熱量・拡張(港)》

 熱 = 灯り×足音×荷揚げの刻み × 潮位補正 × 風向補正 − 同相減算

 ・潮位補正:満潮±一刻で+、干潮±一刻で−

・荷揚げの刻み:クレーン鈎音の拍/縄の張力変動

・安全弁:白風時は熱の値付け停止(記録のみ)


「後払い補正は祝祭と同じ**±0.2**。短式で読めるから守れる」


 初期値を走らせる。

《市場(午前中)》

 ・予測1,200/実測1,310/補正**+0.09**(値段板の“据え置き連打”が同相減算)

《港(上げ潮)》

・予測980/実測1,160/補正**+0.18**(荷揚げ刻みが安定)


 ここで水晶が黄色。

《異常:市場“香草通り”で呼び込みの同相——笛一丁で十人が二拍で旋回》

 私は即時に同相減算を適用し、板に短く添える。

《注記:合唱は歌、呼び込みは広告。歌は減算外、呼び込みは減算》


 さらに赤。

《異常:港“南桟橋”にて荷札の後書き(入港前付け替え)》

 筆致と歯型を照合。——二年度混在+“t”横画上がり(副官レオン系の古癖)だが、レオン本人は拘束されていない、再訓練中。

「第一次(記録)の追補。第二次は連結名で——退路を置いてから」


 王都の枠でバレンが頷く。『束ね判定を港にも適用する』

「短い式は強い。——処遇は二択」


質問#2

Q2-1:呼び込み同相(上限人数の規格/完全自由)

Q2-2:港の後書き(写し→名の段階/即時停止+罰金)


 集計。Q2-1:上限規格 66%/Q2-2:写し→名 61%。

「規格は争いの冷却水。写しが先、名は段階」


“面”の秩序と“名”の続き


 会見台の端で、マティアス・クレマン(面管理主事)が短く手を挙げる。『印の三択、現場へ落とす。仮→保留→確で、保留に期限二刻』

「保留は欄干。長すぎると橋になる。二刻、よい設計です」


 そこで、匿名の短い紙が水晶に滑る。

《“最初の印”の責任は、わたしにもある。夜勤を割り振ったのは監事補。——名は第二次で》

 筆致は**“止め”が短い**、三画目長。ミーナとは別。私は即答する。

「退路を先に。灰を八間→十間。名は明朝」


結論(速報)


《本日の結論(速報)》

 1)“最初の印”:ミーナ・モラン(設計)。講座+配置換え/印は三択制へ再設計。

2)布令(印):仮・保留・確の三択。偽装は没収。漂白のみ手。

3)来場熱量の外延:市場=値段板の更新拍追加/港=潮位・荷揚げ拍追加。同相減算は共通。

4)呼び込み:上限規格を採用(十人一組超は減算)。歌は減算外。

5)港の後書き:写し→名の段階で追補。束ね判定を適用。

6)注記:保留は遅延でなく安全弁。——短い式は強いし、優しい。


 拍を二度。王都から返拍。拍は数になりづらいが、橋の揺れを吸う。


午後の運用


 午後はすぐ実装。ナナが印運用票(仮/保留/確)を配り、オズが市場版・短式を一行に清書、ルカが港の束ね判定の欄を広げ、アメリアが**「歌は減算外」を大きな字で板に。子どもが拍棒を持って市場と港を走り、老人が影の伸びで潮**の時刻を示す。風はメトロノーム、影は時計。町はオーケストラ。指揮者はいらない。拍があればいい。


 その最中、祝祭詩枠に小さな群れ。子どもたちが二拍で詩を読む。王都の財務官が水晶越しに微笑む。『無料が、強いのは妙だな』

「無料は誇りで味付けできますの。誇りは税率にかからない」


夕刻の短い紙


 王家財務から短い紙。

《市場・港 拡張の試行 承認/“呼び込み上限規格”は十人一組》

 角の幼い字。

《“保留”の札、青いのが好き。》


 私は掲示板の端に添える。

《注記:好きは偏り。偏りは規格で均す。》


決算


《本日の決算(詳細)》

 ・現場還元:印運用票 300/市場・港 計測芯 12/拍棒 16

・公共:束ね判定板(港) 2/値段板・二拍差し替え 8

・積立:白風基金 +48.4(没収冷蔵袋の一部)

・運営:公会線端末に潮位補正・値段板拍のモジュール追加

 ・注記:設計は道具。道具は柄で性格が変わる。柄は参照と二鍵。


 エドが窓辺で短く言う。「“監事補”の名、明日か」

「ええ。第二次。退路を先に。第三次(手)は——漂白だけ」

 ナナが保留札に青い糸で拍点を縫い、ルカが市場の同相検知に星印を付け、オズが砂時計をひっくり返し、アメリアが湯にほんの少し塩を落とす。甘い。塩は正直。返礼みたいな余計な味はしない。


次回予告


《次回予告》

 公開会見#14:欄外記号・第二次〈名〉——“監事補”/港“後書き”の連結名

 ・二択:「名の段階(保護鍵の条件)」or「市場・港 熱量の常設化(税率補正)」

 ・合言葉:“恥は分割、功績は共有。保留は欄干。”


 扇でひと拍。拍は靴紐。結んだまま眠れば、朝すぐ走れる。数字は短い。短い数字で欄干を増やし、面を光らせ、潮を読む。柄のない刃は政治。柄のある刃は、運用。

 運用は、今日もおいしかった。詩とパンと、すこし潮の匂いが、静かに肯定した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ